10/02/2024

グローバルファウンドリーズ(GFS)の将来性:最新決算は堅調も株価は下落?詳細な業績分析を通じて今後の見通しに迫る!

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  • 本稿では、注目の米国半導体銘柄であるグローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)の最新決算、並びに、足元の業績推移の詳細な分析を通じて、同社の今後の見通しと将来性を詳しく解説していきます。
  • TSMCはHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野の好調やAIチップ需要の増加により、2024年に前年比約30%の売上成長を見込んでいます。 
  • 一方で、グローバルファウンドリーズも財務状況が改善しており、2024年には3倍のフリーキャッシュフローを達成する見込みですが、株価は低迷しています。 
  • グローバルファウンドリーズは慎重な設備投資戦略を採っており、売上が90億〜100億ドルに達するまでは成長投資とフリーキャッシュフローのバランスを重視しています。

グローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)の競合であるTSMC(TSM)に関して

まずは対照的に、世界トップのファウンドリであるTSMC(TSM)を簡単に見てみましょう。同社は2024年に前年比でおよそ30%の売上成長を見込んでおり、その成長は主にHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)分野の好調さに支えられています。特に、AI加速チップの需要が急増していることで、TSMCは大きな恩恵を受けています。この好調さは株価にも反映されており、過去1年間で104%も上昇しています。

ただし、TSMCの株価は夏にかけて史上最高値の193ドルから下落しました。この下落が生んだ投資機会については、7月21日に公開した下記のTSMCに関するレポートで詳しく解説しておりますので、是非、インベストリンゴのプラットフォーム上でご覧いただければと思います。

(出所:Yahoo Finance)

その後、株価は順調に回復し、現在は約178ドル付近にあります。最近、TSMCに新たな追い風が吹いていますが、あまり注目されず、メディアでもほとんど報じられていません。この点についても、9月初めに執筆した下記のインテル(INTC)に関するレポートで詳しく触れています。

インテル(INTC)とTSMCの関係とは?インテルの5N4Yの進捗と20Aの製造をキャンセルした理由と合わせて徹底解説!

実は、インテルが20Aプロセス(インテルが開発していた半導体製造プロセスの一つ)を中止したことで、次世代クライアントプロセッサ(個人向けのデバイスに搭載されるプロセッサ)「Arrow Lake」の製造(最終パッケージングを除く)の全てをTSMCが担うことになったのです。まずMeteor Lake、次にLunar Lake、そして今回のArrow Lakeです。もちろん、TSMCはアドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)向けのPCクライアントプロセッサや、クアルコム(QCOM)向けのSnapdragon Elite Xプロセッサも製造しています。これらは全てPCクライアントプロセッサ分野の話です。

グローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)の現状

では、グローバルファウンドリーズ(GFSGlobalFoundries)について見てみましょう。同社の株価は2024年に非常に苦戦しており、下記のチャートからも分かる通り、7月中旬から約30%も下落しています。さらに、現在の株価は約3年前のIPO価格よりも17%低い状態です。

(出所:Yahoo Finance)

とはいえ、同社の財務パフォーマンス自体は良好です。トーマス・コールフィールド氏が2018年初めにCEOに就任した時、同社の財務状況は混乱していましたが、彼のリーダーシップの下で改善が続いています。同社は2022年に純利益が黒字化し、その後も2023年、そして2024年も黒字を維持する見通しです。

(出所:筆者作成)

フリーキャッシュフロー(FCF)についても、同社は2024年上半期だけで5億ドル以上を創出しており、2024年通年では2023年の3倍のフリーキャッシュフローを達成する見込みです。下記が前回の決算説明会での遣り取りの一部です。

(原文)Yeah we also had some benefit of the first half of some of our customer prepayments and accelerated AR collections that benefited first half free cash flow so, all things considered, good performance you know we generated more than 500 million dollars a free cash flow in the first half and are on track to meet our our goal for 3x improvement. That's actually up if you recall the prior indication was two and a half to three. We have upgraded that to three times 2023 free cash flow performance so we're pleased to report that this morning.

(日本語訳)上半期には、顧客からの前払い金や売掛金の早期回収といった要因もあり、フリーキャッシュフローが大幅に改善されました。全体的に見て良い成果を上げられたと思います。上半期だけで5億ドル以上のフリーキャッシュフローを生み出し、3倍の改善目標に向けて順調に進んでいます。当初は2.5倍から3倍を見込んでいましたが、今回それを3倍に引き上げました。このことを今朝ご報告できて嬉しいです。

それでは、何が問題なのでしょうか?グローバルファウンドリーズはうまく経営され、健全な財務基盤を持ち、現状の低迷期から徐々に脱しつつあり、将来は明るいはずです。それにもかかわらず、なぜ株価は下がり続けているのでしょうか?詳しく掘り下げていきましょう…。

株価の話に入る前に、まずはトーマス・コールフィールドCEOがここ数年でどのような取り組みをしてきたかを見てみましょう。彼は2018年初めにCEOに就任してから、わずか6ヶ月で大きな決断を下しました。このことについては、以前執筆した記事において、下記のように言及しています。

「グローバルファウンドリーズは、今後数年間で次世代の顧客に対応するため、最先端のFinFET(フィン型電界効果トランジスタ)ロードマップを再編成しています。同社は開発リソースを14/12nm FinFETプラットフォーム(14ナノメートルおよび12ナノメートルのプロセス技術を使ったFinFET)に集中させ、この顧客層により適した形にすることで、RF(無線通信に使用される高周波の電磁波)、組み込みメモリ、省電力などの革新的なIPや機能を提供する予定です。」

「この移行を進めるために、GFは7nm FinFET(7ナノメートルのプロセス技術を使ったFinFET)の開発を無期限で中止し、強化されたポートフォリオに対応するため、研究開発チームを再編成します。この再編成により、一部の人員削減が必要となりますが、多くのトップ技術者は14/12nm FinFET派生製品や他の差別化された製品開発に再配置される予定です。」

これは当時、大きな決断であり、私はこれが正しい判断だったと今でも思っています。彼は7nmの開発を中止するだけでなく、特殊プロセスノードの開発に注力しました。そしてこの戦略は、数年後に自動車分野で大きな成果を上げました。2023年には、同社の自動車部門の売上が前年比で3倍に成長しています。

(原文)Automotive where we're seeing meaningful growth opportunity and that's on the back of a billion dollars of automotive revenue in 2023 which was a 3x increase over what we generated in 2022 so clearly the share gain story around automotive continues to persist and we are encouraged by that

(日本語訳)自動車分野では大きな成長の機会が見えています。2023年の自動車関連売上は10億ドルに達し、2022年の3倍に成長しました。自動車分野でのシェア拡大は引き続き進んでおり、私たちもその状況に非常に期待しています。

さらに注目すべきは、4年前の自動車関連の売上がゼロからのスタートだったことです。

もう一つ、コールフィールド氏の戦略的リーダーシップを示す点は、単にウェハーの売上を目的に新規事業を安易に引き受けない姿勢です。2024年第2四半期の決算発表では、NXPセミコンダクターズNXPI)からのMCU(Microcontroller Unit:組み込みシステム向けの小型コンピュータ)製造の依頼を断った理由についてこう述べています。

(原文)well let's talk about this NXP-Vanguard deal. That didn't come to a surprise to us, we work very closely with NXP. You need to understand what that capacity is being put on. I'll describe it as legacy, bulk, undifferentiated, low margin CMOS business which we weren't interested in and neither was our customer wanting to redesign onto a platform for us.

(日本語訳)NXPとVanguard International Semiconductor Corporation(台湾に本拠を置く半導体メーカー)の契約についてですが、これは私たちにとって驚きではありませんでした。私たちはNXPと非常に密に連携していますが、この生産能力が何に使われるのか理解する必要があります。それは、旧世代で大量生産され、差別化もなく低利益なCMOS事業(半導体チップに使われる技術の一つで、低消費電力でデジタル回路を構成するために広く使われている)でした。我々も顧客も、このプラットフォームに再設計することには興味がありませんでした。

最終的にVanguardとNXPが結んだ契約の詳細については、こちらをご覧ください

VISとNXP、300mmファブの建設・運営に向けた合弁会社を設立

(日本語訳)2024年6月5日 – Vanguard International Semiconductor Corporation(「VIS」、TPEx 5347)とNXPセミコンダクターズ(「NXP」、NASDAQ: NXPI)は、本日シンガポールに300mmの半導体ウェーハ製造施設を建設するため、合弁会社「VisionPower Semiconductor Manufacturing Company Pte Ltd(VSMC)」を設立する計画を発表しました。この合弁ファブは、130nmから40nmの混合信号、電源管理、アナログ製品の製造をサポートし、自動車、産業、消費者、およびモバイル市場向けをターゲットにします。基盤となるプロセス技術は、TSMCからライセンス供与および技術移転される予定です。

明らかに、TSMCもNXPセミコンダクターズが求めていた仕事には興味がなかったようです!表面上は、この契約はグローバルファウンドリーズにとって良いものに見えたかもしれませんが、コールフィールド氏があえてこの契約を見送ったことは、非常に賢明で戦略的、そして、現実的な判断をする人物であることを示していると思います。

これらは、コールフィールド氏が優れたリーダーシップを発揮している多くの例のうちのほんの一部に過ぎません。結論として、グローバルファウンドリーズは非常にうまく経営されています。それでは、なぜ株価が低迷しているのか、その理由を見ていきましょう。

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グローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)を取り巻くマクロ環境と今後の見通し

パンデミック期間中、ほぼすべてのファウンドリで売上と利益が成長し、この好景気は2022年第3四半期にピークを迎えました。以下のユナイテッド・マイクロエレクトロニクスUMC)のチャートからもその状況がよくわかります。

UMC:四半期別売上高・純利益・純利益率(2019年第3四半期〜2024年第2四半期)

(出所:筆者作成)

このピークに至るまでの流れは、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスの2022年第3四半期の決算資料から引用した下記のグラフでも確認できます。言及されている3つの四半期すべてで稼働率が100%に達している点に注目してください。

(出所:ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスの2022年第3四半期決算資料)

ファウンドリ業界の低迷は2022年第4四半期から始まりました。この点についても、同社の2022年第4四半期の決算資料から抜粋した内容に明確に示されています。

(出所:ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスの2022年第4四半期決算資料)

ここで稼働率が90%に低下し、営業収益も前四半期比で約10%減少していることがわかります。その後、稼働率は徐々に下がり、60%台後半で安定しましたが、現在もその水準にとどまっています。

(出所:ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスの2024年第2四半期決算資料)

ほとんどのTier 2プレイヤー(業界内でトップ企業に次ぐ規模や影響力を持つ企業のこと)も大体同じような状況にあります。この低迷の原因は明白です。パンデミック時に大幅に増加したPCやスマートフォンの出荷台数が急激に減少し、特に中国での消費支出は過去2年間低迷したままです。さらに、産業向け需要も中国を中心に依然として振るわない状況が続いています。

四半期が進むにつれ、決算発表では「在庫が多すぎる」「在庫調整が遅い」などのコメントが多く見られましたが、今では問題の本質は在庫ではなく、需要の弱さであることが明らかです。この点については、グローバルファウンドリーズ(GFSGlobalFoundries)のトーマス・コールフィールドCEOが最新のQ&Aセッションでよく説明しています。

(原文)Lastly, a lot of what we're going to see in our industry is going to be tied to macroeconomics. If you think about the two largest economies China and the US, they have different macroeconomic conditions. What they are dealing with in China is a real estate overhang that has consumers saving a little bit more than they ordinarily would and being a little gun shy.

(日本語訳)最後に、今後我々の業界の動向はマクロ経済に大きく影響されるでしょう。中国と米国という二大経済圏を考えると、それぞれ異なるマクロ経済状況にあります。中国では不動産問題を抱えており、その影響で消費者は普段よりも貯蓄に回し、購買意欲が低下しています。

(原文)In the US we are still dealing with high interest rates as a result of high inflation and once those two economies get a little bit more normalized and consumers start to spend and redirect that spending back into electronics I think that's when we're going to say see our businesses as an industry pick up

(日本語訳)米国では依然として高インフレによる高金利が続いており、これら二つの経済が少しでも正常化し、消費者が支出を再び電子機器に向け始めれば、業界全体として回復が見られると考えています。

また、特に明るい見通しとは言えませんが、彼はAI対応PCが需要を喚起する可能性について一筋の希望を示しています。

(原文)The real catalyst if we're going to do anything in the nearer term other than its macro environment is really going to be AI enabled devices, will they spark the interest in new devices that consumers will want?

(日本語訳)今後、マクロ環境以外で我々の業界を動かすカタリスト(特定の出来事や変化を引き起こすきっかけや要因)があるとすれば、それはAI対応デバイスです。これが消費者の新しいデバイスへの関心を引き起こすきっかけになるでしょうか?

コールフィールドCEOがこの点を疑問形で述べていることに注目してください。個人的には、彼自身もAI対応PCが今後の状況を劇的に変えるとは考えていないように思います。

これが、Tier 2ファウンドリの上位4社の売上が2023年第1四半期以降ほとんど停滞している理由です。2024年第2四半期には売上が前四半期比で5.8%増の57億ドルに達しましたが、前年比では依然として横ばいの状態が続いています。

Tier 2ファウンドリの四半期別売上高推移

(出所:筆者作成)

現四半期も緩やかな改善が続き、予測に基づくと売上は62億ドルに達し、前年同期比で7.6%の成長が見込まれています。第4四半期もさらに緩やかな成長が期待されており、年間の成長率は約10%になる可能性があります。ただし、これはTSMC(TSM)が2024年第1四半期の決算発表で示した予測よりもかなり低い数字です。

(原文)We lowered our forecast for the 2024 overall semiconductor market, excluding memory, to increase by approximately 10% year-over-year, while foundry industry growth is now forecast to be mid- to high-teens percent, both are coming off the steep inventory correction and low base of 2023.

(日本語訳)2024年の全体の半導体市場(メモリを除く)の成長率を前年同期比で約10%に下方修正しましたが、ファウンドリ業界の成長率は10%台半ばから後半になると予測しています。いずれも、2023年の大幅な在庫調整と低い基準からの回復によるものです。

結論として、Tier 2ファウンドリの回復は当初の予想よりも時間がかかっており、2年前の直近の高水準に完全に回復するには、あと2四半期、場合によっては3四半期が必要となるでしょう。この厳しい現実が、グローバルファウンドリーズの株価が低迷している主な要因の一つと考えられます。

グローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)による株式売出し

5月22日、グローバルファウンドリーズ(GFSGlobalFoundries)は9億5000万ドルの株式売出しを発表しました。詳細はこちらをご覧ください

GlobalFoundries、9億5000万ドルの普通株式の追加売出し価格を発表、同時に2億ドルの自社株買いも実施予定

(出所:グローバルファウンドリーズのHP)

(日本語訳)ニューヨーク州マルタ、2024年5月22日 – GlobalFoundries Inc.(「GlobalFoundries」または「GF」)(Nasdaq: GFS)は、本日、普通株式9億5000万ドル分のセカンダリー公募の価格を1株あたり50.75ドルに設定したと発表しました(以下に記載の通り、2億ドルの自社株買いを含む)。今回の売出しにおける全ての株式は、ムバダラ・テクノロジー・インベストメント・カンパニー(「売出株主」)によって提供されます。売出株主は、ムバダラ・インベストメント・カンパニーPJSC(その関連会社を含めるとGlobalFoundriesの最大株主)の完全子会社です。また、売出株主は、アンダーライターに対して、追加で1億1250万ドル分のGlobalFoundriesの普通株式(今回の公募株式の15%相当)を、公募価格から引受手数料を差し引いた価格で購入する30日間のオプションを付与しています。この売出しは、慣例的な条件を満たした上で、2024年5月28日に完了する予定です。

実際のところ、これはグローバルファウンドリーズの最大株主であるムバダラが保有株の一部を売却するものでした。売却価格は50.75ドルで、発表当日の市場価格よりおよそ5ドル安い水準でした。当然ながら、この発表により株価は一晩で売出価格まで急落しました。その後、株価は回復し、7月中旬には一時58ドル付近まで上昇しましたが、それ以降は下落が続いています。

私の考えでは、ムバダラがいつでも大量のグローバルファウンドリーズ株を自分たちの決めた価格で売却できるという事実が、投資家の心理に不安を与えているように思います。

グローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)の設備投資戦略

2024年第2四半期の決算発表では、グローバルファウンドリーズ(GFSGlobalFoundries)の設備投資戦略について詳細な議論が行われました。

Tier 2ファウンドリの年間設備投資額(2019〜2024年)

グローバルファウンドリーズは2024年に設備投資として7億ドルを支出する計画です。これに対して、スーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)は推定80億ドル、ユナイテッド・マイクロエレクトロニクスUMC)は33億ドル、Hua Hong Semiconductor Ltd(1347 HK)は10億ドルを投資する予定です。

設備投資戦略について問われた際、コールフィールドCEOは非常に詳しく回答しましたが、その要点は次の一節にあります。

(原文)I'll go all the way back to the investment thesis of our roadshow in 2021. We said there was something really important about reaching a nine and a half ten billion dollar mar revenue. We wouldn't have to trade off free cash flow for investment in growth, that we get to a point of scale where we can have both. We can invest in meaningful growth and at the same time produce free cash flows and so that's how I would think about what our investment profile is going to be over the coming years.

(日本語訳)2021年のロードショーで話した投資方針に遡りますが、年間売上が95億〜100億ドルに達することが非常に重要だと述べました。その規模に到達すれば、成長のための投資とフリーキャッシュフローをどちらかに絞る必要がなくなり、両方を実現できるようになります。意味のある成長に投資しつつ、同時にフリーキャッシュフローも生み出せるようにしたい、これが今後数年間の投資方針です。

つまり、グローバルファウンドリーズの年間売上が90億〜100億ドルに達するまでは、フリーキャッシュフローと設備投資をバランスさせていくということです。これは、インテル(INTC)が行っている戦略とは正反対であり、彼の回答はまるでインテルに対する「設備投資戦略の基礎講義」のようにも聞こえました。

投資家たちは、彼の設備投資戦略を見て、競合他社と比べて積極性に欠けると感じているようです。それは事実ですが、全てを表しているわけではありません。グローバルファウンドリーズはこれまでにも大規模な設備投資を行っており、2022年には30億ドル、2023年には18億ドルを費やしています。現在、稼働率は約70%であるため、すぐに生産能力を増やさなくても成長の余地は十分にあります。しかし、コールフィールドCEOのアプローチは、同社の売上成長がすぐに強く回復するという自信を欠いているように映り、それが投資家の不安を引き起こしているのです。

グローバルファウンドリーズ(GFS:GlobalFoundries)に対する結論

グローバルファウンドリーズ(GFSGlobalFoundries)のCEOは、ファウンドリ業界に対して厳しい見通しを示しつつ、フリーキャッシュフロー(FCF)の維持・成長を考慮しながら、現実的な設備投資戦略を取っています。一方で、AIアクセラレーションを手がけるマイクロン・テクノロジー(MU)やアドバンスト・マイクロ・デバイセズAMD)、エヌビディア(NVDA)などが提供する成長機会と比べると、投資家はそちらにより魅力を感じているようです。

それでも、グローバルファウンドリーズは優れた経営陣を持つ、しっかりとした運営がなされている企業であり、アメリカ製半導体の主要なサプライヤーとして明るい将来が期待できるように見えます。そして、現時点での株価を考えると、より多くの投資家の注目に値するように見えます。では、同社の今後の展開を見守りましょう!


アナリスト紹介:ウィリアム・キーティング

ウィリアム・キーティング氏は、インテル、AMD、サムスン、アップル、マイクロン・テクノロジー等の企業の製品、ロードマップ、技術、および、それらの企業の主要な装置サプライヤーである、ASMLAMAT、キヤノン、ニコン等を専門とする半導体 / テクノロジー・リサーチ・コンサルティング会社、Ingenuity (Hong Kong) Ltd.の創立者兼最高経営責任者(CEO)です。

キーティング氏は、半導体業界において重要性の高いニッチなテーマを専門としています。具体的には、ムーアの法則の将来性、特にムーアの法則(EUVSDANanoImprint)を維持するためのリソグラフィの重要性、音声、画像、パターン認識、暗号通貨マイニングのためのディープラーニング(ニューラルネットワーク)などの特殊なアプリケーションにおけるGPUやその他のカスタムアーキテクチャの役割と成長などが挙げられます。また、メモリの将来、特に3D NANDの台頭と新しいメモリ技術の出現について、定期的にクライアントとのディスカッションを開催しています。

Ingenuity (Hong Kong) Ltd.を設立する以前は、1992年から2014年までインテル・コーポレーションに勤務していました。当初はAIシステムのスペシャリストとして採用され、その後、同社の最先端の300mmファクトリーネットワークをグローバルにサポートするファクトリーオートメーションシステム(ロボット、データベース、ネットワーク、サーバー、クライアント等)の責任者となりました。2000年には、社内にITコンサルティング・グループ(IT Flex Services)を設立し、500人規模のグローバルチームに成長させ、同グループは現在もインテルのIT部門の中核を担っています。2005年には、APAC、中国、日本担当のIT部門のディレクターに任命され、同地域にあるインテルの全オフィスと製造施設のITシステム(インフラ、ネットワーク、データセンター、ERP、セールス、マーケティングシステム、ビジネスインテリジェンスなど)を統括していました。

また、キーティング氏のその他の半導体関連銘柄のレポートに関心がございましたら、是非、こちらのリンクより、キーティング氏のプロフィールページにアクセスしていただければと思います。


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