Part 2 - Wizの将来性と今後のIPOの見通し:パロアルトネットワークス(PANW)に挑むチャネル戦略と新CRO就任がもたらす影響
コンヴェクィティ- Wizは強力なチャネル関係を築くことが、パロアルトネットワークス(PANW)のPrisma Cloudに勝つ最良の方法と見ており、チャネルパートナーとの協力を強化している。
- Wizは新しいソリューションの追加とM&Aを通じてTAM(獲得可能な最大市場規模)を拡大し、クラウドセキュリティのシフトライト((脅威対応))サイドにも進出することを計画している。
- Wizは未上場ながら約120億ドルの評価額を持ち、3億5000万ドルのARR(年間経常収益)を達成しており、今後も高い成長率を維持することでさらなる評価額の上昇が見込まれる。
※「Part 1 - 注目のクラウドセキュリティ銘柄Wizとパロ・アルト・ネットワークス(PANW)の比較:テクノロジーと価格モデルを徹底分析」の続き
WisのGTM戦略(市場進出戦略)
Wizのチャネルパートナー開発に関して
Wizがパロアルトネットワークス(PANW)のPrisma Cloudに勝つ最良の方法は、強力なチャネル関係を築くことであり、現在その実現に向けて動いている。彼らのCSPマーケットプレイスでの成功は、チャネルパートナーとの協力への足掛かりであり、パートナーは人気のあるソフトウェアで顧客を支援したいと考えている。
※CSP:クラウド・サービス・プロバイダー
2024年2月にチャネルビジネスの先駆者であるDali Rajic氏がWizのCRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)に就任したことで、チャネルコラボレーションの増加が期待される。それ以前は、ビジネスの70%がCSP、30%がチャネルパートナーであったが、Rajic氏の施策により、これが15%対85%にシフトし、85%がチャネルパートナーを通じて行われる可能性がある。Rajic氏はトップセールス担当者をWizに引き付け、特に中規模市場の顧客に近いチャネルパートナーを通じて成長を促進することが期待される。
パロアルトネットワークス、フォーティネット(FTNT)、ゼットスケーラー(ZS)などの過去のサイバーセキュリティ成功事例が示すように、チャネルの役割は重要であり、Wizの継続的な成長とサイバーセキュリティリーダーへの道を開く可能性があると見ている。そして、Wizはすでにチャネルパートナーを通じて7桁の契約を獲得しており、明るい未来を示していると言える。
WizのTAM(獲得可能な最大市場規模)拡大の機会に関して
成長を維持するために、Wizは新しいソリューションを迅速に追加する必要があり、そのためにはM&Aが必要である。そして、単なるCSPMベンダーと見なされないために、WizはTAMを拡大する必要があり、これはパロアルトネットワークス(PANW)のPrisma Cloud開発に類似している。特に動的なクラウド環境では、すべてを社内で構築するのは困難である。数十億ドル規模のベンダーに成長することで、技術的負債が増え、Wizの使いやすさや新しい顧客に対するROIが低下する可能性がある。
※CSPM:クラウドセキュリティ態勢管理
Wizは、彼らの買収意欲に見られるように、SecOpsにもっと焦点を当てて、クラウドセキュリティのシフトライト(脅威対応)サイドに拡大する可能性がある。また、WAAPやXDRも探求するかもしれないが、XDRは専門的なSIEMバックエンドがないと難しい。
※WAAP:Web アプリケーションと API の保護
※XDR:広範な検知と対応
※SIEM:セキュリティ情報イベント管理
CNAPPがSASEと統合されるという噂があるが、エンドポイント保護が共通するため、CNAPPとXDRの統合の方が可能性が高い。Wizはネットワークセキュリティにも参入し、PANWやZSと競合する可能性があり、クラウドセキュリティビジネスを活用することができる。
※CNAPP:クラウド・ネイティブ・アプリケーション保護プラットフォーム
※SASE:セキュア・アクセス・サービス・エッジ
Wizのバリュエーションに関して
Wizは依然として未上場企業であるが、約120億ドルの評価額(バリュエーション)と3億5000万ドルのARR(年間経常収益)を持ち、EV/Sマルチプル(企業価値/売上高倍率)は約34倍となっており、約65%の同社の成長率を見込むグロース投資家にとって魅力的な対象となっている。この成長は、①対象顧客企業の準備状況と②Wizの優れたアーキテクチャによるものである。バリュエーションにおけるリスクはあるものの、Wizは独自のデータ層とコスト効果の高い代替案により、Part 1で説明したLaceworkのような失敗は避けられる可能性が高いと見ている。
また、今後、Wizの単一アーキテクチャの優位性は薄れる可能性があるが、創業チームの実行力がTAMの拡大と新たな成長を促進するだろうと見ている。
加えて、Wizは競争に対抗するために大幅なディスカウントを行っており、これがマージンに影響を与えているが、IPO後には改善の余地がある。競争環境を考えると、Wizはクラウドストライク(CRWD)やゼットスケーラー(ZS)のセールス・マーケティングにおける成功を模倣し、エリートアーキテクチャによって支えられる可能性があるだろう。
IPO時には、セールス・マーケティング費用の割合が高いため、深刻なマイナスのEBITマージンが予想される。しかし、Wizがパロアルトネットワークス(PANW)やクラウドストライクと並んで明確な勝者となれば、マージンが改善する可能性があるだろう。
最新ラウンドの投資家がWizが最終的に上場する際に損失を被らないようにするためには、同社が約6億ドルのARR(年間経常収益)を生成している必要があると推定される。高成長でプラスのフリー・キャッシュフローを持ち、急速にマージンを改善する30%以上の成長を遂げるBoBベンダーは、20倍のEV/S倍率で取引されるべきである。
※BoB(Best of Breed)ベンダー:特定の分野やカテゴリにおいて最高の性能や機能を持つ製品やサービスを提供するベンダーのこと。
投資家が「純粋なグロース」モードにあり、収益性をほとんど考慮しない場合、Wizは容易に30倍のEV/S倍率で取引される可能性がある。しかし、6億ドルのARRに対して20倍のEV/Sを適用すると、Wizの最新の評価額である120億ドルになる。仮にWizが今から2年後にIPOを行うと仮定すると、ARRを年間約31%成長させ、3億5000万ドルから6億ドルに成長させる必要がある。現在の65%の成長率を考慮すると、これは非常に実現可能である。したがって、今後2年間で31%以上の成長を遂げることで、評価額が現在の120億ドルレベルからさらに上昇する可能性があると言える。
結論
現在、Wizは確かに高度なエージェントレス機能を提供しているが、M&Aを通じてプラットフォームが拡大するにつれて、これらの優位性が薄れる可能性がある。結論はまだ出ていないが、パロアルトネットワークス(PANW)のPrisma CloudのDarwinリリースにより、Wizとのギャップが縮まったように思われる。さらに、より多くのパロアルトネットワークス顧客がPrisma CloudのデータレイヤーとしてXSIAMを使用するようになるにつれ、パロアルトネットワークスがWizの機能と同等になることが期待される
しかし、Wizとパロアルトネットワークス、さらにはクラウドストライク(CRWD)もクラウドセキュリティ分野で支配的な巨人になる余地は十分にある。Wizの足元のバリュエーションは既に非常に高いかもしれないが、30%以上の成長が120億ドルのバリュエーションを維持するための基準であるならば、十分に安定したバリュエーションであるようにも見える。
その他のテクノロジー銘柄関連レポート
1. ① Part 1:クラウドフレア / NET:サイバーセキュリティ銘柄のテクノロジー上の競争優位性(強み)分析と今後の将来性(前編)
2. ①ルーブリック / RBRK(IPO・新規上場):サイバーセキュリティ銘柄の概要&強み分析と今後の株価見通し(Rubrik)
3. パロアルトネットワークス / PANW / 強気:サイバーセキュリティ銘柄のテクノロジー競争優位性分析と将来性 - Part 1
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