ASMLホールディング(ASML)の今後の株価見通し:ASMLとTSMCの最新決算の比較を通じて、両社の将来性に迫る!

- 本稿では、ASMLホールディング(ASML)とTSMC(TSM)の最新決算の比較を通じて、両社の今後の株価見通しと将来性、並びに、私が注目するその他2つの半導体銘柄について詳しく解説していきます。
- ASMLホールディングは、2024年第3四半期の決算発表後に株価が16%以上急落し、1998年以来の最大の下落幅を記録しました。
- 一方で、TSMC(TSM)はAI関連チップの需要増加で好調な業績を発表しており、ASMLとの明確な差が生じていることが示されています。
- ただし、ASMLのバリュエーションは低下し、リスクはあるものの、長期的な成長を期待する投資家にとっては良い投資機会となる可能性もあります。
ASMLホールディング(ASML)は最新の2024年第3四半期決算を受けて株価は急落
ASMLホールディング(ASML)は今週水曜日に最新の2024年第3四半期決算発表を行うも、業績とガイダンスが振るわず、大幅に株価を下げる結果となりました。
しかし、この下落はAIブームの終わりを示唆しているのでしょうか?
TSMC(TSM)の業績を見ると、同社は引き続き高い売上を維持していることからも、まだそうとは言い切れないようにも見えます。
では、なぜASMLホールディングの株価は下落したのでしょうか?
他の半導体銘柄も同じような状況になるのでしょうか?
ASMLホールディングは今が買い時なのでしょうか?
そして最も重要なのは、この下落をどうやってリターンにつなげるかということです。
私は、全ての半導体銘柄が同様の状況に直面しているとは思っていません。
本稿では、最新の半導体業界のニュースをお伝えしながら、私が選んだ注目の2銘柄をご紹介したいと思います。
今回の下落は、AI関連銘柄に安く投資できる絶好の機会だと見ています。
そのため、半導体業界に関心のある方は、是非、最後までご覧いただければと思います。
本稿のテーマ:
・ASMLホールディングに何が起きたのか?
・ASMLホールディングは買い時か?
・TSMCの好調な決算
・半導体銘柄はすべて同じではない
・私が注目する半導体銘柄2選
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ASMLホールディング(ASML)に何が起きたのか?
ASMLホールディング(ASML)の株価は、2024年第3四半期の決算発表が技術的なエラーで予定より早く公表されたことを受け、16%以上も急落しました。
これは1998年以来の最大の下落幅です。
同社は2025年の見通しを下方修正し、AI関連チップ以外の半導体業界の回復が遅れると予測しています。
ASMLの受注が半導体業界の低迷により急減
(出所:Bloomberg)
メモリやロジックチップのメーカーは注文を延期しており、とりわけメモリの販売は新規設備投資が抑制されている状態です。
同社は2025年の受注見通しを引き下げ、顧客の慎重な姿勢と需要の弱さが続いていると説明しており、利益率も圧迫される可能性があるとしています。
ASMLホールディング(ASML)は買い時か?
ASMLホールディング(ASML)はリソグラフィーシステム市場で圧倒的な存在感を誇り、特に7ナノメートル以下の微細プロセス向けのチップ製造に欠かせない先端システムを提供しています。
同社の技術はハードウェアとソフトウェアを組み合わせたもので、TSMC(TSM)のような企業に供給され、TSMCはエヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)といった大手テック企業向けにチップを製造しています。
しかし、ASMLホールディングには、現在いくつかの重要なリスク要因があります。
中国は依然としてASMLの最大市場です
(出所:Bloomberg)
中国はASMLホールディングの最大の市場であり、2025年度の売上の約20%を占めると見込まれています。
しかし、米中間の輸出規制の影響で、同社は以前から売上の10〜15%が影響を受ける可能性があると警告しています。
長期的には中国市場への依存度が20%以下に落ち着くと予想されていますが、特に米国の政治的変動により、需要面での構造的な逆風が続く可能性があります。
とはいえ、現在のバリュエーションは魅力的に見えるかもしれません。
(出所:Seeking Alpha)
2日間で株価が22%下落したことで、ASMLホールディングの評価倍率が著しく下がっています。
依然として割安とは言えないものの、2025年度には成長と利益率の回復が期待されており、以前よりも投資妙味が増している状況です。
同社のGAAPベースのPERは以前の56倍から37倍に下がり、Non-GAAPベースの予想PERは22.9倍と、ラムリサーチ(LRCX)やKLA(KLAC)といった同業他社とほぼ同水準です。
また、ASMLホールディングのバリュエーションは過去5年の平均を10%下回っており、長期的な成長を期待する投資家にとって、リスクとリターンのバランスが魅力的に映る可能性があります。
ただし、一方で、他にもっと有望な半導体銘柄もあるように見えます。
TSMC(TSM)の好調な決算
その一方で、TSMC(TSM)は驚異的な決算を発表し、株価は新たな高値を記録しました。
(出所:TSMCの2024年度第3四半期決算資料)
売上高は前四半期比で12.9%、前年同期比では36%の増加となり、利益率も改善しました。
TSMCは、今年のAIサーバープロセッサーの売上が3倍以上に拡大し、2024年には総売上の1割強を占める見通しだと予想しています。
同社は、通年の売上が前年比で30%増加すると見込んでおり、第4四半期の売上は261億ドルから269億ドルの間になると予測しており、市場予想を上回る見通しです。
さらに、アリゾナ州に建設中の工場は、2025年に量産を開始し、その後、2028年に2つ目の工場が、2030年までには3つ目の工場が稼働する予定です。
私が注目する半導体銘柄2選
これら2つの半導体銘柄が辿ってきた道が分かれてきたのは非常に興味深いことです。
これまでAIブームがすべての半導体銘柄を押し上げていましたが、今ではすべての銘柄が同じように成長するわけではないことがはっきりしてきました。
TSMC(TSM)は世界のファウンドリーとして、エヌビディア(NVDA)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)などAIチップ設計企業からの需要増加で引き続き恩恵を受けています。
一方、ASMLホールディング(ASML)はTSMCがチップを製造する際に使用する装置を提供していますが、TSMCほど強力な立場にはありません。
両社の売上成長を比較すると、この差は明らかです。
(出所:Macrotrends)
そのため、ASMLホールディングの現在の株価下落は一つの投資チャンスかもしれませんが、私はこれから述べる下記の2つの銘柄により魅力的な投資機会があると見ています。
1つは、堅実なファンダメンタルズと適正なバリュエーションを持つ半導体銘柄。
もう1つは、テクニカルチャートに回復の兆しが見られる売り込まれた半導体銘柄です。
では、詳しく見ていきましょう。
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)
アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は他の半導体銘柄とは異なり、AIブームの恩恵を大きく受けています。
エヌビディア(NVDA)に次ぐ地位にありながら、データセンター関連の売上を3桁の成長率で伸ばしています。
(出所:AMDの2024年度第2四半期決算資料)
AMDの最近の成功の背景には、3つの重要な要素があるように見えます。
戦略的な買収、データセンター市場でのシェア拡大、そしてエヌビディアのBlackwellプロセッサー(エヌビディアの次世代AIチップで、高性能計算やAIモデルの処理に特化したプロセッサ)の遅延によるチャンスです。
Wedbush証券のアナリストは、ZT Systems(クラウドサービスやデータセンター向けのサーバーシステムを提供)の買収を評価し、AMDの目標株価を200ドルに設定しています。
また、Mi300(AMDが開発した次世代のAI向けアクセラレータプロセッサで、特にAIモデルのトレーニングや推論に使用される)やEPYCプロセッサー(AMDのサーバー向けプロセッサで、特にデータセンターやクラウドコンピューティングで使用される)の売上も好調で、データセンター関連の売上は前年同期比115%増となっています。
さらに、業務効率の向上が利益率を押し上げ、AMDはエヌビディアに対抗する強いポジションを築いています。
バリュエーションについても見てみましょう。
(出所:Seeking Alpha)
上記の図にもある通り、予想ベースのPEGレシオに基づくと、依然として割安であるように見えます。
そして、エヌビディアとAI関連市場が成長を続ける限り、AMDもその波に乗り続ける可能性があると考えています。
さらに、その波に加えて、エヌビディアから市場シェアを奪うことで、AMDの株価はさらに上昇する余地もあると見ています。
スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)
スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)については、以前下記のレポートで詳しく取り上げておりますので、同社の詳細に関心のある方は、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上でご覧いただければと思います。
スーパー・マイクロ(SMCI)の将来性とは?ヒンデンブルグ社の空売りレポートと年次報告書遅延で時間外から株価急落!
簡単にまとめると、同社の財務上の問題が指摘された空売り推奨レポートが発表され、同社の株価は急落しました。
しかし、同社の株価チャートには反転の兆しが見えているように見えます。
(出典:TrendSpider)
RSIでの強気のダイバージェンスが見られ、MACDもプラスに転じています。
さらに、4時間足チャートで20EMA(指数平滑移動平均線)が50EMAを上回るクロスが確認されています。
また、11月から12月にかけて、季節性の影響もスーパー・マイクロ・コンピュータにとって有利に働く可能性があると見ています。
アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
ジェームズ・フォード氏は、エコノミストとして、過去10年に渡り、世界市場の分析に従事してきました。そして、自らを「実践的な投資家」と位置付け、資産を継続的に維持・拡大させることを目的とした、分散されたポートフォリオの構築に重点を置いています。
主に、「グローバル・マクロ」、「ハイテク」、「コモディティ」、「暗号通貨」関連銘柄に焦点を当て、ファンダメンタル分析、並びに、テクニカル分析を用いた企業分析を提供しております。
さらに、その他のASML(ASML)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ASMLのページにアクセスしていただければと思います。
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