仮想通貨データセンターの純資産価値:AI急成長に伴うデータセンターや電力供給への影響と仮想通貨マイナーへの新たな投資機会
ダグラス・ オローリン- 現在、AI業界ではGPUだけでなく、データセンターや電力供給への需要も急増しており、特に高性能GPUの設置場所や電力供給の確保が急務となっている。
- タレンエナジーのデータセンター売却は仮想通貨データセンターの電力接続価値の下限を示しており、コア・サイエンティフィックへの買収提案など、他の企業も同様に価値を持つ可能性がある。
- 仮想通貨データセンターはAIクラスターに必要な電力基準を満たしていないが、仮想通貨とAIは密接な関係があり、それらの仮想通貨データセンターに投資することで、安価な電力を利用したシガー・バット戦略を採ることが出来るのではないかと見ている。
AIの世界において、現在はGPUだけでなく、データセンターやそれを支える電力接続にもゴールドラッシュが起きている。想像してみてほしい。エヌビディアから10万個のGPUを購入したが、それらを置く場所も、電力を供給する手段もない状況だ。市場への参入が遅れることは大きなコストであり、特にH100を含むGPUの投資回収機関が現在非常に速いことを考えると、なおさらである。
このような背景から、本稿では、私は奇妙な可能性を秘めたAI関連のアイデアについて解説していきたい。仮想通貨とAIは常に関係があり、仮想通貨はアクセラレーテッド・コンピューティングの最初の大量展開の一つであった。しかし、AIトレーニングクラスターはさらに多くの電力と冗長性を必要とするため、大半の仮想通貨データセンターはAIクラスターに必要な電力基準に達していない。
それでも問題はないと考える。なぜなら、それらの仮想通貨マイナーに投資することで、電力のためだけにシガー・バット戦略(極端に低評価されているがまだある程度の価値が残っている企業の株を購入すること)を採るチャンスが現実に存在する可能性があるためである。
このアイデアは、アマゾン(AMZN)のタレン原子力データセンター買収から始まった。これは市場での電力の価値を最もよく示す比較対象である。最も理想的なのは新しいデータセンターを作ることであるが、その建設中に仮想通貨データセンターを購入するのも一案である。ほとんどの仮想通貨データセンターは安価な電力に近い場所に位置しており、仮想通貨データセンターにとっては電力コストが唯一の重要な考慮事項である。
まずはタレン社の原子力データセンターについて説明し、その後コア・サイエンティフィック(CORZ)に関する取引について議論し、最後にこれが大手仮想通貨マイナーにとって何を意味するかを考察する。
(原文)Talen Energy announced its sale of a 960-megawatt data center campus to cloud service provider Amazon Web Services (AWS), a subsidiary of Amazon, for $650 million.
(日本語訳)タレンエナジーは、960メガワットのデータセンターキャンパスをクラウドサービスプロバイダーであるAmazon Web Services(AWS)に6億5000万ドルで売却すると発表した。AWSはアマゾンの子会社である。
(原文)The data center, Cumulus Data Assets, sits on a 1,200-acre campus in Pennsylvania and is directly powered by the adjacent Susquehanna Steam Electric Station, which generates 2.5 gigawatts of power.
(日本語訳)このデータセンター「Cumulus Data Assets」はペンシルベニア州の1200エーカーのキャンパスに位置し、隣接するSusquehanna蒸気電力発電所から直接電力を供給されている。この発電所は2.5ギガワットの電力を生成している。
AWSは960メガワットの電力を持つこのデータセンターキャンパスを6億5000万ドルで購入した。現在その土地にあるデータセンターはほとんど電力を消費しておらず(約48メガワット)、この取引のほぼ全体を電力接続と土地の価値として評価できる。
単純化すると、これはメガワットあたり約68万ドルである。これが仮想通貨マイナーが持つ電力接続の価値の下限となる。
しかし、さらに興味深い入札があり、追加の価値を示唆している。仮想通貨マイナーであるコア・サイエンティフィックは、約10億2000万ドル、または負債とワラントを考慮すると約20億ドルの企業価値における買収提案を受けている。
(原文)Core Scientific received an unsolicited non-binding proposal from CoreWeave on June 3 to acquire all of the company's outstanding shares on a fully diluted basis for $1.02 billion or $5.75 per share in cash.
(日本語訳)コア・サイエンティフィック(CORZ)は、CoreWeaveからすべての発行済株式を完全希薄化ベースで10億2000万ドル、1株あたり5.75ドルの現金で買収するという非拘束的な提案を6月3日に受けた。
このような論理を上限値に適用すると、メガワット(MW)あたり約125万ドル(EV/Total)となる。そして、これを多くの仮想通貨マイナーに適用すると、私はメガワットあたり100万ドルの価値があると見積もっている。
ここで強調したいのは、これらの企業の大半はあまり品質が良くないという点である。例えば、私の理解では、ハット8(HUT)のデータセンターのかなりの部分がStarlinkを通じて接続されている。また、国際的なデータセンターは除外し、北米の企業に焦点を当てた。それでもなお、意味のある価値が見出されていると見ており、以下が比較表である。企業価値がゼロである場合のメガワットあたりの暗示された価値に注目してほしい。これは、企業の純資産価値(NAV)がすべてなくなった場合のシナリオと考えてほしい。
※「Crypto Miners」の列のアルファベットは、各企業の銘柄コード(ティッカー)を意味しています。
これらの企業のどれかがそのメガワット(MW)の価値を実現できると考えるなら、多くはマイナスの企業価値で取引されていることに気付くだろう。特にアプライド・デジタル(APLD)とアイリス・エナジー(IREN)がその可能性が高い。
ここで理解してほしいのは、これは非常にリスクが高いが、論理的な取引であるということだ。コア・サイエンティフィックの取引は、この市場に対する需要があることを示しており、私の見解では、これらの企業は少なくともメガワットあたり50万ドルから100万ドルで取引されるべきである。企業価値以下で取引されている企業には、モーソン・インフラストラクチャ・グループ(MIGI)、ストロングホールド・デジタル・マイニング(SDIG)、アルゴ・ブロックチェーン(ARBK)、アイリス・エナジー(IREN)、ハット8(HUT)、ライオット・プラットフォームズ(RIOT)、アプライド・デジタル(APLD)が含まれる。
私が特に注目している企業は、アイリス・エナジー(IREN)、ストロングホールド・デジタル・マイニング(SDIG)、アプライド・デジタル(APLD)、ライオット・プラットフォームズ(RIOT)である。特にアイリス・エナジー(IREN)はH100に本気で取り組み始めており、事業の方向性をこの方面に大きく転換している。そのため、近いうちにさらに多くの発表があることを期待している。そして、コア・サイエンティフィック(CORZ)が買収提案を拒否した後に株価が大幅に上昇したことを忘れないでいただきたい。同様に、何らかの発表があれば、株価が急速に上昇するきっかけになる可能性があるだろう。
これをバスケット(複数の企業に分散して投資すること)で行うことは理にかなっている。これらの企業の多くはうまくいかない可能性が高いが、いくつかは買収提案を受けるか、電力接続をハイパースケーラー向けに転換し始める可能性がある。ただし、真の信者をふるいにかける必要もある。さらに、いくつかの企業は破産寸前であり(したがってこれは非常にリスクの高いアイデアであり、そのため、バスケットで行うのが良いと考えている)、破産に近づくほど資産を早期に実現しようとするだろう。
繰り返しになるが、私のレポートにおけるいかなる情報も投資助言ではなく、これらはあくまでも自身のリサーチの情報共有を目的としている。これは「シガー・バット戦略」であり、多くのこれらの企業が比較的迅速に株価を上昇させる可能性はあるかもしれないが、その後にはほとんど価値が残らないだろうと見ている。
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