【半導体】アーム・ホールディングス(ARM)の将来性を徹底分析!最新決算では業績好調もガイダンスは控えめで株価は下落?
ダグラス・ オローリン- 本稿では、注目の半導体銘柄であるアーム・ホールディングス(ARM)の11月6日に発表された最新の2025年度第2四半期決算(暦年:2024年第3四半期)分析を通じて、同社の決算後の株価下落理由、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 最新決算では好調な業績を発表しましたが、株価はわずかに下落し、次期ガイダンス(見通し)は控えめな内容となっています。
- Compute Subsystems(CSS)は、データセンターやAI分野での利用が進んでおり、ASPの向上に寄与しています。
- エヌビディアのGraceチップの導入により、アーム・ホールディングスのデータセンター向けCPUの需要が増加し、総所有コストの面からも導入が加速すると期待されています。
アーム・ホールディングス(ARM)の最新の2025年度第2四半期決算発表に関して
アーム・ホールディングス(ARM)は11月6日に最新の2025年度第2四半期決算(暦年:2024年第3四半期)を発表しており、同社は新しいデザインのASP(平均販売価格)が引き続き上昇しており、今回も非常に好調な四半期を迎えました。
(出所:アーム・ホールディングスの2025年第2四半期決算資料)
しかしながら、同社の株価は決算後に小幅に下落しており、また、次の四半期の見通しは少し控えめな内容となっています。
2025年度第3四半期(暦年:2024年第4四半期)ガイダンス
・EPS(特別項目除く):0.32ドル〜0.36ドル(FactSet予想:0.33ドル)
・売上高:9.2億ドル〜9.7億ドル(FactSet予想:9.393億ドル)
全体として、アーム・ホールディングスの株価は現在、利益の約90倍のバリュエーションとなっており非常に割高ですが、同社の戦略は的確に進んでいると感じています。
特に注目しているのは「Compute Subsystems(CSS)」です。
CSSとは、アーム・ホールディングスが提供するコンピューティングプラットフォームの一部で、プロセッサコア、メモリ、インターフェース、ソフトウェアを一体化した統合的なコンピューティングソリューションです。
CSSは、システム全体の設計や統合に必要な要素が揃っているため、企業が自社でゼロから設計する手間を省き、迅速に製品化するのをサポートします。
特に、CSSはデータセンターやAI分野での利用が進んでいます。
CSSは、標準的なARMコア(アーム・ホールディングスが設計したプロセッサの基本設計)を提供し、さらに高いASPを実現しています。
ハイパースケーラー企業は、独自のCPUシリコン開発を中止し、CSSを最大限活用するようになるでしょう。
これは、ARMアーキテクチャに依存しているAmpereのような企業にとっては厳しい状況をもたらすと考えられます。
下記は最新の決算説明会での遣り取りの一部です。
(原文)Secondly, in version 9, we've also introduced CSS, which we've mentioned several times, carries a higher royalty rate, in some cases, double, if not more, of what a standard version 9 core would be. So as a result, as we see growth in version 9 adoption, the royalty growth track higher than it has traditionally. And again, it's for those 2 factors. Number one, the value-based pricing that sees an increase because of the better economics delivered. And secondly, more of a transition to CSS.
(日本語訳)次に、バージョン9ではCSSも導入しました。これは何度かご紹介している通り、標準的なバージョン9コアと比べてロイヤルティ率が高く、場合によっては2倍以上になることもあります。そのため、バージョン9の採用が進むにつれて、ロイヤルティ収益の伸びも従来より高くなると見込んでいます。これには2つの理由があり、1つ目は経済効果が向上したことで価値ベースの価格が上がっていること、2つ目はCSSへの移行が進んでいることです。
今回の説明で大きな話題となったのはクアルコム(QCOM)の件で、アーム・ホールディングスはこの交渉で勝つと見込んでいるようです。
キャンセル通知は交渉戦略の一環であり、試しに揺さぶりをかけているように思えます。
最終的にアーム・ホールディングスはクアルコムからより高いロイヤルティを得ることになるでしょうし、クアルコムとしてもそれに従うしかないでしょう。
また、エヌビディア(NVDA)のGraceがAI推論分野に進出することで新たな機会を生むというコメントも興味深く感じました。
Graceは、エヌビディアが開発したデータセンター向けの高性能CPUです。
このCPUは、アーム・ホールディングスのNeoverse V2コアを最大72個搭載し、最大512GBのLPDDR5Xメモリをサポートします。
これにより、最大546GB/sのメモリ帯域幅を実現し、AIやハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)などの高度な計算処理に適しています。
個人的にはGrace自体の重要性にはやや懐疑的ですが、エヌビディアを通じてアーム・ホールディングスが念願だったデータセンター向けCPU市場への参入を果たしつつあることは確かです。
(原文)In addition, we are seeing, as I mentioned in the opening, demand for NVIDIA's advanced training and inference chip, Grace Blackwell, which uses the Arm CPU Grace as part of that overall solution. One of the benefits of that solution being introduced in the data center is that many of the base OS and workloads that are required for a general-purpose cluster are also used on this AI cluster, meaning there is a lot of leverage between using Arm in the data center for general purpose compute and using it for an AI training or inference center. There's a lot of software reuse.
(日本語訳)さらに、エヌビディアの最新トレーニング・推論チップであるGrace Blackwellへの需要も高まっています。このチップはArm CPUのGraceを組み込んだソリューションで、データセンターに導入することで多くのメリットがあります。具体的には、汎用クラスターに必要な基本OSやワークロードが、このAIクラスターでもそのまま使えるため、データセンターでの汎用コンピューティングとAIトレーニングや推論用途の間でArmの活用が効率よく進むという点です。これにより、ソフトウェアの再利用が大幅に可能になります。
(原文)So as a result, we believe that from an overall TCO standpoint, that will accelerate adoption of Arm to data center, which we're very excited about. So I'll let Jason talk about the numbers and the mix.
(日本語訳)そのため、総所有コスト(TCO)の面から見ても、データセンターへのArm導入が加速すると期待しています。この点について、具体的な数値や構成はジェイソンから説明してもらいます。
この様に、エヌビディアとのビジネスの進展等含め、アーム・ホールディングスの今後の展開には要注目です。
また、インベストリンゴのアナリストであるコンヴェクィティ社が、アーム・ホールディングスのテクノロジー上の強みと競争優位性関する下記のレポートを執筆しておりますので、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、ご覧いただければと思います。
その他のアーム・ホールディングス(ARM)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、アーム・ホールディングスのページにアクセスしていただければと思います。
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アナリスト紹介:ダグラス・ オローリン / CFA
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