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09 - 10 - 2024

【投資コラム】バリュー投資入門:ベンジャミン・グレアムとは?バリュー投資とは?グレアムの2大概念、安全マージンと本質的価値を徹底解説!

イアニス・ ゾルンパノスイアニス・ ゾルンパノス
  • 本稿では、バリュー投資の入門編として、「バリュー投資の父」として知られるベンジャミン・グレアム氏と、彼の「安全マージン(Margin of Safety:安全余裕率)」や「本質的価値(Intrinsic Value)」といった概念を詳しく解説していきます。 
  • 安全マージンの考え方では、本質的価値よりも割安な価格で証券を購入することで、リスクを軽減し、価格が本質的価値に収束する際に利益を得ることができます。
  •  グレアム氏の投資哲学は、企業の収益やキャッシュフローを基に本質的価値を評価し、その価値に基づいて合理的な投資判断を下すことを重視しています。

バリュー投資の父「ベンジャミン・グレアム」:「安全マージン(Margin of Safety:安全余裕率)」と「本質的価値(Intrinsic Value)」とは?

ベンジャミン・グレアム氏は「バリュー投資の父」として広く知られ、世界中の成功した投資家たちに多大な影響を与えた人物です。

彼の代表作である『Security Analysis(証券分析)』(1934年)と『The Intelligent Investor(賢明なる投資家)』(1949年)は、投資の世界における画期的な書籍として位置づけられています。

本稿では、彼の基本的な投資理念である「安全マージン(Margin of Safety:安全余裕率)」、「ミスター・マーケット(Mr. Market)」、「本質的価値(Intrinsic Value)」などの概念について詳しく見ていきます。これらを理解することは、堅実で規律ある投資戦略を築くための土台となるでしょう。

グレアム氏の概念の中でも特に有名で、彼の投資哲学の中心ともいえるのが「安全マージン」の考え方です。

この考え方は非常にシンプルですが、強力です。投資家は本質的価値に対して大幅に割安な価格で証券を購入すべきだというものです。この割安な価格が、分析の誤りや市場の変動、予期しない出来事に対するプロテクション(保護)を提供します。

まず投資家は投資を検討する株式を含む証券の本質的価値を見積もり、それを現在の市場価格と比較します。本質的価値と市場価格の差が大きいほど、安全マージンも大きくなります。

たとえば、ある株式の本質的価値が1株100ドルと評価された場合、投資家は70ドル以下で購入することで安全マージンを確保しようとするでしょう。

安全マージンの考え方は、投資家にとって2つの重要なプロテクションをもたらします。

1. まず、本質的価値よりも低い価格で購入することで資本損失のリスクが軽減されます。

2. さらに、市場価格が本質的価値に収束した際、割安で購入した分だけ利益が増加する可能性が高まります。

特に、価格が激しく変動する不確実な市場や経済低迷期において、この考え方は非常に有効です。

(出所:筆者作成)

日本語訳

Price/Value of Shares(縦軸):株式価格(価値)

Time(横軸):時間軸

Overvalued:割高

Undervalued:割安

「価格は支払うもの。価値は得るもの。」– ウォーレン・バフェット

ベンジャミン・グレアムが用いた「ミスター・マーケット」の寓喩は、市場の変動に惑わされずに感情をコントロールするための重要な教訓を提供します。

毎日、あなたのビジネスパートナーが、ビジネスの持ち分を特定の価格で買い取るか、または売る提案をしてくると想像してみてください。時には彼が楽観的すぎて価格が高すぎることもあれば、悲観的すぎて価格が極端に低くなることもあります。

「ミスター・マーケット」から学ぶべきは、彼の極端な感情の変動に巻き込まれないことです。むしろ、その非合理的な行動を利用するべきです。大幅に割安な価格で株式が提供されているときこそが買い時であり、逆に高値が提示されているときは売り時かもしれません。

このように、冷静で規律あるアプローチをとることで、市場の極端な変動時にも合理的な投資判断を下すことができます。

次に「本質的価値(Intrinsic Value)」とは、市場価格とは関係なく、証券の本質的な価値を示すものです。グレアム氏は、株式の本質的価値は企業の収益、配当、財務状況などに基づくべきだと教えました。

本質的価値は、投資家が企業の財務諸表を徹底的に分析し、将来の収益可能性を予測した上で、証券に対して支払うべき価値とされています。本質的価値を評価する方法のひとつに「割引キャッシュフロー(DCF)分析」があります。これは、企業が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引くことで、証券の内在価値を計算する手法です。

DCF分析では、成長率が異なるシナリオを用いて将来のキャッシュフローを予測し、それを現在価値に割り引いて本質的価値を求めます。

本質的価値

(出所:筆者作成)

日本語訳

Net Income + Non-Cash Charges + After Tax Interest Expense:純利益 + 非現金費用 + 税引後利息費用

"Free Cash Flow to Firm (FCFF)" Minus "Capital Expenditure" Minus "Change in Net Working Capital":企業のフリーキャッシュフロー(FCFF)- 資本的支出 - 純運転資本の変動

Cash Flow Available for Distribution to Shareholders and Debt Holders:株主および債権者に分配可能なキャッシュフロー

Discount All Future FCFF to Find the Present Value of the Firm:将来のすべてのFCFFを割引して企業の現在価値を算出

Intrinsic Value for Shareholders:株主にとっての本質的価値

"Equity Value" Minus "Net Debt":株式価値 - 純負債

また、グレアム氏は株価収益率(PER)、簿価、配当利回りといった他の指標も重視しており、株式が適正な評価を受けているかどうかを判断する基準としています。これらの指標を歴史的データや業界基準と比較することで、その株式が過大評価されているか、過小評価されているかを見極めることができます。

バリュー投資家にとって最も重要なのは、本質的価値を深く理解することです。本質的価値を基準にして、すべての投資判断が行われます。このアプローチを用いることで、投資家は本質的価値に対して割安な証券を見つけ、成長の潜在力を持つポートフォリオを構築できるのです。

(出所:筆者作成)

日本語訳

Net Income + Non-Cash Charges + After Tax Interest Expense:純利益 + 非現金費用 + 税引後利息費用

Change in Net Working Capital:純運転資本の変動

Capital Expenditure:資本的支出

Free Cash Flow to Firm (FCFF):企業のフリーキャッシュフロー(FCFF)

Cash Flow Available for Distribution to Shareholders and Debt Holders:株主および債権者への分配可能なキャッシュフロー

(出所:筆者作成)

日本語訳

FCFF1:企業フリーキャッシュフロー1年目

WACC = Weighted Average Cost of Capital (Cost of Capital Considering both Cost of Debt and Equity):加重平均資本コスト(負債と株式のコストを考慮した資本コスト)

Current Enterprise Value:現在の企業価値

Net Debt = Outstanding Debt - Cash:純負債 = 発行済負債 - 保有現金

Equity Value (Intrinsic Value for Shareholder):株式価値(株主にとっての本質的価値)


アナリスト紹介:イアニス・ゾルンパノス氏

📍バリュー・インカム担当

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