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11 - 19 - 2024

やや強気
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FY25(2025年度)の市場のアナリストによる成長予測は12%ですが、2025年のリフレッシュサイクルが始まれば、この見積もりはやや控えめかもしれません。
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【サイバーセキュリティ】フォーティネット(FTNT)の将来性は魅力的!最新の2024年第3四半期決算は市場予想を上回り株価は大幅上昇!

コンヴェクィティ  コンヴェクィティ
  • 本稿では、注目の米国サイバーセキュリティ関連銘柄であるフォーティネット(FTNT)の2024年11月7日に発表された最新の2024年度第3四半期決算分析を通じて、同社の目標株価、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • 同社は2024年第3四半期決算で、売上高が前年同期比13%増の15.1億ドル、営業利益率が36.1%に達し、市場予想を上回る好調な結果を発表しました。 
  • 同社の統合SASEやセキュリティ運用部門が成長を牽引し、特にクラウドおよびオンプレミスでの柔軟な対応が可能なハイブリッドSASEが注目されています。 
  • 同社の競争優位性は単一OSとカスタムASICにあり、データ中心のセキュリティ強化と複数の買収により、さらなる成長が期待されています。

フォーティネット(FTNT)の最新の2024年度第3四半期決算発表に関して

注目の米国サイバーセキュリティ銘柄であるフォーティネット(FTNT)は、11月7日に2024年度第3四半期決算を発表しており、前期の業績はガイダンスを上回り、売上高は15.1億ドルで前年比13%の成長を記録しました。

また、Non-GAAPベースの営業利益は5億4500万ドル、営業利益率は36.1%と、予想の30.5%~31.5%を大きく上回る結果となりました。

この好調な業績を受け、経営陣は通期のガイダンスも上方修正し、売上予測の中央値を58.5億ドルから58.9億ドル、営業利益率予測を30.75%から33.4%に引き上げ、営業利益が1億6800万ドル増加する見込みです。

(出所:フォーティネットの2024年度第3四半期決算資料

この発表により投資家の反応は好意的で、11月8日には同社の株価が約10%上昇し、92ドルに達しました。

これは、当社が設定した90ドル~110ドルの目標株価のレンジの下限に近い水準です(詳細は「バリュエーション」セクションのDCF分析参照)。

そして、前年比13%の成長は、過去の在庫問題からの回復を示しています。

成長をけん引したのは統合SASE(Secure Access Service Edge)とセキュリティ運用部門で、それぞれの請求額は前年比で14%と32%の増加を記録しました。

SASEとは、クラウド上でネットワークとセキュリティ機能を統合して提供するアーキテクチャのことであり、従来のオンプレミス型セキュリティやネットワーク機器ではなく、クラウドを利用してユーザーやデバイスに安全な接続を提供するために設計されています。

同社のSASEやセキュリティ運用部門へのクロスセルも効果を発揮しており、CFOのキース・ジェンセン氏によると、SASEやセキュリティ運用部門の請求額の50%はSecure Networking(ネットワーク上の通信を保護し、データの機密性、完全性、可用性を確保するための技術や手法の総称)顧客からのものです。

2024年度代表馬四半期におけるオーガニックSaaS ARR(年換算経常収益)成長率は76%に達しており、将来的に買収などがあればさらに成長が期待されます。

また、同社の製品セグメントもパンデミック後の回復傾向を示しており、2025~26年頃には刷新サイクルの影響で20%~30%の成長が見込まれています。

OTセキュリティ(Operational Technology Security)分野も請求額が119%増加し、今後の大きな成長が期待されています。

OTセキュリティ分野とは、工場や発電所、輸送システムなどの産業施設で使用される「運用技術(OT: Operational Technology)」のセキュリティを確保する分野です。

OTは、物理的なプロセスや機械、インフラの制御・監視を行うためのシステムや装置を指し、具体的には、産業用制御システム(ICS)、監視制御とデータ収集システム(SCADA)、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)などが含まれます。

フォーティネット(FTNT)のSASE戦略

私たちは長年、フォーティネット(FTNT)の独自のSASE(Secure Access Service Edge)アプローチに注目してきました。

同社のSASE戦略は、クラウド、オンプレミス、リモートオフィスを通じてネットワーキングとネットワークセキュリティ(NetSec)を統合して提供するもので、競合が採用しているGartner社のクラウドSASEモデルとは異なり、柔軟性のある対応が特徴です。

当初、同社が「どの形態でも対応可能なSASE」として柔軟性を強調するマーケティング戦略を取ることを期待していましたが、実際には「Secure Networking」「Unified SASE(クラウドSASE)」「Security Operations」の3つの柱で事業を分類する方針を選択しました。

(出所:フォーティネットの2024年度第3四半期決算資料

一方で、私たちは、「Secure Networking」「Cloud Security」「Security Operations」といった、より分かりやすい構成にすることでSASEのポジショニングが明確になると考えています。

同社がSASEを1つの主要な柱として明確に位置づけたことで、市場のリーダーとの差を縮める可能性がありますが、一方でSASEの範囲について投資家に誤解を与えるリスクもあります。

例えば、オンプレミスSASE(Secure Networking)とクラウドベースのSASE(Unified SASE)は、より分かりやすい事業区分に整理される方が理解しやすく、2021年にパロアルトネットワークス(PANW)が導入した3本柱の明確な構成と同様の利便性があるでしょう。

フォーティネット(FTNT)のハイブリッドSASEのメリット

フォーティネット(FTNT)のUnified SASE戦略は、既存のFortiGate(フォーティネットが提供する次世代ファイアウォール)やSD-WAN(Software-Defined Wide Area Network:ソフトウェアによって管理・制御される広域ネットワークの技術)ユーザーへのクロスセルに力を入れています。

これらのユーザーはすでにオンプレミスのSASEや統合ネットワーク/ネットワークセキュリティ(NetSec)を利用しており、Unified SASEを追加することで、ハードウェア管理の負担が軽減され、より柔軟な運用が可能になります。

特に、ハイブリッドワークやクラウド・データセンターを組み合わせたシステムを持つ大規模企業において、同社のソリューションは通信元と通信先に応じて柔軟に対応します。

通信元がオンプレミスで、通信先がデータセンターの場合は、FortiGateとSD-WANがデータセンターでSSE(セキュアサービスエッジ:クラウド上でセキュリティ機能を提供し、ユーザーがどこからでも安全にインターネットやクラウドアプリケーションにアクセスできるようにするためのアーキテクチャ)処理を担当します。

また、オンプレミスからクラウドへ接続する際には、支店やエッジPoP(ネットワークのエッジに位置する拠点で、データ処理やトラフィックの中継を行うための施設やインフラのこと)でSSE処理が可能です。

同社のエッジPoPは、プライバシー重視のSovereign SASE、コスト効率の良い専用PoP、他プロバイダーとの共同設置など、多様なニーズに対応できる設計になっています。

通信元と通信先のどちらもリモートの場合には、Unified SASEが柔軟な設定、プライバシーオプション、最適な処理場所を提供します。

同社は幅広いSD-WANユーザーベースを持っているため、Unified SASEの統合が容易で、ゼットスケーラー(ZS)などの競合に対しても優位性を発揮しています。

フォーティネット(FTNT)のデータ中心型へのシフト

フォーティネット(FTNT)はデータ中心のセキュリティへと移行を進めており、この動きによりクラウド提供型SASEに対するオンプレミスSASEの限界が浮き彫りになっています。

特に、SSEスタックにおけるCASB(クラウドアクセスセキュリティブローカー:クラウドサービスの利用において、企業のセキュリティポリシーを適用し、データ保護やアクセス管理を行うためのセキュリティツール)の機能強化が、クラウド提供型の優位性を際立たせています。

高性能なFortiGateファイアウォールはZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス:ゼロトラストモデルに基づいたネットワークアクセス制御の仕組みで、特にリモートアクセスやクラウドサービスの利用が増える現代に適したセキュリティアプローチ)、SWG(セキュアウェブゲートウェイ:インターネット上での安全なウェブアクセスを提供するためのセキュリティソリューション)、CASBを統合していますが、データ量の増加や生成AI(GenAI)の普及により、CASBの計算負荷が大幅に増しています。

この負荷はフォーティネットの最上位オンプレミス機器にとっても課題であり、Netskope(ネットスコープ)がDLP(データ損失防止)とCASB機能をNewEdge PoP(Netskope社が提供するグローバルなセキュリティクラウドインフラストラクチャ「NewEdge」の一部を構成する拠点)内にインラインで組み込むことで、CASBの新たな基準を設定しています。

Netskopeは、クラウドセキュリティ分野のリーディングカンパニーであり、企業がゼロトラストの原則を適用してデータを保護できるよう、クラウド、データ、およびネットワークのセキュリティを再定義しています

インラインCASBは、クラウドサービスとユーザーの通信の「インライン(経路上)」に配置されるため、リアルタイムでデータの監視や制御が可能です。

但し、現在のインラインCASBでは、アプリ制御やデータ保護のための詳細なパケット検査が必要とされ、ZTNAやSWGよりも高い処理能力が求められます。

フォーティネットの高性能FortiGateでも、Netskopeと同等のインラインCASBの実現は難しく、これがフォーティネットにクラウドSASEへの移行を促していると考えられます。

以前、Netskopeに関する3部作からなる詳細なレポートを執筆しておりますので、同社に関心がございましたら、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上よりご覧いただければと思います。

Netskopeとは?

Netskopeの仕組み

NewEdgeネットワークとは?

また、2024年8月にフォーティネットが9600万ドルでNext DLPを買収したのも、データ中心のセキュリティ強化を目的としています。

Next DLPの行動分析やDLPツールは、SaaSやクラウド環境でのデータ管理を強化し、DSPM(データセキュリティ・ポスチャーマネジメント)の欠点を補う役割を果たしています。

さらに、2024年6月にLaceworkを2億~2.5億ドルで買収した(と推定される)ことで、フォーティネットのクラウドセキュリティへのシフトとSecurity Fabric(フォーティネットが提供するセキュリティ統合フレームワークで、複数のセキュリティソリューションやデバイスを一体化して管理・運用することを目的としている)との補完性が一層強化されました。

Laceworkのデータレイヤーはスノーフレイク(SNOW)上に構築されており、SecOpsツール(SIEM、SOAR、EPP、XDR)の向上や生成AIの導入を加速させる効果が期待されています。

既にFortiAI(フォーティネットが提供するAIを活用したセキュリティアシスタント)に統合されているLaceworkのデータレイヤーは、フォーティネットのシステムをシンプルにし、各種ソリューションの自動設定を実現する目標に向けた大きな推進力となるでしょう。

フォーティネット(FTNT)の主な競争優位性

長期投資家にとって、フォーティネット(FTNT)の競争優位性を理解することは重要です。

そのポイントは、1) 単一のOS(オペレーティングシステム)、2) ASIC(Application-Specific Integrated Circuit:特定の用途に特化して設計された集積回路のこと)搭載のFortiGateにあります。

単一OSの採用により、新製品の追加や顧客の導入が簡単になり、ユーザーからも使いやすいと評価されています。

この統合OSがあるおかげで、同社はあらゆるプラットフォーム機能をスムーズにサポートできます。

たとえば、SD-WAN機能をFortiGateユーザー全員に提供する際も容易で、瞬く間にSD-WANの主要プロバイダーになりました。

SASE分野でも、FortiOSのおかげで統合SASEの導入が数万の顧客にスムーズに行き渡り、シスコ・システムズ(CSCO)のような分散型システムの競合と比較して強みを発揮しています。

さらに、M&Aにより複数OSを運用するパロアルトネットワークス(PANW)と異なり、フォーティネットの単一OSは、より良いユーザー体験を提供しています。

さらに、フォーティネットのカスタムASICは、コンパクトで手頃な価格のFortiGateアプライアンスをさまざまな環境で活用できる強みがあります。

ASICは、レイテンシーやエネルギー消費を削減し、総所有コスト(TCO)を抑える効果もあります。

(出所:フォーティネットの2024年8月の投資家向けプレゼン資料

CEOのケン・シー氏もよく述べているように、同社のASICは他の次世代ファイアウォール(NGFW)と比べて5~10倍の計算性能を提供します。

ASICの適用範囲を広げることで、同社のパフォーマンス優位性はさらに高まります。

こうした競争優位性は、同社が買収に頼らず、独自にソリューションを開発する垂直統合へのこだわりを示しています。

しかし、このアプローチはEDR(エンドポイント検知・対応)やCNAPP(クラウドネイティブアプリケーション保護プラットフォーム)といった新興市場での進出スピードを抑えていました。

EDRは、エンドポイント(PC、サーバー、モバイルデバイスなど)を対象に、サイバー攻撃の兆候や異常な活動を検出し、迅速に対応するためのツールです。

加えて、CNAPPは、クラウドネイティブ環境(クラウド上に構築されたアプリケーションやインフラ)に対する包括的なセキュリティソリューションです。

特にクラウド環境でのセキュリティリスクが増えている中で、CNAPPは、クラウドネイティブアプリケーションの開発、デプロイ、運用におけるセキュリティを強化します。

そして、最近の同社の戦略的な買収は、迅速な成長への転換を示しています。

また、この戦略により同社は独自のプロセッサ(ASIC)を開発し、グローバルなデータセンターネットワークを拡大しています。

このデータセンター戦略には次の3つの目的があります:

1. ASICの利用拡大により、展開規模と投資回収率(ROI)を高める。

2. Equinixなどのコロケーションプロバイダーへの依存を減らし、粗利益率の向上と競争力強化を図る。

3. データ主権の遵守を強化し、データの取り扱いを完全にコントロールすることで、規制対応と顧客信頼を向上させる。

フォーティネット(FTNT)のバリュエーション

フォーティネット(FTNT)のDCF評価についてはこちらのリンクからご確認いただけます。

(出所:筆者作成)

現在、FTNTの株価は弊社算出の一株当たり適正価値(目標株価)の範囲内にあります。

FY25(2025年度)の市場のアナリストによる成長予測は12%ですが、2025年のリフレッシュサイクルが始まれば、この見積もりはやや控えめかもしれません。

CFOのジェンセン氏のコメントによると、Secure Networking部門が売上の65%を占め、30%の成長が可能であれば、同社全体でおよそ20%の成長が期待できます。

また、Unified SASEやSecOpsが成長を牽引すれば、FY25-26(2025〜2026年度)の成長率は20%以上、場合によっては30%近くに達する可能性もあります。

このような楽観的な見通しが投資家に支持されれば、同社の株価が一時的に適正価値を超える場面も考えられるでしょう。

(出所:Koyfin)

また、フォーティネットのテクノロジーに関して、より詳細な分析レポートを執筆しておりますので、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より下記のレポートをご覧いただければと思います。

フォーティネットの強みとは?

フォーティネットの競合他社分析

フォーティネット(FTNT)のバリュエーション分析

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