トランプノミクスとは?トランプの経済政策をわかりやすく解説!
ジェームズ・ フォード- 本稿では、「トランプノミクスとは?」という基礎的名内容から、トランプ次期大統領の経済政策をわかりやすく解説していきます。
- トランプ氏の大規模な支出と減税政策が米国市場に好意的に受け入れられているが、その長期的な影響やリスクも懸念されています。
- トランプ氏の関税や規制緩和、低金利政策が市場の支援を目的としているが、インフレや赤字拡大のリスクもあり、影響は複雑で多面的であると言えます。
- 市場は楽観的だが、1929年の大恐慌と似た要因も見られるため、景気後退や株価暴落への警戒が必要であるようにも見えます。
トランプノミクスとは?
トランプノミクス(Trumponomics)とは、ドナルド・トランプ氏の経済政策の総称です。
この政策は、大規模な減税、規制緩和、インフラ投資、貿易政策の見直しを中心に構成されています。
米国株式市場は、ドナルド・トランプ氏が再び米国大統領に決まったことに大いに沸き立っています。
トランプ氏の大規模な支出や減税政策が市場にとって好材料だという見方が一般的ですが、本当にそうなのでしょうか?
そもそも、政治がマクロ経済に与える影響はどれほど大きいのでしょうか?
これが市場の過剰反応なのか、それとも今後4年間、異常なまでの上昇が期待できるのか、気になるところです。
本稿では、トランプ氏の政策が市場にどのような影響を与えるか、短期と長期の視点から掘り下げていきます。
本稿で学べる内容は下記の通りです。
・なぜマーケットはトランプ氏を好むのか
・トランプ氏の真の狙いとは
・関税が経済に与える影響
・2025年以降の米国経済の見通し
・現在と1929年の大恐慌の恐ろしい類似点
・株式、債券、商品、暗号資産の今後の見通し
・マクロポートフォリオの最新情報
ドナルド・トランプ次期大統領の経済政策の本当の狙いとは?
選挙の約束や発言の背後で、実際には何を目指しているのでしょうか?
過去の4年間で、トランプ氏の政策の一端を垣間見ることができました。
財政赤字
トランプ氏は共和党の一員でありながら、支出に積極的な傾向があります。
トランプ政権下では、国債を減らすと約束していたにもかかわらず、借り入れが増加
2009年から現在までの1日ごとの国債総額(兆ドル単位)
(出所:Washington Post)
コロナ支援の前からも、トランプ政権下で米国の債務は増え続けていました。
税制
トランプ氏はさらなる減税を推し進める姿勢を明確にしています。
トランプ陣営の税制計画では高所得者層に大幅な減税を実施
所得層別の税引き後所得の変化率(2025年)
(出所:Center on Budget and Policy Priorities)
民間の手元に資金を残すことは賛成ですが、その恩恵が公平に分配されているかには疑問が残ります。
それでも株式市場には良いニュースです。
赤字
減税と大規模な支出が重なると、赤字削減は難しく、結果として赤字が増え、さらなるマネーサプライの拡大、つまり量的緩和(QE)やイールドカーブコントロール(YCC)に繋がります。
これがビットコイン(BTCUSD)の急騰の一因ともなっています。
金利
最近、金利は変動が激しく、FRBが短期金利を引き下げている中でも、長期利回りが上昇しています。
前回の政権でもトランプ氏はFRBに低金利を維持するよう圧力をかけました。
彼は高金利を嫌い、個人的にも債務の問題を経験しているため、最近ではクレジットカード金利を10%に抑えたいとの意向を示しています。
規制
トランプ氏の政策は市場の支援を目指していますが、インフレや赤字の増加を招く可能性もあります。
とはいえ、経済にとってプラスに働く可能性がある要素もあります。
それが規制緩和です。
トランプ氏は過去の政権でも規制を緩和しており、今回も「政府効率化部門(DOGE)」を後押しし、テスラ(TSLA)のCEOであるイーロン・マスク氏とともにさらに進めることを示唆しています。
関税と移民
これも重要なポイントです。トランプ氏は「アメリカ・ファースト」を掲げ、厳しい移民政策と、外国企業の米国内での販売を難しくする方針を打ち出しています。
関税については、個人的に「ゼロサムゲーム」だと考えています。
関税は経済に影響を与え、再分配を生むに過ぎません。
しかし、分断が進む今の世界では、トランプ氏は米国とその同盟国を優先し、中国の利益は重要視していません。
もし適切に実施されれば、関税は米国の競争力を高め、赤字削減に貢献する可能性がありますが、リスクも伴います。
現実はもっと複雑です。
アップル(AAPL)やテスラといった米国企業も中国に大きく依存しており、単なる「どの国が何を買っているか」という話ではありません。
関税の扱いを間違えれば、大きな混乱が生じかねません。
これらの政策が本当に意味を持つのか?
答えは一概には言えませんが、「そうとも言えるし、そうでないとも言える」といったところです。
経済は非常に巨大で複雑なものであり、その中で政府は大きなプレイヤーです。
例えば、政府やFRBが「ドットコムバブルの崩壊」や「2008年の金融危機」を防ぐことができたでしょうか?
仮に未来を完全に予測できたとしても、2022年やその後の弱気市場を避けられたかは疑問です。
もちろん、過去には多くの政策ミスがあり、それが経済に影響を与えたのも確かです。
ただし、私たちが考えるほどの影響があるかというと、必ずしもそうではないかもしれません。
それでも、政治が重要であることは間違いありません。
たとえば、先週のリスク資産の急上昇を見ると、少なくとも政治が市場の心理に大きな影響を与えていることがわかります。
状況によっては、政治が良い方向に働くこともあります。
過去2年間で、MSCIアルゼンチン指数は新興市場およびフロンティア市場全般の株式を大きく上回る成績を収めています。
(出所:Bloomberg)
その好例がアルゼンチンです。
ハビエル・ミレイ氏が大統領に就任して以来、アルゼンチンの株式市場は急上昇しています。
自由主義経済学者であるミレイ氏は、経済の自由化や不必要な政府支出の削減に取り組んでいます。
アルゼンチンの財政収支状況
アルゼンチンの新大統領でリバタリアンのハビエル・ミレイ氏は、厳しい緊縮策と支出削減を進め、長年の赤字を経て政府は3ヶ月連続で基礎的財政黒字を達成しました。彼は今年の予算均衡と基礎的財政黒字の実現に向けて精力的に取り組んでいます。
(出所:Reuters)
私もこの流れを見越して数か月前からマクロETFポートフォリオにグローバルX MSCIアルゼンチンETF(ARGT)を組み入れています。
私のマクロETFポートフォリオの詳細に関心がございましたら、こちらのリンクよりご覧いただければと思います。
ミレイ氏とトランプ氏には共通点が多く、米国政府にも無駄な支出削減の余地は十分にあります。
上下両院の支持を得られれば、トランプ氏も同様の政策を実行できるかもしれません。
米国経済は再び1929年のような状況に向かっているか?
とはいえ、トランプ氏がコントロールできない要素も多くあります。
現時点では、彼は強い経済基盤を引き継いだように見え、労働市場は安定し、インフレも目標に近づいています。
この状況がいつまで続くのか、そして今後2〜3四半期で経済がどのように推移するのかが鍵となります。
私の米国経済の温度感を測るための「マクロマトリックス」でも、すでにいくつかの警告サインが見られます。
市場は今、非常に楽観的で、リセッション(景気後退)を予測する人はほとんどいません。
これは2007年や1999年の雰囲気と少し似ています。
ソフトランディングの見通しについて議論するのはこれが初めてではない
(出所:Trahan Macro Research, LLC)
投資家はリセッションを予測するのが非常に難しく、逆張りの視点が役立つこともあります。
ただ、このままの状況が続けば、株価がさらに上昇する可能性もありますが、私が心配しているのは、最終的に1929年のような大恐慌と急落が待っているのではないか、ということです。
1929年のブラックマンデーの主な要因は以下のとおりです:
1. 投機過熱
1920年代、信用取引の普及により株式への投資が過熱し、株価が大きく膨らみました。
一方で、現在では、0DTEオプション(当日満期のオプション取引)が市場を動かしています。
0DTE SPXオプション取引量の総取引量に対する割合(1ヶ月平均)
(出所:Tier1Alpha.com)
2. 技術革新への過剰な期待
ラジオや電化といった技術進展への期待から、当時の株価は実力を超えて上昇しました。
今では、AIに対する期待が同様の影響を及ぼしているかもしれません。
3. 金利の引き上げ
1920年代後半、FRBが金利を5%から6%に引き上げたことで、信用が引き締められ、追証(証拠金の追加要求)が発生しました。
アメリカ第2の大恐慌:1929年~1938年
FRBの割引率 / 消費者物価指数(CPI)/ S&P500
(出所:AlphaTack)
現在の金利も高水準で、FRBが金利を引き下げつつありますが、手遅れではないかと懸念が残ります。
4. 気象災害
「ダストボウル(Dust Bowl)」の影響は、大恐慌の一因として見落とされがちです。
「ダストボウル」とは、1930年代のアメリカで発生した深刻な干ばつとそれに伴う土壌の劣化により、広範囲にわたって大量の砂塵が舞い上がり、農作物の壊滅的な被害と生活環境の悪化を引き起こした現象です。
干ばつや非持続的な農業が原因で、砂嵐や飢餓、呼吸器疾患が広がり、アメリカ史上最大の移住が起こりました。
そして、最近も世界中で異常気象が続いており、アメリカでも、気象災害が頻発しています。
5. 関税
「スムート・ホーリー関税法」は大恐慌直前に成立し、各国が報復関税を課したことで世界貿易が分断されました。
結果的にこれは経済に悪影響を与えました。
アメリカの貿易収支(1920年~1969年)
(出所:RSM US LLP)
これらの要因が重なり、1929年の株価暴落とその後の大恐慌へとつながったのです。
では、今後の展開はどうなるのでしょうか?
前回のマクロ分析では、今後のタイムラインや予想をお伝えしましたが、次章ではさらに具体的に、ゴールド、原油、ドル、S&P 500、ビットコインなどの注目チャートに焦点を当ててみましょう。
※続きは「【2024年11月】マクロポートフォリオ・アップデート:18%のリターンを実現も、相場調整に備えてポジション縮小を検討!」をご覧ください。
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アナリスト紹介:ジェームズ・ フォード
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