マイクロン・テクノロジー(MU)の今後の株価見通し:最新の2024年第4四半期決算とガイダンスは好調で時間外で株価上昇!
ダグラス・ オローリン- 本稿では、マイクロン・テクノロジー(MU)の2024年9月25日に発表された最新の2024年度第4四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
- マイクロン・テクノロジーの最新の決算では、予想を上回る調整後EPSと売上高を達成し、2025年度第1四半期の見通しも市場予想を上回る内容となりました。
- 市場はDDR4の価格下落に過剰反応していましたが、実際にはDDR5への移行やHBMの成長により、メモリ業界は引き続き健全な状況にあると評価されています。
- HBM市場は2025年には250億ドルを超えると予想され、同社はその市場シェア拡大と利益率の向上を見込んでいます。
マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の2024年第4四半期決算に関して
2週間ほど前、私達はメモリサイクルの中盤にいるという自分の考えを下記のレポートで解説しました。その際、メモリ関連企業を主に支持していましたが、行間を読んでいただかないと分かりづらかったかもしれません。未だご覧になっていない方は、インベストリンゴのメインページよりご覧ください。
マイクロン・テクノロジー(MU)の将来性:メモリー価格の下落とマイクロン・テクノロジーの株価リターンの関係性を徹底分析!
それから1週間経ちましたが、メモリ業界の終わりを予想する声は少し早計だったようです。
私はツイートで、多くの人がこの決算に対して悲観的になっているが、その様な時は結果は逆になることが多いと述べました。市場は常に先を読んで不安を織り込むものですが、実際の結果は大抵、心配するほど悪くないことが多いです。そして今回もその例に漏れませんでした。
では、2024年9月25日に発表されたマイクロン・テクノロジー(MU)の最新の決算結果と何が変わったのかを見ていきましょう。
2024年度第4四半期決算
・調整後EPS:1.18ドル(ファクトセット予想:1.11ドル)
・売上高:77.5億ドル(ファクトセット予想:76.5億ドル)
2025年度第1四半期ガイダンス
・Non-GAAP EPS:1.74ドル ± 0.08ドル(ファクトセット予想:1.52ドル)
・売上高:87億ドル ± 2億ドル(ファクトセット予想:82.7億ドル)
・Non-GAAPベースの粗利益率:39.5% ± 1.0%(コンセンサス:38.7%)
多くの人が売上高が80億ドル程度に落ち込むと予想していました。その主な理由は、DDR4のスポット価格の下落と韓国での在庫過多が影響していたからです。ですが、Dylan氏がツイートしたように、スポット価格はもはやそれほど重要ではなく、多くの企業が契約ベースで購入し、ダイをパッケージ化しているため、影響は小さいです。また、多くのメモリOEMがDDR4の在庫を処分しているのは、生産がDDR5へ移行しているからです。投資家たちは過去の指標に注目していましたが、実際には結果が良好でした。
市場は見える範囲のDDR4価格に過剰に反応しがちですが(これは市場の一部にすぎません)、未知数であるHBMの需要が健全だという現実をなかなか信じたがりません。さらに、HBMが供給過剰であるという声も依然としてありますが、多くの現実的な予測ではそのような見方はされていません。
では、HBMに関する重要なポイントを確認するために、決算説明会の遣り取りで注目すべき点を幾つか見ていきましょう。
HBMの利益率は、DRAMの利益率が改善している中でも、さらにそれを上回る効果をもたらしています。
(原文)Even as our DRAM gross margins improved, our fiscal Q4 HBM gross margins were accretive to both company and DRAM gross margins indicative of our solid HBM yield ramp. We expect to achieve HBM market share commensurate with our overall DRAM market share sometime in calendar 2025.
(日本語訳)DRAMの粗利益率が向上している中、第4四半期のHBMの粗利益率は会社全体およびDRAMの利益率をさらに押し上げています。これは、HBMの歩留まりが順調に進んでいることを示しており、2025年にはDRAM市場シェアに見合ったHBM市場シェアを獲得することを期待しています。
また、2025年度においても利益増加に寄与する見込みです。すでに価格は固定されていますが、HBM市場は依然として好調を維持しているようです。
(原文)Now regarding your questions on gross margin being accretive, yes, we would expect our HBM business to be accretive for our fiscal year 2025. Beyond that, really not providing any further details. And yes, you are right that our volume and pricing for HBM is locked up for 2024 as well as for 2025 time frame, calendar year 2024 and calendar year 2025.
(日本語訳)粗利益の増加効果に関するご質問についてですが、はい、2025年度においてもHBM事業が利益に寄与することを期待しています。それ以上の詳細については現時点でお伝えできません。また、2024年および2025年の取引量や価格については、すでに確定しています。
そして、さらに、2025年のHBM市場規模は250億ドルを超えると予想されています。
(原文)We expect the HBM TAM to grow from approximately $4 billion in calendar 2023 to over $25 billion in calendar 2025. As a percent of overall industry DRAM base, we expect HBM to grow from 1.5% in calendar 2023 to around 6% in calendar 2025.
(日本語訳)HBM市場規模は、2023年の約40億ドルから2025年には250億ドル以上に成長すると予想しています。DRAM市場全体に占めるHBMの割合も、2023年の1.5%から2025年には約6%にまで拡大する見込みです。
この年平均成長率は非常に高く、私が今年の明けに執筆した「2024年の年末見通し」に関するレポートでは、私の強気の予想では90億ドルでしたが、それでもかなり控えめな見積もりだったようです。
このペースで成長が続けば、HBMはこの10年が終わる前にメモリ市場で2番目に大きな市場になるでしょう。驚異的な成長ストーリーですね!
では、今年の初めに触れた「ビットカニバリゼーション(ビット削減)」の仮説について、もう少し詳しくお話しましょう。
(原文)Leading-edge supply is tight because industry in '22, '23 time frame with reductions in CapEx and CapEx-efficient industry-wide transitions to the newer technology nodes, the wafer capacity has come down from the peak levels in meaningful ways. So the lower wafer capacity compared to the peak of 2022, as well as the HBM 3:1 trade ratio, these are the ones that are overall keeping the industry in a tight supply. And tight supply, not just for HBM, but also for non-HBM part of the market.
(日本語訳)最先端技術の供給が逼迫しているのは、2022年から2023年にかけて業界全体で設備投資(CapEx)が削減され、新しい技術ノードへの効率的な移行が進んだからです。その結果、ウェハーの生産能力が2022年のピーク時から大幅に減少しました。加えて、HBMの3:1の交換比率も影響し、業界全体で供給が逼迫している状況が続いています。この供給不足は、HBMだけでなく、非HBMの市場にも広がっています。
供給と需要のバランスは引き続き健全です。さらに、マイクロン・テクノロジーも「NANDの新時代」という仮説に同調するようです。このプレゼンテーションでは、ウエスタン・デジタル(WDC)が市場に対し、NANDの移行に過剰な投資を控え、業界全体で移行をゆっくり進めるよう求めました。
これがウエスタン・デジタルのメッセージに対する公の確認です。今こそ、他の業界もそれに追随するべき時が来ています。
(原文)Given the significant reduction in the industry wafer capacity in NAND and the ongoing low NAND CapEx environment, we also expect a healthy industry supply-demand environment for NAND in calendar 2025. NAND technology transitions generally provide more growth in annualized bits per wafer compared to the NAND bit demand CAGR expectation of high teens. Consequently, we anticipate longer periods between industry technology transitions and moderating capital investment over time to align industry supply with demand. This can reduce both R&D expense growth and capital intensity in NAND over time, which can contribute to the improved financial health of the NAND industry.
(日本語訳)NAND業界では、ウェハー生産能力の大幅な減少と引き続き低水準の設備投資環境が続いているため、2025年にはNANDの供給と需要が健全なバランスに達すると予想しています。NANDの技術革新による年間ウェハーあたりのビット成長率は、通常、NANDビット需要の年平均成長率(CAGR)である10%台後半を上回る傾向があります。その結果、業界全体の技術移行サイクルが長くなり、設備投資も徐々に抑えられることが期待されます。これにより、NAND業界では研究開発費の増加や設備投資の負担が軽減され、業界の財務状況の改善につながる可能性があります。
上述の内容は良い兆候と言えます。ウエスタン・デジタルは設備投資を抑えたいと考え、DRAMプレイヤーたちはHBMに投資したいという意向を持っています。それにもかかわらず、全体として設備投資は大幅に増加することになりそうです。
また、マイクロン・テクノロジーは設備投資ガイドラインの予備見通しを示し、「大幅に増加する」と予測していました。これは、装置よりも建物に対する投資が増えることを示唆しており、いくつかの興味深い疑問が浮かび上がります。
設備投資計画
(出所:マイクロン・テクノロジーの2024年度第4四半期決算資料)
(日本語訳)
・マイクロンは2024年度に81億ドルを設備投資しました。
・2025年度の設備投資額はさらに大幅に増加し、現在の設備投資および収益予想に基づくと、収益に対する設備投資比率は30%台半ばになる見込みです。
・ファブの新設やHBM関連の設備投資の増加が、前年比での設備投資増加の大半を占めると予測されています。
・また、アイダホ州やニューヨーク州で進行中の施設や建設への投資は、DRAMの長期的な需要予測に基づくものであり、2025年度および2026年度のビット供給には影響しません。
・マイクロンは引き続き供給と設備投資を慎重に管理し、利益率の向上に努めます。利益が見込めない事業からは撤退する一方で、DRAMとNANDのビット市場シェアは維持していく方針です。
現在の収益予測に基づくと、約135億ドルの設備投資が見込まれます。これは2022年度を上回る過去最高の設備投資額となり、メモリ分野におけるウェハー製造装置(WFE)への支出において大きな転機となるでしょう。これを踏まえ、次章では「半導体製造装置(Semicap)企業」について詳しくお話しします。
※続きは「WFE(半導体前工程製造装置)市場の将来性と注目の半導体製造装置(Semicap)関連銘柄の今後の株価見通しを徹底分析!」をご覧ください。
関連用語
DDR4: 第4世代のダブルデータレートメモリ。コンピュータやサーバーで使われるメモリ規格の一つで、DDR3よりも高速で省電力。
DDR5: 第5世代のダブルデータレートメモリ。DDR4よりもさらに高速で効率的なメモリ規格で、次世代のコンピュータやサーバーに採用されている。
ダイ (Die): 半導体チップの基盤となるシリコンウェハー上に形成された回路部分。チップの心臓部。
OEM: 他社ブランド製品向けに部品や完成品を製造する企業。製造元(OEM)が作った製品は、依頼元企業のブランドで販売される。たとえば、ある企業がOEMに依頼してスマートフォンを製造し、自社のブランド名で市場に出すといった形。
HBM (High Bandwidth Memory): 高速なデータ処理が可能なメモリ規格。特にGPUやAI関連の高性能コンピュータで使用される。
DRAM (Dynamic Random Access Memory): データの一時保存に使われる揮発性メモリで、主にパソコンやサーバーのメインメモリとして使用される。
NAND: データの長期保存に使われる不揮発性メモリ。SSDやUSBメモリなどに使われている。
アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
ダグラス・オローリン氏は、自身が2020年に設立した半導体調査会社ファブリケイティド・ナレッジ社のチーフアナリストを務め、主に半導体関連銘柄とAIセクターの最新動向の分析に焦点を当てています。
ファブリケイティド・ナレッジ社設立以前は、テキサス州ダラスを拠点とする投資会社Bowie Capitalで投資アナリストを務めていました。そして、Bowie Capitalでは、コンパウンダー(長期間にわたって一貫して高いリターンを生み出し、その価値を複利で成長させる能力を持つ企業)とクオリティ重視の投資に焦点を絞って分析 / 投資活動に従事しておりました。
その経験を通じて、オローリン氏は半導体、特にムーアの法則の終焉という変化するストーリーと、それが半導体業界/ 銘柄にとってどのような意味を持つのかに興味を持つようになりました。結果、半導体セクターに対する理解を一層追求するためのプロジェクトとして、ファブリケイティド・ナレッジ社を設立しました。
また、オローリン氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、オローリン氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
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