ドラッケンミラー氏は米国債を空売り?エヌビディアを売却したドラッケンミラー氏の今後の米国経済見通しに迫る!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、エヌビディアを売却し、足元では米国債の空売りを進めている、米国の著名投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏の今後の米国経済に対する見通しを詳しく解説していきます。
- ドラッケンミラー氏はジョージ・ソロス氏が運営していた「クォンタム・ファンド(Quantum Fund)」のチーフ投資責任者(CIO)を務めていました。
- 現在の経済を強気に見ており、FRBの利下げやAI分野の成長に注目している一方で、2025年以降の市場流動性やインフレ再燃リスクを警戒しています。
- 現在の株式市場は絶好調に見えるものの、債務対GDP比率の上昇や大規模な借り換えの必要性が近い将来の課題となる可能性が指摘されています。
- ドラッケンミラー氏は10年物国債のショートポジションを取り、AIやビットコインなどの資産クラスに注目しながら、次の投資戦略を見極めています。
ドラッケンミラー氏の米国経済の今後の見通しとは?
今の米国株式市場の状況はまさに絶好調のように見えます。
米国経済は絶好調で、市場に友好的な大統領が指揮をとり、インフレは落ち着きを見せています。
FRBは利下げに向かい、失業率も低水準を維持し、そしてAIはますます進化中。
まるで株式市場の「正解」を見つけたかのようですが、本当にそれが答えなら、話はもっと簡単なはずですよね。
たしかに現状は良い方向に進んでいますが、これがこの先もずっと続くわけではないかもしれませんし、2025年も強気相場が続く保証はありません。
本稿では、名高い投資家の一人であり、私自身が最も注目しているスタンレー・ドラッケンミラー氏の最新インタビューを取り上げます。
ドラッケンミラー氏は、アメリカの著名な投資家であり、特にヘッジファンド業界で高い評価を受けている人物です。
彼はジョージ・ソロス氏が運営していた「クォンタム・ファンド(Quantum Fund)」のチーフ投資責任者(CIO)として知られ、1992年にポンド危機で「イングランド銀行を破った男」として名を馳せたトレードを成功させた中心人物の一人です
彼は現状に対して強気の姿勢を見せながらも、経済に影響を与える可能性のある「注意信号」にも言及しています。
本稿では、彼の洞察をもとに具体的な投資戦略を考察し、私自身の意見やアイデアも交えてお伝えします。
本稿でわかること:
・ドラッケンミラー氏が現状強気である理由
・米国債券を空売り(ショート)しつつAIに注目する背景
・FRBは政策ミスをしているのか?
・再び高まるインフレの可能性
・中国問題の行方
・2025年の流動性見通し:厳しい局面が来るかも?
・金利とドルの動向
・来年のマーケットで利益を上げる方法
・ビットコインやその他の資産が果たす役割
・今後12カ月間で注目すべき資産クラスとセクター
次なる投資の一手を考えるヒントにしていただければと思います!
ドラッケンミラー氏の見解まとめ
スタンレー・ドラッケンミラー氏が数週間前にノルウェー銀行で行った講演(詳細はこちら)は、今年の中でも最も洞察に富んだ内容のひとつです。
もし1時間の視聴時間が取れない方のために、主なポイントを簡単にまとめました。
1. 現時点では、今後3~6か月以内に経済的な問題が発生する兆候は、ボトムアップの情報から見受けられません。
ドゥルッケンミラー氏は今後3~6か月について引き続き楽観的な見方を示しています。
この見解には説得力があり、経済が堅調であることを示すデータも多く揃っています。
(出所:MacroMicro)
米国のGDPは依然として堅調で、先行指標もサイクルの底を脱し、上向きつつあります。
多くの人が見落としているのは、COVID期に米国経済が大規模な借り換えを経験したという事実です。
消費者や企業は低金利の借り入れを確保し、積極的な財政政策の恩恵を受けてきました。
2. ただ、個人的には「問題が完全に解決した」とはまだ言い切れません。
一方で、インフレが再燃するリスクも懸念されます。
特に、FRBがソフトランディングを目指す中で、経済がこれだけ強い状況にあると、インフレ圧力が再び高まる可能性があります。
FRBは、金融環境がすでにかなり緩やかな状態にある堅調な経済に対し、引き締めを進めている状況です。
米国の金融環境はかなり緩やかな状況にある模様
全米金融環境指数(National Financial Conditions Index)
(出所:Financial Times)
3. 債務対GDP比率が永遠に上昇し続けることは不可能です。
ドラッケンミラー氏も指摘しているように、この比率には限界があり、私としては、来年にもその影響が表面化する可能性があると見ています。
トランプ氏が大統領である以上、彼の特徴でもある大規模な財政赤字が続くことは避けられません。
しかし、現在の10年物国債の金利水準を考えると、政府にとってその財政負担は非常に重くなるでしょう。
さらに、再借り換えが必要なのは米国財務省だけではありません。
(出所:Goldman Sachs)
ドラッケンミラー氏は、2025~2026年に企業が迎える大規模な債務返済の壁についても指摘しています。
近い将来、経済全体で借り換えの必要性が高まり、市場から流動性が吸い上げられる可能性があると考えられます。
これは非常に重要なポイントであり、今後の分析や実践的なアドバイスにも直結していく内容です。
4. 私は純資産価値(NAV)の約25%を10年物国債の空売りポジションに充てています。
実践的なアドバイスに関連する話題として、ドゥルッケンミラー氏は10年物国債を空売り(ショート)していることを挙げています。
最近の低金利局面からこのスタンスを維持しており、現在は純資産価値(NAV)の約25%を10年物国債の空売りポジションに充てています。
(出所:TrendSpider)
つまり、彼は金利が上昇すると考えており、実際に10月以降、金利は上昇傾向にあります。
この動きは、一部の投資家にとっては意外だったようです。
というのも、FRBが積極的に利下げを進めている状況だからです。
しかし、一見逆説的に思えるこの考え方は、実は合理的ともいえます。
FRBが利下げを行えば、経済の強さが示され、それによって長期金利が上昇する可能性があります。
一方、FRBが利下げをしない場合、ハードランディングのリスクが高まり、その結果として長期金利が低下する可能性もあります。
5. 私たちはAIに対して非常に前向きな見方をしていますが、現時点ではどの分野に積極的に投資すべきかについては慎重に見極めています。
ドラッケンミラー氏は、エヌビディア(NVDA)の急騰が始まった初期段階で投資したことで知られていますが、その後ポジションを手放しました。
それでも、AI分野には引き続き強気の姿勢を示しています。
ただ、現在の水準では、どのようにロングポジションを取るのが最適かは確信を持てないようです。
競争が非常に激しいため、どの企業が勝者となり、どこが敗者になるのかを見極めるのは依然として難しい状況です。
世界のマクロ経済で何が起きているのか?
ここ最近、グローバルマクロの動きはこれまでにないほど異例の状況が続いています。
資産間の相関関係が崩れ、さまざまな予想外の動きが見られるのです。
特に目立つのが、ドルが上昇する一方で、金やビットコイン(BTCUSD)も同時に上昇していることです。
(出所:TradingView)
通常、ドル高は金にとってマイナス要因となるはずですが、現在の市場ではどちらの資産にも強い需要が存在しているようです。
言い換えると、ドルは他の通貨に対して強くなりつつ、金はドルに対して強くなっています。
(出所:MacroMicro)
この状況は非常に興味深いものです。
さらに、数週間前にも触れたように、米国がネット輸出国となったことで、ドルと原油の相関関係も崩れています。
(出所:TradingView)
また、通常なら金利上昇はナスダックのようなリスク資産にとって逆風となるはずですが、ここ数カ月間ではそうなっていません。
むしろ、過去1年間で金利も株価も同時に上昇するという異例のトレンドが続いています。
金利上昇は、米国経済が依然として強いことを示しています。
(出所:J.P. Morgan Asset Management)
また、米国の株価上昇の背景には企業の業績の堅調さが見て取れます。
多くの場合、株価の伸びに業績が追いついている例も見られます。
たとえば、エヌビディアとシスコ・システムズ(CSCO)の比較はその一例です。
ただし、この状況がこのまま続くとは限りません。
表面的には好調に見えても、目に見えないリスクも数多く潜んでいます。
そして、現在、市場全体が極端な強気ムードに包まれていますが、個人的にはこれが逆に不安要素に感じられます。
次章で取り上げるトピック
次章では下記の重要なテーマについてさらに掘り下げていきます:
・大規模な借り換え:ドル、金利、グローバル流動性
・注目すべきリスク要因:中国と日本の紛争リスク
・ビットコインと金の行方
・マクロポートフォリオの最新動向:2025年に向けた再構築
それでは、本題に入っていきましょう。
※続きは「米国株の2025年の見通し:米国政府や米国企業の大量の借り換えとインフレ圧力の再燃には要警戒!」をご覧ください。
また、トランプ政権の今後の政策が米国経済に与え得る影響に関して関心がございましたら、私が直近執筆した下記のレポートも、インベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。
トランプノミクスに関して
トランプ新政権下での注目の米国株
加えて、インベストリンゴのアナリストであるローレンス・ フラー氏も、トランプ新政権の政策が米国経済に与え得る影響に関する下記のレポートをリリースしています。
こちらも併せてご覧いただければと思います。
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アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
📍米国マクロ経済&テクノロジー担当
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