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09 - 27 - 2024

WFE(半導体前工程製造装置)市場の将来性と注目の半導体製造装置(Semicap)関連銘柄の今後の株価見通しを徹底分析!

ダグラス・ オローリンダグラス・ オローリン
  • 本稿では、WFE(半導体前工程製造装置)市場の将来性と注目の半導体製造装置(Semicap)関連銘柄の一覧、並びに、各銘柄の今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
  • 半導体製造装置(Semicap)市場において、WFE(半導体前工程製造装置)の成長率は予想以上に高く、マイクロン・テクノロジー(MU)の設備投資も回復の兆しを見せています。 
  • 中国市場のピークや中国への輸出規制の影響が懸念されていますが、ロジック分野やメモリ分野の回復が期待されており、これが成長のカギとなっています。
  • 歴史的に、半導体製造装置関連株は調整後に強い回復を見せており、現在のバリュエーションは魅力的な水準であるように見えます。

※「マイクロン・テクノロジー(MU)の今後の株価見通し:最新の2024年第4四半期決算とガイダンスは好調で時間外で株価上昇!」の続き

WFE(半導体前工程製造装置)の予測は低すぎる可能性:既知と未知について

今、サイクルの中でも少し特異な状況にあると思います。まず結論から言うと、私はWFE(半導体前工程製造装置)に対して強気です。Joe Moore氏が2025年のWFE成長率を5%と見込んだことが、その兆しです。恐怖のピークは過ぎ去り、マイクロン・テクノロジー(MU)の設備投資が過去最高水準に戻るというコメントからも、メモリ関連の投資への懸念は過剰だったと言えるでしょう。私の予想では、HBMやAIロジック、最先端ファウンドリーの稼働率向上により、WFEは15〜20%、もしくはそれ以上の成長を見せる可能性が高いと考えています。

さらに、もう一つの懸念材料があります。それは中国です。半導体製造装置業界における問題や不安の大きな原因は、中国がピークを迎えており、今後それが大きな障害になると誰もが感じている点にあります。そして、直近の四半期で、中国の半導体装置企業による収益がピークを迎えた可能性が高いです。

このデータは、過去12ヶ月間に前年同期比で増加したドルベースの売上高を示しています。棒グラフが高いほど売上高の加速を示し、低いほど減速を示します。今まさに、中国からの売上高が大幅に減速する局面に差し掛かっており、今後予想される輸出規制を考えれば、これはほぼ確実な状況です。

半導体製造装置(Semicap)大手の中国向け直近12か月の売上高増加額

(出所:筆者作成)

一方で、他の事業はメモリと2021年のロジックの供給過剰による影響で低迷しています。ちょうど中国がピークに達したタイミングで、他のビジネスは底にある状況です。

半導体製造装置(Semicap)大手の中国向け以外の直近12か月の売上高増加額

(出所:筆者作成)

中国のピークは予想していたものの、ロジックとメモリの回復が(マイクロン・テクノロジーが明確なサインを示すまで)確実かどうかは分かりませんでした。既知の情報と未知のリスクを天秤にかけるケースで、市場はロジックの成長持続性に対する懸念が強く、中国経由の売上高減少の確実性以上にそのリスクを感じているようです。

言い換えると、市場は利益率の高い30〜40%の売上部分に過剰に反応している一方で、低迷している60〜70%の事業を無視している状況です。今こそ、この60〜70%に目を向けるべき時であり、2nmノードによるロジックの需要は15%以上の増加が見込まれ、マイクロン・テクノロジーもメモリ投資の回復を明示しています。

そして、ここから、企業の売上高は絶対額で増加を加速させるでしょう。歴史的に見ると、こうした局面は半導体製造装置関連株を買う絶好のタイミングでした。そして、来年半ばの大幅な売上高増加の時期に入ると、リターンはピークに達し始めます。

半導体製造装置(Semicap)大手の直近12か月の売上高増加額合計

(出所:筆者作成)

さらに、現在は典型的な20〜30%の調整局面にあり、そこから回復しつつあります。メモリ市場については回復のサインが出ており、中国の輸出規制は投資家が過剰に反応しているため、これが一つの転換点になる可能性があります。

(出所:Koyfin)

過去のデータを見ると、約20%の調整局面は、絶好の投資機会であることが多いです。

さらに、現在のバリュエーションはほぼ平均的な水準にあります。今年の初めには半導体製造装置関連企業のバリエーションが拡大していたため、6月には私は弱気な見方をしていましたが、今こそその判断を見直すべき時期だと感じています。バリュエーションとサイクルのタイミングが非常に良好です。

前回のマイクロン・テクノロジー(MU)の決算概要と当時の私の同社に対する見通しは下記のレポートで解説しています。未だご覧になっていない方は、インベストリンゴのメインページより是非ご覧ください。

マイクロン・テクノロジー(MU)2024年3Q決算速報と今後の株価見通し:ガイダンスで株価下落も、HBM投資の拡大に注目

半導体製造装置企業で構成されたポートフォリオの今後12か月の予想PER推移

(出所:筆者作成)

Avg NTM P/E:予想PER平均(今後12か月ベース)

Hist Avg.:過去平均

+2sd:+2標準偏差

-2sd:-2標準偏差

半導体製造装置業界は、中国経由の売上高が悪化するという既知の事実に過剰反応していますが、事業全体の60〜70%の部分を無視しています。ロジック分野は技術の進化によって改善し、メモリ分野では設備投資に関して「問題なし」のサインが出ています。さらに、歴史的に見てもこの業界はアウトパフォームする傾向があり、今は10月から12月という季節的に最も強い時期に差し掛かっています。

完璧な状況ではありませんが、市場が過去にとらわれており、今後の改善を信じていないのは明らかです。しかし、私は状況は好転すると考えており、半導体製造装置関連企業全体に再び注目する価値があると思います。

EUV技術の需要が落ち着いてきたため、ASML(ASML)への強気な見方はしていませんが、ラムリサーチ(LRCX)、アプライド・マテリアルズAMAT)、そして東京エレクトロンには注目しています。GAA(ゲートオールアラウンド)技術ではエッチングとデポジションが大きな勝者となるでしょう。また、オントゥー・イノベーション(ONTO)、(CAMT)、ASMインターナショナルASM:NA/ASMIY)といった企業も個別に注目しています。何よりも、これらの企業は長期的に非常に優れたパフォーマンスを発揮しており、金利引き下げによって景気循環株を購入するタイミングであれば、これらの企業は最良の選択肢となると見ています。


関連用語

WFE(半導体前工程製造装置):ウェハーを製造するための装置で、リソグラフィ、エッチング、デポジションなど半導体の前工程に必要な装置のことを指す。

ロジック:コンピュータや電子機器の演算処理を行う半導体のこと。例えば、CPUやGPUなどのプロセッサーを指す。

2nmノード:半導体の製造技術世代を表す用語で、トランジスタのサイズが非常に小さい(2ナノメートル)プロセス技術。小型化により性能向上と省エネルギーが期待されている。

EUV(極端紫外線リソグラフィ):非常に短い波長の紫外線を使ったリソグラフィ技術で、微細な回路をウェハー上に描くために使われる。次世代の製造プロセスで不可欠。

GAA(ゲートオールアラウンド)技術:次世代のトランジスタ技術で、電流を流すチャンネルをすべての方向からゲートで囲む構造。従来の技術よりも電力効率が高く、性能が向上。

エッチング:半導体製造プロセスの一部で、不要な部分を削り取ってウェハーに回路を形成する工程。

デポジション:半導体製造における薄膜形成プロセスで、ウェハーの表面にさまざまな材料を均一に堆積させて、回路や構造を作り出す工程。


半導体製造装置企業(Semicap)リスト

ASMLASML):リソグラフィ専業

アプライド・マテリアルズAMAT):デポジション、エッチング、検査

ASMインターナショナルASM:NA/ASMIY):ロジック向けのALD専業

東京エレクトロン:エッチング、コーター、デポジション、日本企業

KLAコーポレーションKLAC):検査とプロセス制御

ラムリサーチLRCX):主にメモリ向けのエッチング企業

オントゥー・イノベーションONTO):メモリ、検査、HBMプロセス制御

キャムテックCAMT:HBMプロセス制御に特化

MKSインスツルメンツMKSI):サブシステム企業

ウルトラ・クリーン・ホールディングスUCTT):サブシステム企業

イコル・ホールディングスICHR):サブシステム企業

ノヴァNVMI):材料検査企業

これらはどれも優れた企業で、それぞれ異なるリスクとリターンがあります。また、繰り返しとなりますが、これは投資助言ではありません。

各企業について詳しく知りたい場合は、インベストリンゴのプラットフォーム上より、私の各企業に関する過去の記事をご確認ください。


アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA

ダグラス・オローリン氏は、自身が2020年に設立した半導体調査会社ファブリケイティド・ナレッジ社のチーフアナリストを務め、主に半導体関連銘柄とAIセクターの最新動向の分析に焦点を当てています。

ファブリケイティド・ナレッジ社設立以前は、テキサス州ダラスを拠点とする投資会社Bowie Capitalで投資アナリストを務めていました。そして、Bowie Capitalでは、コンパウンダー(長期間にわたって一貫して高いリターンを生み出し、その価値を複利で成長させる能力を持つ企業)とクオリティ重視の投資に焦点を絞って分析 / 投資活動に従事しておりました。

その経験を通じて、オローリン氏は半導体、特にムーアの法則の終焉という変化するストーリーと、それが半導体業界/ 銘柄にとってどのような意味を持つのかに興味を持つようになりました。結果、半導体セクターに対する理解を一層追求するためのプロジェクトとして、ファブリケイティド・ナレッジ社を設立しました。

また、オローリン氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、オローリン氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


半導体銘柄関連レポート

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