台湾半導体・テクノロジー企業の2024年7月の売上高分析:台湾の半導体はなぜ強い?注目の台湾半導体株を徹底分析!

- 本稿では、台湾の半導体およびテクノロジー企業の2024年7月の売上高の分析、並びに、台湾の半導体市場が堅調な理由と注目の台湾半導体株を紹介していきます。
- 台湾のテクノロジーおよび半導体企業の2024年7月の売上高は、特にAIサーバー出荷の見通しが強まっており、多くの企業が前年比で大幅な成長を示しています。
- ASPEED Technology(5274.TW)は、Baseband Management Controllers(BMCs)市場で大きなシェアを持ち、2024年7月の売上は前年比150%増加し、過去最高を記録しました。
- Quanta Computer(2382.TW)とWiwynn Corp(6669.TW)は、AIサーバーの出荷により売上成長を達成しており、特にWiWynn Corpは過去一年で株価が2倍以上に上昇しましたが、最近の市場調整で下落しています。
台湾半導体・テクノロジー企業の2024年7月の売上高
2024年7月の売上高をすでに報告している台湾の半導体およびテクノロジー企業の多くにおいて、特に注目すべき点は、今後数か月間にわたるAIサーバー出荷の見通しが一段と強まっていることです。以下の2つの表は、私が選んだ台湾企業の7月の売上における月次増加(#1)および前年同月比増加(#2)を示しています。
#1:台湾企業の7月の月次売上成長率(%)
#2:台湾企業の7月の前年同月比売上成長率(%)
ASPEED Technology(5274.TW)に関して
ここで注目すべきはASPEED Technology(5274.TW)です。同社は今年3月以降、月次売上が順調に増加しており、特に目を引くのは前年同月比の成長です。7月の売上は前年同月比で150%増加しており、その成果はさらに注目に値します。それでは、詳しく見ていきましょう!
定期的に私のレポートご覧いただいている読者の皆様は、私がASPEED Technologyに注目している理由をご存じでしょう。その理由は、同社がBaseband Management Controllers(BMCs)の市場で70%以上のシェアを持っているためです。サーバーボードの製造サイクルがおよそ3か月であることを考慮すると、同社の月次データは、今後の四半期におけるサーバー出荷台数の予測において非常に優れた指標となります。
同社の主力製品はBMCであり、これは同社の売上の90%以上を占めています。顧客は主にサーバーブランドであり、これらのブランドは主にODM(Original Design Manufacturer)やEMS(Electronics Manufacturing Services)に製造を依頼しています。そのため、同社はブランド顧客が指定するODMやEMSに直接製品を販売しています。2022年と2023年の顧客分析によると、同社の売上は特定の顧客に過度に依存していないことがわかります。
そして、同社の7月の売上は6億1,100万台湾ドルに達し、これは同社にとって過去最高の前年比成長率を記録しただけでなく、月次売上としても過去最高を更新しました。
※Baseband Management Controllers(BMCs):サーバーやデータセンターで使用される基盤管理コントローラー。これにより、電源のオン/オフ、温度管理、リモートでのシステム管理などの基本的なハードウェア管理が可能になる。
※サーバーボード:サーバーの中心的な基板であり、プロセッサ、メモリ、ストレージなどを接続するための基盤。通常、サーバーに必要なすべてのハードウェアコンポーネントを収容している。
※サーバーブランド:サーバー製品を提供しているメーカーやブランドを指す。例えば、デル・テクノロジーズ、HP、Lenovoなどが有名なサーバーブランドである。
※ODM(Original Design Manufacturer):製品の設計と製造を行う企業で、ブランド企業のために製品を製造する。ブランド企業は自社ブランドで販売するが、実際の製品設計と製造はODMが担当している。
※EMS(Electronics Manufacturing Services):電子機器の製造を専門とするサービスプロバイダー。EMS企業は、ブランド企業の設計に基づいて電子製品を大量生産する。製造業務をアウトソースするために利用されることが多い。
月次売上:2023-2024年(単位:百万台湾ドル)
次の表は、ASPEED Technologyの2024年の年初来売上を前年同期と比較したものです。
ここで確認できるのは、同社が2024年に前年比80%以上の売上成長を達成する見込みであることです。ただし、同社の成長すべてがAIサーバー需要の急増によるものではありません。例えば、同社の2023年の年次報告書によると、下記に様に、AIサーバーの出荷は全サーバー出荷のわずか3%に過ぎないと記載されています。
(原文)We have observed that the shipments of AI training servers equipped with high-end GPUs only accounted for 3% of total server shipments; however, as the unit prices of the high-end AI servers were more than 20 times higher than that of traditional general-purpose servers, when the capital expenditure of cloud companies was fixed, the procurement budget of traditional general-purpose servers decreased, resulting in a significant decline in overall server shipments. As a result, the Company's revenue and profits faced recession for the first time in 18 years.
(日本語訳)高性能GPUを搭載したAIトレーニングサーバーの出荷は、全体のサーバー出荷のわずか3%に過ぎませんでしたが、高性能AIサーバーの単価は従来の汎用サーバーの20倍以上であったため、クラウド企業の設備投資が固定されると、従来の汎用サーバーの調達予算が減少し、結果として全体のサーバー出荷が大幅に減少しました。その結果、当社の売上と利益は18年ぶりに景気後退に直面しました。」
そして、今年見られるのは、AIサーバーの出荷が全体のサーバー出荷に占める割合が増加すると同時に、一般的なサーバーの出荷台数も堅調に成長していることです。一般的なサーバーの出荷台数の成長率がどの程度になるかについては、2023年に約20%の前年比減少を経て、私は今年は前年比10%の増加を予測しています。まだ判断するには早いですが、現時点ではその10%の成長は十分に達成可能に見えます。
※AIサーバー:人工知能(AI)の計算やデータ処理を行うために特化したサーバー。大量のデータを処理し、機械学習やディープラーニングといったAIのトレーニングに使用される。
※GPU(Graphics Processing Unit):グラフィックスの処理を行うために設計されたプロセッサですが、近年ではAIのトレーニングやデータ解析などの計算を高速で処理するためにも利用されている。特にAIサーバーでは、GPUが重要な役割を果たす。
Quanta Computer(2382.TW)とWiwynn Corp(6669.TW)に関して
予想通り、AIサーバー(および汎用サーバー)の出荷により強い売上成長を達成しているのは、ASPEED Technology(5274.TW)だけではありません。ODMダイレクトモデルに特化した台湾のODM企業も、堅調な成長を示しています。例えば、Quanta Computer(2382.TW)は7月に前年比43%の売上成長を報告しており、6月の23.4%からさらに増加しました。
※ODMダイレクトモデル:ODM(Original Design Manufacturer)が製品を設計・製造し、ブランド企業を介さずに、直接顧客に販売するビジネスモデル。このモデルでは、ODMがブランド企業の指示を受けて製造するのではなく、自社の設計で製品を提供し、効率的に市場に供給する。
2023年度月次売上(単位: 百万台湾ドル)
Quanta Computerの最新の月次売上は目を引くものですが、直近のサーバー成長がピークに達した2022年半ばに記録した過去最高値にはわずかに届いていません。
Wiwynn Corp(6669.TW)も非常に似た状況です。同社はまだ7月の売上を発表していませんが、6月までのデータではQuanta Computerと同様のパターンが見られます。6月には前年比36%の成長を報告しましたが、前月の60%からは減少しています。
このタイミングで、私が2023年5月に執筆したレポートにおいて言及したことを再度共有したいと思います。
そのレポートでは、下記の通り、AIアクセラレーションハードウェアの成長によって大きな恩恵を受ける可能性が高い企業として、特にQuanta ComputerとWiWynn Corpの2社に注目しました。
「WiWynn CorpとQuanta Computerは、ODMダイレクトサーバーモデルを中心としたビジネスを展開しており、最大手のハイパースケール企業やクラウドコンピューティング企業にサービスを提供しています。すでに2023年度第1四半期でWiWynn Corpに関しては前年比46%の成長を確認していますが、この成長が持続し、Quanta Computerにも波及すると予測しています。両社のバリュエーションは割安ではありませんが、過去12カ月間ベースの実績PERの観点では極端に高いわけでもありません。」
当時、Quanta Computerの株価は115台湾ドル、WiWynn Corpの株価は1170台湾ドルで取引されていました。それでは、この1年間で何が起こったのかを見てみましょう。
言い換えれば、両社の株価は、1年以上前にその可能性に注目して以来、2倍以上に上昇しました。現時点では、7月の調整を受けて、両社ともに52週高値から後退しています。特にWiWynn Corpは52週高値から約30%下落し、Quanta Computerも比較的緩やかに約20%下落しています。
WiWynn は興味深い投資タイミングを提供しているようにも見えますが、7月の急激な調整を受けて、市場の投資家はより慎重になり、いったん利益を確定させて様子を見ようと考えているように見えます。
私は、今後数か月間は市場の変動が続くと予想されるため、下半期に向けてリスクを抑える戦略を重視しています。では、今後の市場の動向を見守りましょう!
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