【投資コラム】ウォーレン・バフェットの投資哲学:サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)の重要性とは?
イアニス・ ゾルンパノス- 本稿では、バリュー投資家として有名なウォーレン・バフェット氏の投資哲学である、「サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence:得意分野)」に関して詳しく解説していきます。
- さらに、投資家が、自身のサークル・オブ・コンピタンスを確立し、さらに、拡大する方法も説明していきます。
- バフェット氏の成功は、自分がよく知る分野に集中して投資する「サークル・オブ・コンピタンス」の原則に基づいています。
- バフェット氏は、自分が理解している業界に投資し続けることで、リスクを回避しつつ優れたリターンを得てきました。
ウォーレン・バフェット氏とサークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)とは?
ウォーレン・バフェット氏の成功は、彼の投資哲学である、自分が最もよく知る分野に集中して投資することから生まれています。そして、『サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence:自分の得意分野)』は、ウォーレン・バフェット氏と彼の長年のビジネスパートナーであるチャーリー・マンガー氏が大切にしている基本原則です。
この概念は、自分の知識や専門性が最も強い領域をしっかり理解し、その範囲内で行動することの重要性を説いています。実際に、バフェット氏はよく下記のように言っています。
「Know what you don’t know.(自分が知らないことを知ることが大事だ)」
サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)への理解
サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)の原則は、投資家が自分がよく知っている業界や市場に投資することを促しています。自分の専門分野に集中すれば、リスクを取る際やチャンスを見極める際に、より賢明な判断を下すことができるという考え方です。
投資家が最も陥りやすい失敗は、よく知らない分野に手を出してしまい、それが原因で誤った判断や損失を招くことです。
ウォーレン・バフェット氏によるサークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)の実践例
ウォーレン・バフェット氏の投資人生は、このサークル・オブ・コンピタンスの有効性を証明しています。バークシャー・ハサウェイ(BRK.B)では、彼は常に自分がしっかり理解しているビジネスに投資をしてきました。
ここでは、彼のキャリアの中からいくつかの代表的な事例を紹介します。
コカ・コーラ(KO):飲料業界に対する深い理解と、コカ・コーラの強力なブランド力やグローバルな影響力を考慮し、バフェット氏は、同社は投資先として間違いないと感じました。彼はコカ・コーラの歴史、製品ラインナップ、競争優位性を徹底的に調べ、長期的な価値を確信しました。1988年に最初の投資を行い、それ以来、コカ・コーラはバークシャー・ハサウェイの主要な保有銘柄となり、バフェット氏の「知っている分野に投資する」という哲学を体現しています。
アメリカン・エキスプレス(AXP):1960年代にアメリカン・エキスプレスは「サラダオイル事件」という大きなスキャンダルに直面しました。多くの投資家が逃げ出す中、バフェット氏は同社の中核事業や市場での強力な地位を深く理解していたため、大胆に同社に投資することにしました。彼はブランドの力と顧客の忠誠心が同社を復活させると確信していたのです。この決断は見事に成功し、アメリカン・エキスプレスは復活を遂げ、現在もバークシャー・ハサウェイの長期保有銘柄として存在感を示しています。
Geico:バフェット氏がGeicoに関わり始めたのは、まだ若き投資家だった1950年代です。彼は保険業界を徹底的に分析し、Geicoの独自のビジネスモデルにその長期的な可能性を見出しました。また、バフェット氏のメンターであるベンジャミン・グレアム氏がGeicoの会長を務めていたことも、彼にとって大きな影響を与えました。こうした洞察が、後にバークシャー・ハサウェイによるGeicoの買収につながり、同社の成功を大きく後押しすることになりました。
ウォーレン・バフェット氏がテクノロジー株を避けた理由: サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)の重要性
ウォーレン・バフェット氏は長い間、テクノロジー株への投資を避けてきたことで知られています。この判断は、彼が重視する「サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence:自分の得意分野)」の原則に基づいています。
バフェット氏はテクノロジー業界の複雑さや急速な変化について十分に理解できていないと認めており、それが自分の専門外の分野で誤った投資をしないための賢明な判断でした。
この慎重なアプローチによって、彼は消費財、保険、金融など、自分が深く理解している業界に専念し、大きな成功を収めることができたのです。
自分のサークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)を確立するためには?
投資家が自身のサークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)を確立する際には、以下の要素を考慮する必要があります。
・背景と教育: 自分の学歴や専門知識を活かしましょう。例えば、技術者としての経験がある投資家であれば、ソフトウェア企業や技術トレンドに詳しいはずです。
・職業経験: 自分の職歴を活用しましょう。金融や医療分野などでの経験があれば、その業界に対する深い洞察を得られるため、投資判断に役立ちます。
・趣味や社会活動: 個人的な趣味や関心も大いに影響します。例えば、車好きなら自動車業界に詳しくなるかもしれませんし、地域活動に参加している人は、小売業や消費者の動向に詳しくなることができます。
自分のサークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)を広げる方法
現在のサークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)を理解することは重要ですが、学び続けることでそれを拡大することも可能です。以下の方法でスキルを高めましょう。
・業界や企業を学ぶ: 自分の専門外の業界を積極的に学びましょう。業界レポートを読んだり、カンファレンスに参加したり、市場トレンドを調査することで新しい知見を得られます。
・専門家の知識を活用する: 専門家の意見を取り入れることも効果的です。ネットワークを広げたり、メンターを見つけたり、信頼できる情報源から学ぶことで、新しい視点や知識を得られます。書籍やセミナーも貴重な情報源です。
・実践的な経験を積む: 新しい分野でのサイドプロジェクトやパートタイムの仕事、趣味を通じて、実際にその分野に関わることで、自分のスキルと知識を広げることができます。
サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)
(出所:筆者作成)
日本語訳
What we don't know but not material and isn't controllable:私たちが知らないが重要ではなく、かつコントロールできないもの
What we don't know and material but isn't controllable:私たちが知らないが重要であり、しかしコントロールできないもの
What we know, material, and that we can control:私たちが知っていて、重要で、かつコントロールできるもの
サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)への結論
ウォーレン・バフェット氏の卓越した投資実績は、サークル・オブ・コンピタンス(Circle of Competence)の重要性を如実に示しています。現代の投資家が学ぶべき教訓は非常にシンプルです。自分の得意分野に集中し、苦手な分野では分散投資を行い、理解しているものに投資し続け、常に学び続けることが大切です。これによって、数多くのリスクを避けながら、思わぬチャンスを捉え、優れたリターンを得る可能性が高まるでしょう。
アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス
イアニス・ゾルンパノス氏は、詳細なビジネス分析を通じてデューデリジェンス・プロセスを向上させることを目的とした株式市場調査プラットフォーム、「イアゾウ・キャピタル・リサーチ」の創設者です。
以前はデロイトとKPMGで外部監査と内部監査、並びに、コンサルティング業務に従事しておりました。ゾルンパノス氏は、公認会計士資格を保有し、ACCAグローバルのフェロー・メンバーでもあります。更に、英国の一流ビジネススクールで学士号と修士号を取得しております。
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