中立エノビックスエノビックス(ENVX)の決算分析:大量生産の体制がまだ初期段階にあり、度重なる遅延は懸念材料?

- 本稿では、注目の米国エネルギー関連銘柄であるエノビックス(ENVX)の2025年4月30日に発表された最新の2025年第1四半期決算分析を通じて、同社の今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
- 今回の決算発表を受けて、私はエノビックスを「強気」から「中立」に移行しました。
- これはもともと、私の通常の「成長企業への投資」というインフレクション戦略とは異なる、ハイリスク・ハイリターンのサイドベットとして位置付けていたものです。
- 今後、2025年末までに本格的な収益の立ち上がりが本物かどうかを見極めるつもりです。
- その時点でもなお目立った進展が見られない場合は、保有ポジションの売却を真剣に検討する予定です。
エノビックス(ENVX)の現状
エノビックス(ENVX)は、ポートフォリオの中で「ムーンショット(大成功かゼロかの賭け)」として保持している銘柄です。要するに、もし私の見立てが正しければ非常に大きなリターンが得られる一方で、間違っていれば投資が無駄になるという性質のものです。
これは、私の主軸である投資戦略とはまったく異なります。私の「インフレクション戦略」では、より小さな利益を狙いつつ、リスクもリターンも抑えた投資先を選ぶスタイルを基本としています。
この銘柄については、2025年後半に収益が実際に立ち始めるまで保有を続け、その間は何があっても売却しないという前提で投資していました。
繰り返しになりますが、これは私の通常の投資スタイルとは異なるものです。
同社の問題点は、常に収益の見通しを後ろ倒しにしてくる点です。売上成長の具体的な兆候が一向に見えてこないため、私の我慢も限界に近づいているというのが本音です。まさに「明日には良くなる」と語り続ける夢物語株です。
具体的には、この企業は現在売上がほとんどなく、2026年にかけて大きく収益を伸ばすとされています。このような話は以前からされてきましたが、今ではその成長のタイミングすら2027年以降にさらに先送りされるのではないかと疑問を持ち始めています。
要するに、私はこの銘柄を引き続き保有はしますが、もはや同社を「強気」として維持することはありません。この銘柄の格付けは「中立(保有継続)」へと引き下げます。
2025年末まではこのポジションを保有し、その時点で改めて、このまま無限に辛抱し続けるべきなのか、それとも見切りをつけるべきかを再評価するつもりです。この展開は私自身にとっても、そしてこの銘柄を18か月にわたり推奨してきた読者の皆様にとっても、非常に残念で不満の残るものです。
エノビックス(ENVX)とは?
エノビックス(ENVX)は、主にウェアラブル端末向けに高性能バッテリーを製造している企業です。
この企業の特長は、独自のバッテリー構造にあり、小型でも高エネルギー密度を実現しつつ、信頼性を保てる点です。
スマートフォンやスマートウォッチ、スマートグラスなどを製造する企業にとって、同社のバッテリーは、製品設計を変更することなく、より長時間の電力供給を可能にするという魅力があります。言い換えれば、「今のデバイスにそのまま使える、より優れたバッテリー」です。
現在同社は、ウェアラブル分野の大口顧客を通じて、初めての本格的な収益立ち上げに取り組んでいます。
今年後半には出荷を開始する予定ですが、売上の成長は、この顧客が量産体制に入り、出荷量を拡大できるかに大きく左右されます。そしてそれが実現すれば、他の顧客との取引にもつながる可能性があります。
また、同社はさらなる成長のために、他の潜在顧客への製品認証の取得と、第二工場(Fab2)の稼働開始にも取り組んでいます。
エノビックス(ENVX)の売上高
エノビックス(ENVX)は、2026年に向けて生産体制を拡大し、特にスマートフォン分野の大手顧客向けに出荷量を増やすことで、本格的に収益が立ち上がると見込んでいます。
現在、同社はAR/VR、IoT、防衛分野、携帯型コンピュータなど、さまざまな市場向けにカスタムバッテリーの開発と改良を進めていますが、最大の注力先はスマートフォン市場です。スマートフォンは最も要求水準が高く、ここを攻略できれば他の市場への展開も容易になるからです。
CEOのラジ・タルーリ氏は、「まずは高ボリュームかつ最も収益性の高い分野から立ち上げていく」と述べており、その主軸としてスマートフォン市場を挙げています。この出荷が本格的に始まれば、それに伴って収益の成長も始まると予想されています。
エノビックス(ENVX)のバリュエーションは評価が難しい状況
エノビックス(ENVX)は約7,000万ドルのネットキャッシュ(純現金)を保有しています。2025年までは資金調達の必要がないと見られており、これは良いニュースです。というのも、これまで同社の株価が一時的に上昇するたびに、同社はその機会を利用して株式を希薄化させてきたためです。現時点では、そうした懸念は一旦後退しています。
一方で、次の四半期(以下には記載なし)を見据えると、同社は現在も四半期あたり約2,500万ドルのフリーキャッシュフローを消費している状況です。
(出所:エノビックスの2025年第1四半期決算資料)
このため、2025年末までには、現在の7,000万ドルの純現金ポジションは、ほぼ中立、つまり現金と負債が相殺される状態に近づく可能性があります。
さらに、2025年後半にかけて収益の立ち上がりが再び後ろ倒しになるようであれば、同社が追加資金を調達する能力には困難が伴うと考えられます。
エノビックス(ENVX)を取り巻くリスク要因
エノビックス(ENVX)を「中立」へ格下げした最大の理由は、大量生産の体制がまだ初期段階にあり、度重なる遅延が続いているためです。その影響で、収益成長の兆しすら見えにくい状況が続いています。
もうひとつの問題は、同社の製品がアジアで製造されているため、米国に持ち込む際に追加コストが発生し、それが利益率を圧迫している点です。
ご存じの通り、現在この状況は非常に流動的ではありますが、他の多くの企業が関税の免除を得ている一方で、同社がそれを得られない場合、製造を米国内に戻さざるを得なくなる可能性があります。
エノビックス(ENVX)に対する結論
私はエノビックス(ENVX)の評価を「中立」に引き下げます。この銘柄はもともとポートフォリオの中核を担う意図ではなく、「大きく化けるか、全く報われないか」というムーンショット型の投資でした。
しかし、意味のある収益が一向に立ち上がらないという終わりの見えない遅延に対して、我慢の限界が近づいています。2026年が本格立ち上がりの年として期待されてはいますが、正直なところ、今では2027年が新たな「節目の年」になりかねないと懸念しています。
私は2025年末まではこの銘柄を保有し、最後のチャンスを与えるつもりです。ただし、その時点で改めて冷静に判断します──収益が合理的に立ち上がり始めていると認められれば継続し、そうでなければ見切りをつける予定です。
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