中立アサナ【テクノロジー】アサナ(ASAN)突然のCEO辞任と成長見通しの悪化は懸念材料?

- 本稿では、注目の米国テクノロジー銘柄であるアサナ(ASAN)の2025年3月10日に発表された最新の2025年第4四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 私の当初の投資判断は共同創業者の支援と業績の立て直しに基づいていましたが、市場環境の弱さに加え、突然のCEO辞任と外部からの後任起用は警戒すべき要因であることから、この度、同社をポートフォリオから除外することとしました。
- 同社のバリュエーションが予想フリーキャッシュフローの74倍に達している現在、特にAI関連の消費動向が不透明な中では、当初想定していたリスクとリターンのバランスが取れなくなっていると考えています。
- 投資においては、前提が変わったタイミングを見極めることが重要であり、同社の事業基盤が悪化している状況では、資本を現金で確保するのが賢明な判断だと考えています。
アサナ(ASAN):最新の2025年第4四半期決算発表を受けてポートフォリオからの除外を決定
アサナ(ASAN)は3月10日に2025年度第4四半期(暦年:2024年第4四半期)決算を発表しました。
私の同社に対する投資判断は、事業の立て直しが進んでおり、共同創業者の支援を受けられるという前提に基づいていました。共同創業者には十分な資金力があり、どんな手段を使ってでも自社を救おうとする意思があると考えていました。以下は、2024年12月9日に執筆した同社に関する分析レポートにおいて、私が述べた内容です(詳細は下記のレポートをご覧ください)。
「アサナ(ASAN)をフォローしている人なら、この企業の強気シナリオが、バランスシート上に多額のキャッシュを保有している点に支えられていることをご存じでしょう。」
「同社は約4億1,000万ドルの純現金ポジションを持ち、さらに、どんな犠牲を払ってでも会社を支える意欲を持つ資金力のある創業者がいるため、財務基盤は非常に堅固だと考えています。」
しかしながら、昨日、CEO兼共同創業者であるダスティン・モスコヴィッツ氏がアサナを見限るというニュースが報じられ、私は完全に驚きました。
このような事態が起こるとは全く予想しておらず、むしろモスコヴィッツ氏のリーダーシップのもとで同社が立ち直りつつあるように見えていました。
さらに悪いことに、モスコヴィッツ氏は社内の優秀な人材に経営を引き継ぐのではなく、外部から後任を迎えようとしています。これは非常に悪い兆候であると考えています。
簡単な選択肢としては、「市場が過剰に反応している」「マーケットは間違っている」と言うことかもしれません。
そして、同社への投資において敗北を認めるのは非常に苦い決断です。特に、現在の市場環境がこれほど弱い中で売却するのは本意ではありません。しかし、私はこの事業を弱気相場の中で売却せざるを得ないと考えています。本来ならこのような形での売却は絶対に避けるべきですが、強気の根拠を失った以上、選択の余地はないと考えています。
これまでの経験から、早い段階で決断を下すか、それとも保有し続けた結果、株価がさらに50%下落し、私の想定をはるかに超えて売り込まれるのを見届けるかのどちらかであることを理解しています。そのため、今できるだけ資本を守り、現金で確保するほうが、市場に資本をすべて奪われるよりはるかに良い選択だと判断しました。
アサナ(ASAN)とは?
アサナ(ASAN)は、チームが業務をより効率的に整理・管理できるようにするツールです。企業向けの強化版To-Doリストのようなもので、チームがプロジェクトを追跡し、タスクを割り当てることができます。
同社はワークマネジメントツールとして、AIを活用して繰り返し業務の自動化を進めようとしています。しかし、ここでの重要な問題は、AI関連の消費パターンが依然として予測しにくい点です。
これは、同社に対する強気の見方がうまく機能しなかったもう一つの重要な理由でもあります。
アサナ(ASAN)の売上高:2026年度の売上高成長率は前年比10%
アサナの売上高成長率(%)
(出所:筆者作成)
2025年1月22日の同社に関する分析レポートにおいて、私は次のように述べました(詳細は下記のレポートをご覧ください)。
「2026年度を見据えると、前年比の比較がかなり容易になるため、同社が少なくとも12%の収益成長を達成できると見ています。実際には、12%を上回り、場合によっては14%に達する可能性も期待しています。ただし、次の数四半期で状況が明らかになるにつれて、この見通しを上方修正または下方修正する可能性もあるでしょう。」
私は常に、売上成長率の予測をできる限り保守的に見積もるようにしています。そうすることで、もし企業側が私の予測した売上成長率すら達成できないのであれば、何かが根本的に間違っていると判断できるからです。
確かに、新たな経営陣が就任しやすいようにするため、現経営陣がガイダンスのハードルを意図的に下げている可能性もあるとは認識しています。
しかし、それでもなお、創業者の突然の退任、社内からの後任不在、そして長らく成長に苦戦していた事業の現状を考えると、今回の弱気なガイダンスを楽観視するのは難しいと判断しました。
アサナ(ASAN)のバリュエーション:予想フリーキャッシュフローの74倍
アサナ(ASAN)は約4億2000万ドルの純現金を保有しており、売り込み後の時価総額の約15%が現金で構成されています。この金額は十分に堅実であり、当初の強気の投資判断を支える要素となっていました。
そして、私は上述の直近の分析レポートにおいて次のように述べました。
「したがって、今後12か月の間に、同社がフリーキャッシュフロー4,000万ドルに向かう道筋を描くと予想しています。一見すると、予想フリーキャッシュフローの約110倍の価格を支払うのは割安とは言えないことは承知しています。」
「しかし、私がよく理解しているのは、企業が資金を消耗する段階から経済的に持続可能なビジネスへと転換する際には、ポジティブな展開が期待できるということです。」
同社は2026年度において、フリーキャッシュフローが4000万ドルに達する可能性があると考えていました。
2025年度第4四半期ですでに1200万ドルのフリーキャッシュフローを記録しているため、4000万ドルという予測は引き続き妥当だと考えています。
(出所:アサナの2025年度第4四半期決算資料)
さらにこの予測を裏付ける要素として、同社はNon-GAAPベースで少なくとも5%の営業利益を見込んでいることが挙げられます。これは、フリーキャッシュフローマージンもおおよそ5%になると解釈できます。そして、売上高8億ドルの5%は4000万ドルのフリーキャッシュフローに相当するため、私はこの数値を妥当な目安として考えていました。
しかし、問題は、私は当初、今後の数四半期でフリーキャッシュフローマージンがさらに拡大し、それに伴い株価が再評価されると想定していたことです。その前提のもとで、高いフリーキャッシュフロー倍率を許容していました。
アサナ(ASAN)に対する振り返り(Post-Mortem)
振り返ってみれば、すべてが明白です。今回の決算の結果は、あまりにも明らかでした。そもそもアサナ(ASAN)をポートフォリオに追加すべきではなかったのです。しかし、それを言うのは簡単です。
それよりも、私はより難しい道を選び、事前にもっと批判的に見るべきだった点を考えたいと思います。
では、始めます。
市場環境が強いとき、市場はより先を見据え、次の四半期どころか、その先の事業再建までを織り込んでいきます。
一方、市場環境が弱いとき、投資家は次の四半期以上の先を織り込もうとはしません。すべてが「結果を見せてくれ」という姿勢になり、フリーキャッシュフローの改善が明確に示されるまでは、市場は懐疑的なままです。
もう一つの明らかなことですが、それでも重要な気づきとして、私はPEGレシオをもっと重視すべきでした。PEGレシオとは、株価収益率(PER)を成長率で割った指標です。私は株価/フリーキャッシュフロー倍率を使っていますが、基本的には同じ指標です。これを3倍以下に抑えるべきでした。しかし、同社の場合、この値は5倍以上を示していました。
私はこれまでにも、厳しい投資環境を経験してきました。この展開は何度も見てきたものです。市場の熱狂と悲観、その両方を目の当たりにしてきました。皆さんのコメントを読むだけで、市場の雰囲気を感じ取ることができます。そして、今が暗い局面であることは理解しています。
しかし、必ず良い時期は訪れます。ただし、株価が底を打ち、上昇を始めたずっと後にならないと、それを実感することはできません。
市場が極端に振れているとき、大胆な予測をするのは簡単です。市場が熱狂しているとき、それが長く続かないことは明白です。そして、市場が悲観に包まれているとき、それも長くは続かないことは明白です。しかし、市場は時に、投資家の理性よりも長く、その極端な状態にとどまり続けることがあります。
だからこそ、私は常に「画面を見続けるのはやめよう」と言っています。細部ばかりを見ていると、市場全体の大局を見失ってしまうからです。
アサナ(ASAN)に対する結論
アサナ(ASAN)のポートフォリオからの除外を決断するのは容易ではありません。しかし、厳しい時期には厳しい決断が求められます。
共同創業者の支援による事業再建に大きな期待を寄せていましたが、突発的な経営陣の交代、弱気な業績見通し、そして市場が次の四半期以上を見据えようとしない状況を踏まえると、当初の投資判断はもはや成り立たないと判断しました。予想フリーキャッシュフローの74倍に達している現在、当初想定していたリスクとリターンのバランスは崩れています。
私は過去にも同じような状況を経験してきました。事業の基盤が悪化しているにもかかわらず、保有を続けた結果が良い方向に向かったことはほとんどありません。
そのため、反発を期待するのではなく、資本を守るために現金で確保するという選択をしました。投資とは、ストーリーが変わったときにそれを見極めることです。そして、同社に関しては、明らかにそのストーリーが変わってしまいました。
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