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07 - 03 - 2024

中立
アピアン・コーポレーション
中立
経営陣がトップライン売上高の成長を再び活性化させ、営業損益分岐点に向けた意味のある進展を遂げるまでは、私の同社に対する見通しは「中立」としている。
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アピアン(APPN:Appian)最新の2024年1Q決算まとめ・財務&強み(競争優位性)分析と今後の株価見通し・将来性

ドノヴァン・ ジョーンズドノヴァン・ ジョーンズ
  • アピアン(APPN)は、企業向けのローコードビジネスプロセス自動化ソフトウェアを提供するテクノロジー企業であり、パンデミック前には売上高を大きく伸ばしたが、現在は成長率が半減している。
  • 同社は「ランド・アンド・エキスパンド」アプローチを採用し、クラウドサブスクリプションの売上維持率が120%に達しており、売上成長の改善が期待されている。
  • しかし、営業損益分岐点に到達するにはまだ道半ばであり、売上成長率の鈍化や資本コストの影響を考慮し、当面の見通しは「中立」としている。

アピアン(APPN)に関して

アピアン(APPN)は、ローコードのビジネスプロセス自動化ソフトウェアを企業に提供しているテクノロジー企業である。

同社は以前、パンデミック(世界的大流行)の前に売上高を大きく伸ばした。

同社は営業損益分岐点に達するにはまだ道半ばであり、売上高成長率は以前の半分である。

そのため、同社の経営陣が営業損益分岐点に向けて有意義な進歩を遂げながら、売上高成長を再び加速させることができるまで、私の同社株式に対する見通しは「中立」としている。

アピアンの市場とアプローチ

アピアン(APPN)は、様々なビジネスユースケース向けのローコードソフトウェア市場で事業を展開している。

グランド・ビュー・リサーチ社の2023年市場調査報告書によると、ローコード開発プラットフォームの世界市場は2022年には推定68億ドルで、2030年には350億ドルを超えると予想されている。

この成長が達成されれば、2023年から2030年までの年間平均成長率は約23%という非常に高い数値となる。

このような成長が予測される主な理由は、あらゆる規模や種類の企業による業務効率化の要求の高まりと、従業員がより重要な業務に集中できるようにするために複雑さを軽減したいという願望である。

また、AIや機械学習技術の統合も、多くのソフトウェア・ベンダーにとって優先事項となっている。

米国のローコード開発プラットフォーム市場の過去および2030年までの将来の成長軌道は、下記に示された図に表されている。

アピアンの主な競合他社およびその他の業界のプレーヤーは以下の通りである。

  • マイクロソフト(MSFT

  • セールスフォース(CRM

  • アウトシステムズ

  • メンディックス

  • オラクル(ORCL

  • グーグル(GOOG/GOOGL

  • サービスナウ(NOW

  • クイックベース

  • ペガシステムズ(PEGA

アピアンのセールス・モデルは典型的な「ランド・アンド・エキスパンド」アプローチであり、まずクライアントで初期の足場を確保し、優れたパフォーマンスを発揮してクライアント内で効率的に拡大することを目指している。

2024年5月2日に発表された同社の2024年第1四半期決算では、クラウドサブスクリプションの売上維持率は120%で、以前の四半期よりも高くなっている。

これはポジティブなシグナルであり、見通しの改善と「ランド・アンド・エキスパンド」による業績の向上を示していると言える。

アピアン(APPN)の最近の財務動向

アピアン(APPN)の四半期別総売上高(青色の列:Total Revenue)は、マクロ環境の不確実性にもかかわらず、緩やかな成長を続けている

一方で、四半期別営業利益(赤色の線:Operating Income)は、販管費がわずかに増加したため、減少している

また、四半期別の売上総利益率(緑色の線:Gross Profit Margin)は、ばらつきはあるものの、引き続き上昇傾向にある

さらに、四半期別の総売上高に占める販売費および一般管理費の割合(オレンジ色の線:Selling, G&A % Of Revenue)は、経営陣が引き続きコスト管理に重点を置いているため、前年同期比で低下している。

希薄化後の1株当たり利益(EPS)は、研究開発費と支払利息の増加、およびドル高による為替差損1,150万ドルなどの営業外費用の増加により、大幅なマイナスとなり、前四半期比でも悪化している。

(上記グラフのデータはすべて百万USD単位・GAAPベース)

貸借対照表については、アピアンは1億7,000万ドルの現金および現金同等物と2億5,500万ドルの負債で当四半期を終えているが、このうち710万ドルは12ヶ月以内に返済期限が到来するものである。

そして、直近過去12ヵ月間のフリー・キャッシュ使用額は7,370万ドル、資本支出は740万ドルとなっている。

また、同社は過去4四半期に約4,300万ドルの株式報酬を支払っている。

過去1年間で、同社の株価は35.6%下落したのに対し、iShares Expanded Technology-Software ETF(IGV)は27.5%上昇している。

両者の乖離は2023年9月に始まり、このことは下記に示されたチャートで確認できる。

アピアン(APPN)のバリュエーション

以下は、アピアン(APPNに関連するバリュエーションの表である

バリュエーション指標

EV(企業価値)/ 売上高倍率(予想

3.9

EV / EBITDA倍率(予想

-

株価売上高倍率(直近過去12か月

4.0

売上高成長率(前年同期比)

14.5%

純利益率

-19.2%

EBITDAマージン

-13.7%

時価総額

$2,220,000,000

EV(企業価値)

$2,380,000,000

営業キャッシュフロー

-$66,310,000

実績希薄化後EPS(直近過去12か月

-$1.47

予想EPS(2024年度)

-$0.80

売上高成長率(予想)

12.9%

一株当たりフリー・キャッシュフロー(直近過去12か月

-$1.01

また、40%ルールとは、ソフトウェア業界の経験則であり、売上高成長率と営業利益率の合計が40%以上であれば、その企業は、ソフトウェア企業として、許容できる成長と営業利益率の軌道に乗っていることを示すものである。

下表のように、同社の直近の調整前40%ルールの計算値は依然として低水準で、わずかな改善にとどまっている一方で、トップラインの売上高成長率の鈍化の代償として営業利益率のマイナスが縮小している。

40%ルール・パフォーマンス(調整前

2023年第1四半期

2024年第1四半期

売上成長率

26.7%

14.5%

営業利益率

-29.4%

-13.0%

合計

-2.7%

1.5%

アピアン(APPN)を中立とする理由

アピアン(APPN)は、足元、営業損失を減少させ、営業損益分岐点に到達するための信頼できる道筋を構築することに成功している。

これは、経営陣が「コスト管理」を強化することに意識的に取り組んだ結果であり、「あらゆる手段を用いて成長」を追求するよりも、資本コストの高い環境下で営業損失の大きい企業が厳しく評価されることを考慮してのものである。

同社は営業損失の削減に大きな進展を見せているものの、その結果として売上成長率はほぼ半減し、2024年の成長率は14.4%程度と見込まれており、過去12ヶ月間の成長率と一致している。

これは営業利益を生み出す中堅企業としては妥当な成長率であるが、同社はGAAPベースの営業損益分岐点には近づけておらず、2023年第4四半期の最高の業績でも営業損失は1,050万ドルであった。

最近の同社経営陣と市場のアナリストの会議におけるセンチメントを追跡することは、重要な側面を理解するための興味深い視点である。下記のチャートには、特定のキーワードが示されている。

※Earnings Transcript Key Terms Frequency:決算説明会における主要キーワードの使用頻度

中でも、私はネガティブ・キーワードの頻度に最も関心がある。

同社の場合、同社はマクロ経済環境やAIの影響に対する不確実性に依然として直面しているが、経営陣は「顧客の間でAIに関連する大規模な予算」をまだ見ていない。

したがって、経営陣は新興のAI分野をローコードプラットフォーム事業に対する潜在的な脅威と見なしている。

バリュエーションに関しては、市場は同社を次の12ヶ月の予測売上高成長率の12.9%に基づいて約3.9倍のEV(企業価値) / 売上高倍率で評価しているのに対し、Meritech SaaSインデックスの中央値ではおおよそ18%の年次経常収益(ARR)成長率が示唆されている出典

以下のチャートは、2024年6月21日時点で上場しているSaaSアプリケーション企業のMeritech Capitalインデックスは、予測ベースのEV(企業価値)/ 売上高倍率の中央値が約5.2倍であることを示している。

※EV (Enterprise Value) / NTM (next-twelve-months) Revenue Over Time:EV(企業価値)/ 今後12カ月間の売上高予想

したがって、2024年6月21日時点で、アピアンは市場によってMeritech Capital SaaSインデックス全体と比較して割安に評価されていることとなる。

これは部分的には、2024年の予想される売上成長率の鈍化が原因であると考えられる。

近年の多くのテクノロジー系ソフトウェア企業と同様に、同社は大幅な成長と営業利益の両方を生み出すことができず、市場でのバリュエーションが低迷している。

資本コストの前提条件が緩和されることで、株価の評価倍率に対して多少の好影響が期待できるものの、それが実現するまでには時間がかかる可能性がある。

その間、基本的なファンダメンタルズの弱さ、営業損益分岐点への道の停滞、そして現在の中程度の売上高成長率でのバリュエーションを考慮し、私のアピアンに対する見通しは「中立」としている。

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