03/29/2025

【配当株】コストコ(COST:Costco)配当推移分析:予想配当利回り0.49%・配当性向27%・配当金1.16ドル

a close up of a cell phone on a tableイアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、注目の米国配当株であるコストコ・ホールセール(COST:予想配当利回り0.49%・配当性向27%・1株当たり配当金1.16ドル)の2025年3月6日に発表された最新の2025年度第2四半期決算と配当推移の分析を通じて、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • コストコは、会員制の倉庫型小売モデルにより効率的な運営を実現し、世界中で店舗を展開している企業です。売上やEPSは着実に成長しており、財務パフォーマンスも堅調です。
  • 配当は過去5年間で年平均12.40%成長しており、配当性向は27%と低水準なため、将来的な増配余地があると考えられます。一方で、予想配当利回りは0.49%と控えめです。

コストコ・ホールセール(COST)の概要


セクター:小売

現在の株価:929ドル

時価総額:4,124.7ドル

過去5年間の配当成長率:12.40%

前回配当落ち日:2025年2月7日

前回配当支払い日:2025年2月21日

予想配当利回り:0.49%

過去5年間の売上高成長率:11.50%

過去10年間の売上高成長率:9.40%


関連用語

売上高成長率:企業の売上高が前年と比べてどれだけ増加したかを示す割合で、企業の成長スピードや市場での競争力を評価するための指標。一般的にプラス成長が望ましく、高いほど企業の成長力が強いと言える。


足元の株価推移

(出所:筆者作成)

コストコ・ホールセールCOST:予想配当利回り0.49・配当性向27%・1株当たり配当金1.16ドル)は、ワシントン州イサクアに本社を置く、世界有数の会員制倉庫型小売企業です。同社は、厳選された商品を大量に仕入れ、低価格で提供する「倉庫型ビジネスモデル」を採用しており、パレット上に商品を陳列することで、ディスプレイや流通コストを最小限に抑え、高回転・低マージンの効率的な運営を実現しています。現在、米国内に600以上、海外ではカナダ、日本、メキシコ、英国などに280以上の店舗を展開しています。

配当面では、年間配当成長率が過去5年間で12.40%、3年平均で13.50%と堅調な伸びを見せています。配当性向は27%と控えめであり、将来の増配余地も十分にあるように見えます。予想配当利回りは0.49%と低めですが、安定性と成長性のある配当銘柄として投資家から評価されています。

そして、同社は202536日に2025年第2四半期決算を発表しており、本稿では同社の最新の決算と財務パフォーマンス、並びに配当推移を詳しく分析していきます。


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コストコ・ホールセール(COST)の最新の2024年度第4四半期決算発表に関して

コストコ・ホールセールCOST)は、2025213日に発表された最新の2024年度第4四半期決算において、一時的要因を除いた1株当たり利益(EPS)を3.982ドルと報告しました。これは前四半期の3.965ドルからわずかに増加していますが、2024年第3四半期の5.338ドルと比較すると減少しています。一方で、前年同期である2024年第1四半期の3.866ドルと比較すると、わずかに改善が見られます。

1株当たり売上高は前四半期の139.699ドルから143.234ドルへと増加しており、トップライン(売上高)の着実な成長を示しています。

過去5年間で、コストコの年間EPS(一時的要因を除く)は年平均成長率(CAGR)15.30%で推移しており、10年間ではCAGRが14.00%とやや低くなっています。

粗利益率は12.68%となっており、過去5年間の中央値である12.61%をやや上回っていますが、過去10年間の最高値である13.32%は下回っています。

また、自社株買い政策については、時期によってばらつきがありますが、直近1年間の買戻し比率は0.00%となっており、大きな自社株買いは実施されていないことが分かります。過去5年間の自社株買い比率は-0.20%であり、これは実質的に株式数が0.20%増加したことを意味しています。そのため、EPSは、利益成長によって相殺されない限り、このような希薄化の影響を受ける可能性があります。

今後の見通しとしては、市場のアナリストは2026年に終了する次の会計年度(FY1)のEPSを18.127ドル、翌年度末(FY2)には20.019ドルに達すると予測しています。2028年の売上高は3,108億6,149万ドルに達する見込みで、今後も事業拡大が続くと見られています。小売業界全体は今後10年間で年間約3~4%の成長が見込まれています。

次回の決算発表は2025年5月29日に予定されており、コストコの業績や今後の戦略についてさらなる情報が得られると期待されています。

非経常損益項目を除くベースでのEPS

(年間ベース:直近4四半期の合計値

(出所:筆者作成)


関連用語

EPS(Earnings Per Share、1株当たり利益):企業が一定期間内に得た純利益を、その期間中に発行されている株式の総数で割った値のこと。EPSは、株主が1株あたりどれだけの利益を得たかを示す指標であり、企業の収益力を評価する際によく用いられ、EPSが高いほど、一般的にはその企業が効率的に利益を上げていると判断される。

非経常損益項目を除くベースでのEPS(EPS without NRI):非経常的な収益や費用(例: 一時的な訴訟費用や災害損失)を除いた後の1株当たりの利益(EPS)。これにより、通常の業績をより正確に反映することが可能。

希薄化後EPS:既存株主にとって、潜在的に新しい株式が発行された場合(例: ストックオプションや転換社債の行使)に、1株あたりの利益(EPS)がどの程度薄まるかを考慮したもの。

1株当たり売上高:企業の総売上高を発行済株式数で割った値で、1株あたりが生み出す売上を示しており、企業の売上規模と株式の価値を評価するのに役立つ。

粗利益率:売上高に対する粗利益の割合を示す指標。企業が商品やサービスを販売した際に、売上から直接かかったコスト(売上原価)を差し引いて得られる利益の割合を計算する。粗利益率が高いほど、企業が商品やサービスから得られる利益が大きいことを意味する。

自社株買い比率:企業が自社の発行済み株式を買い戻した割合を示す指標。この比率は、過去の一定期間において企業がどれだけ自社株を買い戻したかを示しており、通常は1年間の比率として表される。具体的には、買い戻された株式数をその期間の発行済株式総数で割ることで計算される。高い比率は、企業が積極的に自社株を買い戻し、EPS(1株当たり利益)を押し上げる可能性があることを示唆している。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)の財務パフォーマンスに関して

コストコ・ホールセールCOSTの財務パフォーマンスを、投下資本利益率(ROIC)と加重平均資本コスト(WACC)の観点から分析していきます。

同社は、ROICがWACCを継続的に上回っていることからも分かるように、堅調な財務パフォーマンスと効率的な資本配分を実現しています。

同社の過去5年間のROICの中央値は14.65%であり、同期間のWACC中央値である6.71%を大きく上回っています。これは、経済的価値を効果的に創出できていることを示しています。

このポジティブな差分は、コストコが資本コストを大きく上回るリターンを生み出しており、株主価値の向上に貢献していることを意味します。

現在のROICは16.29%で、これもまた現在のWACCである10.45%を上回っており、この傾向をさらに強化しています。

つまり、コストコは資本を高い収益性が見込まれる分野に投資し続けており、その投資が調達コストを十分に上回るリターンを生んでいることが分かります。

さらに、自己資本利益率(ROE)が32.80%と非常に高い水準にあることからも、株主資本を通じて多くの利益を生み出していることがうかがえ、資本の効率的な活用が行われていることを裏付けています。

総じて、コストコの財務指標は、規律ある資本配分と効率的な業務運営によって持続可能な価値を生み出すための強固な基盤を備えていることを示しています。

投下資本利益率(ROIC)加重平均資本コスト(WACC)の比較

(出所:筆者作成)


関連用語

総資産利益率(ROA: Return on Assets):企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を総資産で割ることで算出され、ROAが高いほど、企業が資産を効率的に運用していることを示す。

自己資本利益率(ROE: Return on Equity):企業が株主の出資(自己資本)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算は純利益を自己資本で割ることで算出され、ROEが高いほど、株主にとって効率的な運用が行われていることを示す。

投下資本利益率(ROIC: Return on Invested Capital):企業が投下資本(株主資本+負債)を使ってどれだけの利益を生み出したかを示す指標。計算はNOPAT(税引後営業利益)を投下資本で割ることで算出され、ROICが高いほど、企業が効率的に資本を運用していることを示す。

ジョエル・グリーンブラット氏の資本利益率(ROC: Return on Capital):株主資本と長期負債の合計である資本に対して、どれだけの利益(NOPAT)を生み出しているかを示す指標。ROICと同様に、資本の効率的な運用を評価する。

加重平均資本コスト(WACC: Weighted Average Cost of Capital):企業が資金を調達する際に必要となる平均的なコストを示す指標で、株主資本と負債のコストを加重平均して求める。WACCが低いほど、企業の資本コストが低く、投資がより利益を生む可能性が高くなる。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)の配当に関して

コストコ・ホールセール(COST)は、健全な財務基盤を反映して、力強い配当成長を示しています。過去5年間の配当成長率は12.40%、直近3年間の年平均成長率は13.50%となっており、安定した成長が続いています。一方で、予想配当利回りは0.49%と、セクター平均と比べて相対的に低くなっています。これは、コストコが利益を成長のために再投資する方針を重視していることを示しています。

また、同社のEBITDA有利子負債倍率は0.64倍と非常に低く、一般的なリスクの閾値である2倍を大きく下回っています。これにより、債務返済能力が高く、財務リスクも同業他社と比べて低い水準にあると評価されています。一般的には、EBITDA有利子負債倍率は2倍以下であれば財務リスクが低く、4倍以上であれば財務リスクが高いことを示すとされています。

配当性向は27%で、過去の最高水準と比べてかなり低く、今後の配当増加余地が十分に残されていることを示しています。ただし、今後3~5年間の配当成長率は6.37%と予測されており、過去の実績に比べてやや緩やかな成長となる見通しです。これは、経営陣が拡大や業務投資といった戦略的な資本配分を優先しているためと考えられます。

直近の配当落ち日は2025年2月7日で、四半期ごとに配当が支払われています。したがって、次回の配当落ち日は2025年5月9日と予想されており、平日であることから配当スケジュールと整合性の取れた日程となっています。

予想配当利回り0.49%

配当性向:27%

配当カバレッジ・レシオ:3.69倍

過去5年間の配当成長率: 12.40%

EBITDA有利子負債倍率:0.64倍

DPS(Dividend Per Share):1株当たりの配当金

(出所:筆者作成)

Dividend Yield:予想配当利回り

(出所:筆者作成)

Dividend Payout:配当性向

(出所:筆者作成)


関連用語

1株当たりの配当金:企業が株主に支払う配当金を、発行されている株式の総数で割った値。これにより、株主が保有する1株あたりに受け取ることができる配当金の金額が示される。

配当成長率:企業が過去数年間にどれだけ配当金を増加させたかを示す割合。配当成長率が高いほど、企業が株主に対して利益を還元する意欲が強いことを示す。

予想配当利回り:企業が次年度に支払うと予想される配当金を現在の株価で割った割合。投資家にとって、どれだけのリターンを配当として受け取ることができるかの見込みを示す。

配当性向:企業の純利益に対して、どれだけの割合を配当金として支払っているかを示す指標。計算は、配当金を純利益で割って算出され、配当性向が高すぎると、企業の成長投資に使える資金が減少する可能性がある。

EBITDA有利子負債倍率:EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)に対する有利子負債の割合を示す。企業の有利子負債が利益によってどれだけカバーできるかを示す指標で、低いほど財務的な健全性が高いとされている。

配当カバレッジ・レシオ:企業の利益が、支払われる配当金をどれだけ上回っているかを示す指標。計算は、利益(通常は純利益かEBITDA)を配当金で割ることで算出され、配当カバレッジ・レシオが高いほど、配当が持続可能であると考えられている。

配当王:50年以上にわたり連続して配当を増やし続けている企業。これに該当する企業は、長期間にわたり安定した利益成長と配当支払いを維持していることを示している。

配当貴族:25年以上連続して配当を増やしている企業。これも安定した配当成長を実現している企業に与えられる称号。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)のバリュエーションに関して

コストコ・ホールセールCOSTの現在の株価は929.66ドルで、弊社算出の一株当たり本質的価値である648.33ドルよりも高い水準にあり、安全余裕率(マージン)が-43.39%となっていることから、割高である可能性が示唆されています。

また、予想PERは51.32倍で、過去10年間の中央値である35.50倍を大きく上回っているものの、10年間の最高値である62.94倍には達していません。この高いPERは、将来の利益成長に対する投資家の高い期待を反映している一方で、割高である可能性も示唆しています。

他のバリュエーション指標を見ても、直近12カ月(TTM)の実績EV/EBITDA倍率は32.62倍で、過去10年の中央値である20.19倍を大きく上回っており、企業価値ベースでも割高と判断されます。

同様に、TTMのPBR(株価純資産倍率)は16.13倍で、過去10年の中央値である8.49倍のほぼ2倍に達しており、簿価に対する評価も非常に高い水準にあります。また、TTMの株価フリーキャッシュフロー倍率(P/FCF)は59.75倍で、こちらも中央値を上回っており、1ドルのキャッシュフローに対して投資家が支払う金額が大きくなっていることから、過大評価されている可能性があります。

このようにバリュエーションが高いにもかかわらず、市場のアナリストによるコストコへの見通しは依然として前向きです。現在の目標株価の平均値は1,077.56ドルで、1週間前と比べてわずかに下がってはいるものの、成長が続くとの期待が反映されています。

しかしながら、理論株価と市場価格の乖離が大きく、また各種評価指標が割高な水準にあることから、投資家は慎重な判断が求められるでしょう。特に、安全域が確保されていない現状では、市場の調整局面においてリスクを吸収する余地が限られている可能性があるためです。

(出所:筆者作成)


上記グラフにおける関連用語

Price:現在の株価

Yiazou Value:弊社算出の一株当たり本質的価値

DCF (FCF Based):フリーキャッシュフローに基づくDCF法を用いて算出した理論株価

DCF (Earnings Based):収益に基づくDCF法を用いて算出した理論株価

Median P/S:株価売上高倍率の中央値ベースの理論株価

Perter Lynch:ピーター・リンチ氏のバリュエーション計算方法に基づく理論株価

赤線:上記の各バリュエーション手法により算出された理論株価の平均値


関連用語

安全マージン(Margin of Safety):株式の本質的価値(本来の価値)とその市場価格との間にある差のこと。投資家はこの差を利用して、予想が外れた場合や市場の変動によるリスクを軽減するための「安全な余裕(マージン)」を確保する。例えば、本質的価値が100円の株が市場で80円で取引されている場合、その20円の差が安全マージンとなる。この差が大きいほど、投資のリスクが低くなるとされている。

実績PER(Price Earnings Ratio):過去1年間の実績ベースの1株当たり利益(EPS)に対する現在の株価の倍率。企業が過去にどれだけの利益を上げたかに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

予想PER(Forward PER):予想される1株当たり利益(来年度のEPS予想)に対する現在の株価の倍率。将来の利益見込みに基づいて、株価が割安か割高かを評価する指標。

PEGレシオ(Price/Earnings to Growth Ratio):PERを企業の利益成長率で割った指標。成長率を考慮した株価の割安・割高を判断するために使われ、一般的に1以下が割安とされる。

株価売上高倍率(Price to Sales Ratio, PSR):企業の売上高に対する現在の株価の倍率。売上高に対して株価がどれだけの価値を持つかを示す指標で、低いほど割安とされる。

株価フリー・キャッシュフロー倍率(Price to Free Cash Flow Ratio, P/FCF):企業がフリー・キャッシュフロー(営業キャッシュフローから資本的支出を差し引いた金額)に対する現在の株価の倍率。企業のキャッシュフロー創出能力に対して株価が割安か割高かを判断する。

EV/EBITDA倍率(Enterprise Value to EBITDA Ratio):企業価値(EV:株式時価総額+負債−現金)をEBITDA(税引前利益、利払い、減価償却前の利益)で割った指標。企業全体の価値に対する収益力を評価するために用いられる。

PBR(Price to Book Ratio, 株価純資産倍率):企業の純資産(簿価)に対する現在の株価の倍率。株主資本に対して株価がどれだけの価値を持つかを示し、1倍以下だと市場での評価が純資産を下回っているとされる。

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コストコ・ホールセール(COST)のリスクとリターンに関して

コストコ・ホールセールCOSTのリスク・リターン評価分析では、投資家が投資決定を下す前に考慮すべきいくつかのポイントを取り上げたいと思います。

同社は、堅固な財務基盤を有しており、ピオトロスキーのFスコアが8と高いことから、財務の健全性が非常に高いことが示されています。営業利益率の拡大や予測可能な売上・利益の成長も、同社の安定性と持続的な収益力の可能性を裏付けています。

さらに、ベニッシュのMスコアが-2.69となっており、これはコストコが財務情報を操作している可能性が低いことを示しており、財務諸表の信頼性を高めています。加えて、アルトマンのZスコアが9.69と高く、倒産リスクが極めて低いことからも、全体的な財務の強さがうかがえます。

一方で、投資を検討している方は、いくつかのリスク要因についても考慮する必要があります。例えば、コストコの粗利益率は長期的に下落傾向にあり、年平均で1.1%ずつ減少していることが確認されています。これはコスト効率や価格競争力の維持に課題がある可能性を示唆しており、対策が講じられない場合には収益性に影響を及ぼす懸念があります。

また、最近のインサイダーによる売却活動も注意が必要です。過去の報告によると、インサイダーによる株式の購入は一切なく、4件の取引で合計6,450株が売却されています。この動きは、今後の株価パフォーマンスに対するインサイダーの自信が薄れている可能性を示しており、懸念材料となり得ます。

総じて、コストコの基礎的な財務状況は堅調であり、各種財務指標も良好な状態にありますが、粗利益率の低下とインサイダーによる売却活動には注意を払い、これらが将来的な業績に悪影響を及ぼさないかどうかを継続的に注視する必要があるでしょう。


関連用語

財務レバレッジ:企業が負債をどれだけ活用して資産を増やしているかを示す指標。高い財務レバレッジはリスクを伴うが、うまく活用すればリターンが増加する可能性もある。 目安は業界によって異なるが、一般的には2~3倍が理想とされ、高すぎると財務リスクが高まるとされている。

アルトマンのZスコア:企業の財務健全性を評価するための指標で、特に倒産リスクを予測するのに用いられる。複数の財務指標を組み合わせて計算され、Zスコアが低いほど倒産リスクが高いとされる。目安としては、3.0以上は安全、1.8未満は倒産リスクが高いとされている。

ベネッシュのMスコア:企業が財務報告において不正行為や収益の過大計上を行っている可能性を評価する指標。スコアが高いと、財務操作のリスクが高いとされ、-2.22以下で不正の可能性が低いとされている。

ピオトロスキーのFスコア:企業の財務健全性や成長性を評価するための指標で、9つの財務指標に基づいてスコアが付けられる。スコアが高いほど、財務状況が健全であると評価される。目安としては、7〜9は財務状況が非常に健全、4〜6は平均的、0〜3は財務上の懸念がある可能性が高いとされている。

インタレスト・カバレッジ・レシオ(利息カバレッジ比率):企業が稼いだ利益(通常は営業利益)が、支払わなければならない利息に対してどれだけ余裕があるかを示す指標。計算式は、営業利益 ÷ 利息費用。目安としては、2倍以上が望ましいとされ、これは企業が利息の2倍以上の利益を稼いでいることを意味し、財務的な余裕があると評価される。逆に、1倍以下だと、利息の支払いが困難になる可能性があり、財務リスクが高まる。

ベンジャミン・グレアム:現代のバリュー投資の父と呼ばれる著名な投資家であり、経済学者。「証券分析」や「賢明なる投資家」などの著書を通じて、企業の本質的価値に基づいて株を割安に買うというバリュー投資の概念を広めた人物。彼の投資哲学は、リスクを抑えつつ堅実なリターンを得ることを目指し、多くの投資家に影響を与えている。

各指標のより詳細な解説は、下記のコラムをご覧ください。

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コストコ・ホールセール(COST)のインサイダー(内部関係者)による売買に関して

コストコ・ホールセールCOST)のインサイダー取引の傾向を過去1年間にわたって分析すると、明確な売却のパターンが浮かび上がっています。この12カ月間で、インサイダーによる売却取引は17件発生しており、買い付け取引は一度もありませんでした。これは、インサイダーによる一貫した売却傾向を示しています。

この傾向はより短い期間でも継続しており、過去6カ月間では11件、直近3カ月間では4件の売却が確認されています。こうした動きは、インサイダーが株価は適正水準にある、あるいは割高であると判断している可能性を示唆しています。

ただし、インサイダーによる同社株式の保有比率は0.52%と比較的低く、インサイダーが企業に対して大きな個人的利害関係を持っていない可能性があります。そのため、これが売却の判断に影響している可能性も考えられます。

一方で、プロの機関投資家による保有比率は68.89%と非常に高く、大口投資家からの強い関心とコストコの将来性に対する高い信頼が示されています。このように、インサイダーの動きと機関投資家のスタンスには乖離が見られ、将来の業績に対する見解の違いがうかがえます。

総合的に見ると、インサイダーによる売却は注目に値するものの、プロの機関投資家による強力な保有状況が、こうした懸念に対する一定の安心材料となっていると考えられます。

インサイダー(内部関係者)による売買

(出所:筆者作成)


関連用語

インサイダーによる自社株式の保有比率:企業の経営陣や役員、主要株主(一般的に10%以上の株式を保有する人)が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。インサイダーが多くの株式を保有している場合、彼らが企業の将来に自信を持っていると見なされることが多い。

機関投資家による株式の保有比率:投資ファンドや保険会社、年金基金などのプロの機関投資家が、その企業の株式をどれだけ保有しているかを示す割合。機関投資家の保有比率が高いと、その企業が市場で信頼されていると判断されることがある。


コストコ・ホールセール(COST)の流動性に関して

コストコ・ホールセール(COST)は、安定した流動性のプロフィールを示しており、直近営業日の平均取引量は2,023,400株で、過去2カ月間の平均取引量である2,251,652株とほぼ一致しています。このような取引量の安定は、投資家からの関心と参加が健全な水準にあることを示しており、価格への大きな影響を与えることなく効率的な取引が可能であることを意味します。

一方で、同社のダークプール・インデックス(DPI)は53.34%となっており、取引活動のかなりの割合が非公開市場(ダークプール)で行われていることを示しています。一般的に、DPIが50%を超える場合は、機関投資家の関与が大きいとされます。これは、機関投資家が市場への影響を抑えるために、ダークプールを利用して取引を行う傾向があるためです。

総じて、同社の流動性および取引環境は堅調であり、個人投資家および機関投資家の双方にとってスムーズな売買が可能な状況にあります。また、比較的高いDPIは、市場の大口参加者が戦略的な取引を行っていることを示唆しており、これが市場のセンチメントや価格の動向に影響を与える可能性もあるでしょう。


関連用語

ダーク・プール(私設取引所):株式などの金融商品が公開市場(例えば証券取引所)ではなく、非公開の場で取引されるプラットフォームのこと。ダーク・プールでは取引の内容(注文の価格や数量)が一般に公開されないため、大量の株式を売買する際に市場に与える影響を最小限に抑えることができる。主に機関投資家が利用し、取引の透明性が低い点が特徴。

ダーク・プール指数(DPI):ダーク・プール(私設取引所)内において、同社株式がどの程度取引されているかを示すものであり、注目すべき指標の1つである。


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