a computer chip that is glowing green in the dark
11 - 11 - 2024

半導体メモリメーカー​の2024年第3四半期の売上高推移分析:DRAMとNANDは四半期ベースで過去最高収益目前!

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、「DRMMとNANDとは?」という基礎的な内容から、世界の半導体メモリメーカー​の2024年第3四半期の売上高推移を詳しく分析していきます。
  • DRAMは主にコンピュータの一時的なデータ保存に使われる揮発性メモリで、NANDはUSBメモリやSSDなどのデータを長期保存する不揮発性メモリです。 
  • 2024年第3四半期にはDRAMとNANDの売上が過去最高水準に達し、両者ともに前年同期比で大幅な増加を記録しましたが、成長ペースは鈍化しています。 
  • メモリ市場では用途ごとの需要の差が拡大しており、AIサーバー向けの高性能製品は需要が堅調ですが、モバイル向けは在庫過剰で需要が弱い状況が続いています。

DRAMとNANDとは?

DRAMDynamic Random Access Memory)とNANDNANDフラッシュメモリ)は、いずれもデータを保存するための半導体メモリ技術ですが、役割や特徴が異なります。

DRAM

DRAMは、一時的にデータを保存するメモリで、主にコンピュータやスマートフォンのメインメモリ(RAM)として使用されます。

DRAMは揮発性メモリで、電源が切れるとデータが消えるため、短期的なデータの保存や高速なアクセスが求められる処理に適しています。

メモリセルに蓄えられる電荷を周期的にリフレッシュする必要があるため、データの保持にわずかに電力を消費します。

NAND

NANDは、電源が切れてもデータが消えない不揮発性メモリで、USBメモリやSSD(ソリッドステートドライブ)、スマートフォンのストレージなどに利用されています。

データの書き換えには若干の時間がかかりますが、大量のデータを長期的に保存するのに適しており、アクセス速度も速いため多くのデバイスに採用されています。

ドライブの耐久性が考慮され、書き込み回数に制限があるため、長期間の使用による劣化が懸念される場合がありますが、最新技術ではその寿命も改善されています。

両者は、異なる用途と特性を持ちながらも、現代の多くの電子機器において重要な役割を果たしています。

2024年第3四半期:半導体メモリー・メーカーの売上高サマリー

DRAMNANDの両市場は、2024年第3四半期でさらに成長を遂げ、これで5四半期連続の増加となりました。

DRAMの売上高は254億ドルに達し、前期比で8.58%増、前年同期比で92.4%増加しています。

DRAM四半期別売上高推移(単位:十億ドル)


(出所:筆者作成)

NANDの売上高も179億ドルに達し、前期比9.8%増、前年同期比93.6%増と、DRAMに似た成長率を示しました。

NAND四半期別売上高推移(単位:十億ドル)

(出所:筆者作成)

現在、DRAMNANDは四半期ベースで過去最高収益に迫っていますが、成長ペースは徐々に鈍化しつつあります。

DRAMのビット出荷量はこの四半期では大きな変動がありませんでしたが、平均販売価格(ASP)は引き続き堅調に上昇しており、主要3社間でほぼ同じ伸び率を記録しています。

特にSKハイニックス(000660.KS)はDRAMASP6四半期連続で増加し、サムスン電子(005930.KS)は5四半期、マイクロン・テクノロジー(MU)は4四半期にわたって増加傾向を示しています。

(出所:筆者作成)

NANDも同様の動きですが、ビット出荷量にはばらつきが見られます。

SKハイニックスは15%減少した一方、サムスン電子は5%、マイクロン・テクノロジーは8%の増加を見せました。

(出所:筆者作成)

なお、サムスンの発表内容にはNANDのビット成長に関するやや曖昧な表現が含まれており、「第3四半期のDRAMビット成長は前期比横ばい、NANDは一桁台の成長に鈍化(Third quarter bit growth was flat Q-on-Q for DRAM and down to single-digit growth for NAND.)」とされていますが、私はこれを5%の成長と解釈しました。

異なる解釈も可能なため、現在IRチームからの確認を待っているところです。

また、四半期中にはNANDASPも好調に上昇し、SKハイニックスが15%の増加を記録し、マイクロン・テクノロジーとサムスン電子もそれぞれ8%と9%で拮抗しています。

サムスン電子の決算説明会では「デカップリング(分離)」という新しい概念が提起され、これについても詳しく語られました。

この記事ではその意味を解説し、サムスン電子とSKハイニックスの説明会から得られた重要なポイントを紹介し、今後のメモリ業界の展望を考察していきます。

それでは、詳しく見ていきましょう。

また、私のプロフィール上にて、私をフォローしていただければ、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることが出来ます。

もし、私の半導体に関するレポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います。

半導体メモリー市場の「デカップリング」

「デカップリング」という言葉は、2024年第2四半期の決算発表でサムスン電子(005930.KS)が初めて使った表現で、その場で一度だけ言及されました。

(原文)To sum up, even though, the range of market price increased by each application is forecasted to be decoupled, the environment Memory business is projected to remain positive.

(日本語訳)まとめると、用途ごとに市場価格の上昇幅に差が出ると予想されるものの、メモリ事業の環境は引き続き好調と見込まれています。

最新の2024年第3四半期の決算説明会では、「デカップリング」という言葉が冒頭の段落から始まり、合計で5回使われています。

(原文)Thus, in the third quarter, as demand focusing on server application and cutting edge products was strong, the market decoupling by each application and product seemed to be intensified.

(日本語訳)その結果、第3四半期にはサーバー用途や先端製品への需要が強まり、用途や製品ごとに市場の「デカップリング」がさらに顕著になったようです。

つまり、「デカップリング」はこの四半期でさらに顕著になっています。

これは具体的にどういう意味でしょうか?

簡単に言えば、エンドマーケットごとにDRAMNANDの需要が大きく異なっているということです。

AI関連の分野では需要が急増しており、例えばAIサーバー向けのDRAMHBM(高帯域幅メモリ:特にグラフィックスカードやAI計算に使われるメモリ技術、企業向けSSD用(Solid State Driveフラッシュメモリを用いたストレージデバイスで、従来のハードディスクドライブに比べてアクセス速度が速く、信頼性が高く、消費電力が少ないのが特徴)のQLC NAND(Quad-Level Cell NAND:一つのNANDセルに4ビットの情報を格納出来るなどが対象です。

一方、モバイル分野では在庫過多やエンドユーザーの需要低迷により、需要が弱い状況が続いています。

(原文)In the memory market in the third quarter, for server, as major datacenter and tech companies continued to invest, demand for AI and conventional servers was strong. However, in the case of mobile segment, demand was relatively soft due to inventory adjustments by some customers and the supply-demand situation was impacted somewhat by the increasing supply of legacy products in China market.

(日本語訳)3四半期のメモリ市場では、サーバー向けでは主要なデータセンターやテック企業が引き続き投資を行ったため、AIサーバーや従来型サーバーの需要が堅調でした。一方、モバイル向けの需要は一部顧客の在庫調整によりやや低調で、中国市場での旧世代製品の供給増加も供給と需要のバランスに影響を与えました。

この状況を別の視点で見ると、旧世代製品と最先端製品の需要の差として捉えることができます。

最先端製品の需要はこれまでになく強い一方で、旧世代製品の需要は低迷しています。

実際、「デカップリング」という言葉は、モバイル分野の需要が弱いことをやんわりと(または曖昧に)表現したものとも言えます。

この現象はサムスン電子だけでなく、最近のSKハイニックス(000660.KS)の決算説明会でも重要なテーマとなっていました。

(原文)The DRAM price volatility is increasing due to delayed improvements in PC and mobile demand and new entrants in the legacy market. However, there are significant differences in supply and demand dynamics between legacy products like DDR4 and premium products such as HBM and LPDDR5

(日本語訳)PCやモバイルの需要回復が遅れていることや旧世代市場への新規参入が影響し、DRAMの価格変動が大きくなっています。ただし、DDR4(DDR3に続くメモリ技術のような旧世代製品と、HBMLPDDR5(低消費電力のDDR5メモリ技術で、LPDDR4Xに比べてデータ転送速度が大幅に向上といった高性能製品では、供給と需要の状況に大きな違いが見られます。

PCやスマートフォン分野の在庫問題についてまだ話題に上るのは少し不思議に思われるかもしれません。

どちらの分野も過去2年と比べて回復基調にあり、2024年にはいずれも一桁台半ばの成長が見込まれています。

しかし、半導体メモリメーカーにとっての課題は、価格が底値にあった時期に顧客が在庫を大幅に積み増したことです。

そのため、膨らんだ在庫の影響がまだ続いています。

さらに、サムスン電子とSKハイニックスが中国市場における旧世代製品の供給増加について言及した点も重要です。

両社がこの状況を指摘したのは初めてで、中国からの競争がメモリ市場で本格化し始めたことを示す重要な節目と言えるでしょう。

近い将来、この話題がさらに取り上げられることになると考えられます。

では、次章では、サムスン電子の最新の決算分析、並びに、半導体メモリー市場の今後の見通しを詳しく解説していきます。

※続きは「サムスン電子の将来性とは?最新の2024年第3四半期決算分析を通じて今後の株価見通しに迫る!」をご覧ください。

その他のマイクロン・テクノロジー(MU)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、マイクロン・テクノロジーのページにアクセスしていただければと思います。

また、私のプロフィール上にて、私をフォローしていただければ、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることが出来ます。

もし、私の半導体に関するレポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います。


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

📍半導体&テクノロジー担当

キーティング氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが、高配当関連銘柄からAIや半導体関連のテクノロジー銘柄まで、米国株個別企業に関する動向を日々日本語でアップデートしております。そして、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は250銘柄以上となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームよりレポートをご覧いただければと思います。

弊社がカバーしている企業・銘柄の一覧ページはこちら