アプライド・マテリアルズ(AMAT)の将来性とは?最新の決算分析を通じて今後の見通しに迫る!

- 本稿では、注目の米国半導体関連銘柄であるアプライド・マテリアルズ(AMAT)の2024年2月15日発表の最新の2024年度第1四半期決算分析を通じて、今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- アプライド・マテリアルズは2024年度第1四半期に堅調な業績を発表し、AIやIoT向け次世代チップへの需要拡大を背景に今後の成長にも自信を示しました。
- 中国への売上依存が一時的に高まっているものの、今後は減少が見込まれ、他地域での需要回復が見られない中、成長には不透明感が残ります。
アプライド・マテリアルズ(AMAT)の2024年度第1四半期決算発表に関して
アプライド・マテリアルズ(AMAT)は先週、2024年度第1四半期決算を発表し、売上高は67.1億ドルの着地となった。
この業績についてゲーリー・ディッカーソンCEOは次のように述べている。
「アプライド・マテリアルズは2024年度第1四半期に好調な業績を達成し、5年連続で市場を上回る業績を達成しました。今後数年間、AIやIoTに不可欠な次世代チップ技術に対する需要が顧客の間で拡大する中、当社の主要な半導体の転換点におけるリーダーシップ・ポジションは、引き続き弊社の良好な業績を支えると考えています。」
今四半期のガイダンスについては、同社は中間値で65億ドルを予想しているが、これは前四半期比3%の小幅な下方修正であり、数週間前に同業他社のKLA(KLAC)やラム・リサーチ(LRCX)が発表したものとほぼ同じである。
決算はほぼ予想通りであったにもかかわらず、AMATの株価は力強く上昇し、決算直前の180ドルから上昇し、日中の史上最高値206ドルからわずかに戻して、その週を199ドルで終えた。
本稿では、この予想外の上昇の背景には何があるのか、また、同社の中国市場へのエクスポージャーに対する懸念について、私の考えを述べたい。
加えて、決算説明会での主なコメント、特に2024年度の通期ガイダンスを提示することに難色を示したことについても分析したい。
アプライド・マテリアルズ(AMAT)の2024年の見通し
ゲーリー・ディッカーソン最高経営責任者(CEO)は冒頭の挨拶で、下記のように一般的な市場環境についての考えを述べている。
「まず、市場環境についての私たちの最新の見通しをお話しします。お客様との話し合いの中で、全体的な市場ダイナミクスは改善していると聞いています。クラウド企業による設備投資が再加速し、ファブの稼働率はすべてのデバイスタイプで上昇し、メモリの在庫水準も正常化しています。2024年のアプライド・マテリアルズのビジネスについては、重要なプロジェクトが一部遅れているものの、最先端ファウンドリー・ロジックは前年比で好調に推移すると見ています。」
最後の文の後半に入るまでは順調だった。
公平を期すため、これはまったくの驚きではない。
なぜなら、TSMC(TSM)のアリゾナでの遅れについては以前から知っていたし、インテル(INTC)のオハイオ・キャンパス建設が大幅に遅れているという報告も最近耳にしていたからである。
「インテルの広報担当者はCRNに対し、オハイオ州での200億ドル規模のチップ製造プロジェクトが遅れていることを認めた。2025年の生産開始の代わりに、現在の建設完了は2026年後半になる見込みである。」
これらの(そしておそらく他の)遅れは、アプライド・マテリアルズの売上高に対してほとんど、或いは、まったく直接的な影響を与えないことは明らかである。
しかし、これは注視すべきポイントである。
なぜなら、年が明ければ、さらなる遅延や撤退の発表があると予想される。
特に懸念されるのは、そうした遅延と中国向け販売の急減が重なることである。
この2つが重なれば、WFE(半導体前工程装置)のセクター全体が苦境に立たされることになる。
これについてはまた後ほど言及したい。
ディッカーソン氏は、市場環境についての発言を続け、さらに次のように述べている。
「ICAPSの需要は2023年よりも若干減少すると予測しているが、これは一部の最終市場における低迷が、各地域の旺盛な投資によって相殺されるためです。NANDの売上は前年を上回ると予想しているが、NANDはウェハ・ファブの設備投資全体の10%未満にとどまると見ています。また、DRAMビジネスも引き続き好調で、高帯域幅メモリの増産を進めている顧客によって牽引されると見ています。」
そして、それらの情報は、アプライド・マテリアルズにとって、2024年が2023年と比較してどの様にしんてんするのかを理解するのに役立つ情報である。
ちなみに、同社の業績は、同業他社と比べて非常に良好であり、財務カレンダーが一致していないことを考慮に入れてもなお、良好であったと言える。
実際、2019年の最後の低迷による休止以降、過去3年間はいずれも、同社にとって特に好調な年であった。
言い換えれば、同社が2024年に前四半期比横ばいの売上高を維持できたとしても、2019年以降の売上高の伸びを考えれば、それは素晴らしい結果である。
そして、様々なアナリストができるだけ試みたものの、2024年のより正確な見通しについては、CEOからもCFOからもそれ以上何も聞き出せなかった。
これは、同じトピックに関する別の質問に対して、少し不満そうなブリス・ヒル最高財務責任者(CFO)の回答のひとつである。
「私たちにできることは、アプライド・マテリアルズの視点から見たことをお話しすることだけです。23年についてコメントしたとき、アプライド・マテリアルズの好調な年だったと申し上げました。ご質問にあるように、ICAPSは好調でした。DRAMも好調でした。パッケージングも好調でした。ですから、24年に向けて、これらはプラス面とマイナス面となります。24年については正確な数字を申し上げるつもりはありません。」
要するに、アプライド・マテリアルズが2024年の見通しを示すことができれば、そうしていただろう。
しかし、単純な事実として、現時点でその年がどのような年になるかは彼らにも分からないのである。
全体として、我々はKLAとラム・リサーチの先のコメント、つまり前年比1桁台半ばから前半の成長率から2024年のヒントを得ている。
それではより詳細に分析していきたい。
足元のアプライド・マテリアルズ(AMAT)の株価上昇に関して
アプライド・マテリアルズ(AMAT)の株価上昇の潜在的な要因のひとつは、決算発表前後の市場全体が好調であったことが幸いした以外に、決算説明会でGAA、BSPD、HBMといったテクノロジーの変遷に関連する同社の見通しを説明するために多くの時間が割かれたことにあるかもしれない。
例えば、ディッカーソンCEOの発言の大部分は、これらの話題で占められていた。
以下はディッカーソンCEOの発言の要点である。
「高性能DRAMダイを積層し、高度なパッケージングでロジック・ダイに接続した高帯域幅メモリ(HBM)は、AIデータセンターを実現する重要な要素です。」
「高帯域幅メモリに使用されるダイは、標準的なDRAMの2倍以上の大きさであるため、同じ量のチップを生産するには2倍以上の容量が必要となります。」
「その上、ダイの積層に必要なパッケージング工程は、利用可能な総市場をさらに増加させます。高帯域幅メモリは、2023年時点ではDRAM生産量の約5%に過ぎませんが、今後数年間は年平均成長率50%で成長すると予想されています。」
「アプライド・マテリアルズは、次世代技術に不可欠なプロセスおよびパッケージング工程に注力することで、DRAM市場におけるシェアを大幅に拡大しました。2023年、アプライド・マテリアルズのDRAMシェアは10年前より10ポイント以上上昇すると推定されます。」
「DRAMの売上高は、最も近いプロセス装置メーカー2社の合計を上回ります。また、DRAM周辺回路アプリケーションに実装され、IO速度の大幅な向上を可能にするロジック・テクノロジーにおけるリーダーシップのおかげで、当社は将来の成長に向けて最適な立場にあります。」
このほかにもまだまだ続くのだが、ここでは詳細は割愛したい。
一方で、ブライス・ヒル最高財務責任者(CFO)は、準備発言の中で、下記のようにレトリックを倍増させていた。
「計画期間を見渡せば、半導体はGDPを大幅に上回る成長を遂げると予想しています。第二に、技術的な複雑さが増すにつれて、装置市場は半導体と同等かそれ以上のスピードで成長すると予想しています。」
「第三に、アプライド・マテリアルズの装置事業は市場を上回るペースで成長すると予想します。第四に、サービス事業が装置事業と同等かそれ以上のスピードで成長すると見ています。そして、アプライド・マテリアルズの装置事業が市場を上回るペースで成長するという、3番目の内容について説明します。その理由は、アプライド・マテリアルズのテクノロジーが、AI、IoT、再生可能エネルギーの成長を推進するために必要な半導体の重要な進歩を可能にするからです。」
「今後数年間にわたる半導体プロセスの変遷を見据えた場合、アプライド・マテリアルズは極めて有利な立場にあります。データセンターAIでは、当社は、標準DRAMと広帯域メモリの両方の先端ロジックとコンピュート・メモリのプロセス装置でNo.1となっております。また、ゲート・オールアラウンド・トランジスタ、バックサイド・パワー・デリバリー、アドバンスド・パッケージングでも50%以上のシェアを獲得する目処が立っています。」
繰り返しになるが、もっとたくさんのコメントがあるがここでは割愛している。
つまり、ディッカーソン氏とヒル氏は、アプライド・マテリアルズがジェネレーティブAIの台頭によってもたらされるあらゆる恩恵の主要な受益者になることを、力強く説得してくれたのである。
アプライド・マテリアルズ(AMAT)の中国へのエクスポージャーに関して
アプライド・マテリアルズ(AMAT)は、同業他社のように決算発表資料で地域別の売上高をグラフで示していないが、決算説明会ではその詳細を共有している。
現在、同社の売上高の約45%は中国が占めている。
歴史的には、中国は売上高の30%程度であった。
質疑応答では、2024年の中国事業の見通しについて質問があった。
それに対するブライス・ヒルCFOの答えは下記のとおりである。
「まあ、長期的に見れば......何年間も見れば、平均して約30%だと思います。 ですから、今が45%だとすると、1年を通してそのレベルくらいまで下がるでしょう。」
つまり、アプライド・マテリアルズは今年中に中国の売上高が通常のパターンに戻って減少すると予想しているのである。
これは予想外のことではなく、アプライド・マテリアルズの同業他社もおそらく同じことを経験するだろう。
特に2023年の中国のWFE支出は桁外れだった。
この水準が続くということは、非常に驚くべきことである。
以前にも指摘したように、この中国の需要の強さは、他の市場の弱さをほぼ相殺していた。
つまり、もし中国経由の売上がなければ、2023年はWFE部門全体にとって非常に悪い結果になっていただろう。
これが、今後数四半期にわたる私の懸念である。
そして、中国以外の顧客からの需要に力強い回復が見られないのは明らかだ。
中国以外の需要低迷が続き、中国顧客からの急激な落ち込み、最先端ロジック顧客からのさらなる遅れが重なれば、非常に厄介なシナリオと成り得る。
その可能性を予測するのは難しいが、すべての材料は揃っているように見える。
最悪の事態にならなかったとしても、WFEセグメント全体にとって素晴らしい年になる可能性は極めて低いと考えている。
言ってみれば、上昇の可能性よりも下落リスクの方が大きいと見ている。
一方、アプライド・マテリアルズの株価は過去6週間で30%、過去4カ月で54%も上昇している。
この局面では、一旦利益を確定して、様子見でいる方が賢い行動のように私には思える。