06/08/2024

中立
ブロードコム
中立
全体として、ブロードコムは過去の平均値や同業他社と比べて割高な水準で取引されているようであり、同銘柄のポジションを検討している投資家はこれらの高いバリュエーションには注意が必要である。
ブロードコム(AVGO:予想配当利回り1.4%:配当性向47%)の将来性とは?最新決算分析と今後の株価見通しに迫る!

a computer chip with the letter a on top of itイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、ブロードコム(AVGO:予想配当利回り1.47%・配当性向47%・1株当たり配当金5.25ドル)の最新の2024年度第1四半期決算発表と配当推移に関するトレンド、さらに、同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
  • そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
  • 同社は世界第6位の半導体企業で、ワイヤレスやネットワーキングなどの17の中核半導体製品を提供し、ソフトウェア事業にも進出している。
  • 同社の2024年第1四半期決算におけるEPSは10.99ドルで、売上高成長率は過去5年間で12.20%、過去10年間で21.20%と安定した成長を見せている。
  • さらに、過去5年間の配当成長率が19.50%と高く、現在の予想配当利回りは1.47%で、財務健全性指標も良好だが、バリュエーションからは割高感があるため注意が必要である。

ブロードコム(AVGO)の概要

セクター:半導体

現在の株価:1406ドル

時価総額:6,518億7,000万ドル

弊社算出の一株当たり本質的価値:801.5ドル

安全マージン:-75.49%

過去5年間の配当成長率:19.50%

直近配当落ち日:2024年3月20日

直近配当支払い日:2024年3月29日

予想配当利回り:1.47%

過去5年間の売上高成長率:12.20%

過去10年間の売上高成長率:21.20%

ブロードコム(AVGO)は世界第6位の半導体企業であり、足元では様々なソフトウェア事業にも進出し、年間売上は300億ドルを超えている。

同社の主なビジネスとして、ワイヤレス、ネットワーキング、ブロードバンド、ストレージ、産業市場にわたる17の中核半導体製品を販売している。

同社は主にファブレス・デザイナーであるが、アップル(AAPL)のiPhoneに搭載されている最高級のFBARフィルター等、一部の製造は自社で行っている。

ソフトウェア事業では、仮想化、インフラ、セキュリティ・ソフトウェアを大企業、金融機関、政府機関に販売している。

ブロードコムは統合の産物であり、同社の現在の事業構造は、チップ分野ではレガシーのブロードコムやアバゴ・テクノロジーズ、ソフトウェア分野ではブロケード、CAテクノロジーズ、シマンテックといった様々な企業が合併した結果によるものである。

そして、同社は2024年3月7日に2024年度第1四半期決算を発表しており、2024年6月12日に2024年度第2四半期決算を発表予定となっている。

ブロードコム(AVGO)の収益と成長に関して

ブロードコム(AVGO)の2024年第1四半期のEPSは10.99ドルで、前期の11.06ドルからわずかに減少している一方で、1株当たりの売上高は第4四半期の21.768ドルから第1四半期は25.612ドルに増加している。

一方で、長期的なパフォーマンスを見ると、同社株の非経常損益項目を除くベースでのEPSの過去5年間の年平均成長率(CAGR)は20.80%となっていることからも、同社は長年にわたり安定した成長軌道を維持していることが分かる

また、今後10年間の半導体業界の成長予測はプラスであることからも、同社がこの成長トレンドをマネタイズする潜在的な機会を示していると言える。

さらに、同社は長年にわたり安定した財務レバレッジを維持していることからも、過度なリスクを負うことなく、さらなる成長を支える能力を有していることを示唆している。

安定した業績と良好な業界見通しにより、ブロードコムは今後も成長軌道を継続する好位置につけていると見ている。

ブロードコム(AVGO)の配当に関して

ブロードコム(AVGOは過去数年間一貫した配当成長を示しており、過去5年間の配当成長率は19.50%で、過去3年間の配当成長率は12.30%と安定した成長を示している。

一方で、同社のEBITDA純有利子負債倍率は 3.82倍で、財務面でのリスクがやや高いことを示しており、今後の同社の経営、並びに、継続した配当の支払いに影響を与える可能性がある点には注意が必要である。

また、現在の同社の予想配当利回りは1.47%で、セクター平均よりは低いものの、投資家に安定した配当による収入源を提供していると言える。

直近の1株当たり配当金(DPS)は5.25ドルであり、2024年3月29日に支払われている。

さらに、同社は、定期的に配当金を支払ってきた歴史があり、配当金の支払いには一貫性がある。

そして、同社の配当金の成長率をセクターと比較すると、同社の高い成長率は、長期的に配当金を増加することで株主に報いるというコミットメントを示しているようにも見える。

以上より、株価の増加によるキャピタルゲインと配当収入によるインカムゲインの組み合わせを求める投資家にとって、ブロードコムの配当成長の軌道は魅力的に見えるだろう。

予想配当利回り:1.47%

配当性向:47%

配当カバレッジ・レシオ:1.42

過去5年間の配当成長率:19.50%

EBITDA純有利子負債倍率:3.82倍

ブロードコム(AVGO)のバリュエーションに関して

ブロードコム(AVGO)の現在の株価は1406.64ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である801.50ドルを大幅に上回って取引されており、割高感を示している。

また、実績PERは52.14倍と5年平均、10年平均を上回っており、投資家が同社の収益にプレミアムを支払うことを望んでいることを示唆している。

さらに、株価売上高倍率は15.74倍で業界平均を上回っており、売上高に対して株価が割高である可能性を示している。

加えて、EV/EBITDA倍率は35.87倍と過去の平均を上回っており、EBITDAに基づくと、同社の株価が割高である可能性を示唆している。

全体として、ブロードコムは過去の平均値や同業他社と比べて割高な水準で取引されているようであり、同銘柄のポジションを検討している投資家はこれらの高いバリュエーションには注意が必要である。

ブロードコム(AVGO)のリスクとリターンに関して

ブロードコム(AVGOのリスク評価分析では、主に投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたい

まずマイナス面では、インサイダーによる同社株式の売却が多く確認される一方で、インサイダーによる同社株式の買い付けが非常に少ないことから、同社インサイダー間の同社株式の今後の見通しに関する自信のなさが伺える。

さらに、株価は10年来の高値に近く、株価が割高である可能性が意識される。

また、株価売上高倍率も10年ぶりの高水準に近く、売上高に基づいた場合、株価が割高である可能性をさらに示唆している。

加えて、予想配当利回りは5年ぶりの低水準にあり、配当収入重視のインカム志向の投資家にとってはネガティブかもしれない。

一方でプラス面では、ベニッシュのMスコアは-2.21で、同社が利益操作を行っている可能性が低いことを示している。

さらに、営業利益率は拡大しており、これは同社の財務健全性を示すポジティブな指標であると言える。

また、同社は一貫した売上高と利益の伸びを示しており、これは潜在的な投資家にとって良い兆候である。

加えて、アルトマンのZスコアは4.16と高く、同社が強固な財務体質を保持していることを示している

全体として、多くのインサイダーによる同社株式の売却や高いバリュエーション指標等、懸念材料はあるものの、同社の財務健全性指標は概ね良好であることからも、ブロードコムのバランスの取れたリスクプロファイルを示唆している。

ブロードコム(AVGO)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

ブロードコム(AVGO)のインサイダー取引分析では、過去12ヶ月でインサイダーによる同社株式の買い付け件数(2件)に比べ、インサイダーによる同社株式の売却件数(21件)が圧倒的に多いことが分かる。

このインサイダー取引活動の不均衡は、インサイダーが同社株式における自身のポジションを減らしていることを示唆しているが、インサイダーによる同社株式の保有比率はわずか0.25%である点にはご留意いただきたい。

一方、機関投資家の保有比率は64.95% と著しく高く、機関投資家の同社株への関心の高さを示唆している。

このトレンド分析より、インサイダーがブロードコムに対して慎重なスタンスである一方、機関投資家は同社の将来性に強気であることを示している可能性がある。

ブロードコム(AVGO)の流動性に関して

ブロードコム(AVGO)の直近営業日の1日の当たり出来高は1,776,626株で、過去2カ月間の1日平均出来高は2,416,046株となっており、一貫した取引が行われていることを示している。

また、同社株式のダークプール指数(DPI)は41.22%で、取引活動のかなりの部分がダークプールで行われていることを示している。

※ダーク・プール指数は、ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。

この高水準のDPIは、同社株式の価格発見への透明性と市場全体の効率性に影響を与える可能性がある。

そして、この水準は、機関投資家がこの銘柄を積極的に取引していることを示唆している可能性がある。

また、ダーク・プールにおける流動性は同社株価の安定に寄与し、株価のボラティリティを低下させるとも言える。

全体として、ブロードコムの流動性は十分なように見えるが、投資家はダークプール取引が値動きに与える影響に留意する必要があるだろう。

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