やや強気アメリカン・ファイナンシャル・グループアメリカン・ファイナンシャル / AFG / 予想配当利回り4% / 強気:高配当保険株の株価分析と今後の見通し(後編)

- 保険会社は、多くの場合、投資家に対して、信頼性が高く、予測可能な収入源を提供している。
- 保険会社のビジネスは、金利上昇の追い風に直面しており、彼らの投資は、低リスクの資産クラスで魅力的なリターンを提供している。
- ここでは、100年以上の歴史を持ち、堅実な株主還元を行っているアメリカン・ファイナンシャル・グループ(AFG:予想配当利回り3.9%)について説明する。
※「マニュライフ / MFC / 予想配当利回り5.8% / 強気:高配当保険株の株価分析と今後の見通し(前編)」の続き
はじめに
保険は、私達の生活の最も基本的な側面において、しばしば必須要件となっている。
車を運転するためには自動車保険に加入することが法的に義務付けられているし、住居には住宅所有者保険や借家保険があり、購入する商品や旅行には保険をかけるオプションがある。
人々は、自分の経済的な幸福を、自分の寿命に照らし合わせて保険をかけ、保険商品がそれに救いの手を差し伸べるのである。
これは企業にも当てはまる。
例えば、賠償保険、ランオフ保険、サイバー保険、損害保険が挙げられるが、これらは、規制上の要件から、あるいは、不測の事態による事業全体のダウンを防ぐために、加入・維持が義務付けられている幾つかの保険のほんの一部に過ぎない。
現代経済における重要な要件である保険商品のスティッキネスを評価し、この保険事業の強みを、私達のパッシブ・インカムへのニーズに活用したいと考えている。
そこで、ここでは、1872年から続く、保険業界の素晴らしい高配当銘柄について説明する。
アメリカン・ファイナンシャル・グループ(AFG:年間予想配当利回り:3.9%)
世界中に120以上の拠点を持ち、7,500人の従業員を抱えるアメリカン・ファイナンシャル・グループ(AFG)は、特殊損害保険分野のリーダーである。
AFGの投資家向けプレゼンテーション
Part 1で述べたように、保険会社にとって、保険引受の収益性は最も重要である。
これは、保険会社が、自らが購入するリスクに価格をつける能力を測るものであり、長期的には、徴収した保険料が支払保険金を上回らなければならない。
総合コンバインド・レシオとは、保険引受収益性を測定するために使用される世界的な保険指標であり、 契約者からのクレームによって発生した損害と費用の合計を、保険契約から得られた収入保険料で割ったものである。
この指標が100%を超えるということは、保険会社が保険料の回収よりも保険金の支払いを多く行っていることを意味する。
同社は 、10年連続でコンバインド・レシオが94%以下であったことから、保険引受の質に関する基準を、社内で確りと定めていると言える。
また、同社は、2023年度について、特殊損害保険の総合コンバインド・レシオを89~91%とし、堅調な保険引受における収益性を示している。更に、同社は、優れたバランスシートを維持しており、大手信用機関からA+/A1の格付けを受けている。
投資家は、AMベスト社から115年以上連続で「A」以上の評価を得ている米国企業は4社しかなく、同社はそのうちの1社であることに留意しなければならない。
同社の普通株は、過去10年間のトータル・リターンが約280%で、インデックスを大きく上回っており、株主にとって非常に有益な投資対象である。
同社は、金融システムを麻痺させ、大手銀行や保険会社が配当の支払いを停止、あるいは、減額する原因となった世界的な金融危機を経ても、18年連続で毎年増配を実施している。
同社は、一株当たり0.71ドルの普通配当を支払っている。
この配当に基づくと、配当性向は27%(年初来ベース)であり、株主還元に対する実質的な安全性と、同社が何度も実施してきた特別配当に対する十分な余力を示している。
最近、同社の取締役会は 、2023年11月22日に支払う1株当たり1.5 ドルの特別配当を承認した。
この支払いを含めると、AFGの利回りは3.9%となる。
同社の債券ポートフォリオの93%は投資適格証券であり、同社が金利上昇という好機に恵まれていることを示している。
保険大手である同社は、2030年まで債務の満期がなく、4億5,000万ドルのクレジットラインからの借入もない。
更に、同社は、第3四半期末時点で、12億ドルの現金と短期固定満期債券を保有しており、市場の混乱時でも、しっかりと収益を確保するために必要な流動性を保持している。
同社が追求する株主還元は配当だけではない。
同社は、積極的に自社株買いを行っており、2023年度の9ヶ月間で1億5300万ドルの自社株買いを行った。
更に、同社は、金融機関が生き残りをかけて資金調達に奔走していた2008年前後の世界金融危機の中、自社株買いに奔走していた。
カール・リンドナー・ジュニア(Carl Lindner, Jr.:1973年に同社を買収)の家族、会社の役員、職員のための退職年金制度が、同社の普通株の24%を所有していることからも、経営陣の意思決定と、株主の利益が一致する可能性が高いことを示している。
同社の利回りは小さく見えるかもしれないが、私は、同社のことを、長期に渡って予測可能なキャッシュを提供し続ける素晴らしいマシンであると見ている。
10年前に同社に1万ドル投資した場合、18,955ドルの配当収入を得ることが出来ただろう。
そして、この配当収入に加えて、その時点より、同社株は95%も上昇しているのである。
アメリカン・ファイナンシャル・グループは、非常に良く経営されている企業であり、かなり自社株式をインサイダーが所有している。
普通株式はPERが9.5倍と魅力的な価格で取引されており、配当は非常に余裕のある配当性向で支払われており、更に、同社は多額の特別配当を支払っている。
以上より、私は、利回りが3.9%の同社は、パッシブ・インカム(受動的な収入)を求める投資家のニーズを満たす、最適のキャッシュ・マシンであると考える。