11/07/2023

やや弱気
アップル
やや弱気
アップルはバリュエーション面で割高に見えます。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の比較と今後の株価見通し・将来性(Apple / CVS Health)

one red appleジェームズ・ フォードジェームズ・ フォード
  • 本稿では、割高なアップル(APPL)とCVSヘルス(CVS)を比較しており、この2つの銘柄には多くの共通点がある。
  • CVSヘルスは、アップルと財務内容も成長見通しも似ているが、遥かに割安である。
  • 以上より、個人的には、アップルを売り目線で見ているのに対し、CVS買い目線で見ている。

アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の概要

アップル(AAPL)は、ウォール街で最も注目され、好まれている銘柄の一つである。

しかし、最新の決算を受けて、株価は売られる展開となった。

足元、業績と収益の伸びは鈍化しており、中国でのリスクも高まっている。

また、今では、アップルは成長株とは呼べず、バリュー株だとすれば著しく割高である。

アップルに関する前回の記事において、私は、ARヘッドセットを市場に投入することの難しさについて語り、同社を中立評価とした。

そして、今日は、アップルをCVSヘルス(CVS)と比較したい。

これらの企業は全く異なるビジネスを展開しているが、多くの類似点もある。

結局のところ、同じような収益成長が予測されているにもかかわらず、なぜ、一方の株が他方の株の3倍以上の利益倍率で取引されているのだろうか?

ノイズを取り除き、ファンダメンタルズにこだわれば、勝敗は明らかである。

アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の収益と貸借対照表

アップルは携帯電話を販売し、CVSヘルスはヘルスケアサービスを提供しており、表面上では全く異なる2つの企業であるが、他の面では非常によく似た側面を持っている。

損益計算書:直近12カ月(USD建て) AAPLCVS
売上高 383,285,002,000 346,600,997,000
一株当たり売上高 24.34 268.63
希薄化後EPS 6.13 6.53
純利益 96,995,000,000 8,470,000,100
売上総利益 169,148,000,000 52,998,000,000
EBITDA 125,820,002,000 18,343,000,100
営業利益 114,301,000,000 14,045,000,000
普通株式に帰属する純利益 96,995,000,000 8,470,000,000

アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成

CVSヘルスもアップルも、売上高の規模間は非常に似ており、EPSもかなり似ている。

しかし、最大の違いはEBITDAである。

更に、CVSヘルスの従業員数はアップルの約2倍程度である。

貸借対照表に関しても類似点がある。

貸借対照表:直近の四半期(USD建て)
AAPL CVS
現金 61,555,000,000 16,188,000,000
一株当たり現金 1.93 10.13
負債 123,930,001,000 80,096,002,000
純有利子負債 -38,169,000,000 63,908,000,000
有利子負債自己資本比率 199.42% 107.50%
短期借入金 5,985,000,000 1,000,000,000
長期借入金 95,281,000,000 58,289,000,000
流動比率 0.99 0.86
当座比率 0.84 0.60
カバレッジ・レシオ 29.06 5.57
一株当たり純資産 4.00 57.76
有利子負債フリー・キャッシュ・フロー比率 3.53 14.76
長期負債総資本比率 57.26% 49.30%

アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成

両社共に、長期負債資本比率は5060%程度であり、流動比率も同程度である。

しかし、アップルの方が、純有利子負債がマイナスで、カバード・レシオがほぼ30と、財務体質がかなり強いことが分かる。

アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の成長と収益性

意外に思われるかもしれないが、CVSヘルスとアップルは、成長という点では同様の業績を上げており、どちらかといえば、CVSヘルスの方が見通しが良いように思われる。



AAPL

CVS

売上高成長率(前年同期比)

-2.80%

10.26%

売上高成長率(予想)

2.11%

5.79%

過去3年間の年平均成長率(CAGR)

11.77%

9.32%

過去3年間の希薄化後EPS年平均成長率(CAGR)

23.18%

2.59%

EBITマージン

29.82%

4.05%

レバードFCFマージン

21.44%

3.46%

アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成

アップルの収益が減少しているのに対して、CVSヘルスは、今年10%以上成長し、かなり良い業績を上げている。

過去3年間で、アップルの収益は11.77%成長し、CVSヘルスは9.32%成長した。

しかし、CVSヘルスの方が将来の収益成長率は高い。

とはいえ、アップルの方が収益性が高く、EBITとフリー・キャッシュ・フロー・マージンが遥かに大きいことが分かる。

更に、収益性の向上は、EPS成長率の大幅な上昇につながっている。

実際に、過去3年間で、アップルのEPSは23.18%増加したのに対し、CVSは2.59%しか増加していない。

アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の今後の見通し

過去5年間、アップルは継続的に収益を伸ばし、投資家に報いることで、より良いパフォーマンスを提供してきたが、今後はそうではないかもしれない。

CVSヘルスEPS予想(Source:ナスダックHP

アップルEPS予想(Source:ナスダックHP

上図は、市場のアナリストによる、CVSヘルスの予想EPS、下図はアップルの予想EPSを示したものである。

また、今後4年間で、CVSヘルスの収益は、8.57ドルから10.35ドルへ、10%強の成長が見込まれる。

一方、アップルの収益は、約36%成長すると予想されている。

目先の業績では、アップルの方がまだ少し良さそうだが、2032年まで見てみると、両社ともEPSは倍増すると予測されている。

CVSヘルスのEPSは8.57ドルから16.35ドルに、アップルは6.53ドルから12.99ドルになる。

今後10年間の見通しはかなり似ているように見えるが、長期的なターゲットの信頼性が低いことは言っておく価値がある。

業界の成長に関して、マッキンゼーは、2026年まで、米国のヘルスケアが年平均成長率4%で成長すると予測している。

一方、Statistaは、2023年から2028年までの家電製品の年平均成長率を2.27%と予測している。

どちらも高成長市場ではないが、どちらかといえば、ヘルスケア市場の方が、今後は少し良さそうに見える。

とはいえ、アップルには、サービス事業など他の成長手段もある。

 いずれにせよ、これらのことは、上述のアナリスト予想に反映されているはずである。

アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)のバリュエーション

両社にはこれだけの共通点があるにもかかわらず、バリュエーション(株価倍率)の圧倒的な差には驚かされる。


AAPL

CVS

Non-GAAPベースPER(直近過去12か月)

28.86

8.16

GAAPベースPER(予想)

27.07

10.30

EV/EBITDA倍率(予想)

20.50

7.88

株価純資産倍率(直近過去12か月)

44.20

1.22

株価キャッシュフロー倍率(直近過去12か月)

24.85

6.41

アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成

CVSヘルスのPERが8.16であるのに対し、アップルは28.8以上のPERで取引されている。

アップルの株価キャッシュフロー倍率は、CVSヘルスの6.4に対し、ほぼ25であり、更に、アップルのEV/EBITDA倍率は、CVSヘルスのほぼ3倍である。

どう考えても、アップルはCVSより割高である。

理由は幾つか考えられるが、果たして、この格差を正当化するのに十分な理由であろうか?

アップル・バリュエーション(Source:Alphaspread)

CVSヘルス・バリュエーション(Source:Alphaspread)

Alphaspreadによると、アップルの価格は、本質的価値より23%程高い。

これはDCFと相対評価を考慮したものである。

一方で、CVSヘルスは、本質的価値より約56%低く取引されている。

興味深いことに、アップルの株価とこの価値指標との相関は92%である。

故に、株価はここから下落する可能性があると見ている。

しかし、CVSヘルスは、本質的価値よりかなり低い価格で取引される傾向があり、価格とこの価値指標との相関は56%に過ぎない。

アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)のリスクとその他の考慮すべき点

アップルの高いバリュエーションが正当化されると主張する人は多いだろうし、株価はプレミアムに値するかもしれないが、この主張は刻々と弱くなってきている。

現段階では、アップルはあまりにも大きく成熟しすぎており、大幅な収益成長を実現することは難しい。

更に、スマートフォン市場は飽和状態にあり、何よりも中国が大きな逆風になる可能性がある。

中国での売上は、前四半期に減少しており、特に地政学的状況が改善しなければ、この傾向は続く可能性がある。

一方、CVSヘルスは非常に安定した企業である。

ヘルスケアでは爆発的な成長は望めないかもしれないが、地政学的なリスクはなく、今後10年間は、エクスポージャーを持つ上で、素晴らしいセクターであることは間違いない。

アップル(AAPL) or CVSヘルス(CVS)、そして勝者は・・・

アップルとCVSヘルスでは、奇妙な比較にはなるが、アップル株が過大評価されていることを示す一助になると思う。

両社とも有名企業であり、収益面では、共に、一定の成長が期待できる態勢が整っている。

しかし、より多くの成長シナリオがあるかもしれないが、アップルのバリュエーションは遥かに割高であり、足元のアップルを取り巻く環境・トレンドは、このような割高なバリュエーションをサポートしていないように見える。

結論としては、投資家は、CVSヘルスのような、より良いバリュエーションの銘柄を買う方が良いだろうと見ている。