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09 - 28 - 2024

マイクロン・テクノロジー(MU)の強み:最新の2024年第4四半期決算と競合分析により同社の今後の株価見通しを徹底分析!

ウィリアム・ キーティングウィリアム・ キーティング
  • 本稿では、マイクロン・テクノロジー(MU)の強みと今後の株価見通しを、最新の2024年第4四半期決算と競合分析を通じて詳しく解説していきます。
  • マイクロン・テクノロジーのPCおよびスマートフォンセグメントは成長が鈍化しているものの、2024年および2025年に緩やかな出荷増加が見込まれています。 
  • 自動車セグメントは4年連続で売上過去最高を達成し、長期的に安定した収益源として重要な役割を果たしています。 
  • 2025年のHBM供給に関する懸念があるものの、マイクロンは優れた製品ポートフォリオと需要見通しに自信を持っています。

※「マイクロン・テクノロジー(MU)の決算速報:HBMの想定市場規模を大幅に拡大し、時間外で株価は約15%の上昇!」の続き

マイクロン・テクノロジー(MU)のPCおよびスマートフォンセグメント

PCおよびスマートフォンセグメントは、依然としてマイクロン・テクノロジー(MU)の売上高の大部分を占めていると考えられますが、競争が激しく、成長はほとんど見込めません。ただし、これまでの予測通り、2024年には両セグメントとも緩やかな出荷台数の増加が見込まれています。では、決算説明会の遣り取りで注目すべき点を幾つか見ていきましょう。

(原文)PC unit volumes remain on track to grow in the low-single-digit range for calendar 2024. We expect unit growth to continue in 2025 and accelerate into the second half of calendar 2025, as the PC replacement cycle gathers momentum with the rollout of next-gen-AI PCs, end of support for Windows 10 and the launch of Windows 12.

(日本語訳)PCの出荷台数は、2024年には一桁台前半の成長が予想されており、2025年には引き続き成長が見込まれています。特に、次世代AI搭載PCの普及、Windows 10のサポート終了、Windows 12のリリースに伴い、2025年後半には成長が加速することが期待されています。

(原文)Smartphone customer inventory dynamics are evolving in a manner somewhat similar to that of PC customers. Smartphone unit volumes in calendar 2024 are on track to grow in the low to mid-single-digit percentage range, and we expect unit growth to continue in 2025.

(日本語訳)スマートフォンの在庫状況もPCと同様の動きを見せており、2024年には出荷台数が一桁台前半から中盤の成長を見込んでいます。2025年にも引き続き成長が続く見通しです。

マイクロン・テクノロジーは、PCとスマートフォンの2025年の出荷台数について成長予測を発表した最初の企業だと思います。まだ初期段階ですが、非常に前向きな見通しであり、同社にとって新たな追い風となるでしょう。


マイクロン・テクノロジー(MU)の自動車セグメント

マイクロン・テクノロジー(MU)は長年にわたり自動車向けビジネスに取り組んでおり、具体的な売上額は公表していないものの、過去4年間で毎年成長を続けているようです。

(原文)For the fourth consecutive year, Micron achieved a fiscal year record for automotive revenue in 2024. Micron has built an industry-leading portfolio of automotive grade DRAM and NAND products that provide best-in-class solutions for these high growth applications leveraging our technology and product leadership, top quality rankings, and close customer collaborations.

(日本語訳)2024年には、自動車関連の年間売上高で4年連続の過去最高を達成しました。マイクロン・テクノロジーは、自動車向けに業界トップクラスのDRAMやNAND製品を揃え、技術力、製品の優位性、品質の高さ、顧客との緊密な連携を武器に、高成長分野に最適なソリューションを提供しています。

このセグメントの魅力は、非常に長いライフサイクルがあることです。一度採用されると、その契約は通常5年以上続くため、一度獲得すれば長期的に安定したビジネスとなる点が大きな強みです。


関連用語

DRAM (Dynamic Random Access Memory): 一時的にデータを保存するメモリで、主にコンピュータやスマートフォンのメインメモリとして使用されます。読み書き速度が速く、電源を切るとデータが消えます。

NAND (NAND型フラッシュメモリ): 長期間データを保存できるメモリで、主にSSDやUSBメモリ、スマートフォンのストレージなどに使われます。電源を切ってもデータが保持されるのが特徴です。


マイクロン・テクノロジー(MU)のその他の注目点

マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の決算におけるQ&Aセッションでは、事前の発言内容を大きく超える新しい情報はほとんどありませんでしたが、いくつか興味深い点がありました。まず、HBMの供給過剰の可能性についての質問です。

(原文)On that same topic of HBM there is some concern about the potential for HBM over supply in 25 let's say that are three suppliers instead of the two that are right now is that something you see that there is any potential for over supply and let's say if you take the other scenario where they're continued to be only two suppliers of the next generation HBM, do you think the third supplier could flood the market with additional DRAM just sort of the reverse of this trade ratio arguments so just curious to hear how you think about the supply demand dynamics for both traditional DRAM and HBM for next year?

(日本語訳)HBMについて、2025年に供給過剰のリスクがあるのではないかという懸念があります。現在は2社が供給していますが、これが3社に増えた場合、供給過剰になる可能性はありますか?逆に次世代HBMの供給が引き続き2社のままだとしたら、3社目が市場に追加のDRAMを大量に供給するリスクについてはどう考えていますか?来年の従来型DRAMとHBMの需給バランスについて、どのように見ていますか?

回答の最初の部分は非常に興味深く、ここで言う「3社目」とはもちろんサムスン電子(005930.KS)のことを指しています。

(原文)So we certainly assume that the third supplier will ultimately succeed in having a HBM 3E product as well and will have some share in the marketplace as well. As I pointed out earlier with the solid product that we have, and our product being sold out through 2025 time frame, we are really well positioned with this product.

(日本語訳)3社目の供給者も最終的にはHBM 3E製品を市場に投入し、シェアを獲得するだろうと私たちは考えています。先ほど述べたように、当社の製品は2025年まで完売しており、この製品で非常に有利な立場にいます。

この発言から、サムスンのHBM製品の立ち上げに問題があることがうかがえますが、同時にその問題を解決する見込みがあるとの信頼も示しています。その後の回答は少し長くまとまりに欠ける内容でしたが、要点を簡単にまとめると以下の通りです。

「覚えておいてほしいのは、先端技術の供給が引き続き逼迫しているという点です。2022年から2023年にかけての資本支出削減と新技術ノードへの効率的な移行により、ウェハーの生産能力はピーク時から大幅に減少しています。このウェハー生産能力の減少と、HBMの3対1のトレード比率が、HBMだけでなく一般的な部品の供給も逼迫させている要因となっています。」

つまり、マイクロン・テクノロジーは、サムスン電子がHBMの開発に失敗し、その代わりに使い道のないDRAMを大量に市場に供給するというシナリオは起こりにくいと考えています。私も同意見ですが、これを否定するもう一つの理由があります。それは、2025年にHBMが占めるDRAMビット数の割合が全体の約6%に過ぎないという点です。つまり、サムスンがHBMで失敗したとしても、市場が飽和する可能性はほとんどありません。

最後に資本支出について触れておきます。マイクロン・テクノロジーは2024年度に81億ドルを投資しましたが、来年はさらに大幅な増加が見込まれています。

(原文)Micron invested $8.1 billion in capex in fiscal 2024. We expect fiscal 2025 capex to be meaningfully higher and at around the mid-30s percentage range of revenue based on our current capex and revenue expectations. The growth in both greenfield fab construction and HBM capex investments is projected to make up the overwhelming majority of the year-over-year capex increase. As a reminder, our investments in facility and construction in Idaho and New York will support our long-term demand outlook for DRAM and will not contribute to bit supply in fiscal 2025 and 2026.

(日本語訳)マイクロンは2024年度に81億ドルの設備投資を行いました。2025年度の設備投資は、現在の予測に基づくと売上の約35%程度と、かなり増える見込みです。新たな工場建設やHBM関連の投資が、前年比の設備投資増加の大部分を占める予定です。また、アイダホ州とニューヨーク州での施設建設への投資は、DRAMの長期的な需要を見越したものであり、2025年および2026年度のビット供給には影響しません。

ここで簡単に計算すると、2025年度の売上予測が373億ドルとすると、その35%は約130億ドルとなり、前年比で62%の増加となります。以上より、マイクロン・テクノロジーは明らかに将来に向けて大きな計画を持っているようですね!


関連用語

HBM (High Bandwidth Memory): 高速データ転送を実現するメモリ技術で、GPUやAI処理向けのデバイスに使用される。従来のメモリに比べて転送速度が高く、エネルギー効率が良いのが特徴。

HBM 3E: HBMメモリの最新バージョンで、さらに高いデータ転送速度と容量を提供するため、次世代の高性能計算向けに設計されている。

ウェハー: 半導体製造に使用される薄いシリコンの円盤で、チップを製造するための基盤となる材料。

DRAMビット数: DRAMメモリの総記憶容量を示す指標で、半導体業界でメモリ生産量や技術進化を評価する際に使用される。


マイクロン・テクノロジー(MU)の最新の2024年第4四半期決算に関するまとめ

今回の決算は、おそらくマイクロン・テクノロジー(MU)にとってこれまでで最高の内容だったと言えるでしょう。決算発表前にはマイクロン・テクノロジーに対してネガティブな見方も多くありましたが、その一因として、6月中旬に史上最高値の153ドルをつけた株価が、8月初めには86ドルまで下落したことが挙げられます。しかし、決算発表後の株価上昇で現在は109.8ドルとなっています。

今回の決算発表で示されたのは、同社が万全の体制で取り組んでおり、始まったばかりのAIブームを最大限に活かせる魅力的な製品ラインアップを持っているということです。マイクロン・テクノロジーが「月に向かう」わけではないにせよ、今後も力強く持続的な成長を遂げていく企業であるように見えます。これからもマイクロン・テクノロジーには注目していきたいと思います!Zoom Zoom Zoom.


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

ウィリアム・キーティング氏は、インテル、AMD、サムスン、アップル、マイクロン・テクノロジー等の企業の製品、ロードマップ、技術、および、それらの企業の主要な装置サプライヤーである、ASMLAMAT、キヤノン、ニコン等を専門とする半導体 / テクノロジー・リサーチ・コンサルティング会社、Ingenuity (Hong Kong) Ltd.の創立者兼最高経営責任者(CEO)です。

キーティング氏は、半導体業界において重要性の高いニッチなテーマを専門としています。具体的には、ムーアの法則の将来性、特にムーアの法則(EUVSDANanoImprint)を維持するためのリソグラフィの重要性、音声、画像、パターン認識、暗号通貨マイニングのためのディープラーニング(ニューラルネットワーク)などの特殊なアプリケーションにおけるGPUやその他のカスタムアーキテクチャの役割と成長などが挙げられます。また、メモリの将来、特に3D NANDの台頭と新しいメモリ技術の出現について、定期的にクライアントとのディスカッションを開催しています。

Ingenuity (Hong Kong) Ltd.を設立する以前は、1992年から2014年までインテル・コーポレーションに勤務していました。当初はAIシステムのスペシャリストとして採用され、その後、同社の最先端の300mmファクトリーネットワークをグローバルにサポートするファクトリーオートメーションシステム(ロボット、データベース、ネットワーク、サーバー、クライアント等)の責任者となりました。2000年には、社内にITコンサルティング・グループ(IT Flex Services)を設立し、500人規模のグローバルチームに成長させ、同グループは現在もインテルのIT部門の中核を担っています。2005年には、APAC、中国、日本担当のIT部門のディレクターに任命され、同地域にあるインテルの全オフィスと製造施設のITシステム(インフラ、ネットワーク、データセンター、ERP、セールス、マーケティングシステム、ビジネスインテリジェンスなど)を統括していました。

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