【マクロ経済】AAII(全米個人投資家協会)とは?調査史上初、4週連続で55%超えの弱気(ベア)派の割合は米国株反転のサイン?

- 本稿では、「AAII(全米個人投資家協会)とは?」という基礎的な内容から、「調査史上初、4週連続で55%超えの弱気(ベア)派の割合」が示唆するポイントに加え、足元の米国経済指標の詳細な分析を通じて、米国株式市場の今後の見通しを詳しく解説していきます。
- 市場は調整局面の終盤にあると見られ、極端な弱気心理やインフレ率の鈍化などが今後の反発を示唆しているように見えます。
- 景気後退は予想されておらず、経済指標や変化率データからも成長は続いており、5月のFOMCでの利下げ再開の可能性も高まっていると見ています。
- トランプ政権の政策不透明感などにより一時的な混乱はあるものの、年後半には株価が再び上昇基調に転じると考えています。
AAII(全米個人投資家協会)が米国株式市場に示唆することとは?
私は変化率に注目することで、強気の姿勢を維持しています。 S&P500指数の4週連続の下落は金曜日の午後に終了し、株価は引けにかけて上昇しました。私は、これによって過去1カ月にわたる市場の急な調整も終わったと考えています。
今回の下落は、通常の調整よりもはるかに深刻でした。というのも、過去2年間の市場の上昇をけん引してきた「マグニフィセント・セブン(Magnificent 7)」銘柄が軒並み弱気相場に突入し、およそ20%下落した一方で、より内需志向の強いラッセル2000指数も昨年11月の高値から約18%下落したためです。今年初めに見られた投資家の楽観ムードは、今や恐怖と悲観に取って代わられつつあります。
しかし、いわゆるソフトデータである調査結果の悪化は、ハードデータや実体経済に同程度の悪影響を与えているわけではありません。
(出所:Edward Jones)
それでも、投資家心理へのダメージは極めて大きく、景気後退が迫っているのではないかという懸念が高まり、弱い経済指標がその不安をあおっています。とはいえ、私の見通しでは景気後退は予想していません。なぜなら、データ上はそうなっていないからです。むしろ、データは依然として景気循環の中盤における減速を示していると考えています。そしてそれこそが、過去2年間にわたるFRBの金融引き締め政策の狙いでもありました。
利上げの影響は依然として成長の重しとなっており、一方で、過去6カ月間に行われた利下げはようやくその効果が出始めた段階です。たしかに、トランプ政権下での緊縮財政や通商政策は、景気減速に対する追加的な逆風となっていますが、それらは一時的なものであり、投資家が現在想定しているほど深刻なものではない可能性が高いと見ています。
(出所:Edward Jones)
変化率に注目することが、過去3年間にわたって私のマクロ経済見通しを正しい方向に導いてきたと考えています。そして、現在も変化率は景気拡大の継続を示しており、それは弱気相場ではなく、市場の調整局面が続くことを示唆しています。
現在、最も重要な変化率はインフレ率であると見ています。私は2年以上にわたって「ディスインフレーション(インフレ率の鈍化)」について一貫して主張してきましたが、数カ月間の進展の乏しい時期を経て、ようやく最終局面に差しかかっているように見えます。クリーブランド連銀のリアルタイム・インフレ予測によると、CPIやPCEを含む4つの指標すべてが初めて3%未満の予測となっています。3月のPCE総合指数はFRBの目標である2%に達しており、コア指数もわずか2.5%です。これにより、5月のFOMC会合で利下げが再開される道筋が整いつつあると考えられます。
ただし、関税の影響により、この進展が一時的に妨げられる可能性もあります。しかし、パウエル議長は先週、関税を基調トレンドを覆すものではなく、一時的な要因として見ていると述べています。その政策の詳細が判明するまで、どの程度の混乱を招くかは判断できません。
(出所:Cleveland Fed)
一方で、経済成長率の変化は、現時点では引き続き安定しているように見えます。カンファレンス・ボードが発表する景気先行指数(LEI)は2月に再び低下しましたが、その主因は投資家心理の悪化です。ただし、直近6カ月間の変化率は、前の6カ月間と比べて半分以下の下落率にとどまっています。これは、カンファレンス・ボードのエコノミストたちが2025年の経済成長率を2%と見込んでいることと整合的で、ポジティブなサインです。
(出所:The Conference Board)
そして、今が弱気相場の途中ではなく、調整局面の終盤であると私が考えるもう一つの根拠は、極めて悲観的な市場心理です。AAII(全米個人投資家協会:American Association of Individual Investors)の調査によると、弱気(ベア)と答えた投資家の割合が、調査史上初めて4週連続で55%を超えました。
(出所:AAII)
AAIIとは、1978年に設立された米国の非営利団体で、主に個人投資家を対象に活動しています。AAIIの目的は、個人投資家がより自立した投資判断を行えるよう支援することにあり、そのために教育プログラムや投資関連情報、調査データなどを提供しています。具体的には、株式やファンドの分析ツール、ポートフォリオ構築のためのガイドライン、ニュースレターやオンラインセミナーなどを通じて、投資に関する知識を深める機会を提供しています。また、同協会が毎週実施している「個人投資家センチメント調査」は、米国市場の投資家心理を把握する上で重要な指標の一つとして、広く活用されています。
私は最近、AAIIが実施している週間調査において、弱気の水準が過去最高に近づいていることを共有しました。これほどの弱気水準は、直近では2022年9月の弱気相場終了直前以来見られていません。それ以前では、2009年と1990年に同様の水準が観測されています。 SentimenTraderが算出したデータで注目すべき点は、このような極端な弱気水準が観測された際、S&P500指数はその後2カ月、3カ月、6カ月、12カ月のすべての期間において、2022年の3カ月後を除き、100%の確率で大きく上昇しているということです。これが、極端に弱気な数値が信頼性の高い逆張り指標とみなされる理由です。
(出所:SentimenTrader)
私は、極端に低い投資家・消費者心理と、私が追跡している高頻度の経済データにおける依然としてポジティブな変化率とを組み合わせて考えることで、ある一つの結論に至りました。それは、私たちはちょうど、過度な投機を健全に洗い流すような市場の調整局面を終えたばかりであるということです。こうした投機は、強気相場が続く中で徐々に積み上がっていくものです。
今後、トランプ政権の政策枠組みに関する詳細が明らかになるにつれ、不透明感によって、主要な株価指数は年後半まで狭いレンジ内での推移が続く可能性があります。それでも私は、セクター間の循環的な資金移動によって、過去1カ月間の下落分は回復し、2025年末までに2月の高値に再び挑戦する展開になると予想しています。
今週の米国経済カレンダー
今週は経済指標の発表が非常に多い週です。週のスタートには、私が特に注目している指標の一つである、S&Pグローバルによる3月の速報PMI(購買担当者景気指数)が発表され、週の終わりには2月の個人消費支出(PCE)価格指数の発表が予定されています。
(出所:MarketWatch)
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📍米国マクロ経済担当
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