ギットラボ (GTLB)2025年1Q決算&アルファベット(グーグル)による買収の可能性と将来性を探る(Gitlab)
コンヴェクィティ- ギットラボ(GTLB)の2025年度第1四半期決算の業績は堅調だったが、最近のSaaSの暗いセンチメントの影に隠れてしまった。
- アルファベット(GOOG / GOOGL / グーグル)が同社を買収する可能性が高まっていることについて、その戦略的重要性、潜在的シナジー効果、アルファベットの戦略との整合性を、特にギットラボのバリュエーションが縮小していることを踏まえて考察する。
- 逆風となる可能性としては、創業者のコントロール、買収後の実行、オープンソースの摩擦、企業のGTM戦略(市場進出戦略)の動き、顧客の懸念等が挙げられる。
- 全体として、チャンスは依然として高く、適切な価格であれば、アルファベットがギットラボを買収することは理にかなっているが、ギットラボのチームや顧客と共鳴できる強いコミットメントが必要である。
ギットラボ(GTLB)の2025年度第1四半期決算に関して
ギットラボ(GTLB)の2025年度第1四半期決算は、前年同期比33%増と利益率の改善という好業績を示した。
同社は、セキュリティ、コンプライアンス、AI統合に重点を置いた包括的なDevOpsプラットフォームに注力しており、他社との差別化を図っている。
主な決算のハイライトは以下の通りである。
・前年同期比の成長率 +33%(ガイダンス:+30.4%)
・Non-GAAPベースのEBITマージン -2.2%(ガイダンス:-7.6%)
・Net dollar retention(NDR:売上継続率) 129%
・FCF(フリー・キャッシュフロー)マージン 22%
・ARR10万ドル以上の顧客数は前年同期比+35%(2024年度第4四半期:+37%)
・2025年度の売上高ガイダンスを700万ドル増の7億3500万ドルに引き上げ
好調な決算にもかかわらず、ギットラボの株価は最近20%以上下落しており、セールスフォース(CRM)の収益低迷とマクロ懸念もこの流れに影響している。
さらに、シド・シーブランディCEOががん治療を発表し、この発表も同社の株価に影響を与えているように見える。
ギットラボの経営陣は、一貫した販売サイクルと、Net dollar retentionの129%に示されるように、エンジニアによる同社プロダクトへの力強い需要を報告している。
そして、このトレンドは、2025年度の売上高ガイダンスの引き上げにも示されている。
直近過去12カ月間ベースで、同社はFCFマージンを-13%から13%に増加させ、大幅な収益性の伸びを示している。
主な成長ドライバーは、企業への浸透の増加とAI製品であるGitLab Duoである。
Ultimateサブスクリプション層からの売上高は2025年度第1四半期には46%に増加している。
また、AIアシスタントのGitLab Duoは月額19ドルで高度な機能を提供し、ユーザー単価を押し上げている。
企業への導入とAIの収益化が好調で、結果、同社の成長とマージンが強化され、40%ルール(Rule of 40)の観点からも魅力的に映る。
アルファベット(GOOG / GOOGL)によるギットラボ(GTLB)買収の可能性
アルファベット(GOOG/GOOGL/ グーグル)はギットラボ(GTLB)の筆頭株主であり、その持ち株比率は22.6%と、アルファベットの公開株式ポートフォリオの中でも最大となっている。
そして、この流れには下記の様なストーリーがある。
アルファベットは2017年のシリーズC資金調達ラウンド以来、ギットラボの主要投資家である。
その後、ギットラボはマイクロソフト(MSFT)のAzureからGoogle GCPに移行した。
その後、マイクロソフトは2018年6月にGitHubを買収した。
ギットラボは主にGCP us-east1でホストされている。
その後、アルファベットは特に2023年3月の株価下落局面にギットラボの保有比率を増やしている。
アルファベット(GOOG / GOOGL)のGCPの現状
2015年、、アルファベット(GOOG/GOOGL/ グーグル)はVMwareの創業者であるダイアン・グリーン氏をGCPのCEOに任命し、クラウドサービスに焦点を移した。
しかし、GCPはアルファベット社内の文化的問題によって苦戦を強いられ、「ウォーキズム」の台頭によって悪化した。
これは、ChatGPTのライバルであるアルファベットのGeminiが極端な政治的正しさを目指したGeminiウォークのニュースの際に明らかになっている。
そして、GCPは、マイクロソフトのAzureやアマゾン(AMZN)のAWSとの厳しい競争に直面しており、グーグル広告とは異なり、GCPの成長は鈍い。
このGCPのパフォーマンスを隠すため、アルファベットはGCPの財務情報をグーグル・ワークスペースの財務情報と組み合わせて表示している。
現在は元オラクルのトーマス・クリアン氏がGCPを率いており、大幅な改善を行っているが、完全なオーバーホールではない。
GCPは、マイクロソフトのサティア・ナデラ体制下でのオープンなエコシステムとは異なり、依然として閉鎖的なプラットフォームであり、結果、その成長と競争力の妨げとなっている。
ギットラボ(GTLB)とアルファベット(GOOG / GOOGL)の戦略的適合性
GCPは他のクラウドプロバイダーとの差別化を目指している。
その戦略のひとつがAIの活用で、アルファベット(GOOG/GOOGL/ グーグル)はパイオニアだったが、その後遅れをとっているというのが現状である。
同社のVertex AIは印象的だが、マイクロソフト(MSFT)のAzure AI Studioを圧倒しているわけではない。
GCPは現在、クラウドIaaS(Infrastructure as a Service)を補完するサービスに注力しており、クラウドセキュリティにおける同社のビジネスモデルを「責任の共有と運命の共有(shared responsibilities and shared fate)」と再定義している。
そして、これは、2022年9月にアルファベットがMandiantを54億ドルで買収したことにつながった。
しかし、この差別化はGCPのGTM戦略(市場進出戦略)での大きな成功には繋がっていない。
マイクロソフトのE5バンドルは依然として、より強力でコスト効率に優れている。
また、GCPがより多くのファーストパーティのセキュリティ製品を提供するにつれ、スタートアップや独立系ベンダーはますますアマゾン(AMZN)のAWSに集中するようになっている。
一方で、GCPは、噂されているハブスポット(HUBS)の買収のようなM&Aを通じて、ツールバンドルとIaaSの強化を計画している。
また、DevOpsに注力し、顧客がより迅速なソフトウェア開発によって収益を上げられるよう支援することは理にかなっている。
そして、エンドツーエンドのDevOpsプラットフォームをリードするギットラボ(GTLB)を買収し、適切な統合により、オープンソースコミュニティを魅了することで、エンジニアの間でGCPをより魅力的なものにすることができる。
さらに、ギットラボはDevSecOpsの中でセキュリティ分野に進出しており、GCPの戦略を補完し、Mandiantのサービスをより効果的にすることが予想される。
そのため、両者を統合することで、統合されたセキュリティサービスが提供される。
また、ギットラボはAI提供のためにGCPと統合されているが、アルファベットはギットラボのユーザー・インタラクション・データへのアクセスが欠けている。
そのため、ギットラボを買収することで、マイクロソフトのGitHub買収と同様に、GCPはこのデータにアクセスできるようになる。
結果、GitLab Duoは、GitHub Copilotと同様に、人気のある開発者用コパイロットとなるだろう。
そして、GitLab Duoのユーザーインタラクションデータは、コーディングに特化したLLMを微調整するのに非常に貴重である。
さらに、ギットラボをアルファベットに統合することで、ギットラボのAI製品開発が加速する。
Amazon.comとAWSの間でツールを共有するアマゾンとは異なり、アルファベットは最高のツールを社内用に確保している。
ギットラボとGCPの合併により、ギットラボはアルファベットの内部ツールにアクセスできるようになり、DevOpsのライバルに対するリードを広げることができるだろう。
ギットラボ(GTLB)とアルファベット(GOOG / GOOGL)が直面する課題
アルファベット(GOOG/GOOGL/ グーグル)は社内にDevOpsツールを持っているが、ギットラボ(GTLB)の主要なユーザーではない。
そのため、社内でギットラボを使用しなければ、さらなる開発と顧客保証は難しいだろう。
一方で、Borg、Blaze(Bazel)、Piper、Gerrit、Morgue、Stubby、Spanner、Dapper、Bigtop、CitC、Chubbyといったアルファベットのツールは人気があり、サードパーティの競合他社よりも先行している。
結果、アルファベットがギットラボを買収すれば、これは不調和を生む可能性もある。
真の進化にはドッグフーディングが必要だが、アルファベットの開発者が社内プロジェクトでギットラボを使わなければ、その妨げになる。
また、オープンソースに基づくギットラボは、アルファベットの歴史的に閉鎖的なアプローチとは対照的である。
アルファベットは当初、Kubernetesのオープンソース化に反対しており、この消極的な姿勢は、アルファベット内でのギットラボの統合と進化を妨げる可能性がある。
ギットラボのOSSコミュニティの健全性と成長を維持することは極めて重要であり、アルファベットのアプローチは分裂を誘発するかもしれない。
さらに、ギットラボは、GitHubとは異なり、より大きなビジョンと製品群を持ち、献身的なフォーカスを必要とする。
加えて、ギットラボのオペレーションは原則リモートである一方で、アルファベットはオフィス復帰を推進している。
また、ギットラボがファーストパーティツールになれば、ユーザーは他のプラットフォームへのサポートに疑問を持つかもしれない。
そして、ギットラボはすでに複数のニッチ分野でリードすることに苦労している。
そのため、大企業の一部となることで、イノベーションとニッチでのリーダーシップが鈍る可能性がある。
ギットラボ(GTLB)とアルファベット(GOOG / GOOGL)への結論
アルファベット(GOOG/GOOGL/ グーグル)は、DevOpsツールチェーンとAI戦略における役割から、ギットラボ(GTLB)を買収する可能性が意識される。
しかし、上述の通り、ギットラボを統合するGCPの能力など、課題も存在する。
ギットラボの株価が過小評価されたままであり、CEOに対する疑念が高まれば、ギットラボの取締役会はアルファベットを主要な候補として、売却を検討する可能性もある。
アマゾン(AMZN)のAWSによる買収は、DevOpsツールにおける非競争的なスタンスから可能性は低い。
以上より、このアルファベットによるギットラボ買収の可能性はポジティブではあるが、保証されているわけではなく、買収後のアルファベットによるミスマネジメントのリスクもある点には注意が必要である。
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