10/17/2023

強気
エンブリッジ
強気
競争優位性、資産基盤の拡大、配当の増加等により、同社は魅力的な投資対象であると考えています。
エンブリッジ / ENB / 予想配当利回り8% / 強気:連続増配の高配当公益銘柄の株価分析と今後の見通し(前編)

photo of outer spaceヴェンカット・ ラガーヴァンヴェンカット・ ラガーヴァン
  • ユーティリティ(公益事業関連)銘柄は、安定した配当の支払いで知られるディフェンシブ投資先である。
  • 一方で、金利上昇に伴い、質の高い公益事業銘柄は非常に魅力的な価格となっている。
  • 今回は8%の利回りを提供する、カナダの公益事業大手で中流部門に位置するエンブリッジ(ENB:予想配当利回り8%)を取り上げたい。

はじめに

公益事業(ユーティリティー)会社は、電気、天然ガス、水道を供給し、営業地域内のほぼ全ての家庭や企業にサービスを提供している。

こうした規制の厳しい企業は、株式市場で最も規模が大きく、最も安定した株式投資の一つである。

公益事業は、市場の需要に対して非弾力的である。

なぜなら、弱気相場や景気後退時に人々が電気をつけない、あるいは、暖房をつけないということはないからである。

北米で規制されている公益企業は、インフレに対抗し、収益性を維持するために、顧客への価格を引き上げることができる。

また、電力会社は送電網や事業を拡大するために資本集約的なプロジェクトを進めると同時に、消費者に対する請求を通じてそれらの費用を回収するために、規制当局と「料金ベースアップ」と呼ばれるものに取り組んでいる。

この記事では、「規制された公益事業」という言葉を耳にし続けるだろう。

多くの場合、規制対象の電力会社は、サービスエリア内で独占的または寡占的な立場で事業を行っている。

この限定された競争は、非常に大きな競争上の優位性をもたらし、収益源、投資、全体的な収益性を守っている。

たしかに、公益事業会社は通常、他業界に比べて負債が多いため、この金利上昇環境では株価が低迷している。

しかし、今回取り上げる2社は、高金利環境に対抗し屈せず、株主への配当を継続するための強固な事業運営とキャッシュフロー創出を行っている。

公益事業に投資する場合、通常、配当による安定したキャッシュフロー、安定した収益性、長期にわたる株価上昇が期待できる。

これが、公益事業が一般的に「ボンドプロキシー(債券代替」と呼ばれる理由である。

私は、今回、不況に強い事業から得られる利益を享受するために、北米の優れた公益企業を2社特定した。

注:この記事で取り上げた2社は、主市場として、トロント証券取引所へ上場している。そのため、記事中の財務上の数値はすべてカナダドル建てである。

エンブリッジ(年間予想配当利回り:8%)

エンブリッジ(ENB)は、多国籍パイプライン・エネルギー企業で、時価総額ではカナダ第3位である。

同社は、北米全域で28,661kmの原油・液体輸送システムと、118,763kmの天然ガス輸送システムを運営している。

エンブリッジの中流部門は、北米で生産される原油の約30%、米国で消費される天然ガスの約20%の安全な貯蔵と輸送を担っている。

また、消費者数では北米第3位で、オンタリオ州とケベック州の1,500万人に天然ガスを供給している。

エンブリッジ社は契約上の取り決めにより、キャッシュフローを保護しながら強固で成長性のある事業を維持している。

EBITDAの95%は投資適格と見なされる顧客とのものであることから、不安定な経済状況下でも安全であることが伺える。

EBITDAの約51%はテイク・オア・ペイ契約によって確保され、約47%は規制対象のユーティリティ事業によるもので、契約による料金値上げを通じて収益性を保護している。

エンブリッジは投資適格BBB+のバランスシートを維持しており、2023年度のレバレッジ比率は4.5~5倍と予想されている。

これまでの累計で同社は59億ドルの配当可能キャッシュフロー(1株当たり2.94ドル)を生み出しており、四半期配当0.8875ドルを実現し、配当性向は60%に相当する。

経営陣は2023年度の年間配当を一株当たり5.25~5.65ドルとしており、年間配当性向は65%と同社の60~70%の範囲内に収まっている。

エンブリッジは28年間にわたり毎年増配を続け、株主に価値を提供してきた実績を誇っており、最近のM&Aの発表により将来の成長見通しが更に改善されている。

エンブリッジは最近、ドミニオン・エナジー(D)から3つの優良ガス事業を190億ドルで買収する意向を発表した。

この取引により、オハイオ州、ユタ州、ワイオミング州、ノースカロライナ州の顧客にサービスを提供するための、ガス関連の公共事業資産が新たに手に入ることとなった。

これらの地域で予測される基本料金の成長率(年平均成長率約8%)は、全米平均の成長率を上回る可能性が高くなっている。

さらに、この買収により同社の炭化水素ポートフォリオは刷新され、液化水素の構成比は50%に低下し、ガス輸送と再生可能エネルギーが残りの50%を占めることになる。

(出典:2023年9月 買収関連資料

買収後、エンブリッジのEBITDAの約50%は天然ガスと再生可能エネルギーによるものとなる。

これらのエネルギー源はクリーンなエネルギー源であり、世界的なネットゼロの目標により合致しているため、今後数十年間は継続的な需要の伸びが見込まれる。

また、この買収によりガス供給事業におけるエンブリッジの地理的な多様化が実現し、特定地域における自然災害や天候の影響に対するビジネス・ポートフォリオへの保護が強化されることとなる。

(出典:2023年9月 買収関連資料

この買収は94億ドルの現金、60億ドルの債券、40億ドルの株式で構成されている。

金利が上昇する環境下での負債の追加は懸念材料だが、長期的には経営の安定と配当の増加が続く見込みである。

同社に対する市場のネガティブな値動きにより、この利回り8%の巨大エネルギー企業はインカム投資家にとって絶好の掘り出し物となっていると考える。

※続きは「フォーティス / FTS / 予想配当利回り4% / 強気:連続増配の高配当公益銘柄の株価分析と今後の見通し(後編)」をご覧ください。

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