Part 2:コンフルエント(CFLT)オープンコアとConfluent Cloudの成功、Kafka再定義による競争優位性と成長戦略
コンヴェクィティ- Confluent(CFLT)は、当初オンプレミスやセルフホスト型デプロイメント向けにConfluent Platform(CP)を提供し、2018年にはConfluent Cloud(CC)を導入してクラウドネイティブアーキテクチャに再設計した。
- Confluent Cloudは、クラウドネイティブ時代に適応したKafkaの再発明であり、Kraft、階層型ストレージ、無限保持期間、マルチテナンシーなどのアップデートを含んでいる。
- オープンソースのApache KafkaとConfluent PlatformとConfluent Cloudのコンビネーションは、コンフルエントの認知拡大、参入障壁、収益化、株主リターンを最大化する強力な組み合わせであり、競合他社に対して深いモート(競争優位性)を作り出している。
※「Part 2:コンフルエント(CFLT)Kafka技術アーキテクチャと競合分析、オープンコアビジネスモデルの優位性、将来の成長可能性」の続き
コンフルエント(CFLT)とオープンコア
コンフルエント(CFLT)はオープンコアの文脈でどのようにパフォーマンスを発揮しているのだろうか?
※オープンコア(Open Core):ソフトウェアの開発および配布モデルの一つで、基本的な機能をオープンソースとして提供し、追加機能や高度な機能を有料で提供する方式。
実際、我々は、コンフルエントは期待を上回る成果を上げていると見ている。当初、コンフルエントはオンプレミス、または、セルフホスト型のデプロイメント向けにConfluent Platform(CP)を提供していた。Confluent Platformは、OLTPや他のデータベースからデータを迅速に取得するためのユニークな機能を提供し、企業グレードのロールベースアクセス制御(RBAC)やその他のセキュリティ機能を含んでいる。
※OLTP(Online Transaction Processing):オンライントランザクション処理の略で、データベースに対する高速な処理を行うシステムやアプリケーションのこと。
※ロールベースアクセス制御(RBAC: Role-Based Access Control)は、ユーザーの役割(ロール)に基づいてシステムやデータへのアクセス権を管理するセキュリティモデルのこと。
2018年にコンフルエントはConfluent Cloud(CC)を導入し、2020年に積極的にプロモーションを開始した。多くの顧客は、そのセールスピッチを強引と感じ、投資対効果が弱いと評価した。また、Confluent CloudはConfluent PlatformやセルフホストのKafkaよりも高価であった。コンフルエントは迅速にConfluent Cloudをクラウドネイティブのアーキテクチャに再設計し、Kafkaのアーキテクチャを進化させながらConfluent Cloudを再構築した。その結果、Apache ZooKeeperに代わる新しいメタデータレイヤーであるKraftなどの改良を実現した。
※Apache ZooKeeper:分散システムのためのオープンソースの高可用性調整サービス。ZooKeeperは、分散アプリケーションの構築において必要となる統一された名前空間を提供し、設定情報の管理、名前解決、分散ロック、グループサービスなどの機能を提供。
Confluent Cloudはクラウドネイティブ時代のためにKafkaを再発明している。元々オンプレミスとHDDベースのストレージ用に開発されたKafkaは、JVM上に構築されており、C/C++などのネイティブ実行に比べてオーバーヘッドが生じる。Confluent Cloudの新しいKoraアーキテクチャには、階層型ストレージ、無限の保持期間、マルチテナンシーなどの重要なアップデートが含まれている。これらの変更がなければ、コンフルエントはPulsarやRedpandaとの競争の中で陳腐化するリスクがあった。
※HDD(Hard Disk Drive):データを保存するための伝統的な磁気ディスク技術に基づくストレージデバイス。
※JVM(Java Virtual Machine):Javaプログラムを実行するための仮想マシン。
※Kora:コンフルエントが提供するクラウドネイティブなKafkaの新しいアーキテクチャ。
※階層型ストレージ(Tiered Storage):異なるパフォーマンスとコスト特性を持つ複数のストレージ層を使用してデータを管理する方法。
※Pulsar(Apache Pulsar):スケーラブルで高性能な分散メッセージングおよびストリーミングプラットフォームである。Apache Software Foundationによってオープンソースとして開発され、特にリアルタイムデータ処理やイベントストリーミングに使用されている。
※Redpanda:高性能な分散ストリーミングプラットフォームであり、Apache Kafkaとの互換性を持つ設計が特徴である。
フルマネージドサービスとして、Confluent Cloudは顧客にソフトウェアのアップグレードを要求することなく改善を実装できる。これは、ユーザーが時間をかけてアップグレードする必要があるConfluent Platformやセルフホスト型Kafkaとは対照的である。コンフルエントの集中したイノベーションのおかげで、Confluent Cloudは機能とコストパフォーマンスの両面で急速に進化している。例えば、ING BankはConfluent Platformライセンスに110万ドルを費やし、維持するために14人の開発者を雇った。2019年にコンフルエントがINGに提示したConfluent Platformの見積もりは950万ドルであったが、2023年には250万ドルにまで下がっている。
コミュニティレベルでは、Kafkaは依然としてイベントストリーミング分野で支配的な地位を占めている。コミュニティは、Kraftへの移行、階層型ストレージ、GraalVM、Dockerイメージ、キューなど、Kafkaに対する重要なアップデートを提案している。これらのKafka改善提案(KIP)は、次世代のスタートアップが差別化とイノベーションを行うための機会である。Kafkaは非常に速いペースで進化しており、次世代のプレイヤーがその提供を成熟させる余地を残していないように見える。
※Kraft:Apache Kafkaのメタデータ管理システムを再設計するための新しいプロジェクトであり、Apache ZooKeeperに代わるもの。Kafkaは従来、分散システムの管理と調整にZooKeeperを使用していたが、KraftはこれをKafka自身のメタデータ管理システムに置き換えることを目指している。
※GraalVM:高性能で多言語対応の仮想マシンであり、Java Virtual Machine (JVM) を拡張したもの。
※Dockerイメージ:ソフトウェアをコンテナ化するためのテンプレートであり、アプリケーションを実行するために必要なすべてのファイル、設定、および依存関係を含む自己完結型のパッケージ。
※キュー(Queue):データを順序よく管理し、先入れ先出し(FIFO: First In, First Out)の原則に基づいて処理するデータ構造の一つ。
また、オープンコアビジネスモデルの観点から、コンフルエントはモンゴDB(MDB)に似ており、ストリーミングの事実上の標準として自らを確立し、競合他社にKafka APIの互換性を採用させている。Kafkaは最も広く使用されているストリーミングフレームワークであり、ほとんどのドキュメント、議論、およびテンプレートがそれに基づいて作成されている。
開発者はまずKafkaの使用方法を学ぶ。そして、他のソリューションを使用してデータスタックを構築する必要がある場合、互換性や他のデプロイメントの問題を理解する必要がある。トラブルが発生した場合、Kafkaに関する解決策を見つけることができることが多い。使用頻度の低いソリューションを使用すると、より多くのトラブルシューティングや専門家への相談が必要になる。
重要な注意点として、Confluent PlatformとConfluent CloudはKafkaに基づいているが、Kafkaそのものではない。Kafkaは引き続きオープンソースであるが、Confluent Platformにはガバナンスやコネクタ(独自のコンポーネント)が追加されている。Confluent Platformは企業向けユースケースのためのクローズドソースのKafkaディストリビューションであり、Confluent CloudはKafka API互換のSaaSであり、コードレベルでKafkaから分岐している。Koraに基づくConfluent Cloudは、独自の機能を持つ修正されたKafkaである。
※クローズドソース(Closed Source):ソフトウェアのソースコードが公開されておらず、一般のユーザーがそのコードにアクセスしたり、修正したりすることができない形態のソフトウェアのこと。
また、Confluent CloudはKafkaの運用に関する課題を解決している。
・自身でKafkaをデプロイおよび維持する必要がなくなり、エンジニアがビジネスロジックに集中できるようになる。
・Kafkaのエキスパートを雇う必要がなくなる。
・Confluent Cloudはオートスケーリングをサポートしており、必要に応じてクラスターをスケールアップおよびダウンサイジングできる。
・ピーク容量に対して過剰にプロビジョニングする必要がなくなり、リソースの利用効率が3倍以上向上する。
・Confluent Cloudは無限の保持期間をサポートしており、古いデータをオブジェクトストレージに保存し、運用の複雑さを軽減する。
Kafkaは古くなりつつあるが、コミュニティはPulsarのような次世代の代替案によってしばしば刺激を受け、新しいパラダイムに適応するための大きな変更を提案し続けている。Confluent Cloudは典型的なホスト型OSSソリューションではなく、クラウドネイティブのKafka互換のSaaSであり、競合他社に対してパフォーマンス/コストでリードし続けている。そして、我々は、コンフルエントは商業的な成功を続け、次世代の代替案による急速な成長減速を避けることができると見ている。
また、オープンソースの無料のApache KafkaとConfluent PlatformとConfluent Cloudのコンビネーションは、コンフルエントの認知拡大、参入障壁、収益化、および株主リターンを最大化する強力な組み合わせである。
・Kafkaは引き続き業界標準として機能するが、階層型ストレージのような機能を追加する点でConfluent Platformには遅れを取っている。
・Confluent Cloudはコンフルエントの主要製品として機能し、運用や設定の必要がほとんどないストリーミングサービスを提供する。
・Confluent Platformはオンプレミスデプロイメントが必要な顧客や自社でスタックを管理する大規模な顧客向けの代替手段として機能する。
このビジネスモデルとテクノロジー上のアーキテクチャの組み合わせは、競合他社に対して深いモート(競争優位性)を作り出している。次世代のプレイヤーがコンフルエントを打倒するには、パフォーマンス/コストや高度な機能で10倍優れている必要がある。コンフルエントの変化への感受性と強力な戦略および実行力により、近い将来において、コンフルエントの成長を脅かす説得力のある競合他社は現在見当たらないというのが本音である。テクノロジー面でのさらなる深掘りとコンフルエントとKafkaのPulsar(StreamNative)、Redpanda等との比較については、Part 3をご覧いただきたい。
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