半導体市場レポート:2024年7月の世界半導体市場の売上高は513億ドルと好調!世界半導体市場の今後の見通しを徹底分析!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、2024年7月の最新の世界半導体市場の売上高と今後の見通しに関して詳しく解説していきます。
- 2024年7月の世界半導体市場の売上高は前年同月比18.7%、前月比2.7%増加し、513億ドルに達しました。
- 半導体市場の売上増加は主にメモリ価格の上昇とPCやスマートフォン市場の回復が要因であり、NANDやDRAMの価格が大幅に上昇しています。
- 2024年後半も半導体売上の成長が続くと予測されていますが、2025年には一時的に減少する可能性があります。
2024年7月の世界半導体市場の売上高に関して
今月初め、SEMI(国際半導体製造装置材料協会)は2024年7月の世界半導体売上が513億ドルに達し、前年同月比で18.7%、前月比で2.7%増加したと報告しました。
月別世界半導体売上高(十億ドル単位)
(出所:筆者作成)
7月の売上高は4か月連続で前月比増加を記録し、過去2番目に高い月間売上となりました。因みに、最高記録は2022年5月の517億ドルです。
毎年の第1四半期に見られる季節的な減少を除くと、最近の半導体売上の好調は約2年間続いています。この背景には、パンデミックによるPCやスマートフォンの需要増がありました。
この状況を踏まえ、次の二つの重要な疑問に注目する必要があります。まず一つ目が、「現在の半導体売上の好調を支えている要因は何か」で、二つ目は、「この勢いはどれくらい続くのか」です。では、詳しく見ていきましょう。
関連用語
SEMI(国際半導体製造装置材料協会):半導体や関連技術の製造装置や材料に関わる企業を支援する国際的な業界団体。業界の標準化、情報共有、技術開発の促進を目的に活動している。
NAND: フラッシュメモリの一種で、データの書き込みや消去が可能な半導体記憶装置。主にスマートフォンやSSDなどのデバイスに使われます。
DRAM: ダイナミックランダムアクセスメモリの略で、コンピュータやスマートフォンの一時記憶装置として使用されるメモリ。高速なデータ処理に適していますが、電力供給がないとデータが消失します。
世界半導体市場の売上増加の要因とは?
先ほど、7月の半導体売上が4か月連続で前月比増加したとお伝えしましたが、2024年第1四半期の軽い季節的な落ち込みを除けば、この好調な流れは実際には4か月ではなく18か月続いていることになります。この点を踏まえておくことが重要です。
そして、2024年上半期に半導体売上を押し上げた最大の要因は、メモリ価格の上昇だと思われます。NANDの価格はすでに約60%上昇し、DRAMもそれに続いて40%台前半の上昇を記録しています。
(出所:筆者作成)
(出所:筆者作成)
数か月前に発表されたWSTS(世界半導体市場統計)の最新の半導体予測によると、メモリの売上は2023年の920億ドルから2024年には1630億ドルに達し、前年比で77%の増加が見込まれています。
(出所:WSTS)
マイクロン・テクノロジー(MU)は9月25日に決算を発表する予定で、これによりメモリ価格の最新の状況が把握できるでしょう。DRAMとNANDの平均販売価格(ASP)は、引き続き緩やかな上昇が続くと予想しています。
さらに、半導体売上を押し上げている要因として、PCやスマートフォン市場での緩やかな回復が挙げられます。特にPC市場では、2023年第4四半期に前年比で出荷台数が増加に転じ、その傾向は2024年の第1四半期、第2四半期も続いています。
四半期毎のPC出荷台数(ガートナー社調べ)
(出所:筆者作成)
(原文)The PC market returned to growth in the fourth quarter of 2023 after eight consecutive quarters of decline. Gartner estimates overall PC shipments will total 250.4 million units in 2024, a 3.5% increase from 2023.
(日本語訳)PC市場は8四半期連続の減少を経て、2023年第4四半期に成長に転じました。ガートナー社は、2024年のPC出荷台数は2億5040万台に達し、2023年比で3.5%増加すると予想しています。
スマートフォン市場も同様に回復傾向にあります。
IDCによる四半期毎のスマートフォン出荷台数(百万台)
(出所:筆者作成)
PCとスマートフォンは、半導体市場全体の50%以上を占めています。これらの市場が健全で、たとえ緩やかな成長であっても、半導体売上は力強いものになります。以下のグラフはSiltronicによるもので、2024年における主要セグメントごとの成長予測を示しています。
(出所:Siltronicの2024年第2四半期決算資料)
ここにはもう一つの要因があります。AI対応のPCやスマートフォンの登場により、1台あたりのメモリやストレージの容量が増加しています。より多くのPCやスマートフォンがAI対応モデルに移行すれば、世界の半導体売上にとっては良いニュースとなります。
世界半導体市場の足元の成長はどれくらい続くのか?
世界の半導体市場の売上の増加要因を理解した上で、次にその成長がどれだけ続くのかに注目してみましょう。前述の通り、今期もメモリ価格は上昇が続く見込みですが、第1・第2四半期ほどの急激な上昇ではないでしょう。第4四半期には価格は安定に向かうと予測されていますが、2024年いっぱいはメモリ価格の上昇が半導体売上にプラスに働くと考えられます。
PC市場に関しては、第3・第4四半期が例年最も好調な時期です。私がインテル(INTC)にいた頃、この現象は「ホリデーシーズン」と「新学期需要」として知られていました。これは、先ほどの「PC出荷台数」のグラフからも明らかです。
パンデミックによる大きな変動を除くと、2018年や2019年は第3四半期に出荷台数が前期比で約8%増加し、第4四半期にはさらに増加しています。今年も同様の傾向が予想されており、これが引き続き世界の月間半導体売上を押し上げる要因になるでしょう。
スマートフォンの出荷台数にも同じ傾向が見られ、後半にかけての方が前半よりも強い成長を示します。第3・第4四半期での出荷増加が予想されることも、世界の月間半導体売上が成長を続ける理由の一つです。
2024年末以降については、12月の半導体売上は前月比で横ばいになり、2025年第1四半期は月ごとに減少すると予測されますが、その後は今年と同様の成長パターンに戻ると期待されます。では、今後の動向を注視していきましょう。
アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
ウィリアム・キーティング氏は、インテル、AMD、サムスン、アップル、マイクロン・テクノロジー等の企業の製品、ロードマップ、技術、および、それらの企業の主要な装置サプライヤーである、ASML、AMAT、キヤノン、ニコン等を専門とする半導体 / テクノロジー・リサーチ・コンサルティング会社、Ingenuity (Hong Kong) Ltd.の創立者兼最高経営責任者(CEO)です。
キーティング氏は、半導体業界において重要性の高いニッチなテーマを専門としています。具体的には、ムーアの法則の将来性、特にムーアの法則(EUV、SDA、NanoImprint)を維持するためのリソグラフィの重要性、音声、画像、パターン認識、暗号通貨マイニングのためのディープラーニング(ニューラルネットワーク)などの特殊なアプリケーションにおけるGPUやその他のカスタムアーキテクチャの役割と成長などが挙げられます。また、メモリの将来、特に3D NANDの台頭と新しいメモリ技術の出現について、定期的にクライアントとのディスカッションを開催しています。
Ingenuity (Hong Kong) Ltd.を設立する以前は、1992年から2014年までインテル・コーポレーションに勤務していました。当初はAIシステムのスペシャリストとして採用され、その後、同社の最先端の300mmファクトリーネットワークをグローバルにサポートするファクトリーオートメーションシステム(ロボット、データベース、ネットワーク、サーバー、クライアント等)の責任者となりました。2000年には、社内にITコンサルティング・グループ(IT Flex Services)を設立し、500人規模のグローバルチームに成長させ、同グループは現在もインテルのIT部門の中核を担っています。2005年には、APAC、中国、日本担当のIT部門のディレクターに任命され、同地域にあるインテルの全オフィスと製造施設のITシステム(インフラ、ネットワーク、データセンター、ERP、セールス、マーケティングシステム、ビジネスインテリジェンスなど)を統括していました。
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