マイクロン・テクノロジー(MU)の決算速報:HBMの想定市場規模を大幅に拡大し、時間外で株価は約15%の上昇!
ウィリアム・ キーティング- 本稿では、マイクロン・テクノロジー(MU)の株価が時間外で約15%も上昇した理由、並びに、同社の強みを、最新の2024年第4四半期決算と競合分析を通じて詳しく解説していきます。
- マイクロン・テクノロジーは、2024年第4四半期の決算で売上高が前年同期比93%増加し、ガイダンスを上回りました。特に、HBMや自動車関連、エンタープライズSSDの成長が寄与しています。
- 2025年にはHBM市場のシェアを20%に引き上げ、年間売上高は373億ドルに達する見込みです。これは前年比46%増加で、好調な成長を見込んでいます。
- データセンター部門は引き続き成長を牽引しており、大容量D5とLP5のソリューションに強い需要があり、エンタープライズSSD売上も前年の3倍以上に増加しました。
マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の2024年第4四半期決算に関して
最近、5歳の息子が幼稚園で習った中秋節に向けた歌が頭から離れないようです。そのフレーズは「Zoom, Zoom, Zoom, we're going to the moon!(ズンズン進んで、月に行こう!)」というとてもキャッチーなものです。そして、マイクロン・テクノロジー(MU)が、9月25日に、エヌビディア(NVDA)のような素晴らしい決算を発表したことを受けて、私もこのフレーズが頭から離れなくなってしまいました。
まずは基本をおさらいしましょう。売上高は78億ドルで、ガイダンスの中央値を2億ドル上回り、前四半期比で14%、前年同期比で93%増加しました。
(出所:マイクロン・テクノロジーの2024年第4四半期決算資料)
マイクロン・テクノロジーの2011年第4四半期から2024年第4四半期までの四半期売上高(10億ドル単位)
(出所:筆者作成)
純利益は前四半期比でほぼ倍増し、13億4千万ドルに達しました。粗利益率は36.5%で、ガイダンスを1.5ポイント上回っています。また、次期の売上高は87億ドル、粗利益率は39.5%と見込まれています。これは同社の四半期売上高として過去最高となり、過去2回の好況期のピークに戻ることを示しています。
予想通り、市場はマイクロンの決算を好意的に受け止め、時間外取引で株価が約15%急上昇しました。
(出所:Yahoo Finance)
マイクロン・テクノロジーの決算を受けて、翌日、SKハイニックス(000660.KS)は8%上昇し、サムスン電子(005930.KS)も約3%上昇しました。
投資家にとって注目の的は当然HBMで、マイクロン・テクノロジーは期待を裏切りませんでした。まず、2025年のHBM市場規模(TAM)予測を210億ドルから250億ドルに引き上げ、現在のDRAM市場でのシェア(約20%)と同程度のシェアをHBM市場でも目指すことに自信を示しました。こちらが決算説明会での遣り取りの一部です。
(原文)So we're not gonna be providing specifics on a quarter by quarter basis but keep in mind yes we delivered several hundred million dollars of revenue in fiscal year 24 and we look forward to delivering multiple billions of dollars of revenue of HBM in fiscal year 25 okay.
(日本語訳)四半期ごとの具体的な数値は提供しませんが、2024年会計年度には数億ドルの売上を達成しており、2025年会計年度にはHBMで数十億ドルの売上を見込んでいますので、ご期待ください。
簡単に計算すると、2025年末時点でのマイクロン・テクノロジーのHBMの年間売上高は約50億ドルに達する可能性があるように見えます。そして、これは2024年会計年度の全売上高の5分の1に相当します。
ただし、同社の追い風はHBMだけではありません。他のセグメントでも好調で、特に自動車関連やエンタープライズSSDの分野で目覚ましい成果を上げています。実際、同社にはデータセンター向けに3つの異なる製品カテゴリがあり、それぞれが来年に数十億ドルの収益をもたらす予定です。それでは、同社の決算をさらに詳しく見ていきましょう。
マイクロン・テクノロジー(MU)の2024年会計年度の売上高予測
マイクロン・テクノロジー(MU)は2025年会計年度の第1四半期に入ったばかりですが、年間の売上高予測は出していません。ただし、次のように述べています。
(原文)We look forward to delivering a substantial revenue record with significantly improved profitability in fiscal 2025, beginning with our guidance for record quarterly revenue in fiscal Q1
(日本語訳)2025年会計年度には、大幅な利益改善とともに大きな売上記録を達成することを期待しており、まずは第1四半期のガイダンスから過去最高の四半期売上を目指しています。
同社のこれまでの最高売上年度は2022年会計年度で、売上高は307億6,000万ドルでした。また、2018年会計年度の売上高もほぼ同水準の303億9,000万ドルでした。
売上高・純利益・純利益率
(出所:筆者作成)
このことから、2025年会計年度の売上高は少なくとも307億ドルにはなると見込まれます。第1四半期の売上ペースが87億ドルであれば、年間で348億ドルに達する計算です。さらに、2025年会計年度にはマイクロン・テクノロジーが予測しているHBMの売上増加も考慮する必要があります。「数十億ドル」との見通しで、以前の計算では年間50億ドルのペースになるとされています。来年のHBMの売上を25億ドルと見積もると、2025年会計年度の総売上は373億ドルに達する見込みです。前年比46%の増加で、かなり好調と言えます。
関連用語
HBM(High-Bandwidth Memory): 高帯域メモリのことで、非常に高速なデータ転送を実現するメモリ技術。主に高性能なGPUやAIチップに使用される。
DRAM(Dynamic Random-Access Memory): コンピューターの一時記憶装置で、データを高速に読み書きするためのメモリ。PCやサーバーなどに広く利用されている。
エンタープライズSSD(Enterprise SSD): 企業向けの高速・高耐久のストレージデバイスで、大量のデータを迅速に処理するためにデータセンターやサーバーで使用される。
マイクロン・テクノロジー(MU)のデータセンター部門
マイクロン・テクノロジー(MU)にとって、データセンター部門が成長の中心であることは明らかです。マクロ的な視点では、2024年にサーバーの出荷台数が最大10%増加する見通しです。
(原文)Industry server unit shipments are expected to grow in the mid- to high-single-digit percentage range in calendar 2024, driven by strong growth for AI servers as well as low-single-digit percentage range growth for traditional servers.
(日本語訳)業界全体のサーバー出荷台数は、2024年に中から高めの一桁台で成長すると予想されています。これはAIサーバーの大幅な成長と、従来型サーバーのわずかな成長によるものです。
従来型サーバーに関しては、あまり魅力的に聞こえないかもしれませんが、同社は来年この分野の改善を期待しています。
(原文)We expect traditional server demand to benefit from a refresh cycle, as a single latest-generation traditional server can replace multiple older-generation servers to provide valuable space, power and performance improvements to improve data center efficiency
(日本語訳)最新世代の従来型サーバー1台が複数の旧世代サーバーを置き換えることで、スペースや電力の節約、性能の向上によりデータセンターの効率を高めることができるため、リフレッシュサイクルによる需要増が期待されます。
HBMに注目が集まる一方で、マイクロン・テクノロジーにはさらに2つのデータセンター向け製品カテゴリがあり、それぞれが来年に数十億ドルの売上をもたらすと見込まれています。
(原文)Micron is well positioned in the data center with our portfolio of high-bandwidth memory (HBM), high-capacity D5 and LP5 solutions, and data center SSD products. We expect each of these three product categories to deliver multiple billions of dollars in revenue in fiscal 2025
(日本語訳)同社は、高帯域メモリ(HBM)、大容量D5、および、LP5ソリューション、データセンター向けSSD製品のポートフォリオを通じて、データセンター分野で優れたポジションを確立しています。これら3つの製品カテゴリはそれぞれ、2025年会計年度に数十億ドルの売上を見込んでいます。
それでは、各製品カテゴリを順番に見ていきましょう。まずはHBMについて、同社が発表した主なポイントを紹介します。
1. 2024年第4四半期のHBMの粗利益率は、会社全体およびDRAMの粗利益率を押し上げており、HBMの生産歩留まりが順調に改善していることを示しています。
2. 2025年中には、HBMの市場シェアが全体のDRAM市場シェアと同程度に達することを見込んでいます。
3. HBMの市場規模(TAM)は、2023年の約40億ドルから2025年には250億ドル以上に成長する見通しです。
4. 業界全体のDRAMビット数に占めるHBMの割合は、2023年の1.5%から2025年には約6%に拡大すると予想しています。
5. マイクロン・テクノロジーのHBM3E(12スタック・36GB)は、競合のHBM3E(8スタック・24GB)ソリューションと比べて、消費電力を20%削減しつつ、DRAM容量を50%増加させています。
6. 2024年と2025年のHBMはすでに完売しており、この期間の価格も決まっています。
7. 2025年と2026年には、業界最先端のHBM3EソリューションをさまざまなHBM顧客に提供することで、より多様な収益構成を確立する予定です。
これは非常に印象的なデータです。特に注目すべきは、HBMが2025年まで完売しており、価格もすでに決まっている点です。また、12スタック・36GBの優れた性能を考えると、生産できるだけ全て売り切れるのも納得です。これがマイクロン・テクノロジーの切り札であり、ここには大きな成長の可能性があると感じます。
次に、データセンター向けの「通常の」DRAM製品についてです。
(原文)We see strong demand for our high-capacity D5 and LP5 solutions. We are seeing increasing adoption of our high-capacity mono-die-based 128GB D5 DIMM products. We are leveraging our innovative, industry leading LP5 solutions to pioneer the adoption of low-power DRAM for servers in the data center.
(日本語訳)大容量D5、および、LP5ソリューションに対する強い需要があり、特に128GBのD5 DIMM製品の採用が増えています。また、革新的で業界最先端のLP5ソリューションを活用して、データセンター向けサーバーに低消費電力のDRAMを導入しています。
将来のデータセンターにおいては、電力消費が大きな課題になります。スマートフォンやノートPC向けに開発された低消費電力DRAMをデータセンターに転用したのは、非常に賢明な判断でした。同社のD5とLP5製品がデータセンター向けで数十億ドルの売上を見込んでいるとは驚きです。
さらに驚いたのは、同社のエンタープライズSSD製品の強さです。
(原文)We have gained substantial share in data center SSDs as a result. We achieved a quarterly revenue record with over a billion dollars in revenue in data center SSDs in fiscal Q4, and our fiscal 2024 data center SSD revenues more than tripled from a year ago.
(日本語訳)その結果、データセンター向けSSDの市場シェアを大幅に拡大し、2024年第4四半期には10億ドルを超える四半期売上を達成しました。また、2024年度のデータセンターSSD売上は前年の3倍以上に増加しています。
1年で売上が3倍になり、第4四半期には10億ドルに達したとは、本当に素晴らしい内容であると言えます。
次章では、さらにマイクロン・テクノロジーの最新の2024年第4四半期決算における「PCおよびスマートフォンセグメント」、「自動車セグメント」、「最新決算におけるその他の注目点」を詳細に分析することで、同社の今後の株価見通しに関して詳しく解説していきます。
※続きは「マイクロン・テクノロジー(MU)の強み:最新の2024年第4四半期決算と競合分析により同社の今後の株価見通しを徹底分析!」をご覧ください。
関連用語
大容量D5: 最新世代の高性能DRAMメモリ「DDR5」のことです。データセンターやサーバー向けに、大容量で高速なデータ転送を実現します。
LP5ソリューション: 低消費電力の「LPDDR5」メモリのことです。もともとスマートフォンやノートPC向けに開発されましたが、データセンターでも電力効率向上のために使用されています。
HBM3E: 「High-Bandwidth Memory 3E」の略で、高速なデータ転送を実現する次世代の高帯域メモリです。主にAIや高性能コンピューティングに使われます。
D5 DIMM: DDR5メモリモジュールのことです。「DIMM(Dual In-line Memory Module)」は主にサーバーやPCに搭載されるメモリモジュールの形状を指します。
アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング
ウィリアム・キーティング氏は、インテル、AMD、サムスン、アップル、マイクロン・テクノロジー等の企業の製品、ロードマップ、技術、および、それらの企業の主要な装置サプライヤーである、ASML、AMAT、キヤノン、ニコン等を専門とする半導体 / テクノロジー・リサーチ・コンサルティング会社、Ingenuity (Hong Kong) Ltd.の創立者兼最高経営責任者(CEO)です。
キーティング氏は、半導体業界において重要性の高いニッチなテーマを専門としています。具体的には、ムーアの法則の将来性、特にムーアの法則(EUV、SDA、NanoImprint)を維持するためのリソグラフィの重要性、音声、画像、パターン認識、暗号通貨マイニングのためのディープラーニング(ニューラルネットワーク)などの特殊なアプリケーションにおけるGPUやその他のカスタムアーキテクチャの役割と成長などが挙げられます。また、メモリの将来、特に3D NANDの台頭と新しいメモリ技術の出現について、定期的にクライアントとのディスカッションを開催しています。
Ingenuity (Hong Kong) Ltd.を設立する以前は、1992年から2014年までインテル・コーポレーションに勤務していました。当初はAIシステムのスペシャリストとして採用され、その後、同社の最先端の300mmファクトリーネットワークをグローバルにサポートするファクトリーオートメーションシステム(ロボット、データベース、ネットワーク、サーバー、クライアント等)の責任者となりました。2000年には、社内にITコンサルティング・グループ(IT Flex Services)を設立し、500人規模のグローバルチームに成長させ、同グループは現在もインテルのIT部門の中核を担っています。2005年には、APAC、中国、日本担当のIT部門のディレクターに任命され、同地域にあるインテルの全オフィスと製造施設のITシステム(インフラ、ネットワーク、データセンター、ERP、セールス、マーケティングシステム、ビジネスインテリジェンスなど)を統括していました。
また、キーティング氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
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