04/12/2025

アメリカが中国に関税をするとどうなる?145%に引き上げられた中国への関税が与え得る米国経済への影響を徹底解説!

a close up of the flag of chinaローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、「アメリカが中国に関税をするとどうなる?」という疑問に答えるべく、足元で145%に引き上げられた中国への関税が与え得る米国経済への影響を詳しく解説していきます。
  • 米国のインフレ指標は改善したものの、トランプ大統領の関税政策への懸念から市場は大きく下落し、ドルも急落するなど不安定な動きが続いています。
  • 現在の高関税政策はインフレを再加速させるリスクがあり、市場はさらなる政策転換を政府に求めている状況です。
  • 米中対立の激化と米国国内の消費者負担の増加により、関税の段階的な撤廃と貿易関係の改善が最も現実的な解決策と考えられます。

アメリカによる中国への関税の影響とは?

一昨日、米国株式市場が開く前に発表されたインフレ報告は、非常に優れた内容でした。通常であれば、こうした報告は米国経済のソフトランディング(軟着陸)を後押しする朗報として受け止められ、株価を押し上げるはずです。しかし実際には、ダウ工業株30種平均が1,000ポイント下落し、S&P500は3.4%安、ナスダック総合指数は4.3%の下落となりました。前日に記録的な上昇を見せていたため、主要株価指数がある程度値を戻すのは驚くことではありませんでしたが、懸念されたのは長期金利の再上昇でした。10年物米国債利回りは4.5%に迫り、ドルは2%近く急落して2024年10月の安値を記録し、金価格は史上最高値を更新しました。これは非常に危険な組み合わせであり、すべてはトランプ大統領の関税に関係しています。

水曜日には、金融市場の圧力により、大統領はそれまでの相互主義的な貿易政策から方向転換を余儀なくされました。このままでは確実に世界経済を景気後退(リセッション)に追い込むところでしたが、今回の転換はなんとか流血を止めるにとどまりました。しかし、昨日の市場の動きを見る限り、市場はさらに踏み込んだ対応を求めていることが明らかです。中国からの輸入品に対する関税を145%に引き上げるという方針は、明らかに間違った方向への一歩です。これは、事実上、両国間の貿易を停止させるも同然です。

ドルの急落は、世界の投資家が米国資産から資金を引き揚げ続けていることを示しています。仮に、こうした関税措置が米国内への投資を促すことを目的としているのであれば、現状ではむしろその逆効果となっているように見えます。

ドル、2022年以来最悪の一日

(出所:Bloomberg)

幸いなことに、私が2年以上にわたって予測してきたソフトランディングの実現は、非常に近づいていると考えています。3月の消費者物価指数(CPI)はすべての指標で予想を上回る改善を示し、総合で2.4%、食品とエネルギーを除いたコア指数でも2.8%まで低下しました。

(出所:TradingEconomics

食品、エネルギー、住宅費、中古車価格を除いた「スーパーコア」インフレ率は、現在1.8%と、非常に穏やかな水準に落ち着いています。この指標は、住宅費の下落が統計に反映されるまでに時間差があるという算出方法の特性から、FRB(連邦準備制度理事会)によって特に重視されています。

(出所:TradingEconomics

現在の関税が今後も恒久的に維持されるという前提で考えると、これはディスインフレ傾向の底になる可能性が高いです。というのも、今後数か月間で消費者向けの物価が大きく上昇する見通しだからです。依然として予測は難しいものの、コンセンサスとしては、関税の影響でインフレ率が1〜3%上昇する可能性があると見られています。どの関税が実際に持続するかによって、その影響度は異なります。ただし、唯一の救いは、価格が安定に近づいた段階からインフレが始まるという点です。

市場は、水曜日に見られた以上の大きな方向転換を大統領に迫ることになるでしょう。それが実現すれば、主要株価指数の大きな回復につながるはずです。株式、債券、金、ドルのすべてが「今すぐ方向転換せよ」と叫んでいるような状況です。財務長官のスコット・ベセント氏は、こうした市場のシグナルを読み解く能力に長けており、何も行動しなければ壊滅的な結果を招くことをよく理解しています。実際、彼が最初の方向転換を主導したのは明らかであり、おそらく今まさに次の一手を準備しているところだと私は見ています。

(出所:TradingEconomics

現在の関税率が持続不可能であると考える理由は2つあります。

第一の理由は、今後数週間から数か月の間に、食品を含むあらゆる物品の価格が消費者にとって明確に上昇し始めることです。米国の世帯の多くは、こうした懲罰的な関税のツケを、実質的な売上税のかたちで自分たちが支払うことになるという事実にまだ気づいていません。私は、こうした状況に対する政治的な反発が強まることで、最終的には関税撤廃以外の選択肢がなくなると予想していますが、それが現実になるのは今年の秋頃になるかもしれません。

第二の理由は、中国が引き下がる気配を一切見せていないという点です。大統領による最新の強硬措置に対抗し、中国は一夜にして米国からの輸入品に対する関税を125%に引き上げました。中国は、自国の豊富な経済的手段を背景に、米国以上に長期間この苦境に耐えることができます。加えて、習近平国家主席には政治的な批判を気にする必要がありません。我々が世界中の他の貿易相手国との関係を同時に悪化させていなければ、中国の立場はここまで強くなかったかもしれません。

中国の株式市場は年初から上昇していますが、米国の市場はベアマーケット(弱気相場)入りの瀬戸際です。中国は財政出動によって経済を下支えしていますが、米国は緊縮政策を進めています。さらに中国は、米国債の売却、自国通貨の切り下げ、米国のサービス企業の市場参入の禁止、テスラを含む多くの米国企業が依存しているレアアースの輸出停止など、あらゆる対抗措置を講じることが可能です。

これは、世界最大の二つの経済大国にとって、まったく生産的ではない状況です。そのため、最も現実的な展開は、関税を段階的に引き下げ、貿易を再開するという形での緊張緩和であると考えられます。現在の状況はこれ以上悪化する余地がなく、今後、ニュースの内容が少しでも改善方向に向かえば、市場にとってはポジティブな変化が生まれるはずです。

私は、たとえ経済がソフトランディング(軟着陸)を果たせたとしても、投資家は市場に対する期待値をリセットすべきだと考えています。というのも、すべての輸入品に一律10%の売上税が課されることによって生じるインフレの急上昇が、その軟着陸を途中で妨げるからです。連邦政府の財源に流れ込む数十億ドルは、企業の利益を圧迫し、消費者の財布にも大きな負担となるでしょう。

米国株に不吉な兆し

S&P500が年初から15%以上下落した年に、最終的に年間でプラスで終えることは非常にまれです。

(出所:Bloomberg)


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