やや強気コインベースもはや"カジノ"ではない。Coinbaseが築く「信頼」という最強の堀と次世代金融への道


- 成長の原動力
規制の追い風とEU全域ライセンス取得がCoinbaseの株価を後押し。仮想通貨への逆風が終わり、新たな成長期に突入しつつあります。 - 未来の収益源
Coinbaseはステーブルコインとグローバル決済市場への進出を加速。取引手数料への依存から、安定した収益モデルへと転換を図っています。 - 投資対象としての魅力
「信頼」と「規模」を武器に、金融サービス市場での存在感を増すCoinbase。リスクも存在するものの、長期的な投資価値が注目されます。
Coinbaseは「クリプト界のコストコ」へ。単なる取引所から総合金融企業への大転換
Coinbase(コインベース)は、かつて「クリプトカジノ」(投機的な仮想通貨取引所)と揶揄された時代を乗り越え、今や仮想通貨とデジタル金融のすべてを提供する「フルスタック」企業へと急速に進化を遂げており、市場もその真価に気づき始めています。
最近では、ステーブルコインの規制を明確化する「GENIUS法」や、欧州での「MiCAライセンス」取得といった好材料が追い風となり、Coinbaseの株価は過去最高値に迫る勢いを見せています。しかし、これらは壮大な物語の序章に過ぎないのかもしれません。Coinbaseが持つ揺るぎない地位、高い評判、そして事業規模は、仮想通貨業界で最も強力な「堀(※企業の競争優位性)」を築いており、現在の株価でさえ、長期的な投資対象として非常に魅力的です。
Coinbaseの株価を押し上げる2つの大きな追い風
この1ヶ月でCoinbaseの株価が30%も上昇した背景には、2つの大きな進展があります。
GENIUS法という追い風 この画期的な法案は、USDCのようなステーブルコイン(※価格が米ドルなどの法定通貨と連動する仮想通貨)に法的な明確性を与えるものです。ステーブルコイン取引で圧倒的なシェアを誇るCoinbaseにとって、これは極めて大きな利益をもたらす可能性があります。
MiCAライセンスの取得 Coinbaseは、EUの仮想通貨包括規制である「MiCA」のライセンスを取得しました。これにより、EU加盟27カ国全域でシームレスな事業展開が可能になります。すでにスペインやドイツなどの市場で足場を築いていましたが、MiCAによって欧州全域への拡大が効率化され、Coinbaseはヨーロッパを代表する仮想通貨リーダーとしての地位を固めることになります。
これらの動きは、単なる好材料以上の、より大きな変化を物語っています。それは、各国の政府が仮想通貨に対して敵対的な姿勢から、慎重ながらも受け入れる方向へと舵を切り始めたという、時代の潮流の変化です。
50兆ドル市場という巨大なチャンス:Coinbaseが描く未来
ステーブルコイン:眠れる巨人
ステーブルコインは、もはや単なる珍しい技術ではありません。世界のお金の流れを根本から変えようとしています。ほぼリアルタイムかつ低コストでの送金、そして米ドルへの簡単なアクセスを提供することで、これまでドルを利用できなかった何十億もの人々にその扉を開いているのです。
スタンダードチャータード銀行とZodia Marketsの分析によれば、現在ステーブルコインが米国のマネーサプライ(通貨供給量)と外国為替取引に占める割合はわずか1%ですが、普及が加速すれば10%に達する可能性があります。これは、10年以内にUSDCの発行額が1兆ドルを超え、その準備金から得られる金利だけで年間260億ドル(約4兆円)もの収益が生まれることを意味します。
Coinbaseはこの分野で非常に有利な立場にいます。USDCを発行するCircle社の収益の50%を得るだけでなく、自社プラットフォーム上で保有されるUSDCからは100%の収益を得ています。これは、従来の銀行が羨むほどの高い利益率を持つ、継続的な収益源なのです。
決済市場:Coinbaseが狙う巨大マーケット
Coinbaseの野心は、取引やステーブルコインだけにとどまりません。5.3兆ドル(約840兆円)規模の世界の決済市場にも積極的に進出しています。
Shopifyとの提携: ECプラットフォームShopifyの決済画面に、ステーブルコイン決済を直接導入。
アメリカン・エキスプレスとの提携: Coinbaseブランド初のクレジットカードを発行。
デジタル決済の大半がステーブルコインによって行われる未来は、もはやSFの話ではありません。そしてCoinbaseは、その未来の中心的なプレイヤーになるべく布石を打っているのです。
(出所:Mordor Intelligence)
ブロックチェーン上での株式取引:次のフロンティア
さらにCoinbaseは、**株式のトークン化(※株式などの資産をブロックチェーン上で取引可能なデジタルトークンにすること)**も視野に入れています。このモデルが実現すれば、投資家は従来の株式を表すブロックチェーントークンを保有することになり、株式の売買方法に革命が起きる可能性があります。
ロイター通信によれば、Coinbaseの最高法務責任者であるポール・グレワル氏はこの取り組みを「非常に優先度の高い課題」と述べています。規制の壁は依然として存在しますが、これが実現すれば、2030年までに47兆ドル(約7,400兆円)規模の世界の金融サービス市場において、Coinbaseが主要プレイヤーとなる可能性を秘めています。
(出所:RESEARCH AND MARKETS)
Coinbaseが持つ本当の強み:「信頼」「規模」「コンプライアンス」
もはや「クリプトカジノ」というレッテルは過去のものです。Coinbaseは鉄壁の要塞を築いています。
✅ 上場企業であり、定期的な監査を受けている ✅ AML/KYC(※マネーロンダリング対策/本人確認)規制を遵守し、米国の規制当局と直接的な関係を構築 ✅ EU全域で事業展開が可能なMiCAライセンスを保有 ✅ 世界最大のイーサリアムバリデーター(※ネットワークの取引を検証・承認する役割)であり、トップ3に入る仮想通貨カストディアン(資産保管・管理者) ✅ USDC取引量の70%を取り扱う
この「信頼」と「規模」があるからこそ、大手決済企業から最先端のDeFi(分散型金融)プロジェクトまで、誰もがCoinbaseと提携したがるのです。もしあなたが本気で仮想通貨関連のプロダクトを立ち上げたいなら、Coinbaseの協力は不可欠と言えるでしょう。
注視すべきリスク
どんな投資にもリスクはつきものです。Coinbaseにも注意すべき点がいくつかあります。
仮想通貨市場の価格変動: 収益の大部分を依然として取引手数料が占めています。仮想通貨市場が低迷すれば、これらの収益は大きな打撃を受ける可能性があります。
金利への感応度: ステーブルコインによる収益は、準備金から得られる金利に依存しています。もし金利が下がれば、この高収益なビジネスモデルの魅力は薄れてしまいます。
競争の激化: Robinhood(ロビンフッド)のような競合他社が積極的に仮想通貨市場に参入し、マーケットシェアを奪おうとしています。
規制のハードル: 不動産や株式といった実物資産のトークン化は、ほぼ間違いなく規制当局による厳しい審査の対象となるでしょう。
まとめ
Coinbase(COIN)はもはや単なる仮想通貨取引所ではありません。デジタル時代の金融インフラそのものへと姿を変えつつあります。だからこそ、筆者のポートフォリオにおいても重要な位置を占めているのです。