Part 2:アップル(AAPL)とOpenAIがWWDC 2024で提携を発表:ChatGPT統合のメリットとデメリットを徹底解説
ウィリアム・ キーティング- アップル(AAPL)はWWDC(Worldwide Developers Conference)でOpenAIと提携し、iOS 18、iPadOS 18、macOS Sequoiaで「Apple Intelligence」を無料で利用できることを発表している。
- 同社は、Siriにおいて特定のクエリに対してSiri自らが対応できるかを判断し、対応できない場合はChatGPTを使用するかユーザーに尋ねる機能を追加している。
- ChatGPTはテキストや画像の文章作成・編集ツールに統合され、ユーザーは無料で利用できるほか、既存のChatGPTサブスクライバーはアップルデバイスで有料機能にアクセスすることが可能になる。
- OpenAIとの提携の噂が浮上した4月下旬以降、アップルの株価は約37%上昇している。
※「Part 1:アップル(AAPL)主催のWWDCで発表されたChatGPTの力を借りたApple Intelligenceを徹底分析」の続き
アップル(AAPL)主催のWWDC:OpenAIとの提携
最後にクレイグ氏は、「Apple Intelligence」について要約し、iOS 18、iPadOS 18、macOC Sequoiaで無料で利用できるようになることを知らせている。
そして、大きな事実が明らかになっている。アップル(AAPL)は、異なるツール間を行き来することなく、他の大規模な言語モデルを使えるようにしたいと考えており、具体的には、これはChatGPTを統合するということを意味している。
その統合はSiriから始まる。
Siriは、特定のクエリにSiriが自ら答えられるかどうかを判断する。もし答えられないと判断した場合、下記の画像の通り、ChatGPTを使って対応するかどうかをユーザーに尋ねる。
アップルはまた、ChatGPTをテキストと画像の両方で、文章作成・編集ツールに統合している。不思議なことに、Siriのクエリの状況とは異なり、このコンテキストでChatGPTを使用するかどうかをユーザーに尋ねることについては言及されていない。
最後に、ChatGPTへのアクセスは無料で、OpenAIのアカウントを作成する必要もない。
クレイグ氏は続けて、既存のChatGPTのサブスクライバーがアップル・デバイスで自分のChatGPTアカウントを接続することで、「有料」機能にアクセスできるようになると説明している。
果たして、ここでは一体何が起きているのだろうか?なぜアップルやOpenAIがこのパートナーシップの道を選ぶのだろうか?アップルユーザーは、望めばすでにApp StoreからChatGPTにアクセスできるし、iPadやMacBookのブラウザからもアクセスできる。つまり、OpenAIはAppleとパートナーシップを結ばなくてもAppleの顧客にアクセスできるのである。
Appleの観点から見ると、ChatGPTを支持し受け入れることで何が得られるものがあるのだろうか?結局のところ、アップルには独自の大規模言語モデル(LLM)がある(らしい)ので、それを改良して使えば良いのではないのだろうか?さらに、アップルが自社製品に無料でApple Intelligenceを含める場合、どのようにして自社のインテリジェンスを収益化するのだろうか?
結論として、アップルはこれまでOpenAIの助けを必要とせずに現在の地位を築いてきたし、OpenAIも同様に、マイクロソフト(MSFT)とのパートナーシップや投資の恩恵を受けているとはいえ、独自に成功してきた過去がある。
この問題に関する私の考えを共有する前に、この点についていくつかの質問をChatGPTに投げかけてみた。回答はかなり長かったので、それらをPart 3に記載している。読者自身で是非その信憑性を判断していただきたい。
では、アップルがOpenAIと提携する動機を理解するためには、まず、マイクロソフトの例を見てみる必要があり、特に、ChatGPTとの提携が公にされた後の同社の株価の動きを見る必要がある。
2023年の初めから、マイクロソフトの株価は一方向にしか動いておらず、その期間で倍以上に上昇している。これが起きた理由は一つしかない。それは、同社がChatGPTと提携したことによるものである。
注:この期間でマイクロソフトの株価が倍増したことが正当化されるかどうかは全く別の問題であり、また別の日に議論すべきトピックであるが、結論を先に言うと、私は正当化されないと考えている。
同じ期間におけるアップルの株価の動きを見ると、全く異なる状況であることがお分かりいただけただろうか。
2024年4月中旬のアップルの株価は、ほぼ2年半前の2022年初めとほぼ同じであった。これはあまり良い状況とは言えない。同じことがマイクロソフトにも当てはまるならそれほど悪くはないが、実際にはそうではなかった。
ただし、アップルとマイクロソフトは直接的な競争相手というわけではない。企業向け市場では一部重なる部分があるが、それだけの話である。しかし、両社は一つの点で競争している。それは、世界最大の時価総額企業であり続けることである。アップルはその地位を長らく維持していたが、マイクロソフトに奪われてしまった。
私の推測では、ChatGPTが登場したとき、アップルは「様子を見守る」というスタンスを取っていたが、マイクロソフトの株価にこれほどの爆発的な影響を与えるとは予想していなかっただろう。しかし、気づいた時には、もう遅かった。アップルにはChatGPTに対抗する手立てがなく、マイクロソフトの時価総額は増え続けている。
もちろん、アップルには他にも問題があった。何年もかけて開発し、数百億ドルを費やした自動運転車プロジェクトは、今年初めに静かに中止されている。そして、Vision Proの発売についても触れざるを得ない。
ティム・クック氏がOpenAIと提携することを望んでいなかったのは明らかである。まず第一に、OpenAIは非常に不安定な組織であることが証明されている。組織構造が混乱しており、管理が不十分で、取締役会からの監督も不十分である。そのドラマは続いており、最近では5月15日にイリヤ・スツケヴァー氏が注目を集めながら退社している。
(日本語訳)ほぼ10年にわたり勤めてきたOpenAIを離れる決断をした。会社の発展は驚異的であり、@sama、@gdb、@miramurati、そして今や素晴らしい研究リーダーである@merettmの指導のもと、OpenAIが安全で有益なAGIを構築することに確信を持っている。共に働けたことは名誉であり、大変光栄であった。皆との別れが寂しくてたまらない。これまで本当にありがとう。次の挑戦に大きな期待を寄せている。個人的に非常に意味のあるプロジェクトであり、その詳細は適切な時期にお知らせするつもりである。
上記のイリヤ氏の発言が本心でないのは明白である。現実には、サム・アルトマンは極端に注目を集めようとしており、彼らのAIが我々にとって脅威となるか、それとも救いとなるか、その日の気分次第で語っているように見える。
そして、この提携の詳細を振り返ると、違和感を感じるかもしれない。ビジネスモデルの明確さが欠けており、誰が誰に何のために支払っているのかが不明瞭である。通常、このような契約が一見して奇妙に感じる場合、それは実際に奇妙であることが多い。
アップルはこの提携を余儀なくされたと私は見ている。マイクロソフトには時価総額の成長で大きく引き離され、自動車プロジェクトは失敗し、Vision Proなども問題を抱えていた。そして、さらに「Apple Intelligence」パッケージに組み込めるものを見たとき、彼らは材料が不足していることに気づいた。基本的には、アップルがこれまでずっと行ってきたことを再パッケージ化したものであり、顧客が主に愛している素晴らしい製品を提供し、異なるデバイス、アプリ、ツール間の高いレベルの統合を実現している。確かに、Apple Intelligenceは新しい機能をいくつか追加しているが、私の視点から見ると、それらはほとんどが些細なものであるように見える。おそらく、Siriのアップグレードは重要なものとなるであろうが、いずれにせよ、進展が遅れすぎているのは事実である。
キラーパンチなしでApple Intelligenceを発表することは、市場の反応からすると、全く発表しないよりも悪い結果を招く。これが、アップルがOpenAIとのこの異例の契約を行うことに至った理由だと私は考えている。
アップルが株価を上昇させることが目標であったなら、OpenAIとの提携は明らかにその効果を発揮したと言えるだろう。両社の提携の噂が浮上したのは4月下旬である。その時点から、アップルの株価は約165ドルから約226ドル、つまり約37%上昇しており、悪くない成果だと言える。
これまで、アップルの視点からのみ今回のパートナーシップを見てきたが、OpenAIの視点から見た場合はどうだろうか?OpenAIがアップルと提携する動機は何だろうか?主に三つの理由が考えられる。
第一の理由は、エコシステムのリーチと影響力である。マイクロソフトとの提携、特に急速に台頭するCoPilot+ PCコンセプトにおけるChatGPTの役割によって、OpenAIは巨大なPCエコシステムにしっかりと組み込まれている。
アップルとの提携は、アップルの巨大なiPhoneエコシステムにおいても同様の効果をもたらす。もちろん、アップルの顧客はApp Storeを通じてChatGPTにアクセスすることは常に可能だったが、アップル・デバイスのユーザーインターフェースにChatGPTがネイティブに統合されるのとは違う話である。
第二の理由は金銭に関するものであり、特にアップルのApp Storeを通じてアプリのサブスクリプションから得られる売上に対する30%の課金に関する問題である。この問題は両社間で迅速に解決されるべき課題だったと思われるが、パートナーシップを通じて両者が満足する形で解決されたと信じている。
第三の理由は、計算能力へのアクセスである。ChatGPTの使用が増えるにつれて、より多くの計算能力が必要となる。現在はMicrosoft Azureがこれを供給しているが、ChatGPTがAppleの製品に統合されると、それだけでは不十分になるだろう。近い将来、AppleのサーバーがChatGPTの推論のための計算能力を提供する場面が見られることになるだろう(私がここで言及していることは推論のための計算能力であり、AIのトレーニングのためではない)。
最後に考慮すべき視点はマイクロソフトのものである。明らかに、OpenAIとマイクロソフトの関係はもはや独占的なものではなく、非常にオープンなものとなっている。この状況にマイクロソフトが満足しているとは考えにくいが、驚くことではないだろう。もし今までにサム・アルトマンの真価を理解していなかったのなら、それはマイクロソフトの責任である。
また、最近過去数か月間の出来事を順を追って見てみると非常に興味深いものが見えてくる。まず、5月20日にマイクロソフトがCoPilot+を発表しており、我々も、それについてこちらのレポートで詳しく議論している。
次に、Computexで高い注目を集めたCoPilot+ PCの発表があった。そして最後に、アップルが基本的に同じことを行ったという流れである。以上より、少なくともマイクロソフトは先手を打つことができたと言える。
サム・アルトマン氏の経営方法に慣れてくると、OpenAIのパートナーシップがここで終わることはないということが明らかになるだろう。では、次に提携するのは誰だろうか?
アップル(AAPL)とOpenAIの提携に関する結論
ChatGPTとのパートナーシップがなければ、Apple Intelligenceはアップル(AAPL)がこれまで常に行ってきたこと、また、これまで非常に成功してきた方法における単なる論理的な延長に過ぎなかったであろう。一方で、彼らがChatGPTを「Apple Intelligence」の一部として統合するという決定は、天才的な一手であると同時に、大胆な賭けでもあるように私には見える。
現時点で、OpenAIは世界最大の2社(マイクロソフトとアップル)の時価総額に数兆ドルを追加する手助けをしてきた。そして、その2社の驚異的なバリュエーションを正当化する収益成長も、ほぼすべてOpenAIのChatGPTの成功に依存している。この状況が上手くいかないのではないかという不安を感じるのは私だけだろうか?この点に関しては、時が経てば分かるだろう。
※続きは「Part 3:アップル(AAPL)とOpenAIの提携に関してChatGPTに質問をした結果:無料提供の背景とシナジー効果の有無に迫る」をご覧ください。
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また、私のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、私のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
さらに、その他のマイクロソフト(MSFT)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、マイクロソフトのページにアクセスしていただければと思います。