04/10/2025

米国IPO(新規上場株式)市場の今後の見通し:Stripeの様な大手スケールアップ企業の多くは依然として非公開を維持!

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  • 本稿では、米国IPO(新規上場株式)市場の現状と今後の見通しを詳しく解説していきます。
  • 2022年以降の資金調達の逼迫により、中規模のスケールアップ企業はこれまでより早期にIPOを実施する傾向が強まり、その結果、より多くのリターンがパブリック投資家に分配されるようになっています。この傾向が続けば、Snykのような企業が多くの予想よりも早くIPOに踏み切る可能性があります。
  • 一方で、StripeやSpaceXのようなトップクラスのスケールアップ企業の多くは依然として非公開のままであり、構造化されたセカンダリーマーケットを活用することで、IPOに伴う厳しい監視を回避し、経営の主導権を維持しています。
  • パブリック投資家にとっては、過去よりも好条件での参入機会が得られる可能性があるものの、企業がより運営の規律を重視する方向にシフトしているため、かつてのような爆発的なマルチバガーリターンは得にくくなっていると言えます。

米国IPO(新規上場株式)市場の現状:非上場期間の長期化とパブリック市場における投資機会の減少

パブリック市場(証券取引所等の公開市場)とプライベート市場の両方をカバーするクロスオーバーアナリストとして、私達は最近、非常に顕著なトレンドについて考えさせられています。それは、成功しているスタートアップ、現在では「スケールアップ」とも呼ばれる企業が、これまでよりも長期間にわたって非上場のままでいるという傾向です。この変化は投資環境に大きな影響を及ぼしており、パブリック投資家とプライベート投資家の双方にとって重要な意味を持ちます。

パブリック投資家:投資対象の質・量ともに縮小

パブリック投資家にとって、投資可能な銘柄の数は質・量ともに縮小しています。1990年代後半には8,000社を超えていた上場企業数は、2023年半ばにはわずか3,700社にまで減少しました。この限られた企業群の中で、際立った投資機会となっているのは「マグニフィセント・セブン(Magnificent 7)」、すなわちアップル、マイクロソフト(MSFT)、グーグル(GOOG)、アマゾン(AMZN)、メタ・プラットフォームズ(META)、テスラ(TSLA)、そしてエヌビディア(NVDA)です。これらの巨大企業は、現代のベンチャーキャピタル(VC)エコシステムが形成される以前、企業ライフサイクルの初期段階で上場しました。

一方、現在のVCエコシステムは飛躍的に成長しており、Stripe、Databricks、CanvaといったトップクラスのスタートアップがIPOを先送りすることを可能にしています。その結果、これら企業の成長ポテンシャルはパブリック投資家の手の届かないところにあるのです。そして仮に上場したとしても、その時点ではすでに企業価値の多くはプライベート投資家によって享受されており、パブリック株主に残されるリターンは限定的なものになりがちです。

プライベート投資家にとっての黄金期、そしてバブルへ

プライベート投資家、特にグロースステージのベンチャーキャピタル(VC)にとって、非上場期間の長期化というトレンドは、2000年代初頭から2022年にかけて、極めて大きな追い風となってきました。成熟したスタートアップ企業に投資し、その非上場期間をさらに延ばすことで、評価額は上昇を続け、低リスクかつ高リターンな投資戦略が成立していました。

しかしウォール街がよくやるように、「うまくいっていたこと」が過剰に押し進められました。特に2020年から2022年にかけて、後期グロースVCファンドの過去の目覚ましい成果を受けて、大量の資金がこのアセットクラスに流入しました。質の高い投資先が限られている中で、評価額は持続不可能な水準にまで急騰し、結果的にリターンがゼロ、あるいはマイナスになるリスクを孕む状況が生まれました。

そんな中、StripeはDatabricksやCanvaといった同業とともに、しっかりと耐え抜いた例外的な存在として際立っています。多くのグロース系テック企業が90%以上の下落を経験したり、Boltのように完全に崩壊したりするなか、こうした優良企業(BoB=ベスト・オブ・ブリード)は最大下落率を約50%に抑え、その後は徐々に回復しています。

現在の分岐点:次なる注目銘柄とは?

現在、私たちは極めて重要な転換点に立っています。「マグニフィセント・セブン(MAG 7)」の10年に及ぶ強気相場は、そろそろ息切れの兆しを見せており、次の主役をパブリック市場で見つけるのは容易ではありません。パランティア・テクノロジーズ(PLTR)、パロアルトネットワークス(PANW)、フォーティネット(FTNT)、あるいはマンデードットコム(MNDY)がその候補になり得るかもしれません。しかし、質の高い上場テック株の数が着実に減少しているのは紛れもない事実です。

一方で、RipplingやSpaceXといった有望企業は依然として非上場のままであり、パブリック投資家にとっては手が届かない存在となっています。さらに、サイバーセキュリティ分野に関心を持つ多くのパブリック投資家にとって残念なことに、有望株であったWizは最近、Googleによる買収に合意しており(FTCの承認が前提)、また一つ将来の投資機会が失われようとしています。

このような状況はパブリック市場のリターンを圧迫し、次なる「大当たり銘柄」を探す難易度を高めています。Stripeなどに象徴される「非上場期間の長期化」というトレンドは今後も続く可能性があり、パブリック市場における一級の投資機会をさらに枯渇させることになりかねません。その結果、アナリストも投資家も「次に来るのは何か?」という問いを抱え続けることになるのです。

近年の変化とその影響

近年、ベンチャーキャピタル(VC)およびスタートアップの業界は、投資家の行動の変化、経済の構造変化、そして成長やスケールを追求する最適な道筋に関する議論によって、大きな変化を遂げています。こうしたトレンドは、スタートアップ、投資家、さらにはより広範な起業家エコシステムにまで広く影響を及ぼしています。以下のセクションでは、上場を控えたスタートアップへのパブリック投資家の関心の高まり、グロース志向のVC企業の衰退、非上場維持と上場の是非をめぐる継続的な議論、そして2022年以降にスケールアップ企業が直面している課題と、それがIPO戦略の見直しにつながった背景について掘り下げていきます。

上場前のスタートアップへの関心を高めるパブリック投資家たち

近年最も注目すべきトレンドの一つが、特にインデックスファンドの運用者を中心としたパブリック投資家による、後期スタートアップへの関心の高まりです。Fidelity、Blackrock、T. Rowe Priceといった、従来は主に上場株式に焦点を当てていた企業が、上場前のスタートアップに積極的な投資を始めています。この変化は重要な意味を持ちます。というのも、これまでベンチャーキャピタルの専売特許だった後期スタートアップへの投資が、機関投資家にとっても高リターンを期待できる領域として認識され始めたことを示しているからです。

これらの投資家は、企業が上場する前の成長を取り込もうとする意図を持っており、従来のVCとは異なり、大規模な資金を迅速に投じる傾向があります。そのため、徹底したデューデリジェンスを行う伝統的なVCの手法とは異なるアプローチが取られています。

このトレンドは、スタートアップ投資へのアクセスをより広く一般に開放しようという議論にもつながっています。米証券取引委員会(SEC)は、認定投資家の条件を緩和するなどして、より多くの投資家がこうした機会に参加できるよう、投資要件の見直しを検討しています。もしこれが実現すれば、スタートアップ・エコシステムに新たな資金が流入し、投資家層の多様化が進むことで、全体の流動性が高まる可能性があります。

しかし一方で、こうした措置によって、経験の浅い投資家がスタートアップ投資に内在する高いボラティリティや不確実性にさらされるリスクも懸念されています。後期スタートアップは初期段階の企業よりも成熟しているとはいえ、市場変動や事業運営上の課題、さらには過剰評価のリスクなど、多くの不確実性を抱えています。より多くの人々に投資機会を提供したいという意図と、投資家を保護する必要性とのバランスをどう取るかが、今後の重要な課題となります。

なお、トランプ前政権の1期目においても、リテール投資家にプライベート市場へのアクセスを広げる方策が検討されており、規制緩和を重視する姿勢から見て、仮にトランプ政権が復活すれば、この方向性はさらに推進される可能性が高いと考えられます。

グロース志向のベンチャーキャピタル企業の衰退

2022年以降、Tiger Globalやソフトバンクといったグロース志向のベンチャーキャピタル(VC)企業の衰退により、VC業界全体の構造が大きく揺らいでいます。これらの企業はかつて、高成長スタートアップへの積極的な投資姿勢によって称賛されており、利益よりも急速な事業拡大を優先する姿勢が特徴でした。しかし、近年の投資パフォーマンスの低下とリスクの増大により、これらのVC企業は深刻な課題に直面しており、その影響はVC業界全体に波及しています。この低迷は、経済の減速、金利の上昇、そして投資家の間で投機的な高成長投資からの回避といった複数の要因が重なって生じています。

長年にわたり、グロース志向のVCは「成長第一主義(growth at all costs)」のモデルに基づいて成功を収めてきました。これは、短期的な赤字を厭わずにスタートアップへ多額の資金を提供し、急成長を促すというものでした。この手法は、低金利環境において資金調達が容易であり、高い成長率が最終的にはM&AやIPOといった形で大きなリターンにつながるという前提に基づいていました。

しかし、市場環境が引き締まり、資金調達が困難になる中で、多くのポートフォリオ企業が成長の維持に苦しむようになり、結果として評価額の引き下げや投資家の損失が相次ぐこととなりました。こうした著名VCの衰退は、投資家とスタートアップの双方に、これまでの戦略を見直し、持続可能なビジネスモデルや収益性を重視する方向への転換を促しています。

同時に、この現象は、安価な資金への過度な依存が持つリスクや、事業運営における規律の重要性を浮き彫りにしています。そして、スタートアップの成長軌道や出口戦略(エグジット)のタイミングに関して、従来の常識に再考を迫るものとなっています。

議論:非上場を維持すべきか、それとも上場すべきか

2022年以前、スタートアップ企業やVC投資家の間では、「できる限り長く非上場を維持すること」が一般的な常識となっていました。この戦略は、パブリック市場が四半期ごとの業績に過度に注目し、短期的な成果を優先するよう企業に圧力をかける傾向があるという認識に基づいています。特にテクノロジー系スタートアップにとっては、初期段階で多額の投資が必要となる先進的な技術を追求することが、短期的な業績に重きを置くパブリック市場の性質と相容れないと懸念されていました。

スタートアップが初期に経験する収益性の低下、いわゆる「Jカーブ」は、四半期ごとの目標を達成することを強いられるパブリック市場にとっては忍耐が必要なものであり、その焦りが研究開発や長期戦略への投資を縮小させる結果になり得るという懸念がありました。また、パブリック市場は、破壊的イノベーションの可能性を理解できない存在として「悪」と見なされることも多く、先見性のある創業者のビジョンに懐疑的な賭けを行う市場だとされてきました。

しかしながら、Benchmark Capitalのように、以前からより早期のIPOを支持してきた少数派のVC投資家も存在します。彼らは、上場によって企業に求められる説明責任や業務の厳格化、透明性の向上といった「規律」が、スケールアップ企業にとって価値あるものになると主張しています。パブリック企業は、より厳しい監視の目にさらされることで非効率な点が明らかになり、より健全なガバナンスが促進されると考えられています。

例えばマーク・ザッカーバーグ氏は、メタ・プラットフォームズ(旧Facebook)をもっと早く上場すべきだったと後悔していることを公言しており、パブリック市場からのフィードバックが同社の成功にとって非常に重要だったと述べています。このような考え方は、パブリック市場が要求する厳しさが、スタートアップに成熟と持続的な成長を促す「推進力」となり得ることを示唆しています。

この議論は、長期的なビジョンを守るべきだという立場と、パブリック市場の持つ規律を受け入れるべきだという立場の間で揺れ動いており、どちらにも説得力のある主張が存在しています。

2022年以降にスケールアップ企業が直面している課題

2022年以降、多くのスケールアップ企業は、企業価値の下落や流動性危機といった深刻な逆風に直面しています。これらの企業のセカンダリーマーケットにおける評価額は急激に下落し、スタートアップ・エコシステムの脆弱性を露呈させる負の連鎖を引き起こしました。評価額の下落はVCの投資パフォーマンスを悪化させ、リターンが目減りすることで、LP(リミテッド・パートナー)による資金引き上げが発生しました。その結果、VCの運用資金が減少し、新規投資の抑制につながり、スタートアップ側の流動性問題がさらに悪化するという悪循環が生まれました。

このような環境の中、スタートアップはフォローオンラウンド(追加資金調達)を行うのが難しくなり、それがさらなる企業価値の下落を招いています。特に、外部からの資金に大きく依存して成長してきた企業にとっては、この悪循環から抜け出す選択肢が限られており、回復が困難な状況に陥っています。

このような困難に拍車をかけているのが、事業のファンダメンタルズ(基礎的指標)の弱体化です。経済の減速と資金調達環境の悪化により、スケールアップ企業は、これまでのような高成長を維持することが困難になっています。2022年以前の時代においては、プライベート投資家が「成長最優先(growth at all costs)」を容認し、スタートアップに潤沢な資金を提供することで、急速なスケーリングが可能となっていました。

しかしその結果、多くのスタートアップが持続可能な事業運営よりも拡大を優先し、非効率的な支出が横行する状況となっていました。資金調達環境が厳しくなると、それまで膨らんでいたコスト構造を維持するのが難しくなり、成長も鈍化し、多くのスケールアップ企業が厳しい経営見直しを迫られることになりました。営業費用は依然として高水準で推移する一方で、売上成長率は鈍化しており、その結果、企業は突如として「利益重視」への転換を求められるようになりました。多くのスタートアップにとっては、これまでの成長重視から収益性重視へのシフトは、戦略上の劇的な転換を意味しています。

米国IPO(新規上場)市場の今後の見通し:IPOという道の再評価

2022年以降の環境変化により、多くのスケールアップ企業が、上場することのメリットを改めて見直すようになっています。以前は、パブリック市場の短期志向を避けるために「非上場を維持すること」が共通認識とされていましたが、事業の基盤が弱まり、資金調達環境も悪化したことにより、その判断基準が変わりつつあります。

ベンチャー市場全体で流動性が枯渇する中、多くのVCは新たな資金を集めることに苦しみ、成長性の高いスタートアップでさえも資金繰りに奔走する状況となりました。このような新しい環境下では、大規模なプライベートラウンドでの資金調達がますます困難となり、多くの後期スタートアップが、祝賀の手段というよりも「生き残るための手段」として、IPOのタイムラインを前倒しするようになっています。かつては「重荷」と見なされていたパブリック市場が、今では「命綱」として再評価されているのです。

上場することで、より深い資本プールへのアクセス、流動性の向上、市場から課される規律などが得られます。これらの要素は、現在のような厳しい経営環境を乗り越えようとする企業にとって、以前にも増して魅力的に映っています。なかには、パブリック市場における説明責任が、業務改善や効率性の向上、さらには長期的なレジリエンス(回復力)を促す契機になると捉えるスケールアップ企業も出てきています。

このような変化は、行き過ぎた拡大よりも「持続可能な成長」こそが長期的な成功の鍵であるという認識が広がりつつあることを示しています。

重要なのは、この力学の変化が、プライベート市場とパブリック市場の参加者の間で価値の再分配を引き起こしている点です。2022年以前の時代には、IPOは成長曲線の後半に行われることが多く、そのリターンの大部分をベンチャー投資家が獲得していました。しかし現在は、スタートアップが資金調達の必要性からより早い段階で上場を選択するようになっており、パブリック投資家が企業価値創出のプロセスに、より早い段階からアクセスできる可能性が出てきています。

とはいえ、この新しいIPOの波が、勤勉な投資家にとって魅力的なエントリーポイントを生み出す一方で、投資機会の性質そのものが変化しつつある点には注意が必要です。かつてのように、IPO後に爆発的な成長を遂げた破壊的イノベーターとは異なり、現在のIPO候補企業はより成熟しており、成長率はやや緩やかですが、収益性や効率性への注力が強くなっています。

パブリック投資家にとっては、マルチバガー(何倍ものリターン)となるようなケースは以前よりも稀になるかもしれませんが、それでも十分に魅力的な超過リターンを得られる余地は残されているでしょう。特に、資金を大量消費する成長フェーズから、運営の規律を重視する段階へと成功裏に移行している企業を見極められる投資家にとっては、ボラティリティが低く、下落幅も小さい中で安定的な成果が期待できます。

IPO市場が今後、デカコーン(時価総額100億ドル超の企業)を次々と輩出する場ではなくなるかもしれませんが、それでも、見るべき場所を知っている投資家にとっては、依然として価値ある機会を提供してくれる場であることに変わりはないでしょう。

現在の米国IPO(新規上場)の状況はどうなっているのか?

2025年時点においても、多くのスケールアップ企業は依然としてパブリック市場への移行を果たしていません。IPOにはさまざまな利点があるにもかかわらず、この慎重な姿勢は根強く残っています。

非上場を維持するかどうかの判断は、スケールアップ企業の種類によって異なり、ブランド認知度、流動性の必要性、競争環境といったさまざまな要因に左右されます。一部の有力スケールアップ企業は上場せずとも成功を収めていますが、他方で、上場が戦略的に有効となり得る課題に直面している企業も存在しています。

有力スケールアップ企業:上場せずに従業員の流動性ニーズに対応する方法

SpaceXやByteDanceのように、通称BoB(Best of Breed)と呼ばれる最も有力なスケールアップ企業にとって、パブリック市場は現時点ではあまり魅力的な存在ではありません。これらの企業は投資家の間で高いブランド認知を誇り、高評価を維持しながら、強固な株主基盤を築いています。セカンダリーマーケットが十分な流動性を提供しており、IPOを行わなくても、投資家が保有比率を増減することが可能です。

また、多くのこれらのスケールアップ企業はキャッシュリッチであり、安定した収益源と効率的なオペレーションを持っていることから、近い将来にはフリーキャッシュフロー(FCF)の黒字化が見込まれています。

追加の資金が必要になった場合でも、こうしたトップティア企業が資金調達に苦労することはほとんどありません。VCはこれらの企業への投資をさらに拡大したいと考えており、資金は継続的に流れ込んでいます。

しかしながら、依然として課題が一つ残っています。それは、ストックオプションの権利行使期限が近づいている従業員に対して、どのように流動性を確保するかという点です。ストックオプションを行使すると、たとえ株式を売却せずに保有し続ける場合でも、権利行使価格と現在の公正市場価格の差額に対して課税が発生します。この税金を支払うために、従業員は通常、自身の保有株式の一部を売却する必要があります。

これまでは、企業が上場するまでは株式を売却することが困難であったため、従業員の流動性確保を目的にIPOを求める声が強まる要因となっていました。しかし現在では、SpaceXやByteDanceのような有力スケールアップ企業が、従業員の流動性ニーズに対応するために、構造化されたセカンダリーマーケットを整備しています。これにより、年1回または年2回の流動性イベントを実施し、従業員がオプションを行使し、一部の株式を売却して税金を支払い、残りを将来的な値上がり益のために保持することが可能となっています。

このようなアプローチにより、従業員は上場せずとも十分な流動性を得ることができるため、社内におけるIPOへの圧力は大きく軽減されています。

中堅クラスのスケールアップ企業:流動性の課題に直面する企業たち

すべてのスケールアップ企業が、BoB(Best of Breed)と呼ばれる有力企業のような知名度や資金力を持っているわけではありません。たとえば、DatabricksやStripeといった企業は、一部の投資家の間では高い評価を得ているものの、SpaceXやByteDanceのような広範な知名度を持っているわけではありません。

これらの企業が創業から10年を迎えようとする中、彼らはある重大な課題に直面しています。それは、初期に入社した従業員に対して流動性をどのように提供するかという問題です。これらの従業員は、ストックオプションの権利行使期限が近づく中、企業の成長によって株式の価値が1000倍以上に膨れ上がっているケースもありますが、それに伴って発生するキャピタルゲイン課税に対応するための現金を個人で十分に保有していないことが多いのです。

このような流動性ギャップを埋めるために、こうしたスケールアップ企業はしばしば、50億ドルを超える規模の大規模資金調達ラウンドを実施します。これらの資金は、単に事業拡大のためだけでなく、株式価値が大幅に上昇した長期在籍の従業員の財務的ニーズに対応するためにも不可欠なものとなっています。

上場の意義:新たな機会を開くという選択肢

非上場を維持する理由がある一方で、多くのスケールアップ企業にとって、上場は有益であるという説得力のある主張も存在します。実際、多くの企業はすでに「準パブリック」的な存在となっています。直近の資金調達ラウンドには、BlackrockやFidelityといった大手の機関投資家が参加しており、これによりパブリック市場並みの監視体制が敷かれています。そのため、上場に伴う変化は必ずしも大規模な転換ではなく、心理的ハードルも以前ほど高くはありません。

株式市場に上場することで、これまでVCなど限られた投資家グループに依存していた企業は、より広範で多様な投資家層との接点を得ることができます。このシフトにより、さまざまな視点からの意見や洞察を得ることができ、それが企業の戦略やオペレーションを洗練させる要因となります。

もちろん、上場には課題も伴います。たとえばパランティア・テクノロジーズ(PLTR)やテスラ(TSLA)は、ビジネスモデルや長期的な目標を理解しきれていない未熟な投資家からの批判にさらされてきました。しかしながら、このようなパブリック市場での厳しい視線にはプラスの側面もあります。パランティア・テクノロジーズやテスラは、自社の独自のビジョンを理解し、支持してくれる忠実で知見のある投資家層を育て上げており、そうした投資家の存在は市場の混乱期にも企業の安定を支え、競争上のポジションを強化する力となっています。

情報の観点から見ても、上場は企業が受け取るフィードバックの量と質を最大化します。広く一般の投資家からの評価を受けることで、市場が自社のパフォーマンスをどう見ているかを把握でき、有益な洞察を取り入れながら、不要なノイズは排除するというプロセスが可能になります。時にノイズのように思える意見が、実は重要なシグナルとなり、プライベートの環境下では見落としていたような修正や対応を促すこともあります。

このようなフィードバックループは、企業の進化を加速させ、非上場のままでは気づかずに通過してしまうようなリスクを回避し、より迅速に市場環境に適応していく助けとなるのです。

次章では、注目の未上場フィンテック企業である「Stripe(ストライプ)のIPO(新規上場)はいつなのか?」という疑問に答えるべく、同社の上場の可能性と抱える課題、並びに、弊社が注目する新規上場可能性のある企業に関して詳しく解説していきます。

※続きは「Stripe(ストライプ)のIPO(新規上場)はいつなのか?注目のフィンテック企業の上場可能性と課題を徹底解説!」をご覧ください。


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