12/10/2024

2025年度アメリカ経済の見通しは良好も、円キャリートレード、AIバブル崩壊の可能性、地政学的リスクには要警戒!

New York Central Parkジェームズ・ フォードジェームズ・ フォード
  • 本稿では、2025年度のアメリカ経済の見通し、並びに、2025年の投資環境を見据えたマクロ・マトリックスの更新やポートフォリオの再調整に関して詳しく解説していきます。
  • アメリカ経済は依然として底力を持つものの、円キャリートレード、AIバブル崩壊の可能性、地政学的リスクが市場に与える影響に警戒が必要とされています。  
  • ウクライナや中東の地政学的緊張がエネルギー市場や投資家心理に影響を及ぼし、インフレや市場混乱のリスクを増大させています。

2025年度のアメリカ経済の見通し:円という時限爆弾とその他の警告サイン

2025年を迎えた今、アメリカ経済の現状はどうなのでしょうか?

経済の強さを示すデータが多く見られる一方で、隠れた弱点を指摘する兆候も一部にあります。

2025年に景気後退が起きる可能性はあるのでしょうか?

私自身は、経済の底力はまだ十分にあると考えていますが、8月に見られたようなフラッシュクラッシュが再び起きるリスクは否定できません。

注目しているリスク要因としては、円相場の動き、AIバブル、そしてさらなる地政学的リスクの3つがあります。

本稿では、私が米国マクロ経済の温度感を測る際に使用している自身のマクロ指標マトリックスのアップデートを行い、新たに注目すべき指標を追加しました。

本稿の内容を一層理解するために、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上より、下記のレポートを併せてご覧ください。

マクロ・マトリックスとは?

さらに、2025年の投資環境が大きく変わる可能性を見据え、マクロETFポートフォリオの再調整も行いました。

アメリカ経済は強いのか、それとも弱いのか?

現在、多くの人が「ソフトランディング」を期待しており、その期待を裏付けるデータも揃っています。

まず、GDP成長率は堅調です。

米国GDP年成長率

(出所:TRADING ECONOMICS)

数カ月前には懸念されていた失業率も再び低下傾向にあります。

米国失業率

(出所:TRADING ECONOMICS)

インフレはやや上昇していますが、それでもなおFRBの目標範囲内に収まっています。

米国インフレ率(%)

(出所:TRADING ECONOMICS)

さらに、月曜日に発表されたマクロ経済データでは、製造業ISMが予想を上回る好結果を示しました。

米国ISM製造業PMI

(出所:TRADING ECONOMICS)

強気なのは投資家だけではなく、他の分野からもポジティブな見方が広がっています。

消費者信頼感指数

(出所:TRADING ECONOMICS)

ホリデーシーズンを目前に控え、消費者信頼感は以前の予測を大きく上回る良好な水準となっています。

アメリカ経済は世界をリードしており、その勢いは米国株式市場にも明確に反映されています。

1976年以来最大の欧米株式パフォーマンス格差

年間株式リターン差:米国 - ヨーロッパ(%)

(出所:Bloomberg)

2024年に見られたアメリカとヨーロッパのパフォーマンスの差は、過去50年でもほとんど例がないほど顕著です。

しかし、ヨーロッパや中国は「危機の前触れ」を示す存在なのでしょうか?

世界が混乱に陥る中で、アメリカだけがこのまま安定して成長を続けることができるのでしょうか?

経済は市場そのものではない

経済と市場は異なるものであり、アメリカも世界全体ではありません。

この違いを認識することが大切です。

短期的には、市場がファンダメンタルズから乖離することもあります。

それは、アメリカの成長が世界経済の成長から乖離するのと同じです。

米国市場でパニックが起こるために、失業率が6%に達する必要はありません。

あの小さな「レーダーの異常」を覚えていますか?

インベスコQQQトラストの株価推移

(出所:TrendSpider

4週間も経たないうちに15%もの急落が起こったことがありました。

現在もリスクは山積しています。

個人投資家や機関投資家は強気ですが、一方でインサイダーは急速に売りを進めています。

企業幹部による株式売却が過去最高を記録

(出所:Financial Times)

また、円キャリートレードのリスクを忘れていませんか?

ウクライナや中東で戦争が続いている現状を忘れていませんか?

AIバブルとインターネットバブルの類似点を無視し続けることができるでしょうか?

アメリカ経済に対する3つの大きな警戒要因

今後数カ月で市場の売りを引き起こす可能性がある、3つの主要なリスクがあります。

1. 円キャリートレード

もう終わったと思っていましたか?

ドル円推移

(出所:TradingView)

予想以上に高かった東京のインフレデータを受けて、日本円が急騰しています。

これにより、日本銀行(日銀)が政策を正常化する可能性が示唆されています。

スワップ市場では、12月に日銀が利上げを行う確率を61%と見積もっています。

米国市場の流動性低下とドル安がこうした動きをさらに強めています。

金利差の縮小によりキャリートレードの魅力が低下し、円はドルの弱含みから恩恵を受けています。

日銀の植田総裁は慎重な姿勢を崩さず、利上げの決定にはさらなる経済指標を注視するとしていますが、現時点では利上げが現実味を帯びてきています。

ナスダックと円の間には強い相関関係があり、日本円がさらに強まれば、8月のような大規模な売りが再び起こる可能性があります。

AIバブルの崩壊懸念

エヌビディア(NVDA)の成長鈍化や、好調な決算にもかかわらず市場が冷静に反応したことは、AI主導の上昇に依存するナスダックが抱えるリスクを浮き彫りにしています。

(出所:Seeking Alpha)

四半期ごとにエヌビディアの成長率が鈍化しているのは明白で、この傾向は今後も続くと予想されます。

AI投資が過大評価されているとの見方が広がる中、ドットコムバブル時代を彷彿とさせるようなバブル崩壊への懸念が強まっています。

AIの導入コストは依然として高く、期待される収益の実現には時間がかかっています。

このエコシステムに属する多くのスタートアップは持続不可能な損失を抱えており、その収益モデルに疑問が投げかけられています。

生成AIの市場規模は2026年に100億ドルに達すると予測されていますが、デビッド・カーンによれば、現在のAI投資を正当化するには年間6,000億ドル規模の収益が必要だとされています。

しかし、現状その水準には遠く及びません。

さらに、市場全体がAI関連企業に大きく依存していることが、リスクを一層高めています。

これほど少数の大企業に集中している状況は、2000年のドットコムバブル以来見られていません。

地政学リスクの高まり

ウクライナや中東での地政学的緊張の激化は、エネルギー供給リスクの増加、世界貿易の混乱、そして投資家の信頼低下を通じて、2025年の市場を揺るがす可能性があります。

ウクライナでは、ロシアがイラン製のドローンを使用し、重要なエネルギーインフラを攻撃するなど、戦争は長期化の様相を呈しています。

このため、ヨーロッパのエネルギーコストやインフレ圧力が依然として高い状態が続いています。

一方で、中東ではガザとイスラエルの紛争がホルムズ海峡のような重要な石油輸送ルートを脅かしており、世界的な供給ショックの可能性を一段と高めています。

加えて、ロシアのエネルギー関連企業に対する制裁や金融規制により、保険会社がロシア海域での船舶保険を引き受けなくなるなど、エネルギー市場の緊張がさらに深刻化しています。

こうした複合的な危機はインフレリスクを押し上げ、中央銀行によるより積極的な金融政策を招く可能性があります。

また、投資家心理が悪化し、安全資産である金や米ドルへの資金流入が増加することが予想されます。

次章では、市場の動向を予測するために追跡している指標である「マクロマトリックス」の紹介、並びに、自身のポートフォリオの最新動向をお伝えしていきます。

※続きは「米国のリセッションはいつなのか?様々なマクロ経済市場の分析を通じて、2025年度のアメリカ経済の見通しに迫る!​」をご覧ください。

加えて、直近ではウォーレン・バフェット氏を含む米国著名投資家の足元の米国株投資戦略に関して、下記の詳細な分析レポートも執筆しております。

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最新のフォーム13Fの動向に関して

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