フリーキャッシュフローとは?投資判断をする上でフリーキャッシュフローが重要である理由を徹底解説!
マイケル・ウィギンズ・ デ・オリベイラ- 本稿では、投資判断をする上で重要な概念であるフリーキャッシュフロー(FCF)について詳しく解説していきます。
- フリーキャッシュフローは、運営費や設備投資を差し引いた後に残る実際の現金を示しており、EBITDAとは異なり、企業の本当の財務状況を反映する重要な指標です。
- フリーキャッシュフローはインフレクション投資における「北極星」のような存在で、株価が変動しても確かな基盤を提供すると考えています。
- 保守的に見積もった場合でも、ギガクラウド・テクノロジー(GCT)は1億6千万ドルのEBITDAから9,000万~1億ドルのフリーキャッシュフローを生み出す可能性があり、その財務の健全性を示しているように見えます。
フリーキャッシュフロー(FCF)とは?
読者の皆様からの要望にお応えして、今回はフリーキャッシュフローについてお話しします。
まず理論的な部分を簡単に説明し、その後、実際に役立つ最新の事例を2つ紹介して、学んだことを実践で活かせるようにします。
フリーキャッシュフロー(FCF)とは、企業が企業の運営費や設備投資を支払った後に残る現金のことです。
これは企業が自由に使える現金であり、自社株買いや借入金の返済、さらには事業拡大のための投資に充てることができます。
フリーキャッシュフローは実際の現金の出入りを反映しており、特に設備投資を含むため、企業の財務状況や現金生成能力を正確に示す指標と言えます。
一方で、EBITDA(利払い・税引前・減価償却前利益)はこうした費用を考慮しないため、利益が過大に見えることがあります。
フリーキャッシュフローの具体的な算出方法は次の通りです。
営業キャッシュフローとは、企業の営業活動から得られた現金収入を示しており、資本的支出とは設備投資や長期的な資産取得に使われた支出を示しています。
なぜフリーキャッシュフロー(FCF)がインフレクション投資における「北極星」なのか?
インフレクション投資とは、企業の業績や成長が大きく転換する「転換点」(インフレクションポイント)を見極め、そのタイミングで投資を行う手法です。
この転換点を捉えることで、企業が加速的に成長する前の段階で投資を行い、大きなリターンを狙うことを目的としています。
私はフリーキャッシュフローをインフレクション投資の基本と考えています。
もし株価が大幅に下落しても、来年のフリーキャッシュフローの予測が大きく外れていなければ、そのポジションに対して過度に心配する必要はないと思っています。
株価は上がることもあれば下がることもあります。
そして、投資が簡単に見えるのは、すべての事実が明らかになった後です。
小型株への投資のデメリットは、株価の変動が大きく、急落することも多い点です。
ただし、投資判断が半分以上正しければ、長期的には良いパフォーマンスを期待できると考えています。
しかし、すべての四半期毎で必ずしも良い結果が出るわけではないことには留意すべきでしょう。
そして、フリーキャッシュフローは、その道を照らす「北極星」のようなものだと考えています。
ギガクラウド・テクノロジー(GCT)とパガヤ・テクノロジーズ(PGY):どちらも予想EBITDAの8倍
ここで、同じようなバリュエーションで取引されている2つの企業について見ていきたいと思います。
まず1社目はギガクラウド・テクノロジー(GCT)です。
下記の図は、同社の最新の決算資料から引用したものですが、2024年6月末時点で既に7724.1万ドルの調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)を達成しております。
そのため、現在のペースで進んでいけば、同社はおそらく2024年会計年度ベースで1億6,000万ドル程度の調整後EBITDAを生み出すでしょう。
監査前の調整後EBITDA(単位:千ドル / 1株当たりデータを除く)
(出所:ギガクラウド・テクノロジーの2024年度第2四半期決算資料)
この予想から、同社は設備投資を差し引き後に約9,000万~1億ドルのフリーキャッシュフローを生み出すと考えています。
これはかなり控えめな予想ですが、保守的な数字を使う方が賢明だと思っています。
「それほど多くのEBITDAがあるのに、フリーキャッシュフローはそれほど多くない」と感じるかもしれません。
その点については、確かにフリーキャッシュフローの生成が私が理想とするほど強くないことを認めます。
しかし、今回は非常に保守的に見積もるよう努めました。
その理由は、市場が私の判断に疑いを持ったとしても、インフレクション投資戦略への自信を持ち続けられるようにするためです。
では、次にパガヤ・テクノロジーズ(PGY)と比較してみましょう。
これが同社のガイダンスです。
(出所:パガヤ・テクノロジーズの2024年度第2四半期決算資料)
同社は2024年会計年度に約2億ドル(between $180 million and $210 million)の調整後EBITDAを見込んでいます。
そして、これは同社が最近行ったプレゼンテーションに基づく予測です。
(日本語訳)
取引の背景と今実行する理由
この取引が完了すれば、事業全体がキャッシュフローの黒字化を達成する見込みです。
資金調達の概要:125百万ドルの交換社債(Exchangeable notes)発行、100百万ドルのタームローン拡大、100百万ドル相当の資産売却を予定
・既存の高金利債務を借り換え → 年間約30百万ドルの利息削減効果
・削減したコストを再投資して成長機会を拡大 → 既存の貸付パートナーとの成長を大幅に加速
✓ 取引完了後、事業は目標を大きく上回るペースでキャッシュフローの黒字化を実現する見込み
✓ GAAPベースの純利益達成までの道筋が加速します
(出所:パガヤ・テクノロジーズのTransaction Overview)
同社はGAAPベースの純利益やキャッシュフローの黒字化といった収益性に関する複数の指標を示していますが、依然としてフリーキャッシュフローはマイナスになる見込みであることが分かります。
下記図の赤線の数字をご覧いただくとマイナスとなっていることが分かるかと思います。
Cash Flow Statementにおける「Cash flows from investing activities(投資活動によるキャッシュフロー)」の中の「Payments for the purchase of: Investments in loans and securities(貸付金や証券への投資の購入)」がマイナスである理由は、これらの投資が同社にとってキャッシュの流出を意味するからです。
具体的には、企業が貸付金や証券を購入する際に、現金を支払う必要があります。
この支払いがキャッシュフローとして記録され、キャッシュが外部に出ていくため、マイナスとして表示されます。
これは投資活動の一環であり、企業が将来的なリターンを期待して現在のキャッシュを使っていることを示しています。
(出所:パガヤ・テクノロジーズの2024年度第2四半期決算資料)
まとめると、企業の基礎となるフリーキャッシュフローを考えることが、将来的な成長の可能性を見極めるための最良の指標です。
フリーキャッシュフローは、企業が事業活動から生み出した現金のうち、借金返済や配当支払い、再投資に使える余剰資金を示します。
これにより、企業が将来的な成長のためにどれだけの資金を自由に使えるかがわかります。
安定したフリーキャッシュフローを生み出す能力があることは、持続的な成長や投資の余地があることを示し、企業の将来的な安定した成長可能性を見極める上で重要な指標となります。
フリーキャッシュフロー(FCF)に関するまとめ
来年以降のフリーキャッシュフロー(FCF)を予測することは、企業の本質的な健全性や耐久性を評価するための確かな基盤を提供すると言えます。
単に理論上の利益だけに注目するのではなく、このアプローチによって、市場が自分の予想に反して動いたとしても自身の判断に自信を持っていられるでしょう。
以上より、フリーキャッシュフローの可能性を把握することで、投資機会が過小評価されているかどうかを見極め、より安心して投資し、大きなリターンが期待できる状況を掴むことができると考えています。
アナリスト紹介:マイケル・ウィギンズ・ デ・オリベイラ
マイケル・ウィギンズ・デ・オリベイラ氏は、エネルギー・セクター、並びに、テクノロジー・セクターに関して、10年以上に渡る企業分析を通じて、卓越した専門的知識と経験を蓄積しております。
足元、グローバル・ベースで加速する、「脱炭素化」、「AIによるデジタル化」、「脱グローバル化」、さらに、「エネルギー・セクターの大きな転換期」を正確に捉えることで、より大きな投資リターンを実現することに主眼を置いています。
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