03/18/2024

やや強気
フレックス
やや強気
企業が資産の軽量化を優先する中で、JBLやFLEXといった契約製造会社を活用することで、設備投資(CAPEX)を削減し、自社の強みである事業に集中することができます。また、規模の経済によるコスト削減や、オンショアリングやニアショアリングを支援するために製造拠点を移動できる柔軟性も、今後これらの企業の利用を増やす動機となるでしょう。
注目の受託製造業者のジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)の最新の決算分析と今後の株価見通し・将来性 - 後編

person grinding pipe steel wool photographyヴェンカット・ ラガーヴァンヴェンカット・ ラガーヴァン
  • 受託製造は、多くの企業が資産をより軽量化し、コアコンピタンスに集中するために製造のアウトソーシングを検討していることから、投資対象として興味深い分野である。
  • フレックス(FLEX)は、より高い純利益率に加え、より多くの自社株買いと売上高の多様化という点で若干有利だが、過去の株価リターンでは(特に近年)ジェイビル(JBL)が非常に魅力的にみえる。
  • 実際のところ、私なら両銘柄を少しずつ買い、この分野へのエクスポージャーを確保し、ヘッジをかけるだろう。
  • しかし、株価の平均回帰の可能性があり、相対的に低いバリュエーションを求めているのであれば、フレックスに注目してもいいだろう。
  • 或いは、短期的な市場のアナリストの成長指標を信頼し、過去の実績が今後のより良いパフォーマンスを示すと考えるのであれば、ジェイビルに投資した方が良いかもしれない。

※「注目の受託製造業者のジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)の最新の決算分析と今後の株価見通し・将来性 - 前編」の続き

ジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)のセグメントと顧客集中度の比較

フレックス(FLEX)の上位10顧客の同社売上高に占める比率は、2023年度では34%であり、一社で10%を超える顧客はいない。

そして、フレックスの顧客分野は下記の通りとなっている。

  • 通信、エンタープライズ、クラウド(データインフラ、エッジインフラ、通信インフラを含む)

  • ライフスタイル(家電製品、消費者向けパッケージ、フロアケア、マイクロモビリティ、オーディオを含む)

  • コンシューマー機器(モバイル機器、高速コンシューマー機器を含む)

  • 自動車関連(次世代モビリティ、自律走行、コネクティビティ電動化、スマートテクノロジーを含む)

  • ヘルスソリューション(医療機器、医療機器、ドラッグデリバリーを含む)

  • 資本財(設備機器、産業機器、再生可能エネルギー、グリッドエッジを含む)

一方で、ジェイビル(JBL)の上位顧客5社は、2023年度の同社の売上高の42%を占めている。

そして、ジェイビルは以下の分野も顧客が中心となっている。

  • 5G

  • ワイヤレスとクラウド

  • デジタル印刷と小売

  • 産業機器および半資本機器

  • ネットワークおよびストレージ産業

  • 自動車および輸送

  • コネクテッド・デバイス

  • ヘルスケアおよびパッケージング

  • モビリティ産業

勝者:フレックス

両社は同じような業界にサービスを提供しているように見える。

しかし、ジェイビルはアップル(AAPL)への依存度が高く(2021年度の22%から減少したものの、2023年度の純売上高の17%を占めている)、より集中的なリスクを抱えている。

これはアップルに対する見方によってプラスにもマイナスにもなるが、私は個人的にはよりリスク分散を好むことから、このジェイビルの点をマイナスと評価している。

ジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)の製造拠点の比較

競争力のあるコスト基盤を提供するために、多様な製造拠点を持つことも重要であるが、オンショアリングやニアショアリングの潮流から、米国内または近隣諸国に製造拠点を持つことは、米国での事業拡大を目指す企業にとって有益である。

そして、中国を拠点とする製造業は、このようなビジネス環境では有利ではない。

データ出典:Fictiv 2023 製造業の現状

以下の表は、各企業の様々な国での製造拠点の大まかな割合を測定するために、有形固定資産のコストベースの割合を使用している。

ジェイビル(JBL

国名

構成比

中国

18%

メキシコ

15%

マレーシア

9%

スイス

6%

シンガポール

3%

ハンガリー

3%

台湾

3%

ベトナム

2%

その他

16%

米国

26%

(出典:Company SEC 10-K Filings

フレックス(FLEX

構成比

メキシコ

32%

中国

14%

マレーシア

6%

ハンガリー

6%

インド

4%

その他

22%

米国

16%

(出典:Company SEC 10-K Filings

勝者:フレックス

ほとんど互角だが、理論的には米国とメキシコの製造拠点の割合が高く、中国の割合が若干低いフレックスに優位性があるように感じられる。

ジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)の資本還元の方針の比較

両社とも積極的に自社株買いを行っているが、これは株価が過小評価されていることを示す指標であり、私が経営陣から見たいと思うものである。

自社株買いに関しては、経営陣が大幅な自社株買いの権限を持っていること、現在の株価に近い価格で最近購入したこと、発行済み株式数が実際に減少していることを確認したい。

そのため、配当政策に移る前に、まず自社株買いに関して評価したい。

そこで、下記のグラフをご覧いただきたい。


ジェイビル

(2024年第1四半期 / 2023年11月期)

フレックス

(2024年第3四半期 / 2023年12月期)

自社株買戻しプログラムの承認額のうちの残存額

20億ドル

15億ドル

自社株買戻しプログラムの承認額の時価総額比

11.9%

14.2%

自社株買い実績

5億ドル (390万株 @ 128.61 ドル)

2億7500万ドル (1070万株 @ 25.70 ドル)

発行済み株式数の減少数

560万株

2300万株

(出典:Company SEC 10-K Filings

注:ジェイビルは2024年2月期の決算を発表しているが、最新の自己株式取得に関する情報(10-Q)は現時点では入手できない。

また、配当政策に関しては、ジェイビル(JBL)は、1株当たり0.08ドル(~0.24%利回り)の形だけの配当金を10年以上同じ水準で維持しているが、フレックス(FLEX)は現在配当金がない。

勝者:フレックス

ほとんど互角だが、フレックスの方が時価総額に占める自社株買い承認金額の割合が高く、株式の消却率も高いことから、フレックスが優位であるように見える。

また、ジェイビルの形だけの配当は成長していないことから、資本還元方針の比較において重要な要因とはならないと考える。

ジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)の相対的なバリュエーションと今後の成長率の比較

本来であれば、DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法による計算で両社を評価したいところだが、フリー・キャッシュフローが各期毎に変動することが確認されることからも、実績と予想ベースのPERを通じて両社を比較していきたい。

2024年3月22日時点

*実績EPS(Non-GAAPベース / 過去12カ月間)

予想EPS(Non-GAAPベース)

予想成長率

実績PER(Non-GAAPベース)

予想PER(Non-GAAPベース)

JBL

8.72ドル

9.07ドル

~ +4%

15.05

14.47

FLEX

2.53ドル

2.34ドル*

-7.4%

11.23

12.14

*フレックスの実績はNextrackerの実績の除外によって影響を受けている

※JBL:2024年第2四半期(2024年2月期) / FLEX:2024年第3四半期(2023年12月期)

(出典:会社レポート、並びに、Seeking Alphaアナリスト収益予想より筆者作成

2004年に両者に1万ドルを投資したと仮定した場合の長期的な過去の成長率(過去20年間を選択)を見ると、2018年以降のジェイビルのパフォーマンスには大きな乖離が見られ、リターンの大半はフレックスが出遅れている近年のものである。

フレックスの最大下落率は-79%(ジェイビルは-55%)と高い一方で、最良年の上昇率は+187%(ジェイビルは+166%)とこちらも高いことが分かる。

そして、フレックスの市場相関は0.66と、ジェイビルの0.57より高い。

(出典:Portfolio Visualizer

勝者:互角

フレックスはPERが低く、直近のNon-GAAPベースの純利益と希薄化後EPSの成長率も同程度だが、長期的には(特に直近3年間)アンダーパフォームしており、市場との相関性が高い。

一方で、アナリストの予想では、ジェイビルはさらに成長するとみられ、市場もその実行に満足しているようであり、高い倍率でのバリュエーションとなっている。

以上より、どちらを選択するかは、成長への期待と平均回帰理論への考え方に左右されるだろう。

ジェイビル(JBL)とフレックス(FLEX)に対する結論

両社とも売上高の減速に直面しており、業績を最適化するために利幅の拡大に重点を置いている。

両社はキャッシュフローを自社株買い(ジェイビルの場合は形だけの配当も含む)で株主に還元しており、さらに、受託製造という時代的な追い風も吹いている。

両社は、売上高が分散されている点と自社株買いの点においてフレックスが若干有利な点を除けば、カバーしている指標は非常によく似ており、これらからどちらか一方を選ぶのは困難であるように感じる。

そのため、バリュエーションと過去の業績に注目することになる。

株価の平均回帰の可能性(近い将来、成長率を逆転させることができれば)があり、バリュエーションがそれほど高くないものを探しているのであれば、私はフレックスを選ぶだろう。

しかし、短期的な市場のアナリストの成長指標を信頼し、過去の実績が今後のより良いパフォーマンスを示すと考えるののであれば、ジェイビルに投資した方が良いかもしれない。

実際のところ、私は、この分野へのエクスポージャーとヘッジの観点から、両社を少しずつ買うことを検討したい。