12/13/2023

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ブロードコム
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ブロードコム(AVGO)の今後の株価予想:最新の2023年4Q決算速報では業績好調で、目標株価は1301ドル!

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  • 本稿では、2023年12月7日に発表された、ブロードコム(AVGO)の最新の2023年度第4四半期決算とテクノロジー面での同社の強み(競争優位性)を詳しく分析していきます。
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性に関する詳細な分析を解説していきます。
  • 同社は最新の決算発表において、好調な業績とアナリストの好意的なレポートを受けて上昇に転じています。
  • 半導体ソリューションとネットワーク部門の成長により、売上高と利益は予想を上回る着地となりました。
  • VMwareの買収により、同社はインフラ技術市場での地位を強化し、クラウド・ソリューションでの存在感を拡大しています。
  • 私のDCFモデルに基づくと、同社株式の公正な評価額は1株当たり~1301ドルとなり、最大で21%の上昇余地があると見ています。
  • 一方で、不安材料としては、新年度の同社の成長速度が悪化する可能性がある点です。
  • その為、同社株価が現在の水準から10~15%下落し、それでも同社の業績と収益の予想が変わらなければ、同社への投資を検討したいと考えています。
  • 以上より、現時点では、同社株式への私の見通しは「中立」としています。

はじめに

つい最近、ブロードコムの株価は、好調な業績とそれに続くシティ証券のアナリストによる「買い」のカバレッジを受けて上昇に転じた。

しかし、同社の業績はこのような株価の強い反応を正当化するのに十分な内容だったのだろうか?

現在の同社のバリュエーションはどうだろうか?

これらの疑問に答えていきたい。

ブロードコムの最近の財務状況と動向

ブロードコムは、最近発表された23年度第4四半期決算において、売上高が前年同期比 4%増、前四半期比6%増の93 億ドルに達し、堅調な業績を報告した。

Non-GAAPベースの希薄化後1株当たり利益は、前年同期比6%増の11.03ドルとなり、経営陣のガイダンスおよびコンセンサス予想を上回った。

売上高全体の79%を占める半導体ソリューションは、イーサネット製品とカスタムAIアクセラレータに牽引されたジェネレーティブAIソリューションが20%寄与し、二極化した業績を示した。

半導体ソリューションの売上高の40%を占めるネットワーキング部門は、ハイパースケーラからの需要に牽引され、前年同期比11%の伸びを示した。

ブロードコムは、ハイパースケーラによる「標準」ネットワーキング接続の展開とAIアクセラレータの拡大が原動力となり、2024年度のネットワーキング収益は30%増加すると予測している。

半導体ソリューションズの28%を占めるワイヤレス収益は、年間では 3%減少したが、北米の主要顧客であるAppleの季節的な発売に合わせて前四半期比では 23%急増した。

そして、同社は、ワイヤレスの収益は2024年度も安定していると予想している。

一方、ストレージサーバー接続領域からの収益 (ストレージサーバー収益の14%) は、年間でも前四半期比でも減少しており、同社は2024年度も年間では10%台半ばから後半の減少を見込んでいる。

同社は、VMwareを610億ドルで買収し、2023年11月22日に完了しましたが、これはインフラストラクチャ技術市場における同社の地位を強化するための戦略的な動きである。

同社は、VMwareをプライベートクラウドとハイブリッドクラウド環境の構築に再注力し、ブロードコムの企業文化と戦略に合致させる計画である。

市場戦略の違いはあるものの、統合されたソフトウェア事業はVMwareの名称で運営される。

2024年度には120億ドルの収益貢献が見込まれており、ブロードコムは、バーチャル化におけるVMwareの主導的地位を活用し、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドソリューションにおけるプレゼンスを拡大することを目指している。

同社は、買収に関連する負債を迅速にデレバレッジする意向であり、統合データセンターソリューションプロバイダーとしての実行力に引き続き自信を持っている。

同社は、新たに100億ドルの自社株買いを承認し、四半期配当を14%増額することで、特に今後数年間で大きな成長が見込まれる事業分野である、AIジェネレイティブモデルのサポートにおいて、将来に対する楽観的な見方を示している。

しかし、あなたが同社が今後も株主還元を増やし続ける可能性を信じるかどうかにかかわらず、下記のグラフからも分かる通り、この点においては明らかに歴史が同社に味方しているように見える。

もちろん、投資家は今後多額の設備投資を覚悟しなければならない。

同社は、プライベートおよびハイブリッド・クラウドの基盤となるソフトウェア・スタックであるVMware Cloud基盤に多額の投資を計画しており、ブロードコムをAI-as-a-Serviceの提供に向けて位置付けているからである。

しかし、Statistaの計算によれば、ジェネレーティブAIの市場は巨大で、年平均成長率24.4%で成長するとされているため、長期的には報われるはずであると見ている。

ブロードコムは、新たに開拓された「AI事業」に加え、半導体と特にインフラストラクチャー・ソフトウェアの両分野で、複数年契約に基づく高水準の経常収益を確保している。

そしてこれは、市場の変動が激しい時期においても、成長とマージンを維持するのに役立つはずであると見ている。

このため、明確なモート(競争優位性)を持たず、AI業界への誇大広告だけに頼っているAI業界の若手企業よりも、同社は遥かに安定しているように見える。

しかし、同社のバリュエーションについてはどうだろうか。

ブロードコムのバリュエーションは妥当な水準

ブロードコムのバリュエーションは、PER(直近12カ月)が31倍、株価売上高倍率(直近12カ月)が約12倍と、一見すると不当に高く見えるかもしれない。

しかし、同社のPERが長期的な観点では変動が激しいことを考慮すると、来期以降、EPSが一層成長する可能性がある一方で、PERが縮小を示す可能性はあると見ている。

以上より、同社のPERのボラティリティは非常に高いことを考慮すると、PERをベースとして、同社のバリュエーションの妥当性について明確な結論を導き出すことは困難であると考える。

そこで、同社のバリュエーションを検討する際には、フリー・キャッシュ・フローの数値に注目することをお勧めしたい。

なぜなら、フリー・キャッシュ・フローは「ペーパー上の純利益」ほど変動がないからである。

2019年以降、同社は年平均成長率13.74%でフリー・キャッシュ・フローを成長させており、このような大企業としては非常に高く、配当もきちんと支払っている。

来年のフリー・キャッシュ・フロー利回りの数字はないが、来年も成長が変わらないと仮定すれば、フリー・キャッシュ・フローは200.5億ドル程度となり、フリー・キャッシュ・フロー利回りは最大で4%程度となる。

これは過去12か月間の数字よりやや高いが、過去の平均よりは低い水準である。

しかし、同社の位置する業界において、新たな追い風が吹いていることを考えると、今後数年間に、同社のフリー・キャッシュ・フロー・マージンの成長の可能性を無視することはできない。

そして、売上高フリー・キャッシュ・フロー比率は、2030年度までに通常の成長軌道に戻ると予想している。

WACCを8%、出口時点の株価キャッシュフロー倍率を20倍とすると、同社の公正な評価額は一株1301ドルとなり、最大で21%程度のアップサイドが期待できることとなる。

2023年7月、同社は現在よりはるかに低い価格で取引されていた。

しかし、なぜこのような結果になったのだろうか?

実際には、上記の同社の売上高予測は、ここ数ヶ月で劇的に変化してきた。

今年の7月に、市場のアナリストは2024年度のコンセンサス売上高が383億ドルと予想していたが、この数字は今や500億ドル超に上昇している。

つまり、AIの影響とVMware買収の結果が売上高予想を大きく押し上げた一方で、同社株は過小評価されたいたのである。

ブロードコムへの投資に対する結論

正直なところ、私は同セクターのどの企業よりもブロードコムが好きである。

好配当、明確な自社株買い方針、将来の発展と成長のための持続可能な手段と、同社には全てが揃っている。

市場予想が数週間で急速に変化し、著しく過小評価されていた同社株式に見直し買いが集中したことを踏まえると、私は同社株価を「買い」に格上げするタイミングを逃したのかもしれない。

しかし、同社株式は、更なる上昇の可能性はあり、私が買い推奨企業を選ぶ際に使用する「15%の基準ライン」を超えている。

しかし、ここでは文脈が非常に重要であると考えている。

S&P500指数は非常に過熱しており、現在の業績予想が現実になる2024年度には、プレッシャーにさらされる可能性が高いと私は考えている。

しかし、更なる米国マクロ経済の詳細に関しては、別のマクロ記事をご覧頂きたい。

私が心配している点は、新年度の同社の成長ペースが悪くなる可能性があることである。

その為、株価が現在の水準から10~15%下落し、それでも同社の業績と収益の予想が変わらなければ、同社への投資をもう一度検討したいと考えている。

そうなれば、私はこの株を「買い」にアップグレードする用意がある。

しかしそれまでは、「中立」で同社株式を見ていきたい。