12/31/2024

中立
ブライトスパイア・キャピタル
中立
経営陣は、COVIDの困難な時期を見事に乗り越え、さらに近年では商業不動産市場における数十年ぶりの深刻な債務不履行の波も乗り切りました。不動産市場に再び明るい日差しが差し込むとき、彼らがどのような成果を上げるのか楽しみにしています。
【高配当】ブライトスパイア・キャピタル(BRSP)の将来性:予想配当利回り11%の注目の高配当REITの今後の株価見通しに迫る!

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  • 本稿では、注目の米国高配当REITであるブライトスパイア・キャピタル(BRSP:予想配当利回り11%)の最新の財務分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 商業用モーゲージREITであるBRSPは、小口ローンと不動産運営に注力し、高利回りを提供しながら、現経営陣の手腕により保守的なポートフォリオを構築しています。
  • 不動産市場の回復が進めば、BRSPは安定した収益だけでなく、高いリターンをもたらす可能性がある一方、現在の市場環境では信用リスクやデフォルトの課題に直面しています。
  • 高配当の魅力を享受するには、セクター特有のリスクや信用ストレスを理解し、不動産市場の回復を見据えた慎重な投資判断が求められるでしょう。

はじめに

希少性は、しばしば価値を生み出します。

何かが希少であるほど、それを求める人々にとってその価値は高まります。例えば、アンティークの銃器はもう製造されていないため、その価値が上がりやすいです。第一次世界大戦や第二次世界大戦で使用された主要な小火器をすべて揃えたい場合、これらの銃器は生産が終了しているうえ、損傷しても簡単に修理できないため、その取得コストは上昇を続けています。

一方で、希少性が高い物は、売買が容易な市場が存在しない場合、評価が難しいことがあります。アンティーク銃器は比較的取引が盛んで、住宅ローン担保証券(MBS)が簡単に売買される状況に似ています。しかし、非常に希少というわけではないものの、売却が極めて難しい物件を抱えてしまったらどうなるでしょうか?これは、多くの商業用不動産投資信託(REIT)が直面する課題であり、ローンや不動産が問題を抱えた場合によく起こるケースです。

これらのREITは、商業用不動産を担保とした住宅ローンを提供しています。これらのローンは通常、変動金利であるため、資産自体は金利変動の影響をそれほど受けません。しかし、商業用モーゲージREIT(商業用mREIT:commercial mortgage REIT)が直面する主なリスクは信用リスクです。つまり、借り手が契約通りに返済するかどうか、返済が滞った場合に貸し手がどれだけ回収できるかが問題となります。

因みに、商業用モーゲージREITとは不動産投資信託(REIT)の一種で、主に商業用不動産を対象としたモーゲージ(融資やローン)に投資する企業です。これらのモーゲージREITは、住宅用モーゲージREITとは異なり、商業施設やオフィスビル、工場、倉庫、ホテルなど、収益を生む商業用不動産のローンや証券化商品(CMBSなど)に焦点を当てています。

そして、資産自体は金利変動に敏感ではないものの、高金利が原因の一つとされる信用ストレスの増加が見られます。借り手の多くは、建物を所有してテナントに貸し出すことで利益を得ようとする大家です。しかし、変動金利のローンでは、金利が上昇するにつれて物件の所有コストも上昇します。一部のケースでは、所有コストが賃料収入を上回り、経済的な採算が取れなくなる事態も発生しました。金利負担の増加と空室率の上昇が重なり、多くのローン、特にオフィスビルを担保としたローンでデフォルトが相次いでいます。

今回は、商業用モーゲージREIT全体のリスクを検討し、現在のリスクに見合うリターンが得られるかどうかを探っていきます。

さあ、始めましょう!

ブライトスパイア・キャピタル(BRSP)予想配当利回り11%・配当金0.16ドル

ブライトスパイア・キャピタル(BRSP)は、世界的なパンデミックを契機に再出発を果たした商業用モーゲージREITです。それ以前の経営陣は、多くのメザニンレベルのローンやCMBS(商業用モーゲージ担保証券)、さらには物理的な不動産など、質の低い資産を抱えたポートフォリオを形成していました。これらの資産は、Colony Capitalという前運営会社が事業拡大を狙い、複数の合併を通じて蓄積したもので、CLNC(かつて商業用不動産関連の投資を専門とするmREITとして運営されていた会社)と呼ばれていました。

CLNCは、COVID-19が発生した時点で、ポートフォリオの大部分を清算するプロセスの途中でした。そして2020年4月、現経営陣が新たに経営を引き継ぎました。新体制のリーダーであるマイケル・マッツェイ氏(Ladder Capitalの共同設立者で元CEO)は、資産の売却を完了させるとともに、Colonyとの管理契約を終了し、運営を内部化しました。そして、ゼロから新しいポートフォリオを再構築する取り組みを開始しました。

ブライトスパイア・キャピタルは、いまだにいくつかの旧来の資産を抱えて対応していますが、全体的に見れば、以前の経営陣の時代に比べてポートフォリオは大幅に保守的で、質も向上しています。

ブライトスパイア・キャピタルは「一口サイズ」のローンに注力しており、現在76件のローンを保有しています。その平均規模は約3,400万ドルです。このうち9件のローンは、リスク評価が4または5に分類されており、注意が必要なリストに含まれています。

リスクランキングの概要

(出所:ブライトスパイア・キャピタルの2024年度第3四半期決算資料)

経営陣はデフォルトのリスクに対応することに重点を置き、大量の流動性を確保しつつ、負債/自己資本比率を2.2倍に抑えた保守的な運営方針を採用しています。

さらに、ブライトスパイア・キャピタルは15棟の所有不動産を保有しており、同業他社と比較しても非常に大規模な不動産ポートフォリオを構築しています。

ネットリース不動産およびその他の不動産

(出所:ブライトスパイア・キャピタルの2024年度第3四半期決算資料)

これらの建物は、以前の経営陣から引き継いだ資産が中心ですが、一部は差し押さえによって取得された不動産です。

COVIDの期間、そしてここ数十年で最悪ともいえる商業用不動産市場のデフォルトの波を乗り越えた現経営陣の手腕には感心しています。そして、不動産市場が再び追い風を受ける時、彼らがどのような成果を示してくれるのか、とても楽しみにしています。

ブライトスパイア・キャピタル(BRSP)に対する結論

本稿にて紹介したブライトスパイア・キャピタル(BRSP)には、デフォルトリスクが伴います。ブライトスパイア・キャピタルは小口ローンに特化し、他社よりも多くの不動産を運営する戦略を取っています。現在では安定した収益を提供しており、不動産市場が再び活性化すれば、将来的に大きなリターンが期待できるでしょう。

とはいえ、今最も重要なのは、現経営陣がこの厳しい状況をどのように乗り越えるかです。私は、この経営陣がポートフォリオを効果的に管理し、求めている安定した収益を提供してくれると考えています。そして、商業用不動産市場が回復すれば、それに伴い高いリターンをもたらしてくれると期待しています。

そのため、安定した収益を受け取りながらも、常にセクター内のリスクに目を配り、潜在的なリスクをしっかり認識することを忘れないよう心がけています。

退職後の資産運用では、高収益を提供する投資を売却しようとしている人々から購入することが、ポートフォリオの収益力を大幅に向上させる有効な手段の一つとなります。ただし、安易に行うべきではありません。購入を検討しているセクターの逆風やリスクを十分に理解しておく必要があります。商業用不動産投資は「楽して得られる利益」ではありません。二桁の利回りを享受している間にも、さまざまなリスクが潜んでいることを意識しておくべきでしょう。

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・バンク・オブ・ノバ・スコシア(BNS:予想配当利回りは5.8%)

・ヘルスケア・リアルティ・トラスト(HR:予想配当利回り7.3%)

・キンベル・ロイヤルティ・パートナーズ(KRP:予想配当利回り11%)

・ウェスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES:予想配当利回り8.9%)

・ブルー・アウル・キャピタル(OBDC:予想配当利回り9.7%)

・アレス・キャピタル(ARCC:予想配当利回り8.6%)

・アポロ・コマーシャル・リアル・エステート・ファイナンス(ARI:予想配当利回り11%)

・ベライゾン(VZ:予想配当利回り6.3%)

・グローバルX MLP ETF(MLPA:予想配当利回り7%)

・AT&T(T:予想配当利回り5%)

・エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(EPD:予想配当利回り6.9%)

リアルティ・インカム(O:予想配当利回り5.6%


アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン

📍インカム・高配当担当

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