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10 - 02 - 2024

イスラエルとイランによる中東戦争が米国株に与える影響は?今後の米国株式市場の見通しに迫る!

ローレンス・ フラーローレンス・ フラー
  • 本稿では、足元で激化するイスラエルとイランによる中東戦争が米国株に与える影響を詳しく解説していきます。
  • 中東での紛争激化と米ドル・金の上昇、また港湾労働者のストライキが米国株価に影響を与えているが、これらは経済の拡大や市場上昇トレンドを覆すものではないと見ています。 
  • 8月の求人件数の増加や製造業の停滞など、米国経済の指標にばらつきがあるが、全体として労働市場は安定化の兆しを示しています。 
  • これらのリスクは一時的であると見ており、エネルギーセクターへの投資拡大が効果的で、調整局面は年末に向けた株価上昇を捉えるチャンスであると見ています。

中東での紛争が激化したことで、10月1日の米国株価は下落し、安全資産とされる米ドルや金が上昇しました。

原油価格も1バレルあたり71ドルを超えています。イスラエルがヒズボラの拠点を攻撃し、その後地上部隊がレバノン国境を越えたことを受けて、イランは約180発のミサイルをイスラエルに発射しましたが、成果は限定的でした。

それでも双方とも引き下がる様子はなく、さらなるエスカレーションのリスクがあります。

さらに懸念材料として、東海岸で港湾労働者のストライキが始まり、主要な港での物流が停滞しており、第4四半期のGDPやその他の経済指標に影響を及ぼす可能性があります。

また、6州に被害をもたらしたハリケーンの影響についても、まだ全容は把握されていません。

これによりボラティリティが急上昇したのは理解できますが、原油価格が1バレル140ドルに近づくようなことがなければ、これらの出来事が経済の拡大や市場の上昇トレンドを覆すことはないと考えています。

中東での紛争がさらに激化することへの最善の対策は、過去1年間で他のセクターに遅れを取っているエネルギーセクターへの投資を増やすことです。

また、港湾労働者のストライキについても、選挙前ということで労働者側に交渉の優位性があるため、ホリデーシーズン前には解決するでしょう。

これらの地政学的な出来事による株価の下落は、年末に向けて力強い相場を迎える前にリスク資産を追加するチャンスと捉えるべきだと考えています。

プレッシャーが高まる

中東の緊張が激化する中、VIXが重要な水準を試す

(出所:Bloomberg)

これらの出来事は、経済成長の持続性や市場での評価に不安を感じている人々の意志を試すものです。

とはいえ、経済にとって良いニュースは株式市場にとっても良いニュースであり、1日に発表されたJOLTS(求人労働異動調査)もその一例です。

また、FRBのパウエル議長が示した25ベーシスポイントの利下げ2回という慎重な方針を裏付ける内容でもあります。

求人件数は32万9,000件増加し、再び800万件を超えました。

一方で解雇件数は減少し、労働市場の安定化を反映しています。

退職者数は4年ぶりの低水準となり、労働者が新しい雇用機会に対して慎重になっていることを示していますが、失業者1人当たりの求人件数は1.13に増加しました。

労働市場はやや緩和したものの、再びバランスを取り戻しています。

8月の求人件数は増加したものの、依然として2021年の水準に近い状態

(出所:Indeed

一方で、製造業は引き続き停滞していますが、FRBが借入コストを引き下げることで、来年は成長のチャンスとなるでしょう。

ISM製造業指数は拡大と縮小の境目である50を下回り、47.2となっています。

次の選挙が終わるまでは、多くの企業が大きな投資を控えるため、改善は見込めないと思います。

ただし、良いニュースとして、価格支払いのサブ指数が過去18カ月で最大の下落を示し、全体的なコストの低下を反映しました。

これにより、港湾ストライキによる輸送コストや輸入価格の上昇をある程度相殺できるかもしれません。

米国の製造業活動が6カ月連続で縮小

ISM指数は受注の低迷により抑制され、雇用も減少

(出所:Bloomberg)

ここ数日の深刻な状況を軽視しているわけではありませんが、投資戦略を見直すほどの影響はないと考えています。

米国経済のソフトランディング(軟着陸)は順調で、企業の利益も第3四半期から第4四半期にかけて成長を続ける見通しです。

そのため、主要な市場指数も年末に向けて上昇基調を保つでしょう。

一方で、こうした状況により、高頻度経済データで見られる好調な変化が崩れた場合には、より注意深く対応する必要があると見ています。


アナリスト紹介:ローレンス・フラー

ローレンス・フラー氏は、1993年にメリルリンチ証券でファイナンシャル・コンサルタントとしてキャリアをスタートしました。その後、ファースト・ユニオン・ブローカレッジ、モルガン・スタンレー証券、INGグループで同職を務め、30年以上にわたり個人投資家顧客の投資ポートフォリオを管理してきました。

その後、2005年には長期的な目標であったFuller Asset Management LLCを設立し、独立を果たしました。さらに、2013年より米国金融ニュースサイトSeeking Alphaにて、米国投資家に対してマクロ経済・投資リサーチの提供を開始しており、現在では14,000人以上のフォロワーを獲得しております。

フラー氏は、ノースカロライナ大学チャペルヒル校を卒業し、政治学の学士号を取得しております。

また、フラー氏のその他の米国マクロ経済関連のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、フラー氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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