05/06/2025

恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)は大幅上昇で市場の楽観は行き過ぎ?

a close up of a clock with different colored numbersローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、足元で大幅に改善する「恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)」が表す市場におけるセンチメントと今後の米国株見通しを詳しく解説していきます。
  • 米国株式市場はトランプ政権の貿易合意発言を受けて上昇してきましたが、関税政策の拡大が投資家心理を悪化させ、市場に不安定さをもたらしています。
  • ISMやS&Pグローバルの経済指標は、緩やかな拡大を示している一方で、雇用や新規受注が縮小傾向にあり、関税や貿易政策が成長の足かせとなっています。
  • 景気後退の兆候はまだ見られないものの、市場の楽観は行き過ぎており、貿易合意が遅れれば実体経済への悪影響が深まる可能性があります。

恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)は大幅改善

S&P500は、9営業日連続の上昇の後、一昨日の取引で小幅に下落して取引を終えました。取引量は少なく、連騰記録が止まりました。同指数は、トランプ政権から「貿易合意の発表が間近」との発言が繰り返されていることにより上昇してきました。週末には、大統領が「早ければ今週中にも第一段階の合意が発表される可能性がある」と示唆しました。これを受けて、昨日の株式市場は一日を通じて上昇基調でしたが、最終盤にかけて下落しました。

その日の早い時間帯に、大統領が「ハリウッド再興のために、海外で制作された映画に対して100%の関税を課す」と発表したことも、投資家心理の重荷となりました。これは国家安全保障とは無関係の政策であり、サービス産業にまで関税の適用範囲が拡大されることを意味します。このことは、過去2週間の株価上昇とは裏腹に、貿易摩擦が緩和していないことを示唆しています。

市場が閉じた後、フォード・モーター社は2025年の業績見通しを撤回しました。その理由として、業界全体のサプライチェーンの混乱、海外市場での報復関税の可能性、そして米国での関税政策の不透明さを挙げています。同社はまた、関税によって今年15億ドルのコストが発生すると予想しています。この事実は、関税の負担をしているのが米国の企業と消費者であることを改めて示しています。そしてこの関税負担は、設備投資、人材採用、個人消費といった分野から資金を奪うことになります。

ここで、私のお気に入りの先行経済指標についてお話しします。

(出所:Bloomberg)

ISM(サプライマネジメント協会)とS&Pグローバルが発表するディフュージョン・インデックスは、月次ベースで経済の強さをリアルタイムで測定する上で非常に有用だと考えています。これらは製造業とサービス業の購買担当者に調査を行っており、業種の比重や調査対象が異なるため、組み合わせて使うことでより正確にビジネス活動の強弱を測ることができます。

購買担当者指数(PMI)は50を上回ると拡大、下回ると縮小を示します。ISMのサービス業(非製造業)PMIは、3月の50.8から4月には51.6へと上昇し、緩やかな拡大を示しています。しかし一方で、雇用、受注残、新規輸出受注はいずれも縮小しており、サービス企業が支払っている価格は2023年1月以来で最も速いペースで上昇しています。調査回答者は、このような状況の原因として関税と貿易政策を挙げています。

良いニュースとしては、重要なサービス部門が依然として拡大していることです。50を下回る水準を記録したこともありましたが、それが景気後退につながったわけではありません。

(出所:TradingEconomics

S&Pグローバルのサービス業PMIは4月に50.8となり、過去17か月で最も遅い拡大ペースを示しましたが、依然として縮小には至っていません。下のチャートでもわかる通り、この指数は過去に50を大きく下回ったことがあっても景気後退には至りませんでした。したがって、これは経済の重大な後退を予測する理由にはなりませんが、成長の鈍化が著しいという警告にはなります。

その主な原因も同じく、関税と貿易政策が大きな懸念材料となっていることです。これらは需要の成長と企業の期待に重しとなっており、同時に営業費用の上昇を招いて販売価格の引き上げにつながっています。海外からの新規受注は、2022年11月以来最大の落ち込みを記録しました。

(出所:TradingEconomics

S&Pグローバルのチーフエコノミストであるクリス・ウィリアムソン氏は、「関税の発表によって製造業がニュースの中心となっていますが、実は遥かに規模の大きいサービス経済で、企業活動と雇用が4月に停滞しかけており、ビジネス信頼感が急落する中で、懸念すべき背景が進行しています」と指摘しています。

これら2つの調査を総合的に見ると、経済成長のペースが鈍化する一方で、物価上昇圧力が高まっていることがわかります。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)にとって最悪の組み合わせです。なぜなら、FRBは景気拡大を終わらせることなく、インフレ率を2%に引き下げながらソフトランディングを目指しているからです。

これら2つの調査が経済成長率とどのように相関しているのかを示す一例として、2022年第4四半期に両指数が拡大と縮小の境界線である50を下回っていたにもかかわらず、経済は1.3%という控えめながらも成長を続けていたことが挙げられます。したがって、現在どちらの指標も警戒ゾーンに近いとはいえ、直ちに景気後退が迫っていることを示すものではありません。

このような理由から、今年中に、より穏健な貿易政策によって景気後退の崖から引き戻される可能性はまだ残っていると考えています。ただし、それでも私は市場が先走りすぎていると感じています。

(出所:TradingEconomics

週末にも書きましたが、私は現在の投資家の姿勢が「スキー板を乗り越えてしまっている(=先行しすぎている)」ように思います。S&P500が「リベレーション・デー(解放の日)」以降の下落分をすべて回復しているにもかかわらず、今のところいかなる貿易合意も発表されていないからです。

一方で、関税を撤廃し貿易合意に置き換えるまでの時間が長引けば長引くほど、実体経済へのダメージはより広範かつ顕著になっていくでしょう。現在の市場は、リベレーション・デー直後に売られすぎていたときとほぼ同じレベルで買われすぎていると感じます。

当時、私はセンチメント指標における極端な恐怖感や悲観論を受けて、市場が底を打ちつつあると何度も共有しました。しかしこの1か月で、市場の様相は大きく変わりました。私はそれが「あまりにも急激で、あまりにも早すぎた」と感じています。そして、それは下記の恐怖と貪欲指数(Fear & Greed Index)にも顕著に表れています。

(出所:CNN


🚀お気に入りのアナリストをフォローして最新レポートをリアルタイムでGET🚀

ローレンス・フラー氏は米国マクロ経済に関するレポートを毎週複数執筆しており、プロフィール上にてフォローをしていただくと、最新のレポートがリリースされる度にリアルタイムでメール経由でお知らせを受け取ることができます。

さらに、その他のアナリストも詳細な分析レポートを日々執筆しており、インベストリンゴのプラットフォーム上では「毎月約100件、年間で1000件以上」のレポートを提供しております。

そのため、フラー氏の最新レポートに関心がございましたら、是非、フォローしていただければと思います!


✨知識は共有することでさらに価値を増します✨

🚀この情報が役立つと感じたら、ぜひ周囲の方とシェアをお願いいたします🚀


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

📍米国マクロ経済担当

フラー氏のその他の米国マクロ経済関連のレポートに関心がございましたら、こちらのリンクより、フラー氏のプロフィールページにてご覧いただければと思います。


インベストリンゴでは、弊社のアナリストが「高配当銘柄」から「AIや半導体関連のテクノロジー銘柄」まで、米国株個別企業に関する分析を日々日本語でアップデートしております。さらに、インベストリンゴのレポート上でカバーされている米国、及び、外国企業数は「250銘柄以上」(対象銘柄リストはこちら)となっております。米国株式市場に関心のある方は、是非、弊社プラットフォームより詳細な分析レポートをご覧いただければと思います。