Part 2:インカム投資のハイイールド(高利回り)戦略の誤解と正しいアプローチ:高配当利回りの落とし穴&問題点と成功の秘訣を徹底解説

- Part 1では、インカム投資における、ハイイールド(高利回り)戦略における一般的な投資対象を紹介した。
- Part 2である本稿では、市場の変動に左右されずに継続的に配当収入を得るために避けるべき致命的な誤りについて解説する。
- インカム投資において高配当利回りを追求する際、最も高い利回りを提供する投資対象が必ずしも最良の選択ではなく、企業の基本的な要素と配当継続能力を評価することが重要である。
- 市場のタイミングを計ることは困難であり、頻繁な売買によって配当収入を失うリスクが高まる。
- 定期的な配当収入の確保と再投資を通じて、複利効果を活用することが重要である。
※「Part 1:株式投資で成功を目指す投資戦略:インカム投資家とは?REIT、MLP、配当株を活用した高配当利回りのインカム投資法とは?」の続き
Part 1では、インカム投資における、ハイイールド(高利回り)戦略における一般的な投資対象について説明しており、具体的には、REIT、MLP、BDC、CEF、ETF、配当株、優先株、債券等、幅広い金融商品を取り上げている。
本稿であるPart 2、並びに、次回のPart 3では、投資家がインカム投資を追求する際に犯しがちな間違いについて検証していきたい。
1. インカム投資におけるハイイールド(高利回り)の追求とは?
ハイイールド(高利回り)戦略が「単に最も高い利回りを提供する投資対象を選ぶことだけである」というのは良く耳にするフレーズであるが、一般的な誤解である。 投資可能な企業、或いは、金融商品の中で最も高い利回りを提供する証券・商品が必ずしも最良の投資であるとは限らない。 企業(またはセクター)の基本的な要素を評価し、配当を継続して支払う能力を評価することが重要である。 また、投資を検討している、或いは、既に投資をしている企業が仮に足元逆風に直面している場合には、足元のマイナスの環境が果たして「一時的な逆風」なのか、或いは、「今後の配当に影響を与える企業やマクロ環境上の構造的な失敗・問題」かを区別する能力を身に付けることも非常に重要である。なぜなら、強力なキャッシュフローと健全な経営基盤を持つ安定した耐久力のある企業に投資することで、信頼できる配当収入と長期的な成長を確保することができるからである。
2. インカム投資において市場のタイミングを計る必要性
金融市場はそれ自体が非常に複雑な構造であると言える。そのため、安定した配当収入を定期的に得ることを目的とした「インカム投資」は、安定した配当収入のフローにより、これらの複雑な物事を簡素化することを目指している。つまり、所謂、市場の底値(最安値圏)で特定の証券を購入し、天井(最高値圏)で売却するタイミングを計ろうとすること自体、継続的に維持することは非常に困難である。さらに、上述のように売却を繰り返すことにより、定期的な配当収入を失うことになる。結果、本来であればそれらの配当を再投資し、より多くの株式を購入することができ、次回以降の配当額をさらに増加させる複利効果を期待できるのであるが、この複利効果も失うことになる。
加えて、配当を定期的に支払う株式・証券を売却する度に、それに関連する配当収入を失い、結果、同等の配当利回りとリスクプロファイルを再度探し求める必要が発生する。しかし、その様に魅力的な投資機会を発掘することは、市場の状況によっては困難であることがある。この失われた配当収入を常に補う必要があることは、不必要なポートフォリオの入れ替えと精神的なストレスを引き起こし、結果、投資におけるパフォーマンス、さらに、個人的な幸福に悪影響を与える可能性があると考えている。
3. インカム投資における配当金再投資の重要性
足元の配当収入の流れに満足している場合でも、有機的な成長を確保し、インフレ圧力から身を守るためには、配当(の一部)を市場に再投資することが不可欠である。さもなければ、成長が停滞した配当収入によるキャッシュフローは、ゆっくりと、しかし確実にあなたの購買力を蝕んでいくことになるだろう。
私達は、パッシブ・インカム(配当収入)の流れを長期的に強化するために、少なくとも配当収入の25%を市場に再投資する必要があると見ている。これにより、インフレからのプロテクションが得られるだけでなく、市場のボラティリティを利用してコスト・ベースを下げ、より高い利回りを確保することができる。
4. インカム投資の基本概念を理解しよう
メディアはしばしば根拠のない非論理的な仮定を行い、それが一般投資家の考えに浸透する。例えば、「高利回りはリスクが高い」という包括的な声明は誤解を招く不正確なものであると言える。投資が高利回りだからといって即座にリスクが高いわけではない。リスクは、企業(或いは、金融商品)の根本的な問題に起因し、定期的な配当を危険にさらすだけでなく、企業の運営や収益性に対する懸念を引き起こす。
もし市場で一発ホームランを狙って投機し、企業の基本的な要素や将来の見通しを調査せずに利回りだけを基準にするのであれば、その配当利回りの安定性はティンホイル・ハット(アルミホイルで出来た帽子)と同じくらい脆弱なものとなるだろう。
また、インカム投資家は、米国市場に上場する企業へ投資をする場合、企業が配当金(または分配)を基本的にはドルベースで支払うことを理解しなければならない。そして、配当利回りとは、各企業の現在の株価に対する配当金の割合であり、市場が開いている間は常に変動するものである。同様に、企業や証券がどのように配当金の支払いの基となる収入を稼いでいるのか、そして、今後の配当支払いに十分なバッファがあるのかを理解することも非常に重要である。
さらに、資本利益率(ROC)は、分配金の中で最も誤解されている要素の一つであり、投資家はそれを自らの投資資金の着実な放出と思い込んでいる。ROCは税務上の概念であり、経済上の概念ではない。
例えば、パートナーシップや信託に投資する分散型ファンドは、ファンドレベルで課税される。その収益は分配金として株主に渡される。同様に、ミッドストリームMLPの分配金は、減価償却費が多いため、すべてROCとみなされる。これらは非現金費用であり、課税対象収益は縮小するがキャッシュフローには影響しない。一方で、キャッシュフローこそが分配金の支払いを支えるものであり、投資家はこのキャッシュフローをより研究する必要がある。
ご参考までに、イートン・バンスは、 税務上の概念としてのROCについて追加情報を求める人のために、こちらのリンクにおいて詳しく解説している。
当トピックに関心のある方は、是非ご覧いただければと思う。
※続きは「Part 3:インカム投資の成功法則:ハイイールド(高利回り)戦略の誤解、税金の影響、過去の実績の落とし穴、分散投資の意義を徹底解説!」をご覧ください。
アナリスト紹介:ヴェンカット・ ラガーヴァン
📍インカム・高配当株担当
ラガーヴァン氏のその他の配当関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、ラガーヴァン氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。
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