【半導体】半導体銘柄の株価下落理由とは?半導体株はいつまで下がるのか?

- 本稿では、「半導体銘柄の株価下落理由とは?」、「半導体株はいつまで下がるのか?」という疑問に答えるべく、足元の米国マクロ経済動向を踏まえた私の見解を詳しく解説していきます。
- 半導体市場は市場の先行指標として機能しやすく、現在の調整局面は景気減速のシグナルと考えられます。特にS&P 500が下落した場合、半導体セクターはより大きな影響を受ける傾向があります。
- 現在の市場は短期的な反発の可能性があるものの、中長期的には「守りの投資戦略」が重要と考えられます。特に景気後退時には、高品質な銘柄へのシフトやレバレッジ管理が重要です。
- 投資アイデアの選択には反省点があるものの、新たな市場環境ではペアトレードや欧州市場など、新たな投資機会が見えてきています。市場の変化を慎重に見極めることが求められます。
※「【マクロ経済】米国の景気後退(リセッション)理由とは?関税を通じた米国の貿易赤字解消政策は米国と欧州の立場を逆転?」の続き
前章では、「米国の景気後退(リセッション)理由とは?」という疑問に答えるべく、足元で展開されているトランプ政権による関税政策や米国10年物国債利回りを重視する政策が米国経済と米国株式市場に与え得る影響を詳しく解説しております。
そして、前章で解説した米国マクロ経済の状況を踏まえ、本稿では私の専門分野である米国を中心とした半導体市場の今後の見通しと注目銘柄を詳しく解説していきます。
そのため、本稿の内容への理解をより深めるために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上にて前章も併せてご覧ください。
米国株式市場と半導体市場の動向
ここからは、私が愛してやまない半導体市場について話します。いくつかの考察を述べたいと思いますが、なかには有料級の内容も含まれるかもしれません。まず、市場の天井圏の動きは、これまでの市場の下落局面と非常によく似ています。「半導体が市場の先行指標となる」という古くからの格言がありますが、私の観察する限り、これは確かに当てはまっていると考えています。
以下のチャートが示すように、半導体の相対的な上昇トレンドが止まると、その後の数か月間で市場は大きな調整を迎えることが多いです。
(出所:Koyfin)
ただし、半導体業界は景気循環の影響を受けやすいセクターです。すでに一定の調整局面に入っていますが、仮にS&P 500が10%の下落を記録した場合、半導体セクターは20%の下落を経験することが一般的です。場合によっては20%ではなく、40%の下落となることもあります。現在の市場が示しているのは、経済の健全性が低下しているというシグナルであり、これは半導体企業の受注状況や将来の売上成長率に直結する先行指標となります。
では、今回の下落はどの程度の規模になるのでしょうか? 先ほど10%の調整が見られましたが、これは過去のデータと一致しています。ただし、市場の調整は通常もう少し時間をかけて進行し、さらに大きな下落幅となるケースが一般的です。2022年の成長懸念による市場の下落は20%にも達しましたが、今回はそれ以上に深刻な成長懸念が市場を支配しています。したがって、今回の調整局面も最低でも20%の下落に至る可能性が高いと考えています。
米国経済の景気後退は来るのか?
これについては、私の予測の範囲外です。ただ、米国経済の先行きに対する不透明感や貿易の逆風、そして資本の流れが米国の外へ向かっている可能性があることは明らかです。少なくとも、私たちは経済体制の転換期にいるといえます。「調整期間」は単なる市場の調整や経済の縮小にとどまるかもしれません。
さて、ここまで弱気な話を続けてきましたが、実際のところ市場は短期的な回復局面にある可能性が高いと考えています(2025年3月12日時点)。ここ2週間は厳しい展開が続きましたが、市場のボラティリティが非常に高まり、短期的には売られすぎの状態であることは確かです。今後は、「押し目買い(Buy the Dip)」の市場から「戻り売り(Sell the Rip)」の市場へと移行していくと考えています。
特に消費関連株の下落は顕著で、大きな痛みを伴っています。ヘッジファンドなどの投資ポジションの解消が相次ぎ、過度な下落が消費関連の銘柄に集中している状況です。今後の市場の反応は消費者物価指数(CPI)の結果によって変わる可能性がありますが、ウクライナ戦争に関するニュースはややポジティブな材料といえます。
ただし、ここで忘れてはいけないのは、半導体セクターは市場全体と比べて、ボラティリティがはるかに高いという点です。ベータ値(市場全体に対する相対的な変動率)が「2」であることを考えれば、半導体株が市場全体の2倍下落するのは理にかなっています。
(出所:Koyfin)
そして、年明けに執筆した分析レポートにおける私の2025年の見通し(詳細は👇下記のレポートをご覧ください)について、私の考えが正しかったと確信し始めています。
今年は「守りの投資戦略」を取るべき年だと述べてきましたが、今回の10%の調整を見る限り、そのアドバイスはタイミング的にも正しかったように思います。以下が上述のレポートにおける私の見解です。
「少し平凡かもしれませんが、久しぶりに「攻め」よりも「守り」を重視したいと思っています。今の市場全体にはあまり魅力を感じていませんし、2023年や2024年の驚異的なリターンを振り返ると、そろそろ守りを考えるタイミングだと思います。「他人が貪欲なときには恐れるべきだ」という格言があるように、今はあちこちで過剰な欲が目に付きます。」
「ただ、それが「株を売ったり空売りしたりするべきだ」という意味ではありません。リスク許容度に応じた選択をするべきであると考えています。不確実な状況では、適正価格で買える成長銘柄や防御的な投資先をしっかりと見極めるべきであるということです。それでは、具体的に私が注目している半導体関連銘柄を見ていきましょう。」
反省すべき点
私が間違えた点があるとすれば、それは投資アイデアの選択です。エヌビディア(NVDA)、EDA(Electronic Design Automation:電子設計自動化)、IPなどを推奨してきましたが、現時点では完全に正しい判断だったとは言えません。
(出所:Koyfin)
しかし、米国以外の市場において興味深い投資機会を見つけつつあります。ペアトレードの動向をリアルタイムで確認できますが、今後もこの流れが続くと予想しています。例えば、STマイクロエレクトロニクス(STM)とオン・セミコンダクター(ON)は実質的に同じビジネスモデルの企業ですが、資本の流れはSTマイクロエレクトロニクスに有利に働いています。
(出所:Koyfin)
もう一つの例として、シリコン・ラボラトリーズ(SLAB)とノルディック・セミコンダクター(NOD.OL)のペアがあります。ここでは、ユーロ圏への資本流入がリアルタイムで確認できる状況になっています。
(出所:Koyfin)
新たな市場環境への適応
現在、大きく調整した銘柄の中に注目すべきものがあると考えています。過熱したAI関連銘柄や、過去に過剰な利益を生んだセクターを避ける動きは理にかなっています。私たちは今、明確な市場環境の変化(レジームシフト)を経験しています。
この環境では、いくつかの重要なルールが役に立つでしょう。
✅ 景気後退時に高品質な銘柄にシフトすることは、ポートフォリオのリスク調整(デグロッシング)につながる。
✅ 長期的な技術革新は、景気後退時に加速する傾向がある。 例として、2020年以降のCPUの停滞とGPUの急成長が挙げられます。
✅ レバレッジ(借入)には注意が必要。 景気後退期には、レバレッジをかけた取引が破綻することがよくあります。例えば、2018年の「Volmageddon(ボラティリティ暴落)」、原油価格のマイナス転落、シリコンバレー銀行(SIVB)の破綻、円キャリートレードの崩壊などが挙げられます。レバレッジをかけた取引が破綻する瞬間こそ、大きな転換点になることが多いのです。現在、一部のヘッジファンドが崩壊し始めていますが、これが本格的な破綻の引き金になるかはまだ分かりません。
新たな市場環境へようこそ!
これからの相場は従来のルールが通用しない可能性があります。正直なところ、今は「待つ」ことが賢明な戦略だと考えています。短期的には反発のタイミングが近いと思いますが、焦らず慎重に市場を見極めていきましょう!
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
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