【2024年度中間バリュエーション・レビュー】注目の米国テクノロジー企業の今後の株価見通しを徹底解説!
コンヴェクィティ- 本稿は、米国を中心とした、サイバーセキュリティ、データ、生産性、半導体、クラウド、Eコマース、消費者向け関連テクノロジー企業を対象とした2024年度の中間バリュエーション・レビューです。
- 弊社がカバーしている15のテクノロジー企業の最新のバリュエーションを含む、DCF法に基づくバリュエーションのスプレッドシートも共有しています。
- さらに、特定の10のテクノロジー企業に関しては、各企業の最新の決算発表に関する分析、これらのバリュエーションから得られたハイレベルな見解、並びに、今後の株価見通しと将来性を詳細に解説していきます。
コンヴェクィティ:注目のテクノロジー企業のバリュエーション・レビューの中間報告
日々、私達のレポートをご覧いただいている皆様には、弊社がサイバーセキュリティ、データ、そして生産性の分野に関する研究に注力していること、また、クラウドや半導体分野をカバーしていることをご存じかと思います。最近では、ある機関投資家のクライアントとの協業を通じて、Eコマースや消費者向けテクノロジー企業に関する知見が広がりました。これに伴い、中間年次のバリュエーション・レビューの範囲を広げることにしました。このレポートでは、これまでの主要分野に加えて、これらの新たなテクノロジー分野も取り入れることで、テクノロジー分野全体の相対的な価値をより包括的にご提供いたします。
以下の2つの表には、サイバーセキュリティ、データ、生産性、Eコマース、そして、消費者向けテクノロジー分野に属する61銘柄が掲載されています。左側の表では、「Rule of X(SBCを含む)」に基づいて銘柄が降順に並べられています。前回のバリュエーション・レビューで詳述した通り、Bessemer Venturesは、株価リターンがFCF(フリー・キャッシュフロー)マージンよりも成長と強く関連していることを踏まえ、「Rule of X」を導入しました。したがって、成長率に乗数を適用することで「Rule of 40」を修正しました。彼らの分析によると、上場企業の中央値は2.3倍であることが分かり、これを「Rule of X」の計算に採用しました。また、テクノロジー企業のバリュエーションに大きな影響を与える株式ベースの報酬(SBC)は、弊社のDCFモデルにも一貫して含めており、「Rule of X」をさらに精緻化し、この重要な要素を組み込みました。結果として、弊社バージョンの「Rule of X」は以下のようになります。
Rule of X(SBC含む) = (NTM成長率 * 2.3) + LTM FCFマージン - LTM SBC
関連用語
NTM(Next Twelve Months):今後12カ月間
LTM(Last Twelve Months):直近過去12カ月間
バリュエーション・レビュー:企業や資産の価値(バリュエーション)を評価・再評価するプロセス。主に財務データや市場動向を分析し、現在の価値や将来の見込みを見直すことで、投資判断や経営戦略の参考にするために行われる。
SBC(Stock-Based Compensation・株式ベースの報酬):企業が従業員や役員に支払う株式報酬のこと。これは、ストックオプションや制限付き株式など、株式や株式に基づく形で報酬を提供する制度で、従業員の業績や会社の株価上昇に対するインセンティブとなる。
DCFモデル(Discounted Cash Flowモデル):企業や資産の価値を評価するために、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算する方法。将来得られるキャッシュフローの総和を現在の価値に換算し、その企業や資産の理論的な価値を求める。主に投資判断や企業価値の評価に使用される。
下記テーブルにおける関連用語
Ticker:銘柄コード
EV:企業価値
FCF(Free Cash Flow):フリー・キャッシュフロー
GP(Gross Profit):粗利益
NTM growth:今後12カ月間の成長率
Rule of X (inc SBC):Rule of X(SBC含む)
Rule of X:Rule of X(SBC除く)
EV/(FCF-SBC) LTM:企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
EV/FCF (LTM):企業価値 ÷ 直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー
EV/GP (LTM):企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益
Rule of X (inc. NTM growth & LTM SBC):Rule of X(今後12カ月間の成長率と直近過去12カ月間のSBC含む)
LTM EV/ (FCF-SBC) :企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
(出典:筆者作成)
ご覧の通り、左側の表では、SBCを除いたシンプルな「Rule of X」も記載しています。加えて、Rule of X(SBCを含む)に対応するEV/(FCF-SBC)、Rule of X(SBCを除く)に対応するEV/FCF、そして財務指標に直接対応しないEV/GPです。また、上記のテーブルにおいて、FCFを含む指標の倍率が10,000と表示されている銘柄は、負の倍率を持っていることを表しており、FCF-SBC、または、FCF自体が負の数値であることを意味しています。
この相対的なバリュエーションを直感的に理解しやすくするために、右側の表では「Rule of X(SBC含む)」に基づいて銘柄をパーセンタイル順位でランク付けしています。例えば、PDDホールディングス(PDD)は191.8という最高の「Rule of X(SBC含む)」の水準を持ち、100%のパーセンタイル順位となっています。右側の表の第2列には、銘柄のEV/(FCF-SBC)倍率のパーセンタイル順位が示されています。負の値、または、10,000というFCF-SBC倍率を持つ銘柄には順位がなく、NAと表示されていますが、プラスのFCF-SBC銘柄のランキングには含まれています。
「Rule of X(SBC含む)」が高く、倍率が低い銘柄を特定することで、魅力的な投資機会を素早く見つけることができます。多くのEコマースや消費者向けテクノロジー株、例えばPDDホールディングス、オスカー・ヘルス(OSCR:Oscar Health - パランティア・テクノロジーズ共同創設者のJoe Lonsdaleが設立)、メルカドリブレ(MELI)、リー・オート(LI)、ディーローカル(DLO)は、このような投資機会の例です。ただし、私達が普段主に取り上げている企業向けソフトウェア銘柄と比べると、これらの銘柄は一般的に投資家から敬遠されがちです。その理由としては、粗利益率が低いこと、米国企業でないことや中国企業であること、あるいは消費者向けのより不安定なビジネスに従事していること、またはこれらすべての要因が挙げられます。
いくつかの企業向けソフトウェア銘柄(例:サイバーセキュリティ、データ、生産性、その他関連分野)は、比較的高い「Rule of X」を示しているものの、FCF-SBC倍率が必ずしも低いわけではありません。しかし、このセクターに注目すると、マンデードットコム(MNDY:ワークプラットフォームの定番)、クラウドストライク(CRWD)、マイクロソフト(MSFT)、パロアルトネットワークス(PANW)が他の企業向けソフトウェア株と比べて魅力的に見えます。さらに視野を広げると、パーセンタイルランキングの上位に位置するメタ・プラットフォームズ(META)、KLA(KLAC)、ラムリサーチ(LRCX)も、高い「Rule of X」と低い倍率を持ち、かなり魅力的です。
しかし、投資は必ずしもすでに現時点で優れた財務指標を持つ「 Low Hanging Fruit(手に取りやすい)」銘柄を見つけることだけではありません。多くの場合、今後の財務パフォーマンスの改善を見込んで投資し、将来的に良好な「Rule of X」を達成できる銘柄を見つけることが重要です。私たちが注目しているのは、ギットラボ(GTLB)、センチネルワン(S)、ジャムフ・ホールディング(JAMF)といった銘柄です。
上記の銘柄に関する詳細なレポートは、インベストリンゴ上で提供しておりますので、是非、ご覧いただければと思います。
以下に、「Rule of X」に基づくさらなるバリュエーション分析を示しています。ここでは、銘柄を「Rule of X」の降順に並べ、そのレベルに応じて色分けを行っています。さらに、下記のテーブルには、EV/FCF-SBC倍率、および、EV/GP倍率に加え、株式のDCF法により算出されたバリュエーション対比でのディスカウント水準(プラスの値は、フェアバリュー対比で割安であることを示している)、過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の株価変動、そしてボラティリティの変動(インプライド・ボラティリティは関連するオプションから取得)を追加しており、これらもすべて色分けして表示しています。基本的には、「緑色」がポジティブ、「黄色」が平均、「赤色」がネガティブであることを意味しています。
関連用語
インプライド・ボラティリティ(Implied Volatility):オプション価格の中に織り込まれている、将来の株価変動の期待値を示す指標。オプションの価格は、いくつかの要因で決まるが、その中でもインプライド・ボラティリティは特に重要な指標。具体的には、オプションの価格が高いほど、市場はその基礎となる株式が今後大きく動く(ボラティリティが高い)と予想していることを意味する。インプライド・ボラティリティは、オプションの理論価格を算出するブラック・ショールズ・モデルなどのオプション価格モデルにおいて、他の変数が一定と仮定された場合に、市場価格と一致するために必要なボラティリティの値として計算される。高いインプライド・ボラティリティは、オプションのプレミアムが高くなる傾向があり、低いインプライド・ボラティリティは、プレミアムが低くなる傾向がある。また、市場参加者が将来的に大きなイベントや市場の不確実性を予想している場合、インプライド・ボラティリティが上昇することがある。
ヒストリカル・ボラティリティ:過去の一定期間における資産の価格変動の度合いを示す指標。具体的には、過去の価格データを基に算出される標準偏差で、資産の価格がどれだけ変動したかを測定する。ヒストリカル・ボラティリティが高いほど、価格変動が大きかったことを意味し、低いほど価格が安定していたことを意味する。
下記テーブルにおける関連用語
Financials / Valuation / Price Chg / Vol Chg:財務 / バリュエーション / 株価変動 / ボラティリティ変動
Rule of X (inc SBC):Rule of X(SBC含む)
EV/(FCF-SBC):企業価値 ÷ (直近過去12カ月間のフリー・キャッシュフロー - 直近過去12カ月間の株式ベースの報酬)
EV/GP (LTM):企業価値 ÷ 直近過去12カ月間の粗利益
DCF Val. Discount:DCF法により算出されたバリュエーション対比でのディスカウント水準
Price Change:株価変動
Implied Vol:インプライド・ボラティリティ
Hist Vol:ヒストリカル・ボラティリティ
Implied Vol vs Hist Vol:インプライド・ボラティリティとヒストリカル・ボラティリティの差
(出典:筆者作成)
最終的に、DCF法に基づくバリュエーションは将来を見据えた最も重要なバリュエーション手法です。前述のEコマースや消費者向けテクノロジー株に加え、ヒムズ&ハーズ・ヘルス(HIMS)やクーパン(CPNG)は、「Rule of X」が高く、DCF法に基づくバリュエーションにおいても大きなディスカウントがある(割安である)注目銘柄です。一方で、プロコア・テクノロジーズ(PCOR)やファストリー(FSLY)は「Rule of X」は低いものの、DCF法に基づくバリュエーションのディスカウントが大きいことから、私達は、これらの企業が属する建設技術やエッジコンピューティング分野でリーダーシップを発揮し、将来的に財務パフォーマンスが大幅に改善すると見込んでいます。また、これらの銘柄は過去に大きな下落を経験しており、オプション市場から推測される将来のボラティリティも低下していることが、逆張り投資の好機を示唆しているように見えます。
この表をご自身で詳しくご覧いただき、何か質問があれば、コメント欄にコメントを残していただければと思います。今後のレポートで回答していきたいと思います。
そして、以下のリンクには、パロアルトネットワークス(PANW)、フォーティネット(FTNT)、クラウドフレア(NET)、センチネルワン(S)、マンデードットコム(MNDY)、ジャムフ・ホールディング(JAMF)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)、スノーフレーク(SNOW)、コンフルエント(CFLT)、KLA(KLAC)、ラムリサーチ(LRCX)、クアルコム(QCOM)、ギットラボ(GTLB)、メタ・プラットフォームズ(META)、ブロードコム(AVGO)のDCF法に基づくバリュエーションの詳細を共有しています。
これらの銘柄は、最近、私達がバリュエーションを更新したもので、そのバリュエーションに基づくディスカウント(割安さ)は上記の色分けされた分析に対応しています。表に掲載されているその他のバリュエーションは数ヶ月前のもので、一部は更新が必要です。もし他の銘柄のDCF法に基づくバリュエーションをご覧になりたい場合は、コメント欄にコメントを残していただければと思います。既存のデータを共有するか、データの取得が可能があれば、次回のレポート等で最新のバージョンを提供いたします。
では、次の章では、上記のリンクのDCF法に基づくバリュエーションのスプレッドシートに掲載されている10銘柄について、算出されたバリュエーションと合わせて弊社の見解を解説していきたいと思います。
フォーティネット(FTNT)
・フォーティネット(FTNT)の株価予想:最新の決算発表では業績好調の同社の強みとは?今後の株価見通しと将来性に迫る!
クラウドフレア(NET)
・クラウドフレア(NET)の株価予想:最新の決算発表では業績好調の同社の強みとは?今後の株価見通しと将来性に迫る!
パランティア・テクノロジーズ(PLTR)
・パランティア・テクノロジーズ(PLTR)の将来性:最新決算は好調も目標株価は27ドルで割高?今後の株価見通しに迫る!
ブロードコム(AVGO)
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スノーフレーク(SNOW)は何がすごいのか?株価下落理由は?目標株価は102ドルで割高?今後の株価見通しに迫る!
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・メタ・プラットフォームズ(META)の将来性:現在の株価は買い時?目標株価670ドル!最新の決算分析と今後の株価見通しに迫る!
マンデードットコム(MNDY)
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ジャムフ・ホールディング(JAMF)
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ギットラボ(GTLB)
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