10/15/2023

TAM(Total Addressable Market:獲得可能な最大市場規模)とは?

a row of yellow stars sitting on top of a blue and pink surfaceマイケル・ウィギンズ・ デ・オリベイラマイケル・ウィギンズ・ デ・オリベイラ
  • 本稿では、Total Addressable Market(TAM:獲得可能な最大市場規模)の概念とビジネス戦略におけるその重要性について論じている。
  • 主に、市場への浸透を成功させるためには、顧客の採用曲線を理解することが重要であることを強調している。
  • また、事業の潜在的な成長と収益性を判断する上でのフリーキャッシュフローの役割を解説している。

サマリー

ここでは、投資を行う前に知っておくべき、また考えておくべきと思われる5つの指標について説明する。様々な指標から何を見出すべきか、またこれらの投資指標の欠点についても言及する。可能な限り、人気企業の実例も紹介したい。

Total Addressable Market (TAM)とは

企業が巨大なTAM(獲得可能な最大市場規模)について語るのを耳にすることがあるだろう。しかし私は、TAMの観点から投資を考えないことを勧める。主な理由は3つある。

過度な単純化:TAMの計算は、しばしば市場全体を見ている。これは、消費者の嗜好を無視し、潜在的な顧客ベースを単純化しすぎる可能性がある。

非現実的な期待:企業がTAM全体を把握できると仮定するのは非現実的である。競争や価格などの要因によって、企業は市場のほんの一部しか獲得できないのが現状である。

競争環境:TAMの計算では、競合状況を考慮しないことが多い。たとえ市場が大きくても、すでに競合他社で飽和している場合もある。

実例として、ウーバー(UBER)のTAMを考えてみよう。

2020年当時、投資家は数兆ドルのTAMを見ていた。数十億ドルではなく、数兆ドルだ。それにもかかわらず、株価は3年以上1000億ドル以下で推移している。

利益とは何か?

過去に、ウォーレン・バフェットは、「EBE(Earnings Before Everything)」と呼ばれる収益を上げている企業が多すぎるというジョークを言った。

EBITDAとは、Earnings Before Interest Tax Depreciation and Amortization(利払い前、税引き前、償却前利益)の略である。これは収益性を大まかに示す指標である。私も実際に企業のEBITDA指標については考えるが、その落とし穴に注意しなければならないことを理解している。

一方、私も含め、多くの投資家は、質の高いビジネスを反映しているとして、非常に高い粗利益率を持つビジネスにしばしば惹かれてきた。

これらのビジネスは、しばしばグロース投資家に好まれる。なぜか?それは、そのような企業は、アマゾンのような成長のための投資を行いながら、損失も受け入れることができるからだ。

とはいえ、アマゾンがそのプレイブックで成功できたのは、10年間の超低金利が少なからず影響していると私は考えている。

質の高いビジネスを反映するものとして、高い粗利益率のビジネスに注目することは有効だが、投資家は懐疑的な見方も十分にすべきであると考える。

上記の事業は、粗利益率が非常に高い。売上原価が売上高の10%未満であることが分かるだろう。間違いなく、非常に粗利益率の高いビジネスである。

しかし、このビジネスがこのような高い利益率を実現しているのは、全ての「ビジネス遂行コスト」を、粗利益の項目の下に置いているからである。

このビジネスはSKillz(SKLZ)であり、私も昔は騙された。しかし、私はこのビジネスへの投資で高い授業料を払ったことにより、教訓を学んだことから、今では同じ失敗を繰り返さないように、それを皆に伝えることができる。

果たして、粗利率は高ければ高いほどいいのだろうか?

上記のビジネスの''売上原価''は売上の76%である。1ドルの売上に対して76セントのコストがかかっている。表面的に見れば、お粗末なビジネスである。

しかし、このウォルマート(WMT)というビジネスは、おそらく最高のビジネスのひとつだろう。そして、このことからどのような教訓が得られるだろうか?投資に近道はないということだ。どんなビジネスにも、どんなセクターにも、破ることのできるルールがある。分析的思考に勝るものはないということである。

フリー・キャッシュフローのすべて

私が好む指標はフリーキャッシュフローである。株式ベースの報酬の増加、運転資本の著しい変化、無形資産の償却の大幅な変化によって簡単にごまかすことができるため、完璧な指標ではない。

フリーキャッシュフローは「オーナーの利益」であるはずだが、操作することができる。例えば、ユニティのキャッシュ・フロー状況をご覧頂きたい。

この例では、ユニティの減価償却費が前年同期比で2.5倍増加していることが分かる。なぜそれが重要なのか?

減価償却費は、最悪のタイプのコストである。 これらは、資本支出という意味では、最初にドアから出て行く実際のコスト、並びに、実際の現金支出であり、その後、その価値は、時間の経過とともに「使用済み」として徐々に認識されていく。

ユニティの場合、前年に大規模な買収を行ったため、無形資産の一部を減損しなければならなかったのである。

しかし、単純にキャッシュフロー計算書を見ただけでは、その事業のキャッシュフローを生み出す能力が、表面的に見えるほど強くない可能性があることは、直ぐには判断できないかもしれない。

モートとは何か?

モートとは、企業の競争優位性のことである。ビジネスがモートを確立するには、さまざまな要因がある。一例として、製品の差別化(アップル / AAPL)、低コスト事業者(ウォルマート / WMTやコストコ / COSTなど)、ネットワーク効果(アマゾン / AMZN、メタ / METAなど)が挙げられる。これ以外にも、他の側面がある点にも留意頂きたい。

しかし、私は、企業の顧客導入曲線が最良の指標だと考えている。但し、これは完璧な指標ではない。流行ビジネスでは、ビジネスが崩壊する直前に顧客導入曲線が非常に高くなることがよくある(例えば、グルーポン / GRPN)。

さらに、コモディティ・ビジネスでは、量と価格の最適化を追求しているため、顧客導入曲線は存在しないだろう。

どのような倍率/バリュエーションを支払うべきか?

事業に支払うバリュエーションや倍率を考えることは、非常に重要である。しかし問題は、異なる金利環境下では、異なる倍率が報われるということだ。

また、その企業の顧客が、どの程度、その企業と深い関係にあるかにもよる。その企業は、常に顧客の再獲得に奔走しなければならないのだろうか?もしそうであれば、そのビジネスは高いバリュエーションを得ることはできないだろう。

しかし、例えばアマゾン・プライムのような、カスタマー・リワード・プログラムを通じて、顧客の忠誠心をある程度確保できるようなビジネス・モデルであれば、投資家はその株式に高い倍率(バリュエーション)を支払うことになるかもしれない。

このディスカッションが、読者の皆様の参考になれば幸いである。

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