12/30/2023

やや強気
アーム・ホールディングス
やや強気
投資家の視点から見ると、ARMはRISC-Vのような競合アーキテクチャや業界の変化に直面しているものの、半導体業界での地位は依然として強固であると見ています。
アーム・ホールディングス(ARM)今後の株価見通しは良好?テクノロジー上の強みと競争優位性分析により将来性に迫る!

a close up of a piece of electronic equipmentコンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本稿では、注目の半導体銘柄であるアーム・ホールディングス(ARM)の財務パフォーマンスとテクノロジー上の強み(競争優位性)分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • チップレット(Chiplet)技術はアーム・ホールディングスにエキサイティングな機会をもたらし、その戦略的進化の道を開く可能性があると見ています。
  • 一方で、最先端チップの設計にかかる高いコストは、半導体業界の多くのプレーヤーに課題を突きつけています。
  • 同社が設計済みCPUダイの提供に乗り出す可能性は、半導体エコシステムにおける同社の地位を再定義する可能性があると見ています。

チップレットとUCIe:半導体製造におけるアーム・ホールディングス(ARM)の新たな展望

伝統的なモノリシック設計と製造手法に長年支配されてきた半導体業界は、3nmテクノロジーのような最先端ノードの出現によって岐路に立たされている。

このような進歩は、コストの高騰と効率性の低下につながり、従来のモデルの実行可能性に疑問を投げかけている。

そこで、チップレット・パラダイム(枠組み)が、半導体業界のゲームのルールを変える選択肢として浮上している。

そしてこれは、同社の半導体設計へのアプローチに革命をもたらす可能性があると見ている。

チップレットはモジュール方式を採用し、さまざまなコンポーネントを別々に製造して後で組み立てることができるため、費用対効果と効率の大幅な改善が期待できる。

このシフトにより、同社は半導体業界において戦略的に変革的な役割を果たすことができ、リソースの有効活用とチップ設計の革新が促進されることが予想される。

半導体製造におけるコストの上昇

業界がより高度な技術を追求するにつれ、3nmなどの最先端ノードでのチップの開発および製造に関連するコストは、著しく増加している。

これらの費用はしばしば5億ドルを超え、特に半導体業界の中小企業にとっては大きな課題となっている。

高コスト構造は、開発段階だけでなく、業界内の広範な経済力学にも影響を与えている。

コストの高騰は、市場での競争力と持続可能性を維持するために、チップレット技術のような代替アプローチを模索することの重要性を強調していると見ている。

アーム・ホールディングス(ARM)の戦略的な市場におけるポジショニング

半導体のバリューチェーンにおけるアーム(ARM)の歴史的な戦略は、直接製造の領域を侵すことなく大きな価値を提供する独自のポジショニングを特徴としてきた。

同社は、戦略的ライセンス契約やパートナーシップを通じて、チップメーカーとの直接的な競争を避けながら、幅広い市場セグメントに対応できる道を歩んできた。

このようなアプローチにより、同社は業界において明確かつ影響力のある存在感を維持し、現在進行中の半導体技術の進化における重要なプレーヤーとして位置付けられている。

チップレット技術の進化とアーム・ホールディングス(ARM)への影響

チップレット技術は、半導体設計における重要なパラダイム シフトであり、コンポーネントの製造によりモジュール化されたアプローチを提供するものである。

この技術は、効率性を高め、開発プロセスをスピードアップするだけでなく、コスト削減の大きなチャンスをもたらす。

アームにとって、この技術的進化は、設計済みのCPUダイを提供することで、新たな市場セグメントへの拡大を可能にする可能性があると見ている。

このような動きは、特に小規模なSoCメーカーにとって、先進的なチップ技術へのアクセスを民主化し、同社を業界の変革における重要なイネーブラー(Enabler)として位置づけることになると考えている。

開発サイクルと市場ダイナミクスへの影響

チップレット技術の採用は、半導体業界の開発スケジュールに革命をもたらす可能性がある。

同社は、完成したCPUダイを提供することで、顧客の設計から製造までのプロセスを合理化し、一般的な開発サイクルを短縮して、新製品の市場投入までの時間を短縮できる可能性がある。

しかし、この進歩には独自の課題もある。

同社が具体的なCPUコンポーネントを供給するようになると、既存の顧客との関係が変化する可能性があり、変化する経済情勢を慎重に見極める必要がある。

純粋なIPベースのモデルから物理的なコンポーネントを提供するモデルへの移行は、同社のビジネス戦略と顧客パートナーシップの再評価を必要とする可能性がると見ている。

チップレット・アーキテクチャーにおける電力効率の課題

チップレット設計には、モジュール性やコスト削減の可能性など、数多くの利点がある一方で、特に電力効率の面で新たな課題も生じている。

この問題は、特にアイドル状態の消費電力において顕著であり、モノリシック設計よりも大幅に高くなる可能性が指摘されている。

この課題は、電力効率が重要な要素であるモバイル機器のようなアプリケーションにとって、極めて重要な検討事項である。

チップレット設計の性質として、個々のチップレット間の通信に大型の中央ダイをアクティブにする必要があることが多く、モノリシック設計ではより直接的な電力制御が可能であるのとは逆に、消費電力の増加につながる可能性がある。

インテルのEMIBソリューションとアーム・ホールディングス(ARM)のAI戦略

インテルのEmbedded Multi-die Interconnect Bridge(EMIB)技術は、チップレット設計がもたらす幾つかの課題に対処し、チップレットのモジュール性と効率的なチップ間通信を組み合わせたソリューションを提供する。

一方、アームのAI市場への取り組みはまだまだ進化を続けている。

アームは、AI機能を設計に取り入れることで躍進を遂げたが、AIチップ市場における同社の役割は、NVDAのようにAIを中心とした強固なエコシステムを開発した競合他社ほど顕著ではないのが現状である。

同社がAI分野で重要なプレーヤーになるためには、急速に高まるAIアプリケーションの需要に対応しながら、技術提供の拡大と強化を続ける必要がある。

中国におけるアーム・ホールディングス(ARM)の複雑なダイナミクス

ARM Chinaを通したアームの中国でのベンチャー事業は、合弁事業の構造と中国市場での事業展開に特有の課題により、複雑な状況を呈している。

それらに加えて、ソフトバンクの所有権と経営スタイルに影響されるガバナンスの問題が、さらに同社のビジネス上のオペレーションの複雑さを増している。

同社が、中国での事業に対する支配力と影響力を維持しながら、これらの課題を乗り切ることができるかは、世界最大のテクノロジー市場の1つである中国での長期的な成功にとって極めて重要である。

ARM Chinaの一部は中国の投資家によって所有されているため、同社はこの重要な市場での事業を完全にコントロールすることはできていない。

このような状況では、ARM Chinaの事業をアームのグローバル戦略と整合させながら、現地の市場力学と規制環境を尊重するために、慎重にバランスを取る必要がある。

※PRC = People's Republic of China中華人民共和国

アーム・ホールディングス(ARM)の経営陣と報酬に関して

CEOのレネ・ハースやCFOのジェイソン・チャイルドをはじめとするアームの経営陣チームは、会社の戦略的方向性を推進し、急速に進化する業界において競争力を維持する上で、独自の課題に直面している。

ソフトバンクの株主構成に起因する株式インセンティブ不足は、アームがイノベーションを推進し、競争力を維持するために不可欠な優秀な人材を引き付け、維持する能力にリスクをもたらしている。

この問題に対処することは、同社の長期的な成功にとって極めて重要であると考える。

同社は、今後も業界での地位を向上していくためには、最高の人材を引き付け、そして従業員の意欲を高め、維持し続けることができるようにする必要があるからである。

アーム・ホールディングス(ARM)の経営効率と今後の株価見通し

業務効率と利益率

アームの将来は、買収後の経営効率とEBITDAマージンの改善にかかっている。

研究開発費の増加にもかかわらず、同社のエンジニアリング部門には非効率性があるが、レイオフは行われていない。

コスト削減の主な対象は非エンジニアリング部門、特に業績不振の営業・マーケティング部門である。

ソフトバンクによる影響

ソフトバンクの支援を受けた企業は、効率よりも成長を優先し、拡張的な構造を持つことが多い。

最近の市場の変化により、アームは利益率の回復を目指し、戦略的な軸足を移す可能性があるが、具体的な詳細は不明である。

その為、市場の投資家やアナリストは今後の動向を注視している。

バリュエーション

前述の要因を考慮すると、現在のアームのEV/Sレシオは10倍が妥当と思われる。

同社が10%以上の成長と40%以上のEBITDAマージンを達成すれば、より高いEV/Sレシオが正当化されるかもしれないが、それは不確実である。

マクロ経済の課題

市場の脆弱性とソフトバンクの流動性に関する問題は、アーム株の早期売却を促す可能性がある。

一方で、アームとつながりのあるアンカー投資家は、2-3年ポジションを保有する可能性がある。

投資家は、ロックアップ期間終了後の機会を待つべきである。

アームのバリュエーションがEV/S10倍を下回れば、成長ポテンシャルとマージンの拡大により、魅力的な投資先となる可能性があると見ている。

アーム・ホールディングス(ARM)の将来性に対する投資家の視点

投資家の視点から見ると、RISC-Vのようなアーキテクチャとの競争に直面し、業界の力学が変化しているにもかかわらず、半導体業界におけるアームの地位は依然として強固である。

特にAIやサーバーCPUなどの新興市場において潜在的な成長機会があることから、投資家にとって注目すべき企業であると見ている。

しかし、投資家は同社の戦略的動き、市場動向、変化する業界需要への適応能力を注意深く監視する必要がある。

私達としては、同社の新技術への進出、中国などの主要市場における戦略的位置付け、業界の変化に対応するイノベーション能力などの要素が、同社の将来の成功を決定する重要な要因となるだろう。

アーム・ホールディングス(ARM)に対する結論

半導体業界が進化を続ける中、この変革におけるアームの役割は極めて重要である。

チップレット技術の採用、AI市場における同社の戦略的位置付け、中国のような複雑な市場力学を乗り切る能力が、同社の将来を形作るだろうと見ている。

また、特に人材の確保とイノベーションに関するリーダーシップの決定も、同社の軌跡を決定する上で重要な役割を果たすだろう。

投資家や業界のオブザーバーにとって、同社の歩みは、テクノロジー、戦略、市場力学が交差する興味深いケーススタディとなると見ている。

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