03/29/2025

強気
アップラビン
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Muddy Watersによる空売りレポート(ショートレポート)では、同社のデータ運用や広告効果に対する懸念が提起されていますが、私はこれらの主張には実質的な証拠が乏しく、市場への影響も限定的であると考えています。
アップラビン(APP)の株価下落理由とは?Muddy Watersによる同社に関する空売りレポートの詳細を徹底解説!

red and blue light streaksマイケル・ウィギンズ・ デ・オリベイラマイケル・ウィギンズ・ デ・オリベイラ
  • 本稿では、注目の米国テクノロジー関連銘柄である「アップラビン(APP)の株価下落理由とは?」という疑問に答えるべく、足元でリリースされたMuddy Watersによる同社に関する空売りレポート(ショートレポート)の詳細と今後の株価見通しを詳しく解説していきます。
  • という基礎的な内容から、最新の決算分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 短期的なノイズはあるものの、アップラビンに対して強気の姿勢を維持しており、2026年夏までの目標株価である1株あたり750ドルを維持しています。この見通しは、33億ドルのフリーキャッシュフローを見込んでいることに基づいています。
  • 同社は広告のインクリメンタリティ(増分効果)に関して精査を受けており、それが収益成長やフリーキャッシュフローに影響を与える可能性がありますが、私は引き続き同社のビジネスの基本的な価値と将来的なキャッシュフローの可能性に注目しています。
  • Muddy Watersによる空売りレポートでは、同社のデータ運用や広告効果に対する懸念が提起されていますが、私はこれらの主張には実質的な証拠が乏しく、市場への影響も限定的であると考えています。
  • 過去の他社に対するショートレポートは一時的な影響にとどまることが多く、私は短期的な市場の反応よりも、同社の前年比35%という売上高成長率や長期的なファンダメンタルズを重視しています。

アップラビン(APP)の現状

アップラビン(APP)は再びショートレポート(空売りレポート)の標的となりました。さまざまな主張が挙げられていますが、私が本当に関心を持っているのは、同社の広告におけるインクリメンタリティ(増分効果)に関する点のみです。

インクリメンタリティとは、広告によって実際にどれだけの売上が生まれたか、つまり広告がなければ発生しなかった売上を測る指標です。

要するに、広告主は本来支払うべき以上の費用を支払っていないか?顧客がすでに購入寸前だったにもかかわらず、その直前に広告が表示されただけで「成功した広告」としてカウントされていないか?ということです。

もしショートレポートの主張が正しければ、同社の収益成長率やフリーキャッシュフローの伸びは大きく鈍化する可能性があります。

一方で、同社がデータを盗んでいるというようなその他の指摘については、曖昧で説得力に欠けていると感じており、そうした理由で保有株を手放す気にはなれません。

個人的には、現時点では何もせず、この企業が時間をかけて実力を証明するのを待つしかないと考えています。

なぜなら、私の指針となっているのは同社のフリーキャッシュフローだからです。

仮に、同社が2025年中に33億ドルのフリーキャッシュフローを達成できると信じているのであれば――たとえその全額が2025年に実現しないとしても、今後12か月以内に33億ドルに至る道筋が見えるのであれば――現在株価である予想フリーキャッシュフローの27倍という水準は依然として魅力的に見えます。

そのため、私は2026年夏までの目標株価として1株あたり750ドルを引き続き維持しています。

Muddy Watersによるアップラビン(APP)に関する空売りレポート

Muddy Watersによる空売りレポートは、過去2件の空売りレポートに続く形で発表されました。私はこの空売りレポートを最初から否定するつもりはありません。

代わりに、このレポートの全体的なポイントについて述べていきたいと思います。

1️⃣ アップラビン(APP)のEコマース売上の大部分はリターゲティング広告によるものであり、つまり、もともと購入する可能性が高かった人々に広告を表示しているだけであると指摘されています。レポートでは、これらの売上のうち実際に新たに生まれた(インクリメンタルな)売上はわずか25~35%に過ぎず、同社自身が主張している数値よりもかなり低いと推定しています。

2️⃣ 同社はプラットフォームの規約に違反しているとされており、メタ・プラットフォームズ(META)やTikTok、Google(GOOG)、レディット(RDDT)といったプラットフォームからユーザーデータを、利用規約に反する方法で収集している可能性があると報告されています。仮にこれが発覚すれば、Cheetah Mobileのようにプラットフォームから排除される(デプラットフォーム)といった重大な処分を受ける可能性があります。

3️⃣ 2025年第1四半期には同社の広告主の23%が離脱しており、これは「広告主の定着率は高い」とするCEOの主張と矛盾しています。このことからも、顧客の間に不満がある可能性が示唆されます。

4️⃣ 同社はユーザーを追跡するために巧妙な手法を使っている疑いがあり、アップル(AAPL)やGoogleがプライバシー保護の強化により従来のトラッキング手法を制限した後も、同社は複数のプラットフォームから収集した断片的なデータをつなぎ合わせ、「Persistent Identity Graph(PIG)」と呼ばれる人工的なユーザープロファイルを作成しているとされています。これはアップルが禁止している古い「フィンガープリンティング」と類似しています。

5️⃣ この手法は効果的ではあるものの、問題のある方法であり、ユーザーの同意を得ずに複数のプラットフォームをまたいで追跡・識別することで、同社はGoogleやメタ・プラットフォームズと同等のターゲティング精度を実現しているとされます。しかし、自社で一次データを持っていないため、このような秘密裏のトラッキング技術に依存していると見られています。

6️⃣ 同社は広告の成果測定(アトリビューション)を操作している可能性があり、実際には新たな売上を生み出していないにもかかわらず、すでに購入するつもりだった顧客に広告を表示し、その売上を自社の成果として計上していると指摘されています。これにより、実際以上にパフォーマンスが良く見える仕組みとなっています。この最後の点は、最初に述べた内容とほぼ同じです。

アップラビン(APP)を取り巻くリスク

✅ 広告主が、自分たちが得ている価値がそれほど大きくないと気づいた場合、アップラビン(APP)のビジネスは減速する可能性があります。

✅ メタ・プラットフォームズ、Google、アップルといったプラットフォームが同社の手法に対して取り締まりを強化した場合、重要なデータへのアクセスを失い、大きな打撃を受ける可能性があります。

✅ また、競合他社がこれらの手法を模倣した場合、同社は競争上の優位性を失うおそれがあります。

今回のアップラビン(APP)に関する新たな空売りレポートに対する私の見解

先月発表されたアップラビン(APP)に関する他の空売りレポートについてはここで詳しく取り上げるつもりはありません。というのも、それらのレポートが出た後、株価はすでに回復し始めており、市場はその内容を理解したうえで深刻には受け取らなかったことが明らかだからです。

これらのレポートに共通しているのは、同社がメタ・プラットフォームズやGoogleといった大手ソーシャルメディア企業からデータを取得しており、その事実を両社は把握していないという主張です。

ここではっきりさせておきたいのは、もしアップラビンが本当にメタ・プラットフォームズやGoogleからデータを不正に取得していたのであれば、Fuzzy Bearによってそうした指摘がなされてから1か月も経った今、すでに何らかの動きがあってしかるべきではないでしょうか。メタ・プラットフォームズが慈善事業をしているような会社ではないことを考えれば、そのようなことが黙認されるはずがないと考えています。

次に、同社が顧客の購入直前に広告を表示しているという点についてですが、これを私自身で検証する手段はありません。そして現実的に考えても、この疑問に明確に答えられるのはアップラビン本人か、実際に広告を出している広告主くらいだと思います。

これが問題なのは、「すべての人を一時的に騙すことはできるし、一部の人を常に騙すこともできるが、すべての人を常に騙し続けることはできない」という格言がある通りだからです。

つまり、私たちは「カードが出揃う」のを待つしかないと考えています。具体的には、2025年第1四半期の決算発表と、それに伴う経営陣の見通しが示されるまでは、この銘柄には圧力がかかり続けることになると思います。

アップラビン(APP)の売上高:2025年の売上成長率は前年比35%を示唆

アップラビンの売上高成長率(%)

(出所:筆者作成)

こうした空売りレポートをあまりにも軽視しすぎないようにするのは難しいことです。これまでにも多くの企業に対して空売りレポートが次々と出され、それによって株価は一時的に打撃を受けるものの、30日ほど経てば状況は元に戻るという流れを何度も見てきました。

たとえば、

✅ エヌビディア(NVDA):Spruce Point(2022〜2023年)

✅ カルバナCVNA):Hindenburg Research(2022年)

✅ シー(SE):Grizzly Research(2023年)

✅ ブロック(SQ):Hindenburg Research(2022年)

✅ ヒムズ&ハーズ・ヘルスHIMS)Hunterbrook(2024年)

✅ ペロトン・インタラクティブ(PTON):複数のショートセラー(2023年)

私は空売りレポートを頭ごなしに否定するつもりはありませんが、自分自身でその内容を証明できるわけでもないなら、誰かに言われたからといって保有株を売却する理由にはならないと思っています。

たとえ私がアップラビン(APP)について間違っていて、同社の成長率が鈍化したとしても、私は事実を自分の目で確認したうえで、自分の判断で売却したいのです。ただの一時的なノイズによって手放すようなことはしたくないと考えています。

アップラビン(APP)を取り巻くリスク要因

このレポートの根幹にある主張は、アップラビン(APP)の成功が疑わしいトラッキング手法の上に成り立っており、実際には生み出していない売上に対しても功績を主張することで業績を水増ししている、というものです。もしこれらの手法が明るみに出たり、制限されたりすれば、同社の成長率が脅かされる可能性があります。

繰り返しになりますが、私の指針は将来のフリーキャッシュフローです。今後12か月で33億ドル程度のフリーキャッシュフローを達成できるように、売上高を前年比35%近くのペースで成長させているかどうか——それだけに私は注目しています。

アップラビン(APP)に対する結論

もし本当に「広告を顧客が閲覧する直前に表示するだけで広告費を上げられる」ほど単純な話であれば、Googleやメタ・プラットフォームズがこの20年間でとっくにその手法を取り入れていたはずです。

最終的に、私は短期的なノイズに反応するためにここにいるわけではなく、ファンダメンタルズを見るためにここにいます。 アップラビン(APP)が今後12か月以内に予想される33億ドルのフリーキャッシュフローを実現できるのであれば、予想フリーキャッシュフローの27倍という現在の水準は、依然として割安であると考えます。

上述の通り、確かに懸念点はありますが、それによって同社の売上成長が私が見込んでいる前年比35%から大きく鈍化するとまでは現時点では思っていません。

空売りレポートは出ては消えていきますが、フリーキャッシュフローは現実に存在しています。そしてそれこそが私の指針です。だからこそ、私は同社に対して引き続き強気の姿勢を維持しており、2026年夏までに1株750ドルという目標株価も維持しています。


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