やや強気ブロードコムブロードコム(AVGO)の将来性:最新決算から見る足元の株価上昇の理由と今後の株価見通し、配当の成長性を徹底分析!

- 本稿では、ブロードコム(AVGO:予想配当利回り1.27%)の最新の2024年度第2四半期決算と同社の財務パフォーマンスを詳細に分析していきます。
- そして、それらの分析を通じて、同社の目標株価と配当の成長性、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
- 2024年3月以降、ブロードコム(AVGO:予想配当利回り1.27%)の株価は28%以上上昇し、S&P500種株価指数を6倍も上回るパフォーマンスとなっています。
- 2024年6月12日に発表された最新の2024年度第2四半期決算報告では、特にAI関連の売上高とインフラ・ソフトウェアが好調な伸びを示している。 製品構成のバランスが整い、利益率の高いAIとネットワーキングのソリューションが成長を続けるにつれて、同社の利益率は改善すると私は期待しています。
- 同社が今後も予想を上回り続け、PERを30倍以上の水準に維持することが出来れば、同社の株価には、今後12~16ヵ月で約36.7%の上昇余地がある見ています。
ブロードコム(AVGO)に対する私の見解
最近の株価上昇は、ブロードコム(AVGO:予想配当利回り1.27%)の始まりに過ぎないと私は考えている。
なぜなら、直近の決算を含む、同社に関連するイベントを分析すると、同社に対する市場の成長期待が十分に根拠のあるものである可能性が高いことを示しているからである。
そのため、私は、同社に対して、足元の高いバリュエーション(評価倍率)を支えるトップラインである売上高のさらなる成長、利益率の向上、配当の継続的な成長が期待出来ると見ている。
ブロードコム(AVGO)に強気である理由
まず、2024年6月12日に公表された発表された、ブロードコム(AVGO)の最新の2024年度第2四半期決算報告を分析してみよう。
同社の売上高は124億9,000万ドル(前年同期比43%増、前四半期比4%増) で、コンセンサス予想の120億1,000万ドルを5億ドル以上上回っている。
また、希薄化後のNon-GAAPベースの1株当たり利益(EPS)は10.96 ドル(前年同期比6%増)は、コンセンサス予想を1%近く上回る着地となっている。
そして、ホック・タン最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、AI関連の売上が前四半期の23億ドルから31億ドルに成長したことを強調している。
それでは、各セグメントの業績を見てみたい。
同社の事業セグメントは、インフラ事業(Infrastructure)と半導体ソリューション事業(Semiconductor Solutions)、通称「SS」、の2つだけであることはご存じだろう(2024年度第2四半期はSSの売上高が全体の57.7%を占めている)。
半導体ソリューション事業の売上高は、前四半期の小幅な減収にもかかわらず、前年同期比6%増となった。
第2四半期時点で、ジェネレーティブAIソリューションが半導体ソリューション事業の構成比の40%以上を占めている。
加えて、大規模なハイパースケールクライアント向けのイーサネット機器とカスタマイズされたAIアクセラレータが同セグメントの成長に大きく貢献している。
半導体ソリューション事業の大部分を占めるネットワーキング売上高は、ブロードコムが前年度に販売したスイッチの数を倍増させた結果、38 億ドル(前年同期比44%増、前四半期比 15%増)に増加している。
特にTomahawk 5スイッチとJericho 3 AIルーターが好調となっている模様である。
また、ブロードコムは、AIとネットワーキングへの集中に加え、5G機器の割合を増やすことでワイヤレス部門を拡大している。
この拡大は、5G RFコンポーネントの研究・製造に関するアップル(AAPL)との数年単位で、数十億ドル規模の提携によって可能となっている。
クラウドデータセンターの展開を拡大し、サーバー1台当たりのコンテンツを増やすことで、同社はブロードバンドとストレージ接続カテゴリーの不足にも対処している。
通信費の伸び悩みにより、ブロードバンド経由の売上高は現在減少しているが、同社は将来の回復から利益を得るために有利な立場にあると見ている。
さらに、同社のプラグ・アンド・プレイのシリコンIPハイパースケーラの広範なプラットフォームにより、AIクラスタの迅速な作成と展開が可能になり、AIの導入が加速するにつれて売上高が大幅に増加するものと思われる。
インフラストラクチャー・ソフトウェアでは、VMwareの資産と売上の統合により、売上高が175%(前年の19億ドルから約53億ドル)増加した。
実際、第2四半期のVMwareの売上高における貢献は27億ドルで、第1四半期の21億ドルから増加している。
経営陣がコメントで述べたように、VMwareの買収はブロードコムに変革をもたらしている。
ブロードコムは、VMwareの製品ラインアップを8,000を超えるSKUから4つのコア製品へと近代化し、シンプル化によって多くの販売上の競合を排除し、業務を合理化した。
また、ブロードコムが買収後にいくつかの重要なコスト削減策を講じたことも好感が持てる。
結果、VMwareの支出は、買収前の四半期あたり23億ドルから第2四半期には16億ドルに減少し、さらに2024年度末までに13億ドルまで減少する見込みである。
しかし、現在の市場のコンセンサス予想とブロードコムの過去10年間の1株当たり利益の推移を比較すると、市場は同社の潜在的な利益成長に対して一定のディスカウントを適用していることが分かる。
同社のIR資料によると、過去10年間、同社の希薄化後の1株当たり利益(EPS)の年平均成長率(CAGR)は約25%で、2016 年以降の配当金の支払額の年平均成長率は約35%とさらに高くなっている。
(日本語訳)2011年以来、普通株式への配当金は増加
私は、ブロードコムが今後5年間でEPSの年平均成長率25%を達成する可能性は高いと見ており、これは現在の市場の予測をはるかに上回るものである。
その主な理由は、VMwareがすでに同社のエコシステムにほぼ完全に統合されていると思われることと、AIソリューションの需要がこれまでの予想以上に高まると予想されることである。
モルガン・スタンレー(MS)のアナリストも、ブロードコムが「(ドルベースで)カバレッジの中で(エヌビディア(NVDA)に次いで)2番目に大きなAIエクスポージャーを持つ」と指摘し、私の見解を支持しているようにも見える。
同行は、ブロードコムがAIブームから大きな恩恵を受けると予想している。
具体的には、AI関連の売上高は2023年度の42億ドルから2025年度には140億ドル(2年間の年平均成長率~82.6%)に成長し、同社の半導体売上高の~39%を占めると予測している。
この成長は、AIデータセンターにおけるイーサネットの展開、グーグル(GOOG/GOOGL)の継続的なTPU(Tensor Processing Unit)拡大、2つの新しいASIC顧客によって牽引されると同行は予想している。
また、直近過去12カ月間ベースのPERは高水準となっているが、予想(フォワード)ベースのPERを見てみると、同社の予想PERは36倍程度と、過去の水準と比較しても著しく高い水準にあるようには見えない。
そして、同社のEPS成長率が実際にコンセンサス予想の数字を上回れば、予想PERはさらに低くなることが予想される。
私の計算では、まず、現在のEPS成長率予想にプレミアムをつけたブロードコムは、2025年度には予想PERベースで22倍で取引されることとした。
しかし、実際には、私は同社のPER水準はおそらく30倍程度(それ以上ではないにせよ)を維持すると見ている。
そのため、これらの私の想定を踏まえると、同社の今後の株価の潜在成長率は、現在の株価と比較して約36.4%の上昇余地があるように見える。
したがって、同社の成長見通しに関する私の以前の予想は、実際には保守的すぎたと私は考えており、そのため、ここ数週間の同社株価の急騰は、今後のラリーの始まりに過ぎないと見ている。
私のブロードコム(AVGO)への仮説に対するリスク
カスタマイズされたAIシリコンチップの市場は有望であり、ブロードコム(AVGO)の市場での位置付けは他の同業他社との明確な差別化となっているが、同社株式への投資を検討する際に、考慮すべき重要なリスクを幾つか取り上げたい。
まず、エヌビディア(NVDA)との競合の可能性は、ブロードコムの市場シェアに影響を与える可能性があるため、大きな懸念材料となる。
さらにモルガン・スタンレー(MS)は、グーグル(GOOG/GOOGL)がMediatekと協力して独自のASICを開発し、ブロードコムのグーグルとのTPUビジネスを危険にさらす可能性があるという噂がメディア上で流れていると指摘している。
また、半導体価格の下落が長期化する可能性や、VMwareの製品ラインへの組み込みが困難になる可能性もあり得る。
さらに、決算説明会では、同社が顧客を慎重に評価していることが伺えるが、同社のEPSが減少することがあれば、足元のバリュエーション(株価倍率)が大幅に低下する可能性もある。
例えば、同社のPER倍率が22倍(2025年会計年度)に低下し、EPS のコンセンサス予想である59.95 ドルが実現すると仮定する。
このシナリオでは、同社の株価は直近の市場価格から31.5%低下し、1,319ドルで取引される可能性がある。
私のブロードコム(AVGO)への結論
テクニカル面、また、ファンダメンタル面においても多くのリスクが存在するが、ブロードコム(AVGO)株式の最近の上昇は今後のラリーの始まりに過ぎないと見ている。
同社には、将来の大きな成長につながる戦略的イニシアティブがいくつかある。
同社は、ネットワークとAIの提供を拡大し、戦略的提携を通じてセルラー市場での地位を強化し、インターネットとストレージの接続という課題に取り組んでいる。
また、VMwareの統合によってプロセスが合理化され、経費が大幅に削減されたことは明らかである。
一方で、カスタムAIアクセラレータの比率が高まったことで、利益率が圧迫されているが、製品構成が均等化し、利益率の高いAIとネットワーキングのソリューションに対する需要が高まれば、状況は好転すると見ている。
同社が市場のコンセンサス予想を上回り続けていることから、市場からはプレミアムが与えられており、予想PERベースで30倍以上を維持している。
そのため、これらが継続すると仮定すると、私の計算では、今後12~16ヵ月で同社株式は約36.7%の上昇余地があると見ている。
さらに、その他のブロードコム(AVGO)に関するレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ブロードコムのページにアクセスしていただければと思います。