【投資コラム】PER・PBR・ROEの覚え方を徹底解説!
インベストリンゴ編集部- 本稿では、株式投資をする上で理解することが不可欠な3つの重要指標、PER・PBR・ROEの覚え方を詳しく解説していきます。
- PER、PBR、ROEは株式投資における重要な指標であり、PERは株価と利益の関係、PBRは株価と純資産の評価、ROEは自己資本の効率を示しています。
- これらの指標を使い、割安な株や財務が安定している企業を見つけるための実践的な方法を解説していきます。
- さらに、PER・PBR・ROEを組み合わせて、リスクを抑えながら長期的にリターンを狙う投資戦略も紹介していきます。
第1章:PER・PBR・ROEの基本概念とは?
PER・PBR・ROEとは何かを明確に理解することは、株式投資の基礎を固めるために不可欠です。この章では、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)、ROE(自己資本利益率)の定義とその特徴について詳しく説明します。
PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)
PERは、企業の株価がその利益と比べてどれだけ高いか、または低いかを評価する指標です。企業が1株当たりどれだけの利益を生んでいるかを表し、投資家がその企業の株を購入する際に、どれだけの利益を期待できるかを示します。計算方法は下記の通りです。
株価:企業の現在の株価
1株当たり利益(EPS: Earnings Per Share):純利益を発行済み株式数で割った値
例えば、株価が1,000円でEPSが100円の場合、PERは10となります。この場合、投資家は企業の利益の10倍の価値を支払って株を購入していることになります。一般的にPERが低いほど割安とされますが、成長企業ではPERが高いことも珍しくありません。
PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)
PBRは、企業の株価がその純資産と比べてどれだけ高いか、または低いかを示す指標です。企業の純資産価値に対する株価の倍率を示し、企業の株がどの程度の評価を受けているかを把握できます。計算方法は下記の通りです。
株価:企業の現在の株価
1株当たり純資産(BPS: Book-value Per Share):純資産を発行済み株式数で割った値
例えば、株価が1,000円でBPSが500円の場合、PBRは2となります。これは、投資家が企業の純資産の2倍の価値を支払って株を購入していることを意味します。一般的にPBRが1倍を下回る場合、企業の株価が割安であると考えられます。
ROE(Return On Equity:自己資本利益率)
ROEは、企業が株主から預かった自己資本を使ってどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。企業の収益性を評価するための重要な指標で、株主にとってのリターンの大きさを測る基準となります。計算方法は下記の通りです。
純利益:企業の最終的な利益
自己資本:株主資本(総資産から負債を引いたもの)
例えば、純利益が500億円で自己資本が2,000億円の場合、ROEは25%となります。これは、企業が自己資本を使って25%の利益を生み出したことを示します。ROEが高いほど、株主にとっての投資効率が良いとされます。
また、PER・PBR・ROEを効果的に覚えるためには、シンプルで実践的な方法が役立ちます。こちらでは、少し余談となりますが、初心者でも簡単にこれらの指標を記憶に定着させるためのコツを紹介します。
具体的には、PERを「株価がどれだけ儲かっているかを知るための価格」、PBRを「会社の純資産に対する評価」、ROEを「資本をどれだけうまく使って利益を出しているか」というイメージで捉える方法を解説します。また、覚えやすい語呂合わせや関連性のある事例を用いて、これらの指標を頭に入れるための工夫も紹介します。これらのテクニックを活用することで、PER・PBR・ROEを自然に覚えることができます。
PER(株価収益率)語呂合わせ: 「Perfect Earnings Ratio(完璧な収益率)」
・「PERは完璧な収益率を示す指標」というイメージで覚えると、株価と収益力の関係を思い出しやすくなります。
PBR(株価純資産倍率)語呂合わせ: 「Pure Book Rate(純粋な簿価率)」
・「PBRは純粋な簿価率を示す指標」というイメージで覚えると、株価と純資産の関係を理解しやすくなります。
ROE(自己資本利益率)語呂合わせ: 「Return On Equity(株主資本のリターン)」
・こちらは、もとの英語の組み合わせと同じものですが、「ROEは株主資本のリターンを示す指標」というイメージで覚えると、企業の資本効率を思い出しやすくなるでしょう。
第2章:PER・PBR・ROEの活用事例
この章では、株価評価(バリュエーション)や企業分析において、これらの指標がどのように役立つかを具体的な事例を交えて解説します。例えば、PERを使って割安株を見つける方法、PBRを用いて企業の財務健全性を評価する方法、ROEを利用して経営効率の高い企業を選別する方法など、実際の企業データを基にした分析を紹介します。
PERを使って割安株を見つける方法
PER(株価収益率)は、企業の収益力に対する株価の割高・割安を評価するための指標です。一般的に、PERが低いほど、その企業の株価が割安であると判断されることが多いです。割安株を見つけるために、以下のステップを踏むと効果的です。
1. 同業他社と比較する
まず、対象企業のPERを同業他社のPERと比較します。同業他社よりもPERが低い場合、その企業の株価は相対的に割安と考えられる可能性があります。ただし、業界全体の成長率や市場の特性も考慮することが重要です。
2. 過去のPERと比較する
次に、対象企業の過去のPERと現在のPERを比較します。過去に比べて現在のPERが低ければ、株価が割安な状態にあるかもしれません。ただし、収益の変動や市場環境の変化にも注意を払う必要があります。
3. 市場全体のPERと比較する
対象企業のPERを市場全体の平均PER(米国株であれば、S&P 500指数のPER等)と比較することで、割安かどうかを判断することもできます。市場全体よりも低いPERであれば、割安株の可能性が高いです。
4. 成長率とのバランスを考える
PERだけでなく、企業の成長率(例えば、EPSの成長率)も考慮することが重要です。成長が期待される企業であれば、多少高いPERでも正当化されることがあります。逆に、成長が鈍化している企業でPERが低い場合、投資のリスクが高い可能性があります。
※EPS(Earnings Per Share:一株当たり利益):企業の純利益を発行済み株式数で割ったもので、企業の収益性を示す指標です。EPSが高いほど、一株あたりの利益が大きいことを意味します。
5. 他の指標と組み合わせて分析する
PER単独で割安株を判断するのではなく、PBRやROEなど他の指標と組み合わせて総合的に分析することが推奨されます。これにより、より信頼性の高い投資判断が可能になります。
これらの手法を活用することで、PERを使った割安株の発見が可能となり、より効果的な投資戦略を構築する手助けとなるでしょう。
PBRを用いて企業の財務健全性を評価する方法
PBR(株価純資産倍率)は、企業の財務健全性を評価するために使用される重要な指標です。PBRは、株価が企業の純資産に対してどれだけ割高または割安であるかを示します。以下に、PBRを活用して企業の財務健全性を評価する方法を解説します。
1. PBRの基本的な理解
PBRは、株価を1株あたり純資産(BPS)で割ることで計算されます。PBRが1倍以下であれば、株価が純資産と同等かそれ以下であることを意味し、投資家が企業の純資産を割安と見なしている可能性があります。
2. 業界平均と比較する
PBRを同業他社や業界平均と比較することで、企業の財務健全性を評価します。業界平均よりも低いPBRを持つ企業は、株価が純資産に対して割安である可能性が高く、逆に高いPBRを持つ企業は割高と見なされることがあります。
3. 過去のPBRと比較する
対象企業の過去のPBRと現在のPBRを比較することで、企業の財務状況や市場からの評価の変化を把握します。過去に比べて現在のPBRが低い場合、企業の財務健全性が改善している可能性があります。
4. PBRとROEの組み合わせ
PBRをROE(自己資本利益率)と組み合わせて分析することが重要です。一般的に、PBRが低くROEが高い企業は、財務健全性が高く効率的に利益を上げていると評価されます。逆に、PBRが高くROEが低い企業は、効率が悪い可能性があるため注意が必要です。
5. 他の指標との併用
PBRだけでなく、負債比率やキャッシュフローなど、他の財務指標も考慮することが重要です。これにより、企業の全体的な財務健全性をより正確に評価できます。特に、負債比率が低くキャッシュフローが安定している企業は、財務的に健全であると見なされます。
6. PBRの限界を認識する
PBRは企業の財務健全性を評価するための重要な指標ですが、全ての企業に適用できるわけではありません。例えば、資産が少なく成長性が高い企業の場合、PBRが高くても割高とは限りません。PBRを他の評価手法と併用し、総合的に判断することが求められます。
これらの方法を使ってPBRを分析することで、企業の財務健全性をより深く理解し、健全な投資判断を下すことが可能になります。
ROEを利用して経営効率の高い企業を選別する方法
ROE(自己資本利益率)は、企業が株主からの出資をどれだけ効率的に利益に変えているかを示す指標であり、経営効率を評価するために非常に有用です。以下に、ROEを活用して経営効率の高い企業を選別する方法を解説します。
1. ROEの基本的な理解
ROEは、純利益を自己資本で割ることで計算されます。高いROEは、企業が株主の資本(自己資本)を効率的に活用して利益を上げていることを示します。一般的に、ROEが10%以上であれば経営効率が高いと見なされることが多いです。
2. 業界平均と比較する
ROEを同業他社や業界平均と比較することで、その企業が業界内でどれだけ効率的に経営されているかを評価します。業界平均を上回るROEを持つ企業は、同業他社よりも効率的に利益を上げている可能性が高いです。
3. 過去のROEと比較する
対象企業の過去のROEと現在のROEを比較し、企業の経営効率が向上しているかどうかを確認します。ROEが一貫して上昇している企業は、経営効率が持続的に改善されている可能性があります。
4. デュポン分析を活用する
デュポン分析は、ROEを分解して、企業の経営効率をさらに深く分析する手法です。ROEは、次の3つの要素に分解できます。
純利益率: 企業が売上からどれだけの利益を得ているかを示す。
総資産回転率: 企業が資産をどれだけ効率的に売上に変えているかを示す。
財務レバレッジ: 企業が自己資本に対してどれだけの負債を利用しているかを示す。
これらの要素を分析することで、ROEが高い理由を特定し、その持続可能性を評価できます。
5. 持続可能なROEの確認
高いROEが持続可能であるかどうかを確認することも重要です。一時的な要因(例えば、一時的なコスト削減や資産売却など)でROEが高くなっている場合、長期的には経営効率が低下する可能性があります。持続可能な利益成長を伴う高いROEを持つ企業は、経営効率が高いと評価されます。
6. 他の指標と組み合わせて分析する
ROE単独で経営効率を評価するのではなく、ROA(総資産利益率)やROIC(投下資本利益率)などの他の指標と組み合わせて分析することが望ましいです。これにより、より包括的な視点で企業の経営効率を評価することができます。
これらのステップを通じて、ROEを効果的に活用し、経営効率の高い企業を選別することが可能になります。ROEを中心に据えた分析を行うことで、効率的に利益を上げ続ける優良企業を見つけることができるでしょう。
第3章:PER・PBR・ROEの注意点とリスク
PER・PBR・ROEは、投資判断において非常に有用な指標です。しかし、これらの指標に過度に依存することにはリスクが伴います。この章では、これらの指標を使用する際に注意すべきポイントやリスクを、具体的な例を挙げて説明します。
1. PER(株価収益率)のリスク:成長期待と実績のギャップ
PERは、企業の利益に対する株価の水準を表す指標であり、一般的に収益力を評価するのに使われます。しかし、短期的な業績変動や一時的な要因(例:政府の一時的な補助金、コロナ禍における特殊な需要)によって過大評価されることがあります。例えば、パンデミック中に急成長したズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)のような企業は、収益が一時的に急増したためにPERが非常に高くなりましたが、パンデミック後の成長減速が株価に悪影響を与えました。また、成長株(例:テスラ・TSLA)は、将来の成長期待が高いためにPERが異常に高い場合があります。しかし、成長期待が外れた場合、株価が急落するリスクがあります。実際に、電気自動車(EV)市場における競争の激化や規制の変更によって、テスラのPERが急低下した事例があります。
2. PBR(株価純資産倍率)のリスク:純資産価値の変動
PBRは企業の純資産に対する株価の評価を示す指標です。しかし、純資産の評価も市場環境や企業の経営状況によって変動する可能性があります。例えば、銀行業界では、不良債権の増加によって純資産が突然減少するリスクがあります。リーマンショック後、多くの銀行のPBRが低くなりましたが、それは必ずしも割安という意味ではなく、むしろ資産価値が大幅に減少していたためでした。また、資産が多いが収益力が低い企業(例:不動産会社や製造業)では、PBRが低くても、その企業に対する投資リスクが高いことがあります。例えば、日本の伝統的な製造業企業は、資産を多く持ちながらも競争力の低下や市場縮小により収益が低迷しており、投資判断には注意が必要です。
3. ROE(自己資本利益率)のリスク:財務レバレッジの影響
ROEは、企業がどれだけ効率的に自己資本を使って利益を生み出しているかを示す指標です。しかし、財務レバレッジ(負債の利用)によって人工的に高められる場合があります。たとえば、航空会社や建設業界では、設備投資のために巨額の借入を行い、その結果としてROEが高く見えることがあります。しかし、借入が過剰になると、金利負担や返済リスクが増大し、経営が不安定になる可能性があります。実際に、JAL(日本航空)は2000年代に高いROEを維持していましたが、多額の借入に依存しており、最終的に経営破綻に至りました。
4. 他の指標との併用が重要
これらの指標を単独で使用するのではなく、他のファンダメンタル分析指標(例:ROA(総資産利益率)、ROIC(投下資本利益率)、負債比率など)と組み合わせて総合的に分析することが重要です。例えば、ROEが高い企業でも、ROAが低い場合は資本効率が悪い可能性がありますし、負債比率が高い企業は財務リスクが高いです。したがって、複数の指標を同時に見ることで、よりバランスの取れた投資判断が可能となり、リスクを軽減することができます。
5. 業界特性と指標の意味合いを理解する
最後に、これらの指標が示す数値の背景や業界の特性も考慮することが重要です。たとえば、資本集約型の業界(例:製造業やエネルギー業界)では、ROEやROAが他の業界に比べて低くなる傾向がありますが、それが必ずしも企業の経営が悪いことを意味するわけではありません。また、ハイテク企業では、研究開発に多額の投資を行うため、短期的な利益が低く、PERが一見高く見えることがありますが、将来の成長ポテンシャルを考慮すれば、それが妥当である場合もあります。
第4章:PER・PBR・ROEを使った効果的な投資戦略
この最終章では、PER・PBR・ROEを組み合わせて効果的な投資戦略を構築する方法を探ります。これらの指標を活用することで、どうすればリターンを最大化できるか、具体的なアプローチを紹介します。
まず、長期投資の観点から、ROEの高い企業に焦点を当てる戦略を紹介します。ROEが高く、持続可能な成長を見込める企業は、長期的に安定したリターンを提供する可能性が高いとされています。さらに、PBRが低く、PERが適正範囲内にある場合、割安な価格で成長企業に投資できるチャンスとなります。
短期投資においては、PERが市場平均よりも低く、PBRも低い企業をターゲットにすることで、短期間でのキャピタルゲインを狙う戦略が有効とされています。ただし、この場合、短期的な市場動向や企業の業績に影響されやすいため、リスク管理が重要となります。
また、リスク管理の観点から、これらの指標をどう組み合わせてポートフォリオを最適化するかについても触れます。例えば、ROEの高い企業に重点を置く一方で、PBRやPERを参考にリスクの高い銘柄を排除することで、バランスの取れたポートフォリオを構築することができます。
以上より、PER・PBR・ROEを効果的に活用し、個々の投資スタイルに応じた戦略を構築するための実践的なアプローチを取ることで、リターンを最大化しつつ、リスクを適切に管理できる投資戦略を実現することができます。
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