02/28/2025

やや強気
アテネ・ホールディング・シリーズA優先株(6.35%)
やや強気
米国の年金(アニュイティ)市場をリードする企業が、最大7.4%の利回りを持つ優先証券を大幅なディスカウントで提供している点は魅力的である。
米国優先株式とは?アテネ・ホールディングが発行する配当利回り7%超えの注目の米国上場優先株の今後の見通しと将来性に迫る!

man jump about to hold ball near netヴェンカット・ ラガーヴァンヴェンカット・ ラガーヴァン
  • 本稿では、「米国優先株式とは?」という基礎的な内容から、米国で年金貯蓄商品を発行・再保険・買収する事業を展開するアテネ・ホールディングが発行する配当利回りが最大で7%超えの注目の米国上場優先株式の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 経済の不透明感が続く中で、投資適格の米国上場優先株は高い利回りとキャピタルゲインの可能性を提供し、防御的な投資戦略として有効であると考えています。
  • アテネ・ホールディングは、米国の年金市場で強い存在感を持ち、高品質なバランスシートと優先株を活用した安定した配当収益を提供しています。
  • 市場の変動に備え、優先株を含めた攻めと守りを組み合わせたバランスの取れたポートフォリオを構築することが、持続的な投資成功の鍵となると見ています。

はじめに

経済データが見出しを飾る中、現在は貿易戦争や地政学的リスクへの懸念がそれを上回る状況となっています。将来の金利動向に対する不透明感が続く中、債券市場の価格にも影響を及ぼしています。このような不確実な環境において、守りを固めたポートフォリオは有効な戦略となります。そこで、本稿では、配当を活用して防御力を高める方法である「米国優先株式(Preferred Stock)」をご紹介します。

優先株式とは、企業が発行する株式の一種で、通常の普通株式(Common Stock)に比べて配当の優先権があることが特徴です。優先株の保有者は、企業が配当を支払う際に普通株の株主よりも先に受け取る権利を持ち、企業が清算される際にも資産分配の優先順位が普通株より高くなります。ただし、議決権が制限されることが一般的で、株主総会での意思決定には関与しにくい点がデメリットとなります。

優先株の中には、発行企業が将来的に買い戻すことができる「コール可能優先株」や、一定の条件下で普通株に転換できる「転換優先株」など、さまざまな種類があります。配当利回りの高さや安定した収益を求める投資家にとって、魅力的な選択肢となることが多いのが特徴です。

そして、投資適格の米国優先株式は現在、過去10年間の平均を上回る利回りを提供しており、高いインカム収入と、金利低下によるキャピタルゲインの可能性を兼ね備えた魅力的な投資機会となっています。

(出所:Cohen & Steersホームページ

上記のチャートによると、投資適格の優先株の配当利回りは6.1%から8.1%の範囲にあり、インフレや税金を考慮した後でも、実質リターンの観点から魅力的な投資対象となっています。

それでは、年金分野の主要な投資適格企業が発行する優先株について詳しく見ていきましょう

アテネ・ホールディングの優先株:最大7.4%の予想配当利回り

米国生命保険マーケティング・リサーチ協会(LIMRA)が発表した米国個人年金販売調査の速報によると、2024年の総年金販売額は4,324億ドルに達し、前年比12%の増加となりました。これにより、3年連続で過去最高の販売額を記録しました。なお、LIMRAの調査は米国の年金市場の83%をカバーしています。

2024年後半には、金利の低下に伴い、固定利率型繰延年金(Fixed-Rate Deferred Annuities)の販売が減速しました。その影響で、2025年度の販売額は前年比で25%減少すると予想されていますが、それでも2022年度と比較すると2倍の水準となる見込みです。

また、LIMRAは、登録インデックス連動型年金(Registered Indexed-Linked Annuities)や固定インデックス年金(Fixed Indexed Annuities)といった、投資成長の可能性がより高い商品へのシフトが進んでいると指摘しています。専門家の間では、この傾向は2025年も続くと考えられており、さらなる利下げが実施されることで、より一層この動きが加速すると予測されています。

そして、今回ご紹介するアテネ・ホールディングは、アポロ・グローバル・マネジメント(Apollo Global Management, Inc., APO)の完全子会社です。アポロは、高い成長性を誇るオルタナティブ資産運用会社であり、資産運用とリタイアメントサービスの両分野に強みを持っています。

アテネ・ホールディングは、その企業価値のみでも十分に評価されるリタイアメントサービスの大手企業であり、年金貯蓄商品を発行・再保険・買収する事業を展開しています。総資産は約3,500億ドルに達し、米国・バミューダ・カナダ・日本で事業を展開しています。

また、同社は固定インデックス年金の分野で米国のトップ企業の一つとして常に高く評価されています。同社は米国最大の年金商品プロバイダーであり、2024年度の最初の3四半期だけで270億ドル以上を販売しました。さらに、米国内の契約者数は200万人を超え、業界をリードする存在となっています。

加えて、同社は高品質なバランスシートを維持しており、大手格付機関からA+の評価を受けています。

(出所:アテネ・ホールディングのホームページ

アテネ・ホールディングは2,430億ドルの純投資資産を保有しており、高品質なポートフォリオから安定した配当利回りを生み出しています。特に注目すべき点として、このうち95%が固定所得資産または現金に投資されており、株式のバリュエーションが過熱している市場環境において、ポートフォリオ全体の防御力を高める要因となっています。

(出所:アテネ・ホールディングのホームページ

同社は流動性の高いバランスシートを維持しており、84億ドルの現金と合計684億ドルの利用可能流動資産を保有しています。これにより、金利環境の不確実性が続く中でも、高い柔軟性を確保しています。

2024年度の最初の9か月間で、同社は優先配当として1億3,600万ドルを支払い、その後の純利益は23億ドルとなりました。これは、優先株の配当を17倍もカバーできる堅固な財務基盤を示しています。

そして、同社は5種類の上場している優先株を発行しており、そのうち2種類は固定金利型、3種類はレートリセット型(一定期間ごとに配当利率が再設定されるタイプの優先株)となっています。すべての優先株は適格配当であり、非累積型(保険会社や銀行では標準的な仕様)で、永久優先株となっています。

1️⃣ 配当利回り6.3%:6.35% 固定から変動型・非累積・シリーズA 償還可能な永久優先株(ATH.PRA)

2️⃣ 配当利回り6.7%:5.625% 固定金利・非累積・シリーズB 償還可能な永久優先株(ATH.PRB)

3️⃣ 配当利回り6.3%:6.325% レートリセット型・非累積・シリーズC 償還可能な永久優先株(ATH.PRC)

4️⃣ 配当利回り6.7%:4.875% 固定金利・非累積・シリーズD 償還可能な永久優先株(ATH.PRD)

5️⃣ 配当利回り7.4%:7.75% レートリセット型・非累積・シリーズE 償還可能な永久優先株(ATH.PRE)

また、アテネ・ホールディングが新たに投資適格(BBB)のベビーボンドを発行した点にも注目すべきです。それが7.25% 固定金利リセット型 劣後債(ATHS)で、償還期限は2064年となっています。ATHSは現在額面をやや上回る水準で取引されており、利回りは7.1%となっており、安定した利息収入を提供しています。このベビーボンドはレートリセット型で、最初のリセットは2029年のコール日に行われ、その後は5年ごと(コールされない限り)に5年物米国債利回り+2.986%で再設定される仕組みです。

安定した固定収益を求める方には、「4️⃣ 4.875% 固定金利・非累積・シリーズD 償還可能な永久優先株(ATH.PRD:配当利回り6.7%)」が魅力的でしょう。現在の価格は額面より37%低い水準で取引されており、大きな上昇余地があるように見えます。ATH.PRDは低い基本クーポンを持つため、2025年末以降にコール対象となっても、すぐに償還される可能性は低いと考えられます。

一方、「3️⃣ 6.325% レートリセット型・非累積・シリーズC 償還可能な永久優先株(ATH.PRC:配当利回り6.3%)」は額面をやや上回る価格で取引されており、2025年9月30日以降のコール日を迎えた後に、より高い利回りを狙える有望な投資機会となっています。ATH-Cの基本クーポンは5.97%ですが、コール後には利回りが10%以上になる可能性があります。しかし、高いクーポン設定のため、発行体が早期償還を選択する可能性が高いと考えられます。

アテネ・ホールディングの優先株に対する結論

投資はフットボールの試合に似ています。成功するためには、強力な攻撃(オフェンス)と堅固な守備(ディフェンス)の両方が必要です。ディフェンスを軽視すると、市場の変動や予期せぬ下落に対して脆弱なポートフォリオになってしまいます。たとえ経済見通しが良好に見えるときでも、投資適格の固定所得証券のような防御的な要素を組み入れることで、資産を守ることができます。

そこで、成長を重視した投資機会と防御的な戦略をバランスよく取り入れることで、どのような市場環境でも安定した成果を上げられる強靭なポートフォリオを構築できると考えています。そして、持続的な長期的成功を収めるためには、攻めと守りを適切に組み合わせることが不可欠と言えるでしょう。


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