02/28/2025

やや強気
ライオンデルバセル・インダストリーズ
やや強気
LYBは現在、景気循環の谷間にありながら、割安な評価を受け、高水準の配当利回りを誇っています。
【高配当】ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB:配当利回り6.9%)とは?今後の株価見通しと将来性に迫る!

pink pig coin bank on brown wooden tableヴェンカット・ ラガーヴァンヴェンカット・ ラガーヴァン
  • 本稿では、注目の米国上場高配当銘柄であるライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB:予想配当利回り6.9%・配当性向82%・1株当たり配当金1.34ドル)の概要と1月31日発表の最新の2024年度第4四半期決算分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • LYBは、世界的な特殊化学メーカーであり、プラスチックや化学製品の製造を手がけています。景気変動の影響を受けやすいものの、安定したフリーキャッシュフローを維持しています。
  • 同社は、事業の収益性向上を目的に資産の売却やリサイクル技術への投資を進めています。特に、欧州の一部資産の見直しや、MoReTec技術を活用したプラスチック廃棄物の再利用に注力しています。
  • LYBは14年連続の増配を継続し、大規模な自社株買いを行うなど、株主還元に積極的です。現在の予想配当利回りは約7%で、割安なバリュエーションが魅力となっています。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)とは?

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)は、世界最大級の特殊化学メーカーの一つであり、プラスチック、化学製品、精製技術の製造を専門としています。LYBは本質的に景気循環の影響を受けやすい業界で事業を展開していますが、それにもかかわらず、堅実なフリーキャッシュフローを生み出し続けています。

最近の逆風により、同社の株価には下押し圧力がかかっており、利回りは(COVID-19の市場暴落時を除き)過去最高水準に達しています。また、LYBは非常に割安なバリュエーションで取引されており、不透明な経済環境の中で過熱気味の市場において、強固な安全余裕(マージン・オブ・セーフティ)を提供しています。同社の予想配当利回りは6.9%に達しており、14年連続の配当成長を維持するとともに、大規模な自社株買いを行ってきた実績があります。本稿では、投資適格企業として堅実な配当成長が期待できるLYBにおける、足元の割安な水準での投資機会を深掘りしていきます。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)の事業概要

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)は化学業界におけるグローバルリーダーであり、世界最大級の化学、プラスチック、精製技術を手がける企業の一つです。特に、ポリオレフィンおよびポリプロピレン技術のライセンス供与において世界最大の実績を誇り、世界各地で300以上のライセンスラインを展開しています。幅広い製品やサービスを提供する中で、特に重要な分野は以下のとおりです。

化学製品

LYBは、エチレン、プロピレン、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、第三ブチルアルコール、メタノール、酢酸およびその誘導体といった基礎化学品の主要生産者です。これらの化学製品は、燃料、自動車用フルード、家具・家庭用品、コーティング剤、接着剤、洗剤、化粧品、パーソナルケア製品など、日常生活で使用されるさまざまな製品の原料として利用されています。

ポリマー

LYBは、ポリプロピレン、ポリプロピレンコンパウンド、ポリエチレンといった多用途のプラスチック樹脂を製造しています。これらの素材は、自動車部品、再生可能エネルギー技術、包装材、パイプ、繊維製品など、幅広い用途で活用されています。

(出所:ライオンデルバセル・インダストリーズのウェブサイト)

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)を取り巻く最近の逆風

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)は、石油化学製品、プラスチック、精製事業に深く関与しているため、景気循環の影響を受けやすい業界で事業を展開しています。これらの事業は、世界的な経済動向や需給バランスに強く左右されるためです。特に、原油や天然ガスの価格変動は、同社のコストや利益率に直接的な影響を与えます。これらの原材料はLYBにとって極めて重要なフィードストック(原料)であり、価格の変動は同社の収益性を大きく左右します。

原油や天然ガスの価格は、地政学的な要因、供給制約、季節要因などによって変動しやすく、企業側のコントロールが及ばない要因によってLYBの利益率が圧迫される可能性があります。

過去1年間において、LYBは以下の分野で逆風に直面してきました。

1. 精製マージンの低下

LYBは、米国最大級の製油所の一つをヒューストン・シップ・チャネルに所有しており、高硫黄の重質原油を日量約26万8,000バレル処理できる能力を持っています。この施設では、ガソリンや燃料成分、低硫黄ディーゼル、ジェット燃料、潤滑油などを生産しています。

2022年に同社はこの製油所の閉鎖を発表しましたが、現在は2025年第1四半期まで延期されています。それでは、なぜLYBは107年の歴史を持つこの施設を閉鎖するのでしょうか?

この製油所は1918年に建設され、ヒューストン・シップ・チャネルにおける最初の製油所として誕生しました。当時は、ベネズエラやメキシコからの重質原油を処理するのに最適な立地でした。これは、米国のシェールブームが始まる遥か前のことです。しかし、その後、パーミアン盆地から安価な軽質スイート原油が供給されるようになり、この製油所の競争力が低下しました。

多くの燃料メーカーは、国内で生産される軽質原油を処理できるように製油所の設備を改良しましたが、LYBのヒューストン製油所は引き続き輸入原油に大きく依存しており、時間の経過とともにそのコストが上昇し、マージンを圧迫していきました。

その結果、LYBの精製部門の利益率は低下し、2024年度の最初の9カ月間の調整後EBITDAは6,000万ドルの損失となりました(前年同期は7,600万ドルの黒字)。なお、第4四半期および2024年通期のセグメント別業績の詳細はまだ公表されていません。

2. 化学部門の低迷

LYBは化学部門において厳しい状況に直面しており、2024年度の最初の9カ月間で、中間体および誘導品(Intermediates & Derivatives)部門の調整後EBITDAが55%減少しました。

また、LYBの米国内での事業規模の大きさは、2024年度の最初の9カ月間における地理的な売上構成からも明らかです。

(出所:筆者作成)

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)の戦略的変更

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYBは、事業全体の収益性を向上させるために戦略的な変革を進めており、主な取り組みとして、以下のような施策が挙げられます。

エチレンオキシドおよび誘導品(EO&D)事業の売却

2024年5月、LYBはエチレンオキシドおよび誘導品(EO&D)事業と関連する生産施設をINEOSに7億ドルで売却すると発表しました。

EU資産の戦略的見直し

同じく2024年5月、LYBは収益性の低い事業の中から一部のEU資産について戦略的な見直しを開始しました。これには、オレフィン&ポリマー(Olefins & Polymers)事業部門に属する5つの資産と、中間体および誘導品(Intermediates & Derivatives)事業部門に属する1つの資産が含まれています。

(出所:S&P Global

これらの資産は、収益性が低い(または赤字)か、運営コストが高い古い設備に該当します。対象資産の今後について、同社は「収益性の向上」「他の所有者への譲渡」「合理化」の3つの選択肢を検討しており、必ずしも売却を前提としているわけではありません。

「私たちの目標は、長期的な成功に向けた戦略に沿って、ヨーロッパの事業ポートフォリオを再構築することです。ヨーロッパは引き続きLYBにとって重要な市場です。」 — CEO ピーター・ヴァナッカー

同社によると、見直し対象となっている資産は、それぞれの製品ラインにおける世界全体の生産能力の約13%に相当するとしています。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)の成長への取り組み

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYBは、MoReTecと呼ばれる独自のリサイクル技術に投資しています。この技術は、使用済みプラスチック廃棄物を分子レベルまで分解し、新たなプラスチック材料の原料として再利用することを目的としています。プロセスから得られる熱分解油(パイロリシスオイル)や熱分解ガスは、新たなプラスチックの原料として活用でき、医療用品や食品包装など幅広い用途に対応可能です。

同社は最近、ドイツにおいて初の産業規模の高度リサイクル施設の基礎を築きました。この施設は年内に稼働開始予定で、年間5万トンの処理能力を持ちます。これは、ドイツ国内で約130万人分のプラスチック包装廃棄物をリサイクルできる規模に相当します。

また、LYBは最近、欧州で2件の主要な電力購入契約(PPA)を締結し、長期的な価格の安定性を確保することでエネルギーコストの抑制を図っています。

・ドイツでは、年間450ギガワット時の洋上風力発電を確保し、循環型・低炭素ソリューションの推進を支援します。これには、ヴェッセリング(Wesseling)に建設されるMoReTec-1施設の電力供給も含まれます。

・イタリア(シチリア)では、2026年から年間79ギガワット時の陸上風力発電を10年間確保し、生産拠点および研究センターの運営を支援します。

これらの取り組みにより、LYBは運営コストの管理を強化し、利益率の向上が期待されます。同社は、循環型・低炭素ソリューション事業のEBITDAを2030年までに10億ドル増加させ、年間生産量を200万トンに引き上げることを目標としています。

さらに、2024年初め、LYBはサウジアラビアのNational Petrochemical Industrial Company(NATPET)の35%の株式を、Alujain Corporationから約5億ドルで取得すると発表しました。NATPETは現在、年間約40万トンのSpheripolポリプロピレン生産能力を有しています。

また、ヒューストン製油所の閉鎖およびEU資産6件の売却の可能性により、LYBの売上高は前年同期比で減少する見込みです。しかし、収益性の低い事業の撤退により、2025年以降、EBITDAマージンが改善すると市場のアナリストは予測しています。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)の配当成長

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)は14年連続で配当を増配しており、これまでに大規模な特別配当も複数回実施しています。

(出所:YCharts)

税務上の変更点

2013年にLYBは本社の税務所在地をオランダからイギリスへ移転しました。これにより、オランダの15%の源泉徴収税が撤廃され、イギリスの法人が非居住株主に支払う配当には源泉徴収税がかからない形になりました。

現在の配当状況

現在、LYBの四半期配当は1株あたり1.34ドルであり、年間予想配当利回りは7%に相当します。2024年度には1株あたり5.27ドルの配当を支払い、希薄化後EPSは1株あたり6.40ドルでした。これにより、年初来の配当性向は82%となっています。

最近の増配と今後の方針

LYBは2024年5月に前年同期比7%の増配を発表しました。また、最新の2024年度第4四半期の決算説明会では、経営陣が「長期的にフリーキャッシュフローの70%を株主に還元する」方針を改めて表明し、今後も毎年の増配を継続する自信を示しました。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)のバランスシートの健全性

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYBは投資適格の「BBB」格付けを維持しており、安定した財務基盤を確保しています。第3四半期末時点で、同社は現金および短期投資を38億ドル保有し、利用可能な流動性は80億ドルに達しています。また、ネット有利子負債/調整後EBITDA比率は1.9倍となっており、長期的な成長分野への投資を進める上で十分な流動性を確保しています。

さらに、2013年以来、LYBは発行済株式数を45.8%削減し、230億ドルを株主に還元してきました。2024年度には1億9500万ドル分の自社株を買い戻しており、現在の自社株買いプログラムの下で約3000万株の買い戻し枠が残されています。

(出所:YCharts)

そして、LYBは2024年度に19億ドルを配当と自社株買いを通じて株主に還元しました。これにより、同社のフリーキャッシュフローの予測可能性が高いこと、そして経営陣が利益を株主と積極的に共有する姿勢を示していることがわかります。

(出所:YCharts)

「長期的には、営業キャッシュフローから設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローの70%を株主還元に充てることを目標としています。」

(出所:ライオンデルバセル・インダストリーズの最新の決算報告)

また、発行済株式数の大幅な削減は、インカム投資家にとって好材料となります。発行済株式数が減少すれば、既存のフリーキャッシュフローがより少ない株主に分配されることになり、今後の増配余地が自然と拡大することが期待されます。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)の現在のバリュエーション

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYBはS&P 500の構成銘柄であり、現在の予想PERは8.5倍です。これは、同業種の中央値である19倍と比較して大幅に割安な水準です。また、S&P 500全体およびS&P 500工業セクターの予想PERが21倍超で取引されていることを考えると、LYBは非常に割安な評価を受けているといえます。

また、資本収益率(ROCE:Return on Capital Employed)は、企業がどれだけ効率的に資本を活用して利益を生み出しているかを測る指標です。ROCEは営業利益(EBIT)を使用資本(総資産から流動負債を差し引いた値)で割ることで算出されます。

そして、LYBのROCEは10.6%であり、本質的に景気循環の影響を受けやすい石油化学・特殊化学業界の中では上位水準に位置しています。これは、同社が競合他社と比較して資本を効率的に活用していることを示しています。

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYB)に対する結論

ライオンデルバセル・インダストリーズ(LYBは割安に評価されている特殊化学メーカーであり、予想配当利回りは過去最高水準に近い水準にあります。同社の戦略的な事業売却やレガシー資産の見直しにより、2025年および2026年の売上は減少する見込みですが、利益率の改善が期待されています。

さらに、同社は成長分野への慎重な投資を継続しながら、増配や自社株買いを支える方針を維持すると考えられます。

以上より、同社の堅固な財務基盤、強力な流動性、そして安定したフリーキャッシュフローは、今後も株主還元を支える要因となると見ています。


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