やや弱気アップルアップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の比較と今後の株価見通し・将来性(Apple / CVS Health)
ジェームズ・ フォード- 本稿では、割高なアップル(APPL)とCVSヘルス(CVS)を比較しており、この2つの銘柄には多くの共通点がある。
- CVSヘルスは、アップルと財務内容も成長見通しも似ているが、遥かに割安である。
- 以上より、個人的には、アップルを売り目線で見ているのに対し、CVS買い目線で見ている。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の概要
アップル(AAPL)は、ウォール街で最も注目され、好まれている銘柄の一つである。
しかし、最新の決算を受けて、株価は売られる展開となった。
足元、業績と収益の伸びは鈍化しており、中国でのリスクも高まっている。
また、今では、アップルは成長株とは呼べず、バリュー株だとすれば著しく割高である。
アップルに関する前回の記事において、私は、ARヘッドセットを市場に投入することの難しさについて語り、同社を中立評価とした。
そして、今日は、アップルをCVSヘルス(CVS)と比較したい。
これらの企業は全く異なるビジネスを展開しているが、多くの類似点もある。
結局のところ、同じような収益成長が予測されているにもかかわらず、なぜ、一方の株が他方の株の3倍以上の利益倍率で取引されているのだろうか?
ノイズを取り除き、ファンダメンタルズにこだわれば、勝敗は明らかである。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の収益と貸借対照表
アップルは携帯電話を販売し、CVSヘルスはヘルスケアサービスを提供しており、表面上では全く異なる2つの企業であるが、他の面では非常によく似た側面を持っている。
損益計算書:直近12カ月(USD建て) | AAPL | CVS |
売上高 | 383,285,002,000 | 346,600,997,000 |
一株当たり売上高 | 24.34 | 268.63 |
希薄化後EPS | 6.13 | 6.53 |
純利益 | 96,995,000,000 | 8,470,000,100 |
売上総利益 | 169,148,000,000 | 52,998,000,000 |
EBITDA | 125,820,002,000 | 18,343,000,100 |
営業利益 | 114,301,000,000 | 14,045,000,000 |
普通株式に帰属する純利益 | 96,995,000,000 | 8,470,000,000 |
アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成
CVSヘルスもアップルも、売上高の規模間は非常に似ており、EPSもかなり似ている。
しかし、最大の違いはEBITDAである。
更に、CVSヘルスの従業員数はアップルの約2倍程度である。
貸借対照表に関しても類似点がある。
貸借対照表:直近の四半期(USD建て) |
AAPL | CVS |
現金 | 61,555,000,000 | 16,188,000,000 |
一株当たり現金 | 1.93 | 10.13 |
負債 | 123,930,001,000 | 80,096,002,000 |
純有利子負債 | -38,169,000,000 | 63,908,000,000 |
有利子負債自己資本比率 | 199.42% | 107.50% |
短期借入金 | 5,985,000,000 | 1,000,000,000 |
長期借入金 | 95,281,000,000 | 58,289,000,000 |
流動比率 | 0.99 | 0.86 |
当座比率 | 0.84 | 0.60 |
カバレッジ・レシオ | 29.06 | 5.57 |
一株当たり純資産 | 4.00 | 57.76 |
有利子負債フリー・キャッシュ・フロー比率 | 3.53 | 14.76 |
長期負債総資本比率 | 57.26% | 49.30% |
アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成
両社共に、長期負債資本比率は50~60%程度であり、流動比率も同程度である。
しかし、アップルの方が、純有利子負債がマイナスで、カバード・レシオがほぼ30と、財務体質がかなり強いことが分かる。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の成長と収益性
意外に思われるかもしれないが、CVSヘルスとアップルは、成長という点では同様の業績を上げており、どちらかといえば、CVSヘルスの方が見通しが良いように思われる。
AAPL | CVS | |
売上高成長率(前年同期比) | -2.80% | 10.26% |
売上高成長率(予想) | 2.11% | 5.79% |
過去3年間の年平均成長率(CAGR) | 11.77% | 9.32% |
過去3年間の希薄化後EPS年平均成長率(CAGR) | 23.18% | 2.59% |
EBITマージン | 29.82% | 4.05% |
レバードFCFマージン | 21.44% | 3.46% |
アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成
アップルの収益が減少しているのに対して、CVSヘルスは、今年10%以上成長し、かなり良い業績を上げている。
過去3年間で、アップルの収益は11.77%成長し、CVSヘルスは9.32%成長した。
しかし、CVSヘルスの方が将来の収益成長率は高い。
とはいえ、アップルの方が収益性が高く、EBITとフリー・キャッシュ・フロー・マージンが遥かに大きいことが分かる。
更に、収益性の向上は、EPS成長率の大幅な上昇につながっている。
実際に、過去3年間で、アップルのEPSは23.18%増加したのに対し、CVSは2.59%しか増加していない。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)の今後の見通し
過去5年間、アップルは継続的に収益を伸ばし、投資家に報いることで、より良いパフォーマンスを提供してきたが、今後はそうではないかもしれない。
上図は、市場のアナリストによる、CVSヘルスの予想EPS、下図はアップルの予想EPSを示したものである。
また、今後4年間で、CVSヘルスの収益は、8.57ドルから10.35ドルへ、10%強の成長が見込まれる。
一方、アップルの収益は、約36%成長すると予想されている。
目先の業績では、アップルの方がまだ少し良さそうだが、2032年まで見てみると、両社ともEPSは倍増すると予測されている。
CVSヘルスのEPSは8.57ドルから16.35ドルに、アップルは6.53ドルから12.99ドルになる。
今後10年間の見通しはかなり似ているように見えるが、長期的なターゲットの信頼性が低いことは言っておく価値がある。
業界の成長に関して、マッキンゼーは、2026年まで、米国のヘルスケアが年平均成長率4%で成長すると予測している。
一方、Statistaは、2023年から2028年までの家電製品の年平均成長率を2.27%と予測している。
どちらも高成長市場ではないが、どちらかといえば、ヘルスケア市場の方が、今後は少し良さそうに見える。
とはいえ、アップルには、サービス事業など他の成長手段もある。
いずれにせよ、これらのことは、上述のアナリスト予想に反映されているはずである。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)のバリュエーション
両社にはこれだけの共通点があるにもかかわらず、バリュエーション(株価倍率)の圧倒的な差には驚かされる。
AAPL | CVS | |
Non-GAAPベースPER(直近過去12か月) | 28.86 | 8.16 |
GAAPベースPER(予想) | 27.07 | 10.30 |
EV/EBITDA倍率(予想) | 20.50 | 7.88 |
株価純資産倍率(直近過去12か月) | 44.20 | 1.22 |
株価キャッシュフロー倍率(直近過去12か月) | 24.85 | 6.41 |
アップルとCVヘルスによる提出書類を基に筆者作成
CVSヘルスのPERが8.16であるのに対し、アップルは28.8以上のPERで取引されている。
アップルの株価キャッシュフロー倍率は、CVSヘルスの6.4に対し、ほぼ25であり、更に、アップルのEV/EBITDA倍率は、CVSヘルスのほぼ3倍である。
どう考えても、アップルはCVSより割高である。
理由は幾つか考えられるが、果たして、この格差を正当化するのに十分な理由であろうか?
アップル・バリュエーション(Source:Alphaspread)
CVSヘルス・バリュエーション(Source:Alphaspread)
Alphaspreadによると、アップルの価格は、本質的価値より23%程高い。
これはDCFと相対評価を考慮したものである。
一方で、CVSヘルスは、本質的価値より約56%低く取引されている。
興味深いことに、アップルの株価とこの価値指標との相関は92%である。
故に、株価はここから下落する可能性があると見ている。
しかし、CVSヘルスは、本質的価値よりかなり低い価格で取引される傾向があり、価格とこの価値指標との相関は56%に過ぎない。
アップル(AAPL)とCVSヘルス(CVS)のリスクとその他の考慮すべき点
アップルの高いバリュエーションが正当化されると主張する人は多いだろうし、株価はプレミアムに値するかもしれないが、この主張は刻々と弱くなってきている。
現段階では、アップルはあまりにも大きく成熟しすぎており、大幅な収益成長を実現することは難しい。
更に、スマートフォン市場は飽和状態にあり、何よりも中国が大きな逆風になる可能性がある。
中国での売上は、前四半期に減少しており、特に地政学的状況が改善しなければ、この傾向は続く可能性がある。
一方、CVSヘルスは非常に安定した企業である。
ヘルスケアでは爆発的な成長は望めないかもしれないが、地政学的なリスクはなく、今後10年間は、エクスポージャーを持つ上で、素晴らしいセクターであることは間違いない。
アップル(AAPL) or CVSヘルス(CVS)、そして勝者は・・・
アップルとCVSヘルスでは、奇妙な比較にはなるが、アップル株が過大評価されていることを示す一助になると思う。
両社とも有名企業であり、収益面では、共に、一定の成長が期待できる態勢が整っている。
しかし、より多くの成長シナリオがあるかもしれないが、アップルのバリュエーションは遥かに割高であり、足元のアップルを取り巻く環境・トレンドは、このような割高なバリュエーションをサポートしていないように見える。
結論としては、投資家は、CVSヘルスのような、より良いバリュエーションの銘柄を買う方が良いだろうと見ている。